九条バトル !! (憲法問題のみならず、人間的なテーマならなんでも大歓迎!!)

憲法論議はいよいよ本番に。自由な掲示板です。憲法問題以外でも、人間的な話題なら何でも大歓迎。是非ひと言 !!!

随筆 「ランニング賛歌」    文科系

2018年04月20日 06時07分23秒 | 文芸作品
 五十九歳からランニングを始めた僕は、五月が来ると七四歳になる。ランが老後にこれだけの恵みを与えてくれるとは、想像もつかぬことだった。

 膝が痛い? 新聞広告に満載されたコンドロイチンにグルコサミン? 若い頃椎間板ヘルニアで手術をしたこの身体なのに、その腰ばかりか膝にも、何のサプリメントも要らない。そもそも肩や首など、こったことがない。だから、パソコンに向かい続けていて、ふと気がつくと四~五時間なんてことはざらである。痩せるための健康器具? 体質もあるだろうが、僕が二十代に作った式服を着られるのは、スポーツ好きと今のランニングのおかげと確く信じている。身長一六九センチ体重五七キロで、体脂肪率十%。二八インチのジーパンをはいている。ずらずらとこう書くとこの時代には特に自慢にしかとられないのは承知だが、まー一生懸命やっていることを伝える場面、そうご理解願いたい。

 医者たちからはこんな話も聴いている。「時速七キロ以上で歩ける人は長生きする」。当然、そうだろう。血管も含めた循環器系統が健全ならば、成人病も逃げ出すというもの。歯医者さんでこんなかけ声が行き交っているが、同じ理屈関連とも教えられた。「八〇歳まで自分の歯が二〇本ある人は、長生きする」。「健全な循環器系は細菌に対して免疫力があるということ。虫歯菌にも歯槽膿漏などにも強いのです」と教えられた。

 さて、こう考える僕だったから、六九歳新春に起こった慢性心房細動には、対する心臓カテーテル手術・ランニング禁止では、僕の人生が終わったと感じた。手術の前までも、つまり慢性心房細動になるまでは、不整脈を抱えて細々とではあってもずーっと走り続けていたのである。それが、無期限でもう止めなさいと医者に宣告されたのである。そんな未練からだろう。七一歳の晩夏に医者に隠れて走り出し、「大丈夫」という実績を細々と作っていった。秋には、主治医からの公認も取り付け、ジムに通い出す。以降故障や事故や試行錯誤等々も重なったけれど、今は心房細動前六六歳ごろの走力に戻っている。この一月七日、一時間の走行距離が念願の一〇キロに達した。僕にとっては六〇歳台半ばのこの走力回復で数々のメリットを改めて体感しているが、最も嬉しかったのはこんなことだ。

 階段の上り下りが楽しいのである。地下鉄などの長い階段を一段飛ばしで登り切っては、脚の軽さを味わっている。一時無理がたたってアキレス腱痛に長く悩まされたが、試行錯誤を重ねつつこれを克服し終えた時に、新たに生まれた脚の軽さ、弾み! スキップが大好きだった子ども時代を思い出していた。
 昔の自分の小説で思いついた僕なりのランニング賛歌を最後に加えて、結びとしたい。自分ながら好きな文章なのである。 
『ボスについて走り続けるのは犬科動物の本能的快感らしいが、二本脚で走り続けるという行為は哺乳類では人類だけの、その本能に根ざしたものではないか。この二本脚の奇形動物の中でも、世界の隅々にまで渡り、棲息して、生存のサバイバルを果たして来られたのは、特に二本脚好きの種、部族であったろう。そんな原始の先祖たちに、我々現代人はどれだけ背き果ててきたことか?! 神は己に似せて人を作ったと言う。だとしたら神こそ走る「人」なのだ』


(2016年の同人誌に初出)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「あらゆることにうそをつき続ける(トランプ)」と、コミー長官   文科系

2018年04月19日 12時45分04秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)
 現職米大統領のロシア疑惑を選挙中から調べていたコミー前FBI長官が、トランプとのやりとり、解任までのいきさつを本にした。「より高い忠誠心 真実とうそとリーダーシップ」が、この17日にアメリカで出版された。この発売に先だってコミー氏のインタビューもあって、対するトランプの激しい非難ツイッターが連日のように続いている。
 この「中傷合戦」の一端が18日中日新聞に載っていたので、そのまま紹介しよう。

 見出しは「中傷合戦が加熱」に加えて、「FBI前長官 回想録出版し酷評」と「トランプ氏 批判ツイート連発」

『コミー氏の回想録は、「より高い忠誠心 真実とうそとリーダーシップ」。米メディアが報じた要約によると、コミー氏は著書の中でトランプ氏を「不誠実で自意識過剰なマフィアのボス」などと酷評。米大統領のロシア介入疑惑捜査に関連し、トランプ氏から「忠誠」を求められたり、フリン元大統領補佐官を「解放してくれ」と言われた経緯なども詳述しているという。
 米ABCテレビが十五日夜に放映したインタビューで、コミー氏はトランプ氏について「医学的に大統領に不適格とは思わないが、道徳的に不適格だ」と強調。「女性を軽視し、あらゆることにうそをつき続ける」などと述べた。
 これに対し、トランプ氏も自身のツイッターで連日のようにコミー氏を非難している。十五日には「不正直なコミーは結局、ひどく壊れている。史上最悪のFBI長官に成り下がるだろう」とこきおろした。さらに、自身の忠誠を求めたとするコミー氏の主張に対し「私が個人的に忠誠を求めたことなど決してない。うそだ!」と反論した。トランプ氏は昨年五月、政権のロシア疑惑を捜査していたコミー氏を突然解任した』


 さて、ここまで6回の「炎と怒り」内容紹介を読んで下さった方には、ここで「中傷合戦」という言葉が使われていることだけでも、「到底そんな『対等な』ものではない」と苦笑いが出ることであろう。トランプの嘘つきはすでに周囲には有名な事実であり、コミーの解任いきさつの方は、秘密裏に行われたから突然の、極めて不明瞭なものだったからである。コミーは誠実に任務を果たそうとしていただけなのだ。そんな彼を、一片の解任通知をトランプがそのボディガードに直接FBI長官室に届けさせることによって、解任したのであった。しかも、完全にトランプ個人が秘密の内に強行したこの通告は、こんな文言と内実入りだった。
『これにて貴殿は解任、免職とする。本通知は即刻発効する』


『大統領は、ごく身近な家族以外の誰にも相談せず、自分の一存で決定を下したのみならず、その後の対応や説明、さらには法的な正当化までをも、ほぼ自分と家族だけで行った。・・・・こうして、ホワイトハウスは、大統領とその家族と、信じがたい事態に呆然と言葉を失うスタッフたちとに二分された』
(以上の『 』内は、「炎と怒り」P346~7)


 先進国政権では滅多にないようなこんなやり方は、完全に後ろめたい人間がその強権を恣意的に使ったやり口と言える。現在ロシア疑惑には二つの事件が流れていて、一つはトランプの二人の息子が怪しげなロシア関係者と秘密会議を持った事実があるというもの。それもアメリカの政争絡みの資料収集という目的のものであったということだ。今一つの疑惑として「スティール文書」というものが知られている。元イギリス諜報部員クリストファー・スティールという人物がある調査会社に依頼されてロシア諜報機関なども含めて調査した結果を文書にしたものである。トランプがロシアから脅迫されていた可能性があるという資料である。以前トランプが商用でモスクワを訪問した時に、オバマも泊まったという超高級ホテル・スイートルームにおける売春婦たちとの常軌を逸するセックス模様をビデオに撮られていたというものだ。この「スティール文書」は、選挙当初のころからすで一部に流れていたが、大統領泡沫候補のこととてまだ大手マスコミは取り上げていなかった。これを、トランプ就任後初の記者会見の前日にCNNが報道した。現在までに至るトランプのCNN無視は、この事件に端を発しているわけだ。

 コミー元長官の『回想録「より高い忠誠心 真実とうそとリーダーシップ」』。2か月ほど後には翻訳も出ることだろうから、乞うご期待である。
 なお、このような大統領と「ドナルド・シンゾウ」とファーストネームで呼び合うことを喜んでいる日本国首相にはぜひ、「炎と怒り」とともにこの本を読むこともお薦めしたい。「拉致問題」ほか「日本に満額回答」などと、日米首脳会談の「手柄」を誇っているようだが、コミー長官が証言したようにお得意の「(女性を軽視し)あらゆることにうそをつき続ける」という目にシンゾウ君が遭わぬ事を願うばかりである。そんな結末は、何度も裏切られてきたやの拉致問題家族の方々には、可哀想すぎる。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ニシノジャパン(2)日本サッカーは弱くなっている   文科系

2018年04月18日 10時30分08秒 | スポーツ
 昨夜ACLの2ゲームがあった。鹿島が韓国チームに、セレッソが中国チームに、それぞれ0対1、1対3で負けた。二つとも酷いゲームで必然の敗戦、去年10年ぶり近い浦和優勝が夢みたいな話しに見えたものだった。 ただし、去年の浦和はもう死にものぐるいで敵ボールに寄せ、当たって、身方ボールの繋ぎも早める事ができるように、肉弾戦に負けていなかった。今年の4チームの、寄せ・当たり、早めの繋ぎの、何とお上品で、拙かったことか。鹿島も含めて、あれでは勝てない。
 川崎と柏のACLゲームも観てきたが、弱くなった原因はたった一言、寄せが遅いし、当たられ弱いからパスが乱れることである。そしてもう一つ、この事に関連して日本選手の視野が、「今の世界の寄せ・当たり水準」で言えば、昔よりも敵との相対的関係で大変狭くなっているのではないか。

 さて、ACLの日本の歴史を振り返ってみよう。2010年までの「繋ぎ」の日本勢は強かった。ところがそれを過ぎるとすっかり勝てなくなった。その原因が当たり弱さにあったことも、ゲームを観ていれば一目瞭然であった。特に、ACLに慣れていないチームほど弱かった。今回のセレッソや柏のように。つまり、Jリーグとは全く違う闘い方をしなければ勝てなくなっていたのである

 一言で言えば「ボールの奪い合いの闘争」になってきた。そして今回、昔から当たり強い韓国勢が3チームも勝ち残っているのとは、日本勢は対照的な大会になってしまった。当たり強い韓国が繋ぎを覚え、繋ぎの日本の鹿島や浦和がACLでは当たり強さを必死に出して勝ち始めたのだが、ここにきてまた中国、韓国勢に抜かれたという感が強い。

 なお、上に述べた視野の問題であるが、昨日の鹿島を見ても分かるように、速い寄せと当たりに弱い(ゲームをしている)ということは、これが強い相手にはパスも乱されるということである。鹿島の「ミスパス」が何と多かったことか! 早めに周囲を遠くまで見て、早めにパスを出せなければ、当たりの速い相手なら常にパスが乱されるということだ。今繋ぎのサッカーの質を高めるというのなら、猛烈な寄せと当たりの中でこれを鍛えねばならない。相手が身方ボールに押しよせてくるのが速くて、周囲情報を得る時間、判断する時間がないから、周囲が見えないままの苦し紛れのパスはミスパスになる道理である。ましてや身方ボール保持者が、当たられることに敵よりも優っているという自信がないならば、繋ぎゲームなどで勝てるわけなどないのである。

 ドルトムントのゲーゲンプレスが世界に広まった2010年過ぎから、世界サッカーがどんどんこうなってきた。ゲーゲンプレスとは、コンパクトな陣形(下の注参照)を敷いた上で、敵ボールに突っかける選手以外の身方選手は敵のパス先を塞ぐというボール強奪フォーメーションなのだから。こういう世界になったわけだから、周囲が早く見えなければパスが乱されるし、ボールを盗られることも多くなる。


 さて、西野監督は当然こういう世界傾向は知っていよう。が、これに対する対策にも通じているのであるか! 全くそうとは思えない。彼がガンバでアジアを制したのは、こういう世界傾向の前の時代のことだったのだから。
 やはり、ハリルの日本強化策は正しかった。2010年過ぎから「こういう当たり」の世界にどんどんなって来たのだから、「手数少なくパスを縦に速く繋ぐ攻撃で」というその攻撃戦略が、日本には必須だったということだ。
 対策としては、外国籍選手で固めることである。1対1だけの強さを重視するような視野の狭い選手は使うべきではない。ゲーゲンプレス・フォーメーションを使うならば、1対1で抜かれても、直後に身方がボールを取ることができるように寄せるなどということは当たり前に起こることである。特に、ニコ・コバチ監督があれだけ褒めている長谷部は絶対に外せない。敵のゲーゲンプレスにも強い中盤だからこそドイツで絶対的ボランチがやれて来たのである。同様の意味で、香川はともかく、岡崎、吉田も本田も外せない。二人とも当たりに強いからである。ただ、本田の繋ぎすぎる性格は、今の日本には合わない面がある。岡崎と吉田は、世界で最も寄せが速く、当たりが激しいプレミアで十二分にやれて来たのだから、使わない手はない。むしろ、日本代表が守備陣なら岡崎を、攻撃陣なら吉田を、それぞれ練習相手にして、鍛えるのがよいだろう。


 ゲーゲンプレスの創始者、ユルゲン・クロップがプレミアでついに頭角を現してきた。得点ばかりに偏って失点が多いチームが、見違えるようにこれを減らしてきたのである。ヨーロッパ・チャンピオンズ・リーグでリバプールが優勝するかも知れない情勢にもなったと思う。クロップの失点防止法が、次の時代の世界の脚光を浴びていくことだろう。それも、クロップらしく得点は多いままで失点を減らしはじめたということだから、要チェックだ。


 注 コンパクト陣形 コンパクトとは「小さいけど中身が詰まった」というような意味。この場合は、身方の前と後ろを前は下がり目で後ろは上がり目として縦に詰めた密集陣を作って、敵ボールを奪おうという陣形のこと。「コンパクト・プレス」といえば、そのような陣形で全員で敵ボールに圧力を掛け、ボール奪取を狙う事を指す。密集陣形の中では、敵ボール保持者に突っかける選手、この敵からボールを受けるべく走っている敵のなるべく全員に、パスを受けられないように塞ぐ選手と、それぞれその瞬間に応じてきっちり役割がある。こう言うコンパクト陣形は前の方でも後ろの方でも作ることがある。なお、これがゲーゲンプレスと呼ばれている戦術の基礎的知識である。
コメント (7)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

トランプという人間(12)「炎と怒り」の総集編⑥  文科系

2018年04月18日 09時28分50秒 | 文化一般、書評・マスコミ評など
 今回を、この本の内容紹介最終回とする。以下は、この書評第4回目「この本の輪郭」とも重複する部分もあるが、要するに粗筋、概要、結論ということだ。

①大統領としてのトランプは、こんな事をやった。
・地球温暖化対策の枠組みから抜けた。
・エルサレムを首都と認定し、シリアを爆撃し(この4月で2回目である)、サウジの皇太子交代(宮廷革命?)にも関わってきたようだ。
・メキシコとの国境に壁を築き、移民に対して厳しい施策を採るようになった。
・ロシア疑惑によって、コミーFBI長官を解任し、モラー特別検察官とも厳しい関係になっている。
・続々と閣僚、政権幹部が辞めていった。

②これらを推し進めたトランプは、こういう人物である。
・知識、思考力がないことについて、いろんな発言が漏れ出ている。「能なしだ」(ティラーソン国務長官)。「間抜けである」(財務長官と首席補佐官)。「はっきりいって馬鹿」(経済担当補佐官)。「うすのろ」(国家安全保障担当補佐官)。
・その代わりに目立ちたがりで、「他人から愛されたい」ということ第1の人柄である。マスコミの威力を信じ、これが大好き人間でもある。
・対人手法は、お世辞か恫喝。格上とか商売相手には前者で、反対者には後者で対する。大金持ちの父親の事業を継いだ後、そういう手法で世を渡ってきた。
・反エスタブリッシュメントという看板は嘘で、マスコミと高位の軍人、有名会社CEOが大好きである。よって、閣僚にはそういう人々がどんどん入ってきた。

③本人に思考らしい思考も、判断力もないわけだから、政権を支えていたのは次の3者である。バノン他ボストンティーパーティーなど超右翼の人々。共和党中央の一部。そして娘イヴァンカ夫妻(夫の名前と併せて、ジャーバンカと作者は呼んでいる)である。トランプへの影響力という意味でのこの3者の力関係は、30代と若いジャーバンカにどんどん傾いて行き、前2者の顔、バノンもプリーバス首席補佐官も1年も経たないうちに辞めていった。つまり、トランプ政権とは、「アットホーム」政権、家族第一政権と言える。なお、二人の息子もロシア疑惑に関わる場面があり、アメリカではこれも話題になっている。

④よって、期せずして棚から落ちてきて、何の準備もないままに発足した政権の今までは、言わば支離滅裂。選挙中から「アメリカファースト、外には手を広げない」という右翼ナショナリズムが戦略枠組みだったのだが、エルサレム首都宣言をしてアラブの蜂の巣をつつくし、発足3か月でシリア爆撃も敢行した。ロシア疑惑でコミーFBI長官を解任して、大変な顰蹙も買っている。閣僚幹部はどんどん辞めていく。「馬鹿をさせないために側にいる」位置が嫌になるいう書き方である。

⑤こうして、この政権の今後は4年持つまいというもの。ロシア疑惑が大統領弾劾につながるか、「職務能力喪失大統領」として憲法修正25条によって排除されるか、やっとこさ4年任期満了かの3分の1ずつの可能性ありと、バノンは観ている。

 なお、何度も言うようにこの本の執筆視点は、バノンの視点と言える。全22章の内4つの題名に彼の名がある上に、プロローグとエピローグとがそれぞれ「エイルズとバノン」、「バノンとトランプ」となっているし、そもそも内容的に「バノンの視点」である。ちなみにこのバノンは今、次期の大統領選挙に共和党から出馬しようという意向とも書いてあった。


 以上長い連載を読んで頂いた方、有り難うございました。これで、このトランプシリーズは終わります。なお、外信ニュースによるとコミー元FBI長官がトランプに解任されたいきさつなどを書いた本を最近出したそうです。日本語訳を楽しみに待っている所です。
 

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ニシノジャパン(1)岡崎、ハリルとW杯を語る  文科系

2018年04月17日 10時50分43秒 | スポーツ
 このブログ・フットボール記事で最も多くを書いてきたと言える岡崎慎司は俊輔や憲剛以上の理論家だと、僕は観てきた。理論家という意味を、こう理解してのことである。FWであれば、そのチームとしての得点法を最も鋭く論じられる人、DFであればそのチームとしての失点ゼロのやり方を最も鋭く論じられる人、と。でなければ、あんな鈍才があそこまで上り詰められる訳がないのである。なんせ、清水に入った05年の彼は足は遅く、技術も拙くって、5番目以下のFW。長谷川健太監督らからかけられた期待も小さかったのは、有名な話だ。それが、22歳で代表に入って、あれよあれよ、「南アW杯各大陸予選段階の、世界得点王」になってしまった。これは出場ゲーム数が多い代表の絶対的レギュラーFWという意味でもある。かって日本代表にはいなかった絶対的存在(のFW)ということになる。以降、日本人が世界比較で弱いFWとして、プレミアまで。そして、プレミア優勝チームのレギュラーまで。彼の成長の歴史には驚かされるばかりだった。まるで、中田ヒデのような。

 そんな彼もすでに32歳。ハリル解任を受けたW杯までの今後を語った。
 ちなみに、ハリル解任を受けても、マスコミでまともな論議は本当に少ない。読者が記事を選択するための参考になる筆者名すらついていず、W杯に向けては毒にも薬にもならぬような話か、断片的すぎて「それが何?」というようなものか、とにかくそんなのばかりが目立ち、こちらは「読んで損した.時間の無駄。俺は忙しいんだぞ・・・」と後悔ばかり。中田ヒデとか著名人の名前を使ったインタビュー記事なんかでも、聞き取り者の水準によるのだろうが、毒にも薬にもならぬ論調が多過ぎると感じている。

 さて、そんな中で以下のこれは光った。17日のネットで、スポルティーバのインタビュー記事である。聞き取った記者の力もあるのだろう。 ブラジル敗戦の苦い教訓をちゃんと踏まえた質問をしたからこそ、岡崎からこんな言葉が引き出せたという内容だと愚考した。

 ところで、ちかごろ名ライター・木崎伸也の名を聞かないが、愚か者らにバッシングでもされたのだろうか。 

『「僕は『つなぎたい』とか、『速く攻めたい』という議論自体がおかしいと思っている。後ろからつないでいくサッカーを、『世界を相手にしたときにやれるか?』といったら、まったく別問題だと思う。ただ、その融合というか。ある程度つないでから、縦に速いサッカーをする。そういうふうに融合していかないと、世界では勝てないと思う。この状況で監督が交代したなら、『どんなスタイルで行くか?』っていう次元の話じゃない。
 まずは監督が選手を選び、その選手の特徴をチームに当てはめて、力を出し切らせるところで世界と戦っていく。そういう意味では、ハリルさんがやってきたことも無駄じゃない。むしろ、ハリルさんの時期は、今までの概念を破壊してくれるという意味で、すごく大きかった
 今までやってきたことは、間違いなく無駄ではない。勝つためには守る時間も必要だし、守った後に速く攻めることも大事だと思う。そして、たまにボールをつながないと、早く攻める時間帯も出てこない

『「『ただ蹴る』『ただつなぐ』という議論はもう遅れているかなと。『すべてをやる』というわけではないけど、タイミングとか、そういうものもプランを緻密に練るというか。
 極端なことを言えば、最初の45分や65分は、ほんとに守って、ラストの20~30分で1点を獲りにいくとか。そういう進め方もあるかもしれない。『W杯は別モノ』と考えるべきだと思うんですよね。あそこには魔物がいると思う。自分たちの理想を掲げても、それをさせてもらえない何かがあるので。
 あとは、結果が出るかどうかは、もう自信の部分だと思う。代表に選ばれた選手は、チームとして『結果を出しにいく』と信じて戦うべき。誰が選ばれるかわからないし、選ぶ側も難しいと思うんですけど。でも、むしろ今は全員にチャンスがあると思う。
 そして、選ばれた人間は、同じ方向を向いてサッカーをするしかない。日本もブラジルW杯で反省した部分がある。つなぎたいというより、みんな勝ちたいと思うので。だから、『勝つために何をしていくのか』になると思います。どんな状況にしろ、勝つことに全力を尽くす』
コメント (3)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

右翼政治思想のある偏見   文科系

2018年04月17日 08時59分19秒 | 国内政治・経済・社会問題
 これは、昨日のエントリ-「僕の9条堅持論」の補足にあたる文章であり、2015年にある所に書いたもの。右翼思想、その国家論の本質の一つと観るに至ったものです。しかも、こういう偏見を持っている人には、この論議の決着を経ないと他のどんな政治話をやっても入っていかないような論理的な壁になっているもの、とも。さしずめ安倍首相や日本会議議員などは、みな以下のように考えていると観てきた、そんな偏見だと考えています。
 ちなみに、日本でこういう思想を初めて体系化して語ったのは、明治期の東大総長、加藤弘之。戦前の天皇制国家論の理論的な柱の一つでした。では・・・


 あるブログの共同運営を大学時代からの友人に頼まれてかっきり十年やってきたが、そこでいろんなネット右翼諸氏とやりあってきた。ブログ名称に「憲法九条」が入っているゆえなのだろうが、こういう方々の訪問が絶えなかったからだ。たとえば、
『平和を願い、母国を愛する一未成年から反論させていただきたい。…………以上、反論があれば随時丁重にお返しさせていただく故、フェアに品のある議論を望む』
 これは「平成の侍」と名乗られたお方がこの八月十九日に僕の文章に寄せてきた長文コメントの前後だが、たった一回僕が出した回答に対して、もうお返事が何もなかった。僕の文章内容が彼が考えたこともないようなものだったから再回答のしようがなかったのであろうが、はてこれは「フェアに品のある議論」であったのかどうか、難しいところだ。
 こんなふうに知識も思考力も様々な方々を相手にしたこの十年、実に多領域の勉強をさせられたし、いろいろ考えさせられつつ今日まで来た。慰安婦問題は明治維新以降百年の日朝関係史学習にまで拡がっていったし、南京虐殺や「連合国史観」は「アジア・太平洋戦争史」の復習に繋がった。こちらが学んでいくごとに「これだけ稚拙な知識しかない相手が、どうしてこれだけ自信ありげに頑張れるのだろうか」と気付き始めた。その度に訝り、考え込んで来たのがこのこと。これだけ確信ありげに語るのは、世界も狭いからというだけではなく、自分を納得させ、確信させる信念を何か持っているからだろうが、それって何なんだろうかと。これらすべてにおいて、同じ人間という生き物に、どうしてこれだけ見解の相違が生じるのだろうかと、そんな哲学的問題意識をも温めつつ、相手の言い分を観察してきた。
 そこで最近になってようやく気付いたのが、これだ。

 米国は実体経済がIT産業ぐらいしかない。サービス業ばかりで、相対的貧困者と格差が大問題になっている先進国である。サブプライムバブルや九年にも及ぶ紙幣大増刷・官製バブルなどなどマネーゲームで儲けて、日本やBRICS諸国相手の現物貿易収支大赤字をその分カバーしている。がこの国、戦争が流行ればその苦手な現物経済もなかなかの物なのである。兵器産業でいえば世界ダントツの実力があるからだ。貧乏な国、地域には、本来廃棄すべき多量の中古品などの廃棄料が収入に転化する。日本や石油成金国などには第一級の高価な最新兵器などなど。世界のどこかで戦乱が起こるほどにこの商売はいつも大繁盛だ。

 ところで、戦争は無くならないと語る人は当然、こう語る。「国が滅びないように、国土防衛が国として最大の仕事」。こういう人々が世界に増えるほど、貿易大赤字国の米国は助かる。いや、助かるという地点を越えて、今の米国は「テロとの戦い」とか、以前なら「共産主義との戦い」などなどを世界戦略としているからこそ、地球の裏側まで出かけていったりして、あちこちで戦争を起こしているのである。まるで、人間永遠に闘う存在だという世界観を広める如くに。失礼を承知で言うが、「人間必ず死ぬ。貴方も間もなく死ぬ」と大いに叫べば、葬式屋さんが儲かるようなものではないか。

 さて、戦争違法化が、二十世紀になって世界史上初めてその国際組織と法が生まれたりして着手されたが、地上から戦争はなくせるのだろうか。この問題で極めて簡単な正しい理屈が一つある。戦争はずっとなくならないと語る人は「その方向」で動いていると言えるのだし、なくせると思う人はそういう方向に「参加していく」のである。つまり、戦争が未来になくなるか否かという問題とは、人間にとって何か宿命的に決まっているようなものではなく、今及び将来の人間たちがこれをどうしようと考え、振る舞うだろうかという実践的な問題なのである。世界の政治課題というものは、人間が決めるものだと言い換えても良いだろう。ところが、人間が決めるものだというこの真理を意識せずして否定する以下のような「理論」に最も多く出会えたのだと理解してから、僕の頭はすっきりした。
 社会ダーウィニズムという今は誤りだとされた社会理論がある。その現代版亜流の世界観が存在するようだ。「動物は争うもの、人間もその国家も同じだろう。そうやって、生物は己自身を進化させてきたのであるから」。この理論で言えば夫婦ゲンカも国同士の戦争も同じ(本質の)ものになる。そして、夫婦ゲンカは永遠になくならないから、戦争もそうだろうと、大威張りで確信できるわけだ。
『動物の争いは永遠になくならないのだから、人間も永遠に争うものである』
『人間は争うものだから、国家の戦争も無くならない』
 これが、ネット右翼諸氏の世界と政治を観る無意識の出発点なのである。最近、そう気付いた。対案はこれしかない。「二十世紀には人類史上初めて戦争違法化に向けた国際法、国際組織も生まれたではないか」などの歴史的事実と戦争はなくせるという世界観とを広めていくこと。その実を例え少しずつでも、粘り強く作り広げていくこと。

 以上ありふれて見えるようなことを書いたが、正面からは案外批判されてこなかった誤った戦争に関わる信念が巷に溢れていると言いたい。この日本には特に広く。集団主義ムラ社会の中で激しい競争を演じてきた団塊世代以降では、自然に持つ世界観なのかも知れない。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

僕の九条堅持論   文科系

2018年04月16日 12時57分32秒 | 国内政治・経済・社会問題
 以下は、11年3月9日にここに載せた拙稿である。ざくろさんという右の人物と論争した直後に書いたものだ。ここの過去で最も勉強し、自分でもあれこれとよく考えて来られたと僕には思われた右の人物だったから、こんなことを改めてまとめてみて、応える気になったのだろう。以降、以下のこの文章はここに何度も載せている。それなのに昨日、右か左か知らないが変なコメントがあったので、僕の立場をはっきりさせるために再掲することにした。興味のあられる方は、ご笑覧、よろしく。


【 僕の九条堅持論 2011年03月09日

 ざくろさんという方が、ここでおかしな事を述べられた。
『原理原則から述べれば当然現行憲法は破棄されるべきものなんですけどね。』
 自衛隊という陸海空軍と憲法との矛盾について、これが、原理原則を本末転倒させた論議であるのは明らかだ。なし崩しに軍隊を作って、世界有数の規模と成し、強引に解釈改憲を通してきたやり方こそ、憲法という原理原則を踏みにじったと語るべきである。こんなことは、小学生でも分かる理屈だ。1国の憲法というものは本来、そういうものだと日々教えているはずだからである。
 あまつさえこの間に、この憲法を守ることが出来る世界作りを大国日本が率先して呼びかけ直す道も、「以下のように」あり得たのである。自衛隊を作る背景、原因にもなった冷戦体制が終わった時とか、サブプライムバブル弾けに端を発して100年単位ほどの世界大恐慌状態に落ち込んだ時とかに。そういう絶好の機会において、日本が国連でアメリカの投票機の役割しか果たしてこなかったのは、実に情けないことだ。なお、この恐慌は持ち直したという声があるがとんでもない暴論だと思う。世界にこれだけ失業者がいては、株が少々上がったところで、健全な経済状況などと言えるわけがないではないか。それが民主主義の観点というものであろう。
 

1 さて、古今東西、戦争の原因はどんどん変ってきて色々あり、一様ではない。よって「戦争を必然とする人間の本性」のようなものがあるとは、僕は考えない。 これが存在するから今後も戦争は永遠に少なくならないというようなことを語るとしたら、その論の正しさを先ず証明してからにして欲しい。こんな証明は論理的にも、現実的にも不可能なはずだから「攻めてくる国があるから対応を考えなければならない」という立論だけでは、全く不十分な議論である。特に長期スパンで戦争をなくしていく視点が欠けたそういう論議は、万人に対して説得力のあるものではないだろう。
 20世紀になって、第一次世界大戦の世界的惨状から以降、そして第二次世界大戦以降はもっと、戦争違法化の流れが急速に進んできた。この流れは、18世紀西欧に起こった「自由、平等、博愛」の声に示されるような「人の命は権利としては平等に大切である」という考え方が定着してきた結果でもあろう。つまり、民族平等や国家自決権なども含んだこういう流れが、後退や紆余曲折はあっても近現代史に確固として存在するのである。
 世界史のこんな流れの中からこそ、長年の努力でEUもできた。EUの形成は、それまでの世界的戦争の先頭に立ってきたような国々が、互いへの戦争などを放棄したということを示している。
 20世紀後半になって、大きな戦争は朝鮮、ベトナムなどで起こったが、あれは東西世界体制の冷戦に関わったもので、その対立はもう存在しない。それどころか、中国も資本主義体制に組み込まれた現在では、日本のような先進大国を攻めるというような行為は、中国も含めた世界経済をがたがたにするという世界史的汚名を被る覚悟が必要になったとも言える。今時の大国の誰が、こんなヒットラーのような無謀行為を敢えて犯すだろうか。

2 さて、こういう世界の流れを観るならば当然、自国への戦争に関わっても二つのスパンで物事を考えなければならないと思う。一つが、「当面、日本に攻めてくる国があるか。それに対してどうするのか」と言うスパン。今一つが、「戦争違法化の流れを全人類、子々孫々のために推し進めるべき各国の責任」というスパンであって、これは、近年新たに目立ってきた世界の貧困問題や食糧問題などを解決するためにも世界万民が望んでいることだろう。なお、この二つで前者しか論じない方々は、論証抜きの「戦争は永遠の現実」という独断のみに頑強に固執して、数々の人類の不幸を全く顧みないニヒリズムだと、断定したい
 以上のことは、世界の大国アメリカを観れば容易に分かることだ。アメリカは相対的貧困者や満足に医者にかかれない人々やが非常に多い「先進国」である。高校を卒業できない人が白人でも4人に1人であり、黒人やヒスパニックでは半分だ。現在の軍事費を何割かでも減らせれば、これらが救われる財政的条件が生まれる理屈だが、こんな当たり前のことが何故出来ないのか。ここの軍事費が何割か減ったら、攻めてくる国が出るというものでもなかろうに。だからこそ、今軍事費を減らそうとの視点を持たない「現実論」は、ニヒリズムだと呼ぶのである。 

3 まず上記の長期スパンであるが、こういう立場に日本が立ちたいと思う。
 先ず、国連には9条堅持と日本軍隊縮小方向を、代わりに『平和と貧困撲滅基金』というような形で毎年かなりのお金を国連に出していく方向を、改めて表明する。合わせて、こう表明する。
「軍隊を持たない方向を目指す代わりに、世界の『平和と貧困撲滅』に貢献したい。そういう大国が存在するのは世界と国連、人類の未来にとってこの上なく大きい意義があると考える。ついては代わりに以下の要求を万国、国連にさせて頂く。日本国憲法にある通りに、世界各国の平和を目指し貧困をなくすという希望と善意に信頼を置いてこういう決断を成すわけだから、以下の要求を国連に出す資格も当然あると考えている。
『日本に他国が攻めてくるということがないようにする努力を万国にもお願いしたい。また万万が一攻められるようなことがあった場合には、国連軍、国際的常設軍隊で即座に支援して頂くというそういう体制を至急お作り願いたい。国連をそうしたものにするべく、日本はその先頭に立ちたい』」 

4 九条堅持と、その実現のために、いやそれ以上に、世界の平和と貧困撲滅のために、3の遂行度合いに合わせて、自衛隊は縮小、廃止方向を取る。そのスパンも30年などと遠いものではなくしたい。
 なお、こういう構想は民主党小沢派、鳩山派などが持っている構想に近いものだと、僕は見ている。小沢派の「国連警察軍」などの構想は、これに近い発想、あるいはそうなっていかざるをえない発想なのではないかということだ。むしろ、米中等距離路線とともに国連常設的軍隊重視こそ、小沢がアメリカと親米派勢力に憎まれている理由だろうと考えてきた。また、このような案が大きく世に出てきた時には、共産党、社民党もこれに賛成せざるを得なくなるであろうとも予測する。つまり、以上の構想の現実的政治勢力、潜在勢力が現に大きく存在するということだ。
 ちなみに、国連自身の指揮下にある常設軍というならば、それに日本が参加してさえ、「国権の発動たる戦争」に関わる「陸海空軍その他の戦力」とは言えないだろう。また、フセインのクゥエート侵略があったり、アフリカのいくつかの国に同類のことが起こっている以上、かなり強力な国連常設軍が当面は必要だと思う。】
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

執拗なシリア攻撃は何故?   文科系

2018年04月15日 14時10分59秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)
 アメリカは何故小国・シリアへの攻撃にこれほどの年月をかけて執拗に拘ってきたのか。なんせシリアへの「攻撃」は、2011年のアラブの春以来ずっと続いてきた7年越しのものだ。名目通り「化学兵器攻撃などがひどすぎるから」ということなら、アラブの雄サウジの人権問題こそ日常的に続いてきた残酷で重大なものに思える。日常的に広場で公開斬首の刑が執行されている国である。その重罪犯の罪の中には、イスラム国流の宗教原理主義的判決も入っていよう。サウジはある意味、北朝鮮よりもひどい人権無視国に観てきた。このサウジがまた、シリアを大嫌いどころか、シリア反乱軍(反体制派)に金も人も武器も出して潰そうとしてきた。

 このアメリカの「こだわり」について結論を言わせていただくと、アラブに王制、貴族制を残したいということから、国民主権体制になったイスラム主要国を潰したいのではないか。そして、その事の動機は英米による原油支配なのではないか。イランとベネズエラを潰せば、原油の世界的独占価格が意のままになるというように。
 ちなみに、シェールガスを反論に上げられる向きもあろうが、まだまだ採掘費を含めた原価の問題が絡んでいる。それどころか、原油を現在のシェールガス並の値段にできれば、シェールガスそのものも売れていくはずなのだ。ちなみに、原油埋蔵量で言えば、ベネズエラとイランは、世界1位と4位である。他の上位10国は、ロシアを除いてはアメリカの意のままになる国ばかりである。このことは、イラクとリビアが潰されたことによって実現されたものだ。イラクもリビアも、原油によって得た資金が、王族のものではなくなった国である。つまり、リビアが潰れた「アラブの春」は、そんな狙いもあったのだろうと考えている。

 さて、アメリカのシリアへの執拗な攻撃を、今回のことで観てみよう。敵は本能寺なのであって、シリアを潰して裸にしたイランをこそ潰したいのだ。現に、今回のシリア攻撃についての米大統領声明にも、短い文の中に何度も何度もイランの名が出てくる。中日新聞の声明報道によれば、こんなふうに。
『アサド政権を支援しているイランとロシアには責任がある』
『うまくいけば、いつかロシアとの関係は良くなる。イランともそうなるかもしれないが、ならないかもしれない』
『中東の友好国やその他の国が関与を強めれば、ISの根絶によってイランが利益を得ることはないと保証できる』
 この文章からは、ロシア以上にイランが意識されていると誰しもが読むはずだ。トランプのロシア疑惑ではないが、ロシアとはそういう原油(独占価格)政策で話が付いているのかも知れないとさえ思った。

 石油独占価格体制が確立できれば、物貿易がすっかり落ち目のアメリカ経済にとっては、トランプが進行中の物貿易の保護主義以上に起死回生ということになるだろう。トランプ政権の下で今後手前勝手な物貿易の保護主義が進めば、この間貿易赤字を減らしてきたお得意の世界マネーゲーム搾取も報復的に制限され始めようから、アメリカには起死回生の渇望対象となっているはずなのだ。ちなみに、現在ここで内容紹介中の「炎と怒り」には、素人集団ばかりで出発したトランプ政権・政権移行チームに、ゴールドマンサックスと軍人がどんどん入ってきたという光景が繰り広げられている。


 日本でも歴史的にずっと体験してきたように、ガソリンの価格なんてあってないようなもの。日本が世界一高価すぎるように見える家屋建築関係費や、高速道路料金と同じである。

 なお、現在でさえ、イラン、ベネズエラの安い原油が世界に出回らないように、米英を中心にあらゆる画策が成されているはずだ。例えば日本のどこかの石油会社がベネズエラやイランから原油を輸入すると発表したら、米英を中心に世界が蜂の巣をつついたようになるだろう。アメリカの大金持ちたちは、目的のためには手段を選ばない。その目的が、バノン、ティーパーティーの新聞に大金を投ずることであっても、これをやる人々が居るのである。トランプを描いた「炎と怒り」を読んで、そんな認識こそますます強くなった。
コメント (11)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

シリア攻撃、どうしても解せぬ二つのこと  文科系

2018年04月14日 11時23分25秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)
 詳細はまだ分からないが、英米仏軍によるシリア攻撃が始まったようだ。今読んでいる「炎と怒り」の内容やそれ以前の諸情勢から、去年4月の米軍ミサイルによるシリア軍基地攻撃程度のものだとは推察するが、それでも大変なことである。

 国連も認めたれっきとした独立国への、英米仏軍そろった公然たる戦争行為である。しかも、イラク戦争理由が嘘だったと分かったり、これへの参戦に対してイギリス政府が重大な反省を表明するなどの最近の歴史から観たら、重大すぎることである。この戦争には二つの理由が挙げられ、世論工作されてきた。一つは「化学兵器使用」、もう一つは「東グータ地区」。後者は、最近喧伝されてきたものであって、マスコミでは常に「反体制派地区」と表現されてきた。これらの理由につき、二つながら「怪しげなもの」と観測できる。

「反体制派地区」? 兵器を装備したイスラム国やアルカイダがずっと潜んできて、サウジやアメリカに兵器を与えられ、訓練まで施されてきた「反体制派」? そういう勢力の自治区? これって、普通に言い換えればこういうことだろう。反乱軍とか、革命軍とか、そしてこの地区はそういう勢力が武力支配する自治区ということ。つまり反乱軍(革命軍)自治区である。そうであれば、政府がこれを制圧するのは、治安問題ということになってくる。それを「反体制派」と言い換えているのである。反体制派というと政治的用語だが、反体制派武装地区というと暴力支配用語になる。おかしくないか?

 次が「化学兵器使用」。これについて今日の新聞ではとうとう、こんな記事も載った。待望していた記事とも言える。中日新聞では6面国際欄に『政権側の化学兵器使用「でっち上げ」 反体制派疑念』。以下、ここから抜粋してみる。
『【ダマスカス=共同】シリア反体制派の人権団体幹部は十二日、共同通信に対し、首都ダマスカス近郊東グータ地区での化学兵器攻撃について「アサド政権に抵抗する反体制派への支持を結集するため、でっち上げられた」と主張し、政権側が使用したとの見方に強い疑念を表明した。・・・・幹部は昨年四月の北西部イドリブ県での化学兵器空爆と今回を比較。・・・今回は地下室に横たわる多数の遺体と、病院内で子供らが治療を受ける映像しかなく不自然だと指摘した』

 シリア政府の化学兵器使用。今までの歴史で、国連調査がこれを認めた例は一例だけだったと記憶している。そして、それにも疑念が上げられていたと覚えている。そもそも、「証拠写真」も含めたほとんどのこういう情報の出所「シリア人権監視団??」(反体制派の救助組織と言って良い)そのものに、日本の専門学者も含めて国際的に疑惑が提出されてきた。英国に本部があって、反体制派しか救命しない救助組織? 反体制派地域における死者は全部政府軍が殺したと集計する人権監視組織? まるで、反体制派の野戦病院ではないか。こんな大々的な組織ならさぞかし費用がかかるだろう。その英国にある本部にこの費用がどこから出ているのか。
 トランプの最高ブレーンであったバノンの右翼新聞社に大金を投じる大金持ちが居るようなもので、米英の何人かの諸個人が助けているのか。それとも、サウジアラビヤなのか。そんなことは英米の分かっている人には有名な事柄のはずだ。分からないはずがないこのことを、僕は是非知りたいものだとずっと思ってきた。 
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

トランプという人間(11)「炎と怒り」の今⑤  文科系

2018年04月13日 09時49分52秒 | 文化一般、書評・マスコミ評など
 今回も閑話休題。この本のその後や結末に当たる重大な新聞記事二つが昨日載っていたから、その記事と本の内容とを照合してみたい。神が「炎と怒り」を示すような所業が、今尚続いているということである。

 一つは、「米下院議長が引退表明 ライアン氏 中間選挙 出馬せず」。
 これは以前の共和党副大統領候補にもなった人物で48歳とまだ若い。この本によると、こんな立場、人物ということになる。
『2016年春の時点でも、ライアンはなお共和党の候補者指名でトランプに対抗できる位置にあり、このころにはそうできる唯一の人物になっていた』
『だが、ライアン本人はもっとしたたかな計算をしていた。指名はトランプにとらせたうえで、本選で彼に歴史的な敗北を味わわせる。そうなれば当然、ティーパーティー=バノン=ブライトバード(バノンの新聞社)一派は一掃される。その後は誰の目にも明らかなリーダーとして自分が党を主導していく、というシナリオだ』
 こういう、初めはトランプを馬鹿にしていた人物が、当選後はトランプ政権に急接近。法案作りなどにも協力して来た。それが今、引退。トランプと違って非常なやり手だそうだから、家族支配などの政権内情を知って、もうやる気が失せてしまったのではないか。


 もう一つの記事の見出しは、こうだ。
『特別検察官の解任 「米大統領に権限」 報道官が見解』
 トランプのロシア疑惑に関わるニュースなのである。大統領選挙中からこれを調べていたコミーCIA長官を、トランプは首にしてしまった。この本に書いてあるその場面をご紹介すると、こうなる。
 この解任は、バノンを初めとして周囲のほとんどが反対したもの。それを押し切って一人で密かに決めて、解任通知書を自分のボディガードにFBI長官室に直接届けさせるという方法が採られた。通知書の最も肝心な部分には、こう書いてあったとのこと。
『これにて貴殿は解任、免職とする。本通知は即刻発効する』
 大統領首席補佐官らは、今後のことをすぐにこう考えたのだそうだ。
『「となると、次は特別検察官だ!」五時前にこれから何が起きるかを知らされたプリーバス(首席補佐官)は呆然とし、誰に聞かせるともなくそう言ったという』

 この歴史上なかったような暴挙以降の成り行きは、司法省が特別検察官を任命し、彼にロシア疑惑を捜査させることになる。事実として、後に司法省は、元FBI長官のロバート・モラーを任命したわけだ。

 さて、昨日の新聞記事は、こういうモラー検察官に対して「こうやれば首に出来るんだぞ!」とばかりに、トランプがわざわざ記者会見発表をさせたということなのだ。新聞記事中にはこんな一文があった。
『米CNNテレビは十日、トランプ氏がローゼンスタイン司法副長官の解任を検討していると報じた。トランプ氏はモラー氏を直接解任できないが、副長官を解任し、後任者にモラー氏解任を間接的に指示することは理論的には可能である』

 コミーと言い、モラーに対してと言い、法理念を無視して、その間を擦り抜けるような荒技ばかりが続いている。まさにトランプらしく、こんな所がネット右翼らに人気が高い理由なのだろう。
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

トランプという人間(10)「炎と怒り」、その「輪郭」 ④  文科系

2018年04月12日 19時07分00秒 | 文化一般、書評・マスコミ評など
 この500ページ近い本の内容を3回に渡って大急ぎで紹介してきてまだその途中であるが、今日は閑話休題として、この本の最も大きい輪郭、狙いに触れてみたい。そもそも200件の聞き取りを経て書いたと言われて、その内容はいわば激しい政争話だ。ついては、この争いの何を取り上げ何を落としたかという著者の立場の客観的概括がなければ、公平な読み方とは言えなくなる。本自身の中身としても「・・・という話だ」「・・・と誰それは述べていた」というある意味無責任な印象批判とも言える表現もかなりあることだし。

 さて、この輪郭、狙いを僕なりに客観的に推察すればこんな事があると読んだ。
① バノンのサイドの目で書いており、トランプの娘夫婦を批判する内容になっている。この内容なら、バノンの復帰すら形としてはまだ残っているという程度の内容だと読んだ。

② ということはつまり、こういうことだ。米大統領トランプ政治の1年が結局、娘夫婦とその周辺の財界人らによってこう動かされてきたという内容になっている。なお、行方も定まらぬ泡沫候補上がりのトランプ政権内の娘夫婦にどんどん近づいてきた人物には、こんな人々が居る。マスコミ人でFOXテレビのビル・マードック。ゴールドマン・サックスの現役社長だったゲイリー・コーンはトランプの経済閣僚になった。また、超高齢政治家ヘンリー・キッシンジャーも所々出てくる。

③ ①②を併せると、こういうことになる。ここに書かれた「全体像」が真実か否か、どれぐらい真実かなどは分からないとも。つまり、当然のことだが、「裁判になっても言い逃れできる程度の内容」ばかりだとも言えるのである。

 ちなみに、去年8月にバノンが大統領府を退いた瞬間に、こんな声明も発表されている。
『バノンが首席戦略官および上級顧問を辞任すると、古巣のブライトバート・ニュースは直ちに同年8月18日付でバノンが会長に復帰すると発表した。このときバノンはブルームバーグ・テレビに対して次のように話した。「自分はホワイトハウスを去り、トランプのために、トランプの敵との戦争を始める。その敵はキャピトルヒル(連邦議会)やメディアやアメリカの経済界にいる。」翌19日、トランプ大統領はツイッターに「バノンに感謝したい。彼は不正直なヒラリー・クリントンに対抗して立候補した私の運動に参加してくれた。それは素晴らしいことだった。Thanks S」と投稿した。』
(ウィキペディアから、文科系引用) 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

サッカー監督のお仕事 1970

2018年04月12日 04時18分59秒 | Weblog
サッカーの監督の仕事というのは、代表とクラブでかなり違う。
クラブの監督は、選手の育成、コンセプトの確立、戦術の作成が3本柱といってもいいだろう。クラブ監督のメリットとしては、常に選手と居るので戦術を落とし込む時間が十分にあること。試合と練習の繰り返しで徹底出来る。ミーティング時間も豊富にある。

一方、代表監督の仕事は、コンセプトの確立、選手のセレクト、戦術の作成が3本柱になるだろう。選手の育成は代表監督の仕事じゃない。選手と常に居るわけではないから。テストマッチ1回につき3日からせいぜい5日一緒に居ればいい方だから。そうすると重要なのは、限られた少ない時間でどうやって戦術を徹底出来るかがポイントになる。
設計図を上手く描けないとダメなのよ。
そもそも監督が自分の頭の中にあるコンセプトに基づいて選手をセレクトしているので設計図を上手く描ければ短時間でも戦術の落とし込みは可能になる。
但し、戦術が複雑なものになれば当然時間は掛かる。でも何処の代表見てもそこまで複雑な戦術ってのは実際ありませんが。

代表監督の最大の仕事はW杯に出場すること。そしてそこで好成績を残すことになる。

だったらW杯に出場決めたハリルを何故クビにするんだという声も当然あるだろう。
それにはアジアの状況を考えれば答えは自然に出る。W杯出場のアジア枠は幾つよ?
アジア全体で2ヵ国しか出場出来ないというのならば価値はある。しかしそうじゃない。4.5だよ。早い話が余程アホなことしなきゃ、日本、韓国、オーストラリア、イランの出場は約束されている。だから、この4ヵ国の代表監督の仕事はW杯出場を決めるよりも(勿論それはそれで重要なミッションだが)、本番で如何に好成績を残すチームを作れるかが重要な仕事になる。

そうすると、戦術の落とし込みが上手く出来ない監督はお払い箱になる。奇しくも今回、アジアからW杯出場決めた日本、韓国、オーストラリア、サウジの4ヵ国で監督更迭が起きた。この中でサウジ以外は更迭理由がほぼ同じ。
そんなサッカーやってたらロシアじゃ戦えないというもの。
オーストラリアに関しては、戦術の落とし込みは出来ていたがそもそもコンセプトが合って無いよと批判された。
韓国は、コンセプトはいいんだけど戦術になってないから試合にならん!というもの。
で、日本はコンセプトもおかしけりゃ戦術にもなってないという清々しい程の理由 笑

代表監督はクラブと違って選手との時間が無い分、ひとりで設計図を描く時間はたっぷりあるはずなんだけどね。
今回日本は、珍しい監督呼んじゃったな。
コメント (11)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

改予選リーグ予想 1970

2018年04月11日 18時32分41秒 | Weblog
漸く監督が替わりましたので予選リーグ予想も改めてw

①コロンビア戦
0-2or1-3負け
ま、監督交代したから急に勝てるほどコロンビアは甘くない。但しハリルのチームよりはボールを持てるようにはなる。それでもキープ率4割位か。西野監督が中盤に誰を入れるかにもよるが間違いなくパサーを入れるからチャンスは作れる。これが今までとの大きな違いであり内容次第では次戦に期待は繋がる。
②セネガル戦
2-2or1-2△or負け
無茶なデュエルを避けアフリカンスタイルで戦わない日本に変われば得点も引き分けのチャンスは出てくる。速攻と遅攻のバランスを取りたい。セネガルも初戦のポーランド戦の結果次第では前半から飛ばしてくるので、そこで日本が上手く繋いで時間を使えば後半勝負に持ち込める。期待の一戦。
③ポーランド戦
分かりませんwww
互いにここまでの結果次第。万が一日本にも予選突破の可能性があるかもしれないので、その時の状況次第。日本の組織が予想以上に仕上がっていれば好ゲームになるだろう。

今の段階でまだどんなメンバーか分からない部分もあるが、西野監督のコメントで無いものねだりはしない。これまで日本が培ってきた部分で勝負するとあったので、中盤、或いはFWで起用されそうな乾に予選3試合の活躍を期待したい。
海外組の中では最高のタレントだから。少なくともパフォーマンスが安定しない原口よりは攻撃面ではるかに期待出来る。それと怪我の不安もあるがSHには大島を使って欲しいんだな。守備でも攻撃でも水準以上のプレーで計算出来る。攻撃だけでは中島も悪くないが、ウクライナ戦マリ戦での短い出場時間にも関わらず守備での無茶な特攻繰り返すのを見ると(ポルトガルでも同じことやってるんだけどw)、中島は試合頭からはとてもじゃないが使えないので、大島に期待したい。そうすればCB吉田から大島、そこからMF、SB、FWと攻撃がスムーズになる。長谷部や山口ではとてもじゃないが無理。
こういう形が出来ればハリルのチームよりははるかに内容のある試合を本番で見せることは出来るだろう。
とにかく期待してるよ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

トランプという人間(9)「炎と怒り」から③  文科系

2018年04月11日 11時25分25秒 | 文化一般、書評・マスコミ評など
 前回の最後に書いたのが、「(政権首脳の)組織図とブレーン3人」。今回はこの続きとして、彼らの力関係の在り様、その流動と結果ということになる。以下の場面は、政権発足後わずか2か月あまりでバノンが凋落していくまでのことだ。トランプ大統領誕生の最大功労者にして、政権の主席戦略官が、わずか2か月で実質解任! そのちょっと前に、ホワイトハウ内幕についてこんな文書が流れていたが、大統領に次ぐ権限を持った人物が、責任を取らされたというかたちになるのだろう。
 この電子メールは、この本の著者も同意する内容と言える。

 政権内幕暴露メール

『四月には、当初は十数人に送信された電子メールがどんどん転送され、かなり広範囲に広まってしまった。その内容は、ゲーリー・コーンの見解を評しているとされ、ホワイトハウスのスタッフが感じた衝撃を簡潔に表現している。メールの文面にはこうある。
 想像も及ばないほどひどい。まるで道化師に囲まれた愚か者だ。トランプはたった一枚のメモも、短い政策文書も、何一つ読もうとしない。世界各国の首脳との会談でも、退屈だからといって途中で席を立つ。部下も同じようなものだ。クシュナーは赤ん坊が地位を与えられたようなもので、何一つ知らない。バノンは傲慢なひどい男で、それほどでもないのに頭がいいとうぬぼれている。トランプにいたっては、もはや人間というより不愉快な性格の寄せ集めだ。一年もすれば、家族以外、誰も残っていないだろう。この仕事は嫌いだが、トランプの行動を知っているのは私だけだから、辞めるわけにもいかない。欠員が非常に多いのは、馬鹿げた“適性試験”に合格した人しか採用しないからだ。日の目を見ることのない中堅レベルの政策策定業務のポストですら、そんなことをしている。絶えずショックと恐怖にさらされる毎日だ』(P300~301)

 ここに言うコーンとは、現役のゴールドマンサックス社長だった人物。ニューヨーク財界人をバックに抱え始めた娘婿クシュナーが、大統領経済補佐官としてを引き抜いてきたお人だ。クシュナー自身は、ユダヤ人で億万長者の御曹司で民主党支持者。メディア王として知られるルパート・マードックも彼のブレーンになっていた。
 こうして、大統領府内の実権が、バノンや、プリーバスが代表した共和党中枢部から、クシュナー・ニューヨーク財界主流へと移っていく流れができたのである。

 バノンの凋落
 
 トランプ政権発足直後の乱暴すぎるような新移民政策は、バノンの力が示された。が、次のオバマケア問題が、バノンの最初のつまずきだったと述べられた後、こんな展開になっていく。折りしも、4月4日午前中に、シリアでの化学兵器攻撃に関する情報が、ホワイトハウスに集まってきた。
『バラク・オバマは、シリアの化学兵器攻撃に直面しても行動を起こさなかったが、いまなら行動を起こせる。限定的な対応になるだろうから、マイナスの影響はあまりない。それに、事実上アサドを支援しているロシアに対抗しているように見え、国内での受けもいいはずだ。
 当時、ホワイトハウス内での影響力が最低レベルにまで下降し、辞任は時間の問題だと多くの人から思われていたバノンは、軍事的対応に反対した唯一の人間だった』(P306)

 こういう事実が最後のきっかけとなって、シリア政府軍の攻撃の翌日、バノンを国家安全保障会議から外すと発表されたのである。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

トランプという人間(8)「炎と怒り」から②  文科系

2018年04月10日 16時28分56秒 | 文化一般、書評・マスコミ評など
 トランプ(大統領府)の内幕を暴露した「炎と怒り」、2回目の紹介である。先回は、「当選が分かった時のトランプの七変化」、「トランプの会議の進み方」、「トランプの性格」の三つを書いたが、今回は以下を紹介したい。「続、トランプの性格」、「就任演説」、「組織図とブレーン3人」。ここまでで、この本の4割ほどの紹介になるはずだ。

「続、トランプの性格」

『バノン(選挙戦中盤以降大統領府に至ってからも、トランプ最高位のブレーンだった人物。大統領府では、主席戦略官、上級顧問)はトランプを、ごく単純な機械にたとえた。スイッチオンのときはお世辞だらけ、オフの時は中傷だらけ。卑屈で歯の浮くようなお世辞があふれるように口から出てくる──何々は最高だった、驚くべきことだ、文句のつけようがない、歴史に残る、等々。一方の中傷は怒りと不満と恨みに満ち、拒絶や疎外を感じさせる。
 これは、トランプ式経営術のコツでもあった。見込みのありそうな顧客候補はとにかく褒めそやす。だが、相手が顧客になる可能性が消えたとたん、屈辱や訴訟を雨のように降らせる。押してもだめなら引いてみよ。バノンはこう思っていた──トランプを簡単にオンにもオフにもできる』(P68)

『ホワイトハウスで、トランプは自分の寝室に閉じこもっていた。・・・・トランプは入居初日に、すでに部屋に備えられた一台に加えて、さらに二台のテレビを注文した。ドアに鍵を付けさせ、緊急時に部屋に入れないと困ると言い張るシークレットサービスと小競り合いを起こしたりもした。・・・スティーブ・バノンと夕方六時半のディナーをともにしない日は、その時間にはもうベッドに寝転がって、チーズバーガー片手に三台のテレビを観ながら何人かの友人に電話をかける。電話は彼にとって、世界とつながる真の接点なのである』(P148)
 なお、上記のような三台のテレビと頻繁な電話がトランプの学習、情報収集手段なのだが、以上以外で彼が本を読むという習慣は皆無だと紹介される。一冊の本さえまともに読み通したことはない人物と書かれていただけでなく、本書の中には、こんな下りさえあった。
『ミスタートランプは、オバマのスピーチなど一度たりとも最後まで聴いたことがないとおっしゃっています』

「就任演説」

 就任式演説内容は、こんな風に描かれている。
これはほとんどバノンが文章化したものである。因みにこの本の著者は、トランプはまともに構成された文章など書けないと観ている。
『これらのメッセージは、トランプの好戦的な”カウンターパンチャー”としての側面には響いたが、もう一方の”愛されたがり”の側面には受け入れがたいものでもあった。トランプに内在するこの二つの衝動を、バノンはうまくコントロールできていると自負していた。前者を強調し、ここで敵をつくることはよそで仲間を増やすことにもつながると説得したのである』
 こういう演説への、ご本人とある有名人物一人との評価を観ておこう。
『このスピーチはあらゆる人の記憶に残るだろう』
『一方、貴賓席にいたジョージ・W・ブッシュは、トランプの就任演説に対して歴史に残るであろうコメントをした。「クソみたいなスピーチだったな」』 

「組織図とブレーン3人」

 従来の政治集団が何もないままに思いもよらず当選したこの大統領陣営には、組織とか、組織を作る人々というのがほとんど欠如している。父から譲られた会社が上手く行っただけのトランプも同じ事だ。そこにあったのは混乱のみだが、その混乱の中から選挙にも貢献した3人の人物が浮かび上がってくる。以下は、そういう様子に関わることだ。
『トランプ率いる組織ほど、軍隊式の組織から遠い存在はそうあるまい。そこには事実上、上下の指揮系統など存在しなかった。あるのは、一人のトップと彼の注意を引こうと奔走するその他全員、という図式のみだ。各人の任務が明確でなく、場当たり的な対処しか行われない。ボスが注目したものに、全員が目を向ける。・・・・大統領執務室はあっという間に、トランプの側近が日々入り乱れる喧噪の場に変わってしまった。大統領のそばに近づける人間がここまで多いのは、歴代政権を見わたしてもトランプ政権くらいだろう。執務室で大統領を交えて会議をしていると、ほぼいつも大勢の側近が周囲をうろつき、何かと割り込んでくる。事実、側近の誰もが、どんな会議にも必ず居合わせようとしていた。彼らははっきりした目的もないのに室内をこそこそと動き回るのがつねだった。バノンはいつも何かしら理由をつけては執務室の隅で書類をチェックしつつ、会議の決定権を握ろうとした。プリーバスはそんなバノンに監視の目を光らせ、クシュナーは他の側近の居場所をつねにチェックする。』
『トランプがジェームズ・マティスやH・R・マクマスター、ジョン・ケリーといった誉れ高い軍人(それぞれ、元海兵隊大将。元陸軍中将。元海兵隊大将。国防長官、安全保障補佐官などになった)にへつらうことの皮肉。そのほんの一端が、そこには表れている。彼らは、基本的な指揮原則をあらゆる面で害するような政権のもとで働く羽目になったのだから』

 なお、上で述べられた政権当初の頭脳、バノン、プリーバス、クシュナーについて、紹介しておこう
 バノンは、超右翼団体の、いわゆるボストンティーパーティーから台頭してきたジャーナリストで、大統領主席戦略官、上級顧問。プリーバスは、共和党全国委員長を経てトランプ当選に貢献し、大統領首席補佐官。この首席補佐官という地位は、内閣総理大臣にも当たるものだ。そして、トランプの娘婿、クシュナーは、大統領上級顧問である。
 なお、このうち、バノンは後に辞任して政権から離れるし、プリーバスに至っては解任されている。この辞任、解任続きというのはこの政権で有名な出来事だが、広報部長などはこの本が出た時点ですでに3回も交代させられている。それぞれ、辞任、辞任、解任ということだ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする