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「100年に1度の危機」とは何だったのか(5)  文科系

2016年11月30日 10時05分50秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)
 (「第2章 金融グローバリゼーションの破綻」の)
 第2節 「100年に1度の経済危機」

 サブプライムローン組み込み証券問題が、誰の目にも明らかになったのは08年春のベア・スターンズ破綻だろう。ここが、アメリカ5大投資銀行のひとつだからだ。が、ここに至る徴候は既に1年以上前から現れていた。06年12月にはサブプライムローンを手がけていた米中小ローンの経営破綻が相次いでいたのだし、07年3月13日住宅ローン大手のニューセンチュリー・フィナンシャルが上場廃止になった。6月22日には、ベア・スターンズが傘下ヘッジファンド2社の救済に奔走したが果たせないという事件が起こった。
 そして08年9月15日に、5大投資銀行の第3位リーマン・ブラザースが破綻すると、その同じ日に、第4位のメリル・リンチをバンク・オブ・アメリカが買収すると発表された。翌16日には、AIGの倒産があった。アメリカ最大の保険会社であり、CDSなど金融商品の保険だけを扱ってきた会社であって、政府等が即座に8000億ドルの融資枠を設定したものだ。ただしこの額は1ヶ月で使い切ってしまい、以降も追加支援に走らざるを得なくなる。そして、これらの結末。1、2位の投資銀行も9月21日に銀行持ち株会社に転換するにいたった。ゴールドマンとモルガンがそれぞれの銀行に吸収されたのである。

 東洋経済新報社の「現代世界経済をとらえる VER5」では、5大投資銀行の破綻の後をこう書いている。
『リーマン・ブラザース破綻の翌日、保険最大手のAIGがアメリカ政府管理に置かれ救済されたのは、あまりにも膨大なCDSの破壊的影響への危惧からであった。一世を風靡したアメリカ型投資銀行ビジネスモデルの終焉が語られているが、健全に規制された金融モデルへの移行か、巻き返しのための変身なのか、ウォール街の戦略、西欧金融機関との競争を含めて、注視していく必要がある』
 政府に補償してもらって、「巻き返しのための変身」?新自由主義者たちが非難してきた社会主義政策だ!
 こういうものが爆発して、さて世界はどうなったか。前掲書「金融が乗っ取る世界経済」には、こう描かれている。約1000兆円の資産が世界から消え、どこが負債を抱えているかに相互不信に陥って、大不況が続いてきたと。そして、この後遺症は今はどうなっているのか。こんな重大なものが、数学者・藤原正彦氏も述べてきたように必ず大破綻すると証明されたも同様のそれが現実に破綻した時(第1章第2節の最後の引用を参照)、マスコミで世界的追跡調査や反省などが正しくなされたようには到底見えないのである。ネズミ講的自転車操業が途絶えたことによって世界無数のサブプライム家庭を殺した投資銀行幹部たちは、個人資産を速逃げさせたはず。対するに、たった一軒のローンが払えなくなった人々はその人生を殺されたにも等しいのである。

 第3節 破綻の構造

「100年に1度の危機」という破綻は、10年近く経った今初めて、その内容、特質が一定分かってくるもの。何よりも世界10大銀行の移り変わりにこれが現れる。2010年と今とで、世界の10大銀行国籍がこう入れ替わった。英3米2の合わせて5行から各1の2行へと減った分、中国が0から3・5へと増えた。他は、フランス、日本の各2ほどと、ドイツの1行と、はほぼ変わらない。つまり、この数の順番で国に金があるということだろう。こういった金がおこなう世界一般企業支配やデリバティブによる世界小金持ちからの搾取も、英米の現状を見れば既に限界と観るべきだろう。没落しつつある大国が金融によって対外収支を強引に改善しようと足掻いて来ただけとも見うるのである。その結末が、世界的な中産階級没落、失業者・不安定労働者の激増というその上に、世界の小金を奪い取って長期デフレを招いたというのでは、世界の人々の幸せを攪乱しただけと言える。現行株価などは、世界的なマイナス金利や公的資金投入で懸命に支え上げているに過ぎず、マネーゲームに費やされる莫大な金融資産に呼応する有効需要など、世界のどこにも見られなくなってしまった。であるならば、今の世界経済体制では、職などは増えようがないということだ。「資本主義は終わった」というマクロ経済学者が増えているのは、こういう事情からなのである。


(あと2回ほど続く)
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「よたよたランナーの手記」(177) 大変、ぎっくり腰   文科系

2016年11月30日 09時43分10秒 | スポーツ
 大変! ぎっくり腰になってしまった。先週木曜日のことだ。よって、22日火曜日からあと走れていない。
 30歳前の昔に、椎間板ヘルニアの手術をした左脚付け根の腰椎部分だ。この手術をして、以来周辺の痛みの再発が大小合わせて時々あったのだが、よりによってこの大切な時期に。しかも、治療薬の女性ホルモン剤によって脂肪が増えたからなのだろうが、食欲旺盛で体重が過去最大に増加中と来た。多分この急な体重増が、今回のぎっくり腰の原因なのだ。

 これから1月初めまで前立腺癌に対する陽子線治療を通いで受けてその後まで、走れる身体をどう維持していくか。75歳半の身には大変なことに思える。下手をすればもう走れなくなるし、そうしたら意図したようには活動年齢を延ばせなくなる。
 日曜日辺りから心も細々とリハビリも兼ねて、腰や下半身のストレッチと爪先立ちなど脚筋強化とをやっている。運動が急減した高齢身体には柔軟性維持こそ大切だろうと目論んで。

 (ここまでは朝、以降は、夕方に書いている)

 そして同じ29日午後、中6日置いた1週間ぶりのランを決意した。「走ってもなんとか・・・・」との自分なりの腰痛リハビリ感触があったとは言え、ぎっくり腰発生の24日から5日目のことなのだ。ちょっとでも異常を感じたら止めようとしっかり言い聞かせて、おそるおそる時速6キロで歩き始めた。これを無事15分。なんとか「大丈夫」との感触から、6・5キロ時に上げて歩く。それを5分から、速度はそのままでおっかなびっくりで走り始める。何にも起こらなかった! それで7キロ時に上げてさらに少しずつスピードアップして、30分で合計3・3キロ。次の30分も同じようにやって、何とか3・5キロ。合計6・8キロで1時間を終えた。歩くスピードと変わらないが、身体が無事だったことが嬉しかったこと! 心配も安心もひっくるめて、「生きている!」とさえ感じたものだった。

 這って歩くようなぎっくり腰から5日で生還って、まだ身体は案外若いのかも知れない。そう思えたら、これから連日少しずつの陽子線照射治療も上手く進むと思えて来た。1日で陽子線を照射された一部分にあるがん細胞が死に、その1日で健康な照射細胞が回復する度合いに、この治療効果が左右されると聞いているから。
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「100年に1度の危機」とは何だったのか(4) 文科系

2016年11月29日 03時16分32秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)
 第2章 金融グローバリぜーションの破綻

 第1節 金融が世界を乗っ取った

①その一般企業支配
 新自由主義グローバリゼーションが各国通貨から空売り搾取を行ったやり方を、タイ通貨危機からアジア通貨危機を例にとって、前節で見た。世界的な金融競争こそ経済発展の原動力とする米英など先進国の新たな新自由主義経済の主らとは、投資銀行、銀行、ファンドなどである。彼らによる金融中心経済のやり方を眺めておく。
 まず、株の売買については、余剰資産売却・吸い上げ型と、リストラによる収益型とがある。前者は、土地など大きな「余剰」資産を所有する会社の筆頭株主になり、その資産を売り払って株価を大幅に吊り上げてこれを売り抜く。もう一つはやや長期に渡って筆頭株主になり、リストラ・合理化に励んで株価をつり上げて売り抜く。
 こんなやり方で米企業を金融が買い占めていった経過を、ある本から要約してみよう。ドナルド・ドーア著「金融が乗っ取る世界経済 21世紀の憂鬱」(中公新書 2012年6月第5版)
 機関投資家の上場企業株式所有シェアがどんどん増えて、1960年アメリカで12%だったこのシェアが、90年には45%、05年61%と。次いで、企業から「金融市場への支払い」が、その「利益+減価償却」費用とされたキャッシュ・フロー全体に占める割合が急増する。アメリカを例に取ると、1960年代前半がこの平均20%、70年代は30%、1984年以降は特に加速して1990年には75%に至ったとあった。

②デリバティブ、金融派生商品
 次に、種々の金融派生商品の発明、売買というやり方がある。デリバティブという近ごろよく聞く言葉がこれだ。その大元の原理に触れておきたい。
 消費者ローンでも住宅ローンでも、借用証書がある。これは、借りた方が貸した方に出す証明書。これを債券として出すのが社債や国債。一定利子が付くのは同じだが、こちらはお金同様の意味を持ち、売買も可能なもの。
 そしてさて、この社債などと同じ考え方で、種々のローンの貸し主が借用証書(債権)を証券化したものが金融派生商品の元である。焦げ付きなどの危険が高い借金から出来た高リスク証券とか、低リスク証券でも元のローン返済が急に怪しげになったりしたら、利子を高くしなければ売れない。そこで最大問題は、このこと。高リスク商品は当然売りにくいが、首尾良く売れるようにできれば、凄い儲けになる。全米抜群の優秀な頭脳を超高級で雇って、高リスク商品を売るために「高リスク高リターン商品」をあれこれと考え出していくことになった。

③サブプライムローン組込証券
 この証券化商品というのはまた、色々に分割して組み合わせることができる。これは、1銘柄の株を買うのではなく、投資信託を買うようなものと言えばよいだろう。とにかく、様々な負債を組み合わせるのだが、そこに高リスク債券を巧みに切り分けてもぐり込ませていく。貯金ゼロの低所得者に売りつけた住宅ローンからできたサブプライム・ローンの債券でも、これに安全な債券を組み合わせれば信用が「保証された」証券ができあがるという理屈だ。「高リスク貸し金を低リスクと混ぜて貸し手を増やして、お金が貸せなかった貧乏な人にも貸し出せるようにした、夢の商品!」なのである。リーマンショックの前のサブプライム・バブル期には、これが爆発的に売れた。ネズミ講同様大いに売れている間は自転車操業的資金繰りに困るどころか、大いに儲けも上がったのである。「偽の信用がどんどん膨らんでいった」のだが、その急成長中に偽だとは誰も振る舞っていないから問題なのだ。

④CDS
 こんなサブプライム・ローン組込証券に格付け会社によって破綻直前までトリプルAの信用が付いていた。それにはこんな保険商品も懸けられていて、これが大宣伝されたことが関わっている。クレディット・デフォルト・スワップ(CDS)と呼ばれた保険商品である。
『企業ばかりではない。国家もそうである。ギリシャの金融危機が深刻化したのはギリシャ国債の空売りに加えて、新契約の裸のCDSの掛け金がどんどん上がってギリシャ政府が発行する新国債の利子率が急騰したためである。ドイツなどはその裸のCDSの取引を禁じているのだが、そういう取引を歓迎する金融センターが世界中にたくさん残っている』(前掲書「金融が乗っ取る世界経済」)  
『保険法だったら、隣の家に黙ってその家に火災保険をかけることは禁じられている。全く当然だ。放火罪奨励はとんでもないことだからである。しかし社債のCDSの場合、国によっては、そのとんでもないことがまかり通る』(同上書)
 この「裸のCDS」ゆえにこんなことが起こる。A社の社債を持っていない人がこの社債に莫大な保険を掛け、安い掛け金のA社債を無数に買い集め始める。すると、その会社を潰すことになっていくのである。安い掛け率の保険が買い占められたら、新たな社債を発行しようにも利子率が高くないと誰もこれを買ってくれない。よってこの会社はもう、会社存続のための新たな借金もできなくなる理屈だ。CDSを「大量破壊兵器」と語ったのが、有名な投資家ジョージ・ソロスだ。
『ゼネラル・モータースなどの倒産を考えよ。その社債の持ち主の多くにとって、GMの再編より、倒産した場合の儲けの方が大きかった。人の生命がかかった保険の持ち主に、同時にその人を打ちのめす免許を持たせるようなものだ』(前掲書)
「(会社再建よりも)打ちのめした方が儲かる」CDSの実際が、投資銀行リーマン・ブラザースの倒産でも示された。倒産時のリーマン社債発行残高は1559億ドル。その社債へのCDS発行銀行の債務総額は4000億ドルだった。

⑤金融は、国家さえ乗っ取る
 以下長く、岩波新書、進藤榮一著「アジア力の世紀」(2013年6月刊)を引用して、国際金融が諸国家、世界政治を動かすその凄まじいまでの大きさを示す。
『金融危機が海を越えて伝播する構造は、07年夏にフランス最大手銀行BNPパリバのローン凍結ショックが、米国サブプライム・ローン危機の発端となって、08年9月のリーマン・ショックにつながったことにも象徴される。
 BNPパリバは、傘下のファンドを通じて、米国金融機関の発行する低所得者向けサブプライム・ローンを大量に購入し、そのローンが支払不能に陥り、解約を凍結した。そのニュースが金融市場を駆け巡って市場は混乱し、08年9月15日、全米4位の投資銀行リーマンプラザーズ社が破綻、金融危機が勃発した。(中略)
 その間、欧州の金融機関が、米国製の証券化商品を大量に買い込んでいることが明らかになり、欧州金融機関の信認が揺らぎ始めたのだった。そして09年10月、ギリシャ政府の債務残高隠しの発覚をきっかけに、ユーロの信認が一挙に失われて、危機は欧州の大手金融機関に及んだ。
 EUは03年、ユーロ加盟の条件として、財政赤字がGDP比3%以内、政府債務残高がGDP比60%以内にあることを定めていた。ギリシャは、ユーロ圏に加盟するために、紛飾決算まがいの手法を使って、財政赤字も累積債務も実態より低く報告していたことが判明した。その報告書に、ゴールドマンサックス社が関与していた。かつて87年夏に始まるアジア通貨危機の陰で、米国のヘッジファンドが暗躍していたように、ギリシャ危機の背後に、米国のファンドと財務省が暗躍していると噂された。米国が金融危機回避のため、欧州に仕掛けた危機だとも、時に位置付けられる。 (中略)  
 米国発金融危機が、リーマン・ショックを経て欧州債務危機へと転形し拡大したのである。危機はギリシャからアイルランド、ポルトガル、スペイン、イタリアへ波及した。メディアはそれら諸国の頭文字を取って、豚を連想させる「PIIGS(ビッグス)」と呼び、EUとユーロの脆弱さを侮蔑気味に指摘して、EUの分裂・解体を予測した』

 このギリシャ危機をユーロ瓦解に繋げるべく、ここからさらにドイツマルクの空売りにまで折を見ては度々結びつけてきたゴールドマン、アメリカ財務省などの大仕掛け! その凄まじさには身震いが出る。そして著者は、この100年に1度のリーマンショックが、「1929年世界大恐慌から世界大戦へ」とならなかった今回の事情までをこう説明している。「大欧州」と「新興国市場」がショックアブソーバーとして働いたからだ、と。
 世界の有効需要創出こそ争いを協調に転化する最大の鍵とは、70年代までの政治経済運営理論であったケインズ経済学の焦点、苦闘したところ。現在世界のマクロ経済問題解決方向を深く考える最大のヒントがここにあると読むのは、この著者や僕だけではないはずだ。世界の賃金から小金や国家資金までを奪うことによって、世界の有効需要をとことん小さくしてきたのに、その分、物を作る供給の側を金融支配・その巨大化に任せることによって膨大にしたところに、現代世界の諸不幸の源があると考える。金融ギャンブル中心の世界とは、結局そういう暴力的世界なのだと。


(あと数回続きます。全体の目次と参考にした文献、と言うよりももっと絞って「ここに引用した文献」が「その1」にありますので、よろしく)
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「100年に1度の危機」とは何だったのか(3) 文科系

2016年11月28日 07時20分06秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)
 第3節 アジア通貨危機の発端、タイの例

『「投機家はタイに自己実現的通貨投機をしかけた。1ドル25バーツに事実上固定していたタイ・バーツが貿易収支の悪化から下落すると予想し、3か月後に25バーツでバーツを売りドルを時価で買う先物予約をすると同時に、直物でバーツを売り浴びせた。タイ中央銀行は外貨準備250億ドルのほとんどすべてを動員して通貨防衛を試みたが力尽きた。」(東洋経済「現代世界経済をとらえる VER5」』

 タイのこの問題に詳しい専門家による解説をご紹介しよう。なんせ通貨危機というのは、「1970年から2007年まで世界208カ国で起こり」(前掲書 伊藤正直「金融危機は再びやってくる」)、中小国家などからは「通貨戦争」とも呼ばれて恐れられてきたもの。中でもこのタイ通貨危機は、97年の東アジア通貨危機の発端・震源地になった事件として重要なものだ。毛利良一著「グローバリゼーションとIMF・世界銀行」(大月書店2002年刊)から抜粋する。

『通貨危機の震源地となったタイについて、背景と投機の仕組みを少しみておこう。タイでは、すでに述べたように経常取引と資本取引の自由化、金融市場の開放が進んでいた。主要産業の参入障壁の撤廃は未曾有の設備投資競争をもたらし、石油化学、鉄鋼、自動車などで日米欧間の企業間競争がタイに持ち込まれた。バンコク・オフショアセンターは、46銀行に営業を認可し、国内金融セクターが外貨建て短期資金を取り入れる重要経路となり、邦銀を中心に銀行間の貸し込み競争を激化させて不動産・株式市場への資金流入を促進し、バブルを醸成した。(中略) 投機筋は、まずタイ・バーツに仕掛け、つぎつぎとアセアン諸国の通貨管理を破綻させ、競争的切り下げに追い込み、巨大な利益を上げたのだが、その手口はこうだ。(中略) 1ドル25バーツから30バーツへの下落というバーツ安のシナリオを予想し、3ヶ月や半年後の決済時点に1ドル25バーツ近傍でバーツを売り、ドルを買う先物予約をする。バーツ売りを開始すると市場は投機家の思惑に左右され、その思惑が新たな市場トレンドを形成していく。決算時点で30バーツに下落したバーツを現物市場で調達し、安いバーツとドルを交換すれば、莫大な為替収益が得られる』

 分かりやすく説明するとこういうことだ。
 1ドルがタイ通貨25バーツの時点で、3か月後に1ドル25バーツでドルを大量に買う先物予約をしておく。その上で、バーツを一挙に、どんどん売り始める。そこには、予め同業者などから大量に借りる契約がしてあったバーツなども大量に含まれている。自分が所有していない債券、商品などを売る行為を空売りと呼ぶが、これらの結果、3か月後1ドル30バーツになって起こることを、例示してみよう。1億ドルで30億と安くなったバーツを普通に買ってから、先述の先物予約を行使してこのバーツでドルを買えば1億2千万ドルに換えられる。また、普通は不安になるこんな「大商いへの確信」も、世界大金融には比較的容易なものだ。動かせるバーツとタイ政府の「防御体制(金額)」とを比較でき、そこから勝利の目処となる投入金額に目算も立つからである。

 上記毛利良一氏はこう続けている。
『投機で儲けるグループの対極には、損失を被った多数の投資家や通貨当局が存在する。
 投機を仕掛けたのは、ヘッジファンドのほか、日本の銀行を含む世界の主要な金融機関と、・・・・機関投資家であった。また、1999年2月にスイスのジュネーブで開かれたヘッジファンドの世界大会に出席した投資家は、「世界中を見渡せば、過大評価されている市場がどこかにあります。そこが私たちのおもちゃになるのです」と、インタビューで語っている』

 なおこのアジア通貨危機理解に関わって、「内因説」「外因説」が存在する。後者は、世界経済フォーラム(ダボス会議)に対抗して開かれた世界社会フォーラムの主張が代表的だと、そう述べるのは前掲書「金融危機は再びやってくる」。またこのことについて、後にリーマンショックにかかわった「国連のスティグリッツ(を代表とした)報告」を出したこのノーベル経済学賞受賞者は、世界認識をちょっと変えている。初めは、単にこうだった。「バブルが自然にできて、それが自然に破れた」。それが後にはこうなった。「あの出来事は、自然なバブルが無くても起こった。国際資本寄りの世界機関対応が起こしたものだ」と。つまり、80年代に「ジャパン・アズ・ナンバーワン」を筆頭とした日本とともに世界で経済的に最も栄えたNICSの金が、タイ、韓国、台湾などを中心として、計画的に略奪されたのである。スティグリッツは、そう観直したわけである。こういうかってないような壮大な歴史的事件については、こう言い直した方がよいかも知れない。「結果としては、計画通りに」と。


(あと3回は続けます。なお、この論文全体の目次とこれに部分引用した文献が、26日第1回目に書いてあります。全3章、各3節全体の中でここがどういう位置を占めているかは、そこで観ていただけます)
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「100年に1度の危機」とは何だったのか(2) 文科系

2016年11月27日 07時20分31秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)
 第1章 金融グローバリゼーションの生成と発展

 第1節 その生成

 まず、金融グローバリゼーションの誕生経過だが、「ポスト戦後社会」から始めよう。この名称による時代区分は歴史学に基づき、70年代半ばを境とする。岩波新書「日本近現代史10巻シリーズ」の第9「ポスト戦後社会」(09年刊)によれば、こういう特徴で始まるとか、逆にこういう特徴をポスト戦後とするということだ。
「世界秩序」は、冷戦からポスト冷戦へ。「国家体制」は、福祉国家から新自由主義へ。最後に「歴史的潮流」は、高度経済成長からグローバリゼーションへと。以下の拙稿を70年代から始めるのも、そういう歴史学的時代区分を意識してのことだ。さて、そう狙いを定めた上で、以降40年ほどの世界経済の流れを概観しよう。

 71年にいわゆるニクソンショックが起こった。金本位体制を崩して、世界的に変動相場制へと移行した措置である。直後には対円などでドルが世界的に値下がりし、他方、73年原油価格暴騰が起こる。その直後に、戦後世界経済理論を最も騒がせたスタグフレーションという経済現象が強調された。「景気の停滞下で物価上昇が続く」、「物価上昇と失業率の上昇とは併存しない」などという当時までの世界政治経済理論・ケインズ経済学では説明できない現象と言われたものだ。つまり、ケインズ的経済学、政策の破綻というわけである。ここから、「自由競争に任せるのが最も合理的だ」という新自由主義経済運営として、有名な英国サッチャリズムが79年に、米国レーガノミックスは81年に始まっている。今顧みれば、新自由主義経済その後の隆盛が08年にリーマンショックという形で100年に一度どころではない大破綻を来したその出発点がここにあったわけだ。

 80年代は、「アジアの時代」とかジャパンマネーの時代というのが定説である。79年の経済協力開発機構(OECD)レポートで初めてアジアが注目され、以下10国が新興工業国「NICS」と呼ばれた。韓国、台湾、香港、シンガポール、ブラジル、メキシコ、スペイン、ポルトガル、ギリシャ、ユーゴスラビアである。80年代に入るとこのうち南欧や南米が落ちて、アジアNICSだけが急成長を続ける。上のアジア4国に続いて80年代後半からはタイ、マレーシア、インドネシアが仲間に入った。以上の80年代動向は同時に、アジア唯一の先進国・日本が「アメリカ」をも買いあさった「ジャパン・アズ・ナンバーワン」の時代とも重なる。

 第2節 民間資金の世界席巻と通貨危機

 90年前後に起こった社会主義国崩壊から以降、民間資金が各国に流入して、猛威をふるい始める。これまでの開発途上国などへの資金流入は社会主義国と張り合うように公的資金が主だったが、90年代はそれが急逆転していく。それにともなって各国に通貨危機が連続して発生する。94年メキシコ、97年東アジア、98年ロシア、99年ブラジル、01年にはトルコとアルゼンチンなどだ。いずれの国も、短期資金の突然の流出で資本収支の赤字から困窮しつくすという特徴を示した。ちなみに98年世界決済銀行(BIS)の43カ国調査にこんな数字がある。市場為替取引高は1日平均1・5兆ドルで年間500兆ドル。95~6年の年間世界貿易高5兆ドルの100倍、もの凄い数字だ。マネーゲームとか「カネがモノから離れ始めた」と指摘され始めた。

 1970年代初頭の金本位制、固定相場制崩壊以降、小さなバブルとその破裂は無数に起こっている。IMF(国際通貨基金)の08年調査によればこのように。
『1970年から2007年までの38年間に、208カ国で通貨危機が、124カ国で銀行危機が、63カ国で国家債務危機が発生しています。金融危機は、先進国、新興工業国、開発途上国を問わず、アジア、ヨーロッパ、南北アメリカ、アフリカを問わず起こっていたのです。これに対し、第二次大戦後1970年以前の時期には、国際金融危機や大規模な一国金融危機はほとんど発生していません』(12年刊 伊藤正直・東京大学大学院経済学研究科教授「金融危機は再びやってくる」)
 日本の銀行協会の会長さんが2011年にこんなことを語ったことがある。
「不景気で、どこに投資しても儲からないし、良い貸出先もない。だから必然、国債売買に走ることになる。今はこれで繋いでいくしかない状況である」。
 ギリシャなどの国家財政危機を作っているのは、普通の銀行なのである。こんな状況で円安・金融緩和に走っても実体経済や求人関連には悪影響しかなく、バブル形成に使われるだけなのだ。要は、それ以外の投資先そのものがないのである。

 また、08年のような史上かってなく大きなバブル崩壊について、必ず起こると予言もされてきた。マクロ経済学者からはもちろん、例えば、数学者である藤原正彦・お茶の水女子大学教授は「国家の品格」(06年4月第24刷)でこう予言していた。
『新聞等ではなぜかあまり騒がれておりませんが、このデリバティブ(金融派生商品と訳される)の残高が、国際決済銀行の発表によると2004年時点で1兆円の二万五千倍と言われています。二万五千兆円ですね。わずか三年前の残高の2・2倍です。ここ10年では25倍という恐るべき急増です。多分、京(きよう)だか京(けい)だか知りませんが、2京五千兆とでも言うのでしょう。(中略) 銀行やヘッジファンドはデリバティブの主役ですから、大規模デリバティブが一つでも破綻すると、その瞬間に資金の流れが止まり、連鎖的に決済不能に陥ります。(中略)いつ世界経済をメチャクチャにするのか、息をひそめて見守らねばならないものになっています。しかもなぜか、これに強力な規制を入れることも出来ない。そもそもマスコミはこれに触れることすら遠慮している』
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「100年に1度の危機」とは何だったのか 文科系

2016年11月26日 10時21分26秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)
 はじめに

 2013年3月1日から約10回ほどの連載で、かなりの本を読んで「世界経済史の今を観る」というシリーズをここに載せた。08年のリーマン・ショックが「100年に1度の危機」と呼ばれるのがどうしてなのかを知りたかったからである。全米の5大投資銀行が全部潰れたのだから、容易ならざる事態だとは誰にも分かることだったのだが、その仕組み解明がマスコミなどでは隠されていることが明らかだったから、これを知りたかった。「100年に1度の危機」としたら世界中が必死に避けたかったのに起こってしまったことのはずであって、これの世界的後遺症に10年、20年と人類が苦しまされるような、そんな地球的大問題と観るべきだからである。よって、その後もこのテーマを追いかけるべく、いろんな本を読んでは、ここにその続きを書いてきた。これは、現在までのそういう努力の集大成のつもりなのだ。

 どんな企業、団体などでも良い方針を作る場合には「現状分析、課題の明確化、今後の方針」をできるだけ長いスパンで、できるだけ全面的に観ようとするものだろう。つまり、中長期計画に拘ってこなかった企業などは、激動の時期には特に潰れ易い。日本国政も同じであって、一定長いスパンで世界を観られなければ、正しい対処法は出て来ないはずだ。
 時あたかも米英圏が引っ張った金融グローバリゼーションがその政治にまで大破綻をもたらし始めたかに見える今。リーマンショックが、その後の世界大戦に繋がった1929年世界大恐慌と比肩されて「100年に1度」と呼ばれたのはどうしてだったのか。そのことをこんな今の時点でもう一度、より深くまとめてみたい。

 東洋経済新報社の「現代世界経済をとらえる Ver4」と「Ver5」という本が手元にある。03年版と10年版なのだ。A5版びっしりの300頁近いのに、明らかなロングセラー。全国の大学経済学部などの教科書として版を重ねてきた本なのである。全14章に執筆者14人、全国の国公私立大学14校の専門家がそれぞれを執筆している。2つの版の目次の比較をやってみた。この比較から最も分かることがこれだ。この7年間で世界経済がこんなにも変わる時代に生きていると。リーマンショック、サブプライム住宅ローン組込証券バブルの破裂が目に見えるようになったのは、この二冊の本の間07年のことだった。

    Ver4       Ver5
1章 アメリカ経済   グローバリゼーションをどうとらえるか
2章 中国経済    日本・中国・アジア
3章 EU経済    アメリカ経済
4章 IT革命と現代世界経済   ヨーロッパ経済
5章 国際貿易の構造と理論   国際貿易の構造と基礎理論
6章 多国籍企業とM&A・国際提携   多国籍企業と直接投資
7章 WTOと世界通商システム   金融グローバリゼーション
8章 国際収支の理論と現実   国際収支と国際投資ポジション
9章 金融グローバリゼーション  グローバリゼーションとWTO
10章 現代の国際通貨体制   国際通貨体制
11章 開発と援助   低開発と貧困削減
12章 貧困・飢餓・ジェンダー  一次産品と資源・食糧問題
13章 地球環境と資源問題   国際環境政策
14章 国際政治経済学で解く現代世界経済  人の移動とグローバリゼーション


 これを見ると、世界経済激変の正体が「金融グローバリゼーション」にあることは明らかだ。世界のここに焦点を絞って発生経過、現状、問題点、改革などを探ってみようと、何冊もの本を読んできた。それらの本のうち以下の拙稿に使わせて頂いた物と、以下5~6回ほどにわたって書くことの目次とを、初めに紹介させていただく。

「現代世界経済をとらえる Ver4」と「Ver5」(東洋経済新報社)
「日本近現代史10巻シリーズ」(岩波新書)
「金融危機は再びやってくる」(伊藤正直・東京大学大学院経済学研究科教授、岩波ブックレット、12年)
「国家の品格」(藤原正彦・お茶の水女子大学教授 新潮新書 06年の第24刷)
「グローバリゼーションとIMF・世界銀行」(毛利良一・日本福祉大学教授、大月書店、02年)
「金融が乗っ取る世界経済 21世紀の憂鬱」(ドナルド・ドーア、中公新書 12年の第5版)
「アジア力の世紀」(進藤榮一.筑波大学教授、岩波新書、13年)
「金融権力」(本山美彦・京都大学名誉教授、岩波新書、08年)
「ケインズはこう言った」(高橋伸彰・立命館大学教授、NHK出版新書、12年)
「資本主義の終焉と歴史の危機」(水野和夫・元三菱UFJモルガン・スタンレー証券チーフエコノミスト、集英社新書、14年)
「世界経済入門」(西川潤・早稲田大学大学院教授、岩波新書、07年第5刷版)
「覇権か生存か アメリカの世界戦略と人類の未来」(ノーム・チョムスキー、集英社新書、04年)


 以降最後までの目次は、この通りである。
第1章 金融グローバリゼーションの生成と発展
 第1節 その生成
 第2節 民間資金の世界席巻と通貨危機
 第3節 アジア通貨危機の発端、タイの例
第2章 金融グローバリぜーションの破綻
 第1節 金融が世界を乗っ取った
 第2節 「100年に1度の経済危機」
 第3節 破綻の構造
第3章 金融グローバリゼーションの改革
 第1節 国際機関などの対応
 第2節 各国などの対応や議論
 第3節 平和に生きて行ける世界を目指して
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とにかく、世界史の過渡期が、終わる?   文科系

2016年11月25日 10時43分27秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)
 米大統領選挙後に世界情勢が一変したように、多くの人々の目に見えるのではなかろうか。ただ、「こういう没落米英(的金融グローバリズム)」を今まで見つめてきた人でなければ、この今は分からないはずだ。「長い量的変化の末についに質的変化が・・・」という今と見えるから。昨日と今日読んだそんな2つの世界情勢論をご紹介したい。

 まず、本日の中日新聞2面連載「インタビュー トランプの米国」には、水野和夫(法政大学教授。三菱UFJモルガン・スタンレー証券チーフエコノミスト、内閣府大臣官房審議官などを経て。著書に集英社「資本主義の終焉と歴史の危機」など)が登場し「ゼロ成長を前提に」と名付けた記事がある。
『歴史的にみれば外へ外へと広がっていくグローバル化、そして五百年に及ぶ資本主義の限界を示した』
『安全保障政策も、オバマ大統領が「世界の警察をやめる」と言った延長線上にあり、(中略) グローバル化で世界の富を呼び込む戦略を、自らひっくり返そうとしている』
『資本主義を地理的に広げられなくなった後、金融の世界なら成長できるとの見方はあったが、マネーが自己増殖してバブルが崩壊するパターンを繰り返している。そのたびに中間層が没落し、特にリーマン・ショックが決定的だった』
『日本は日中韓プラスASEAN(東南アジア諸国連合)との連携を模索するしかない』

 今一つは「サンデー毎日12月4日号」に載った金子勝のインタビューだ。
『金融、情報帝国として米国を再興、それがグローバリゼーションの流れを加速した』のだが、それを支えた2大政党が、没落した中間層によってそれぞれ分裂させられた。トランプは『大きな政府や保護主義を訴えた』ことによって当選したのだが、共和党自身が分裂したのだし、上手くやれる道はないだろう。『単純なポピュリズムやナショナリズムに昇華され、激しい移民排斥になることだろう』
 安倍さんが、『歴史認識問題で中韓を材料に煽り立てる古いタイプのナショナリズムに踏み込み切れなかったのは、安倍さんの自制心というよりも米国の牽制によるものだった』
『アベノミクスですべての経済政策を使い果たしているので、ナショナリズムで対処するしかない。例えば、五輪の成功と完全なる開催を金科玉条にして、IS、テロリズム対策で共謀罪を成立させようとか、憲法に緊急事態条項を盛り込もう、といった動きに出る。経済危機の実態を隠し、五輪ナショナリズム的な方向に国民意識を持っていこうとする可能性がある。それが一番リアルなシナリオと思う』
 そ、して五輪前には、こう言う危機が表面化するだろう。
『日銀が債務超過に陥る可能性がある。マイナス金利と言うことは、満期時より高い価格で国債を取引することだから、売る政府側には都合が良いが、買い取る日銀側からすると売却のたびに損失が出る。その損失がすでに10兆円弱というから、日銀の自己資金(7・2兆円)、引当金(2・7兆円)に対しほぼ見合う状態となっている(中略) 債務超過状態に陥った日銀が発行する日銀券とは一体何なんだという問題に直面する』


 ここからは僕の意見だが、米国に頼っていた全ての梯子を、トランプによっていきなり開き直るようにして外されてしまった安倍政権。そのうえ新たに、さらなる言質を入れることも迫られるはずだ。さもなければ自動車の輸出さえままならぬようになる、とか。なんせアメリカはどこにも金が無いのに国も家計も莫大な赤字で、加えて年間軍事費60兆円は維持したいしと、1700兆円の資産がある日本よりも遙かに切羽詰まっているのである。
 1930年代のヒトラーのような軍事産業、軍事拡大しか、没落中間層に日米保守政権が提供できる道は残されていないように見える。「地球から有効需要が無くなり、失業者が溢れかえった時は危険だ」と、これはケインズ経済学が最も恐れ、挌闘してきた事態ではなかったか。20世紀の70年代に打ち捨てられるまで、先進国の政治経済運営理論はそういう内容だったと記憶している。
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安倍さんの頭の中は?   らくせき

2016年11月25日 09時18分26秒 | Weblog
親分がTPPはヤメ、と言っているのに
なぜ安倍さんは、あんなにシャカリキになっているのか?
国内的な事情か?
はたまたアメリカにとって替わろうという野望か?
名無しさん、いかがですか?


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ハリルジャパン(76) 代表は「堅守速攻」が良い   文科系

2016年11月24日 13時27分58秒 | スポーツ
 標記のことについて、まとめた上で、更に一つの問題提起をしてみたい。先ず、代表世界戦の日本には、堅守速攻こそ似合っているということ。理由はこの通り。

①世界比較における日本は、攻、守、速、強を兼ね備えた総合的個人能力が高い選手を揃えられるチームではない。よって、繋ぎ切って勝てる現在世界の理想、王道を現時点で求めることはできない。

②サッカーでは、堅守速攻こそ相対的弱者が番狂わせを起こせるやり方。さらには、初対戦同士の代表戦は特に、そういうアップセットが起こしやすい。

 次いで、問題提起というのはこの事。堅守速攻の世界潮流が現在また一つの過渡期にあるのではないか。この戦法の旧来の名監督モウリーニョがここ数年停滞していることから、そんな思いを僕は抱いている。彼のチームがなぜ、こんなに失点するようになってしまったのか。
 また、同じことを別の目で観て、この戦法の新監督と思われるクロップとシメオネが、なぜモウリーニョよりも世界的な好成績を挙げられているのか。クロップのリバプールは現在プレミア1位を出入りしていて2位。失点が多いチームながら、得点が特に多いのが特徴だ。アトレッティは、この3年で2回CL準優勝と、シメオネ監督の下で急台頭してきたが、ここは「1点を守り切るようなサッカー」失点が少ないチームと言うべきだろう。シメオネ監督になってからは失点がほとんど得点の半分以下、15~16年度シーズンでは63得点18失点という凄まじさだ!

 なお、同じ堅守速攻チームでも、DFラインの高低、速攻の長短など色々あろうが、こんな目でこの3チームをしばらく眺めていきたいと、僕は目論んでいる。モウリーニョ・マンU、クロップ・リバプール、シメオネ・アトレティコを。
 みなさんも、この3チームのこと、あるいはこれら相互の違いなどで、何か知っていること、言いたいことがあったら、どんどん教えて下さい。日本代表をより深く考えてみる絶好の教材だということで。

 なお、この「堅守速攻」戦法で代表の顔ぶれを選べば、ほとんどサウジ戦のメンバーになると僕は述べてきました。右サイドが久保でなく岡崎という程度で。世界比較では明らかにDFが弱いが、その分DFラインからの良いパスが出せる上に原口、岡崎の守備が半端無いから、相当なチーム力だと観ています。
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BuzzFeedより らくせき

2016年11月24日 09時39分21秒 | Weblog
内田さんのツイッターを覗いていたら、こんな記事がありました。

「全てが真実になり、全てが真実ではない」
「これまでは皆が拠りどころとできる事実のベースラインがあった。しかしいまや、それは失われた」

オバマ大統領がNewYorker誌に述べた発言だ。アメリカの民主主義の変容を表している。
同誌は、ヒラリー・クリントンの応援演説に向かう道中、オバマと大統領補佐官のデイビッド・シマスが、
ある記事について執拗に議論を交わしたと伝える。11月5日。大統領選まで3日と迫っていた。

二人が話題にしていたのはBuzzFeedの記事。東欧の小国の若者たちが、
ドナルド・トランプの支持者向けに捏造記事サイトを運営し、莫大な広告収入を手にしていると伝えていた。
旧ユーゴスラビアを構成していたマケドニア。ギリシャと国境を接する人口200万人余りの小国だ。
その中部の町ヴェレスは「デジタル・ゴールドラッシュ」にわいていた。

約7千キロ離れたアメリカ、大統領選のおかげだ。

この町の若者らは140以上のアメリカ政治サイトを立ち上げた。
例えば、WorldPoliticus.comの記事「あなたの祈りは聞き届けられた」。
匿名のFBI捜査官を情報源に「ヒラリー・クリントンは電子メール問題に絡み、2017年に起訴される」と伝える。
(現在は削除)
運営しているマケドニアの若者たちは、サイトにトラフィックを生む最適手段は
Facebookで記事を拡散させることだと、BuzzFeed Newsに教えてくれた。

さらに、Facebookでより多くシェアされる最適の方法は、トランプ支持者に向けて扇動的な内容を書くことだという。
真実である必要はない。

「投稿の情報は悪いものだし、虚偽だし、ミスリーデイングだよ。でも『それで、人々がクリックし、
エンゲージメントを稼げるなら、やっちまえ』だね」。
こうしたサイトの一つを立ち上げたヴェレスの男子大学生はBuzzFeed Newsに話す。

BuzzFeed Newsの調査で、ヴェレスで運営されている政治サイトのうちアクティブなものは100以上あることが分かった。
最大のサイトはFacebookに60万以上のフォロワーがいる。休止サイトも40あった。

「簡単に金が稼げるからサイトを立ち上げたんだよ」。
仲間数人でサイトを運営する17歳の男性はBuzzFeed Newsに打ち明ける。

「マケドニア経済はとても弱く、ティーンエージャーは働くことを許されていない。
だから、金を稼ぐためにクリエイティブな方法を探さなきゃならないんだ。
ミュージシャンなんだけど、必要な道具を買えない。ここマケドニアでは、小さなサイトからの収入でも、
いろんなものを買うのに十分なんだ」

            

ポイントはファクト・チェックだとのこと。
それは事実の裏付けがあるのか?
これからは、ますます報道の真贋が問われるのでしょうね。
これって金融の世界で起っていることに似ていなくもない・・・




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「株屋はやばい」 続編   文科系

2016年11月23日 17時53分54秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)
「株屋はヤバイ」2回連載で、5項目のことを書いてきたが、もう一つ付け加えたい。株屋が国家、国家的大銀行まで破壊していくということだ。このエントリーの後の19日に「ギリシャがゴールドマンに喰らわれた話」を書いたその内容のように。

 70年代以降無数におこった通貨危機が先ず国家を喰らうこと。タイ通貨バーツのように日米金融の空売り標的になった例が先ず挙げられる。ギリシャのように助ける振りをしてデリバティブを売りつけられてさらなる大損をさせられたりというやり方もある。
 さらには、ギリシャを通じてユーロに揺さぶりを掛けて、それによってユーロの根幹を支えているドイツ銀行に今は空売りが掛けられている真っ最中だ。

 国家の金って公共の金なのであって、これが奪われれば、その国の経済も停滞したり破壊されたりする。それでは、金融大国以外は沈滞していくばかりで、世界の購買力など吹っ飛んでしまうばかりだろう。いわゆる難民問題でも、こういう国家破壊も絡んでいるに違いないのである。デリバティブによって中小国の小金を掠め取っていくやり方も含めて。世界的デフレとはマクロで観ればこうして、金融自身が作った側面が大きいのだと推測してきた。

 そういう意味でも世界金融がやっていることは、らくせきさんがコメントで述べたように、己の脚を食べ尽くしていくタコと同じ。喰うものがなくなった今はこうして、米英日によってドイツ銀行が狙われている。こんなことを続けて行ったら、株屋、銀行の決戦から、最後の一つが織田信長のように世界金融統一を実現するとでも言うのだろうか? 国家の金も、国内の小金もなくなった人類、地球は一体どこへ向かって行くんだろう? 株屋自身はもちろん、誰も分からないのである。

 みなさん、新自由主義って結局こういうものなのではないか? 傍証として、何度も書いた以下をあげておく。
【 1970年代初頭の金本位制、固定相場制崩壊以降、小さなバブルとその破裂は無数に起こっている。IMF(国際通貨基金)の08年調査によればこのように。
『1970年から2007年までの38年間に、208カ国で通貨危機が、124カ国で銀行危機が、63カ国で国家債務危機が発生しています。金融危機は、先進国、新興工業国、開発途上国を問わず、アジア、ヨーロッパ、南北アメリカ、アフリカを問わず起こっていたのです。これに対し、第二次大戦後1970年以前の時期には、国際金融危機や大規模な一国金融危機はほとんど発生していません』(12年刊 伊藤正直・東京大学大学院経済学研究科教授「金融危機は再びやってくる」)】

 ただ今は、こんな側面も観ておくべきとして、ある拙文を付け加える。リーマンショックの前と後とで、世界の大銀行はこう変わった。
【「100年に1度の危機」という破綻は、10年近く経った今初めて、その性質が一定分かってくるもの。何よりも世界10大銀行の移り変わりにこれが現れる。2010年と今とで、世界の10大銀行国籍がこう入れ替わった。英3米2の合わせて5行から各1の2~2・5行へと半減した分、中国が0から3・5へと増えた。他は、フランス、日本の各2ほどと、ドイツの1行と、はほぼ変わらない。】
 上で0・5というのは、10位までに入ったり出たりしている銀行があるという意味である。こうして今、ドイツの1行に世界から集中攻撃が掛けられているわけである。これが成功したならこの地球人類はもう大事だろう。ユーロが瓦解して、一定豊かな欧州市場全体がまた「苦し紛れの食い物探し圏」へと落ち込んでいくはずだ。「地球・人類SOS」という局面が、本当に来ているのではないか。

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「よたよたランナーの手記」(176) やはり、ジムより外走り  文科系

2016年11月22日 11時18分28秒 | スポーツ
 11月になってからジム走りを減らして、1時間の外走りを増やして4日4回を入れた。するとどうだろう、最近掲げている目標がいくつか好転して来たようだ。左右の脚が均等に蹴れるようになったらしく、時速9キロでの心拍数がかつての140ほどに下がってきた。これが、昨日のジムで分かった。使っていない脚筋の弱かった部分に力が付いてきたこともあるのだろう。
 それでも今は、ウォームアップ走行15分を含めてのことだが、1時間で8・5キロが限度と感じる。走行中の疲れが激しくなっているからである。もはや75歳、不可逆的にこういう体力になったと見るべきなのか、前立腺癌関連の何かが原因なのか、それは分からない。一つは服薬治療薬に含まれた女性ホルモンのせいか、また治療で慌ただしくなった生活から走行日が少なくなったせいなのか?

 それでもまー、こんな身体でも医者の許可が得られて走れていることが、幸せだと思う。こんな時こそ身体を庇いすぎになって、各部、色々不都合が出てくるのが人間。「こういう時こそ強化意識を!」というようなのが何か僕の人生、人間を表しているようで、面白い。とにかく「僕にとって普通のことができる精神、体力」は維持していたいのである。これまでもそうやってきたのだから。 


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ハリルジャパン(75) 強烈な異能示した、監督ハリル  文科系

2016年11月21日 02時12分40秒 | スポーツ
 ハリルホジッチ監督って、相当な曲者と発見した思いがしている。この場合の曲者とは、辞書を調べて正にピッタリ、異能、つまり「異常な能力を備えた」と言う意味で使った。過去の外国人代表監督2人が最後まで成し遂げられなかった「難関突破」をこのサウジ戦で見事に乗り越えたと見るからである。

 サウジ戦について、現代表ベストのゲーム、ベストのメンバーとここで評してきたこの結果が、これまでの攻撃的看板選手3人を先発メンバーから全て外して成し遂げられたのである。それも負ければ自分の首自身が危ないというそんな瀬戸際でこんな決断、離れ業をやってのけた。同様の体験があるという意味で分かる人には分かる、やろうと思ってもなかなかできない凄まじい決断を敢行して、内容も伴った結果を出してしまったということだ。それも、サウジ戦で試された関門というのがこのように難しいものと僕は考えるから、決断の異能さが光ると言いたい。

 06年ドイツ大会のジーコ、14年ブラジル大会のザック、このいずれもが度々ぶつかったのに最後まで越えられなかった関門だと観る。彼らはいずれも、W杯本大会という晴れ舞台で、選手を統制しきれなかった。と言うよりも、選手に背かれた(と、僕は見ている)。ジーコは、攻撃陣と守備陣との食い違いを最後まで統制できなかったのだし、ザックは「繋ぐ中央攻撃」に走りがちの前の選手らに対して、「縦に速く」という自分のチームコンセプトを徹底しきれなかった。
 最近こんな重大な決断ができたのは、10年南ア大会の日本人監督、岡田武史だ。本大会直前に俊輔と岡崎、内田を外して、それまでは看板選手ではなかった本田を俊輔に替え、彼を中心とした3トップ布陣にしたあのやり方を思い出す。「それまでの繋ぎ攻撃型チームを断念して、1点を守りきる守備重視布陣に切り替える」という決断であると、当時の岡田は選手に説明したと記憶している。今回のハリルの決断は、決断内容こそ多少の違いがあっても、この岡田武史を思い起こさせる強烈なものと観た。

 日本人は、思っていることをあまり語らない。だからといって、チームコンセプトを守るとは限らないのである。看板選手などは特に、自分を生かすチームコンセプトに引きずられる誘惑に駆られがちになるもの。つまり、監督が温厚な性格では、また、そのチームコンセプトを一寸でもぼやけさせたら、チームが瓦解しやすいのが日本人選手だと思う。外国人監督には、ここがなかなか分からないはずだ。外国選手はあやふやな監督には日本人よりももっと不服従も見せ、自己主張もするからだ。日本人は集団をより大事にし、これに執着する割に、集団に反する内心はなかなか出さないものだ。

 南ア大会の俊輔などは「繋ぐ攻撃型チーム」でこそ生きる選手。今の予選でも、本田と香川という両看板がこういうタイプの選手だった。これを外したのはまさに言われているように「ボールを奪う闘いに強く、奪ったら縦に速く攻める」ため。こういう指示で一歩も引かないぞと、ハリルは自分を強烈に押し出したのである。それで結果を上げて見せた。しかも、自分の首、運命が懸かったこのゲームで。選手も識者たちも「なかなか出来ない事!」と述べている通り、初めてとても賢い人だと観たものだ。

 これについて、加えて更に一言。この決断内容の意味に触れてみたい。こういうテーマとして。「全員で堅く守って繋ぎ切る攻撃型」と「全員で(必要なときには)できるだけ高く、かつ激しく守って、縦に速く攻める」との関係である。前者の典型がバルセロナやアーセナルで、後者がアトレティコや去年のレスター、往時のドルトムントだと見れば、確かにこういうことが言える。総合的個人能力に優れた選手集団が前者を取りやすいのに対して、後者はより弱者の戦法であると。が、こういう意味の弱者が強者に必ず負けるとは限らないというのが、サッカーについての僕の主張だ。去年もこれが示されたのであって、一つが英レスター、今一つがスペイン・アトレッティである。
 このことについてハリルは、こういうゲーム例も挙げているはずだ。ブラジル大会においてドイツと最も良いゲームを演じたのが、己が率いたアルジェリアだと。選手能力は比較にもならぬはずだが、あれだけのゲームができたぞと。そう、日本にもあれができないということにはならない。それこそが、攻撃と守備とが野球のようには分けられないという意味で最も組織的な集団球技・フットボールの神髄なのだと、僕は観てきた。フットボールでは、攻防両様で周囲と噛み合えば1・5人分の働きもできる原口のような選手も生まれることがあるのだ。そう考えてこそ、往時のドルトムントや去年のレスターが理解できるというものだろう。
 このようなアップセット、「弱者の勝利」は、相手を熟知しているリーグ戦などよりも、まっさらの初対戦である代表戦では、なお起こりうることのはずだ。ちなみに、こういう大アップセットでは必ず、監督のチーム・コンセプト徹底が第一。次いでこのコンセプトを、精緻な相手分析によってどう生かすかの賢く、正確な研究、徹底。
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ギリシャ危機、ゴールドマンによる活用法  文科系

2016年11月19日 02時21分11秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)
 この拙稿は「ギリシャ財政危機と金融 2016年10月14日」の姉妹編に当たります。岩波新書、進藤榮一著「アジア力の世紀」からの引用です。今の国際金融の暗躍、政治との結びつき、その世界大諸影響の凄まじいまでの大きさを示しています。同書の202~203ページから引用します。

『 金融危機が海を越えて伝播する構造は、〇七年夏にフランス最大手銀行BNPパリバのローン凍結ショックが、米国サブプライム・ローン危機の発端となつて、〇八年九月のリーマン・ショックにつながったことにも象徴される。
 BNPパリバは、傘下のファンドを通じて、米国金融機関の発行する低所得者向けサブプライム・ローンを大量に購入し、そのローンが支払不能に陥り、解約を凍結した。そのニュースが金融市場を駆け巡って市場は混乱し、〇八年九月一五日、全米四位の投資銀行リーマンプラザーズ社が破綻、金融危機が勃発した。のち、全米一位のゴールドマンサックス社と二位のモルガンスタンレー社は、銀行持ち株会社に業務転換し、五大投資銀行すべてが姿を消すことになる。
 その間、欧州の金融機関が、米国製の証券化商品を大量に買い込んでいることが明らかになり、欧州金融機関の信認が揺らぎ始めたのだった。そして〇九年一〇月、ギリシャ政府の債務残高隠しの発覚をきっかけに、ユーロの信認が一挙に失われて、危機は欧州の大手金融機関に及んだ。
 EUは〇三年、ユーロ加盟の条件として、財政赤字がGDP比三%以内、政府債務残高がGDP比六〇%以内にあることを定めていた。ギリシャは、ユーロ圏に加盟するために、紛飾決算まがいの手法を使って、財政赤字も累積債務も実態より低く報告していたことが判明した。その報告書に、ゴールドマンサックス社が関与していた。かつて八七年夏に始まるアジア通貨危機の陰で、米国のヘッジファンドが暗躍していたように、ギリシャ危機の背後に、米国のファンドと財務省が暗躍していると噂された。米国が金融危機回避のため、欧州に仕掛けた危機だとも、時に位置付けられる。
(中略)  
 米国発金融危機が、リーマン・ショックを経て欧州債務危機へと転形し拡大したのである。危機はギリシャからアイルランド、ポルトガル、スペイン、イタリアへ波及した。メディアはそれら諸国の頭文字を取って、豚を連想させる「PIIGS(ビッグス)」と呼び、EUとユーロの脆弱さを侮蔑気味に指摘して、EUの分裂・解体を予測した。』

 さて、以下の言及は文中のこの部分に関わります。
『ギリシャは、ユーロ圏に加盟するために、紛飾決算まがいの手法を使って、財政赤字も累積債務も実態より低く報告していたことが判明した。その報告書に、ゴールドマンサックス社が関与していた。・・・・・ギリシャ危機の背後に、米国のファンドと財務省が暗躍していると噂された。米国が金融危機回避のため、欧州に仕掛けた危機だとも、時に位置付けられる』
 米国の「金融危機回避」のために欧州に仕掛けたギリシャの「粉飾決算まがいの手法」とは何か。デリバティブ、金融派生商品はまさにこの粉飾決算にこそ使いうる物。そのことを示した拙稿が当ブログに存在します。
 〇七年一月二一日拙稿「日本財界が1週間に七五〇〇万ドルをパクられた話」がそれ。元モルガン・スタンレーのトレーダー、フランク・パートノイが実体験を書いた「フィアスコ」という本の内容紹介です。AAAの格付けが付いたデリバティブを売って時価計上で決算書に載せると、何割高かの粉飾決算ができることになっているという、そのことが書いてある興味深い本です。
「シンガポール発、英国ベアリングズ社のデリバティブ大穴によって損失を被ったのが日本大企業だと分かったときの喜び! 四月決算を控えて、デリバティブがさー無数に売れるぞ! 我々は今まで、死に物狂いに金が欲しい人々をこそ、最上の顧客にしてきた!」
 世が不景気で荒れるほど、投資銀行の出番という訳なんです。

 それにしても、このギリシャ危機をユーロ瓦解に結びつけようとして、これでさらにドイツマルクの空売りにまで折を見ては度々結びつけていくというゴールドマン、アメリカ財務省の大仕掛け! その凄まじさには身震いが出ます。そして著者はこの一〇〇年に1度のリーマンショックが、「一九二九年世界大恐慌から世界大戦へ」とならなかった今回の事情までを、こう説明している。「大欧州」と「新興国市場」がショックアブソーバーとして働いたからだ、と。世界の有効需要創出こそ争いを協調に転化する最大の鍵とは、正にケインズ経済学の焦点。現在世界のマクロ経済問題解決方向を深く考える最大のヒントがここにあると読むのは、この著者や僕だけではないはずです。

 なおまた、こういう米国自らが作ったという事情もあるのに、いくつかの南欧諸国などを日米などが「PIIGS(ビッグス)」と呼ぶのを聞くと、何とも複雑な、嫌な気分になります。自らが貶めた人々を「ブタ」と嘲笑っている、この感覚! ここにこそ、世界の暗い現実の全てが存在しているようで・・・。
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サウジ戦 1970

2016年11月18日 04時07分59秒 | Weblog
色々あったハリル率いる代表も前半戦の折り返しのこの試合を順当に勝利し、少しは落ち着くだろう。本田、香川、岡崎に代わり、大迫、久保、清武を起用。好調原口とこの3人の前線は機能した。
何回か指摘したが、大迫が入るとボールは収まる。これが岡崎のトップとの違い。岡崎は収めるタイプじゃないしそれをやろうとしても技術が足りない。だから、岡崎をトップに起用するとその後ろに(所謂トップ下)ボールを収めるタイプが必要になるが、これまでのようにそこに香川を置けば、香川自体ボールをはたくタイプだからさらに落ち着かなくなる悪循環だった。しかし、大迫で問題は解決。
だから本田を外すことも出来た。今まではセンターでキープ出来ず本田がサイドでキープする形しか機能しなかったのが大迫の技術でセンターでのキープに移行する。両サイドの原口、久保がダイアゴナルの動きでペナ内を撹乱する。岡崎、香川じゃ不可能なプランが可能になった。代表はこれでよい。
岡崎は守備要員で使えばいい。サイドで活きない香川は外し、本田もコンディション次第で呼べばいい。
トップ下の序列は、清武がレギュラー。後はドングリ。コンディション次第だな。逆に言えば、一見層が厚そうに見えたトップ下も意外に大したことが無いとも言える。若手はチャンスだよ。大迫がいる間にポジションを奪え。相手が香川ならイケる。
さて、課題の守備陣だが失点したとはいえ、これまでよりはかなり落ち着いた守備を見せてくれた。ここにも大迫がトップに入ることの効果があった。何より香川のような変なボールの失い方はしない。だから守備陣も先が読める。更に、原口、久保の両サイドがきっちり相手に着いて行く。この連携で後ろは落ち着く。長友も復帰し、この予選最も安定した守備が見れたのは良かった。この流れはキープしたい。
ひとつだけ心配があるとすれば、これから香川がドルトムントでまさかの活躍を始めた場合w、それでも代表には呼ばないように。ひとつも機能しないから。だったら、武藤や宮市の方がよほど機能するから。
というわけで今のところ最終予選ベストゲームでした。
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