ここに書いてあるアメリカ外交は、正にこの通りのもの。今のアルゼンチン危機だって、アメリカ金融永年の搾取の結末、尻拭いなのだ。だからこそ、中南米が左翼政権ばかりになっているわけだ。今のイスラエルの行動は、そのアメリカさえがもう持て余している始末。このイスラエルこそ、まさにアメリカ以上にアメリカ的な、アメリカの鬼子なのである。 』
2:しかし残念ながらこの地域には緊張、減少でなく、増大。
3:日中、米中各々の指導者の努力で平和と繁栄の基礎が構築。1972年の日中共同声明、1978年の日中平和友好条約、これらを継承し、発展させていけば、日中関係は問題なく発展し、東アジアは世界で最も発展した平和な地域になれるはずである。
5:今日の日中関係は日中双方の国益に基づいて形成されていない。
残念ながら日本外交は米国の戦略の一環。
アリソン教授はソ連の崩壊後の一極支配。
「世界の他の国々は主にアメリカの規則に従って行動することを強いられ、さもなければ壊滅的な制裁から完全な政権交代に至るまで、莫大な代償に直面することになった。」
日本に関してはこの状況はますます激しくなり、それが、日中関係が緊張する主要要因である。
6:こうした動きは中国の台頭と不可分である。購買力平価ベースで米国21.1兆ドル、中国24.9兆ドル。科学論文の数上位10%の論文数連キングは1位中国。
7:「アメリカの最大の敵国はどこか」の問に対する米国民の回答
中国50%、ロシア32%、北朝鮮7%、イラン2%。
2023年はまだウクライナでロシアが戦争を行っている時にもかかわらず、中国の脅威の方が大きい。如何に今中国に対する敵愾心が強いかが判ろう。
8:この中に台湾問題。台湾問題で米中が戦った時にどうなるか。米国は負ける。(アリソン教授は2020年「台湾海峡有事を想定した、18のウォーゲームの全てでアメリカは破れていると発表。
その米国の意図するところは、日本、台湾をして中国を刺激し、中国が軍事力を使い、これでもって、世界を中国制裁の方にもっていくことであろう。
9:世界の流れを見ると、G7合計は40.9兆ドルで、非G7上位7か国は49.3兆ドル。
先のG20首脳会議、宣言では、G7が主張するロシアの名指し批判が避けられた。
今世界は大きい潮流の変化を見せている。
10:日中双方は今、どう対応すべきか
対立の機運は長期的に継続するものではない。中国が米国の優位に立つのは歴史的に最早阻止できない。今はそれを阻止しようと米国が画策している時期である。そして阻止する手段として、東アジアでの武力紛争を望んでいる。 如何に挑発を避け、長期的繁栄と安定への道の阻害を避けるかが我々に求められる英知である。』
直前の世界では、クレディスイスの破綻があって、このことが、ここの筆頭株主サウジ国家をイランとを仲直りさせた世界史的大事件の動因になった。これは、世界周知の事実である。
『90年前後に起こった社会主義国崩壊から以降、民間資金が各国に流入して、猛威をふるい始める。これまでの開発途上国などへの資金流入は社会主義国と張り合うように公的資金が主だったが、90年代はそれが急逆転していく。それにともなって各国に通貨危機が連続して発生する。94年メキシコ、97年東アジア、98年ロシア、99年ブラジル、01年にはトルコとアルゼンチンなどだ。いずれの国も、短期資金の突然の流出で資本収支の赤字から困窮しつくすという特徴を示した。ちなみに98年世界決済銀行(BIS)の43カ国調査にこんな数字がある。市場為替取引高は1日平均1・5兆ドルで年間500兆ドル。95~6年の年間世界貿易高5兆ドルの100倍、もの凄い数字だ。マネーゲームとか「カネがモノから離れ始めた」と指摘され始めた。
1970年代初頭の金本位制、固定相場制崩壊以降、小さなバブルとその破裂は無数に起こっている。IMF(国際通貨基金)の08年調査によればこのように。
『1970年から2007年までの38年間に、208カ国で通貨危機が、124カ国で銀行危機が、63カ国で国家債務危機が発生しています。金融危機は、先進国、新興工業国、開発途上国を問わず、アジア、ヨーロッパ、南北アメリカ、アフリカを問わず起こっていたのです。これに対し、第二次大戦後1970年以前の時期には、国際金融危機や大規模な一国金融危機はほとんど発生していません』(12年刊岩波ブックレット 伊藤正直・東京大学大学院経済学研究科教授「金融危機は再びやってくる」から)』
彼は、元中東諸国の大使などとしてアメリカ中東外交を体験して、外務省国際情報局長、防衛大学教授なども経た反骨外務官僚。そんな人物がこの15日に掲載した訪中代表団長として予定している講演「中国との対話」について、全8章の目次とその結論部分末尾文章とを紹介したい。
②中国の台頭と、米国の政策
③米国には軍事的に直接対峙するという選択肢はない
④米国は反中同盟を画策、その中心が台湾
⑤台湾問題は米中、日中が過去の合意を順守すれば危機は生じない
⑥台湾国民の意思
⑦対米従属から脱する時期
⑧日中双方は今、どう対応すべきか
『 日中双方にとって、日中共同宣言、「日中平和友好条約」を基礎に発展させることが、日中両国、東アジア全体にプラスである。
だが今の日本はそうではない。米国の指示のもと、対立を作る方向に動いている。
今日の日本の政治状況、及び国民感情からしてこの流れを変えられない。
では我々はどうすべきなのか。
対立の機運は長期的に継続するものではない。中国が米国の優位に立つのは歴史的に最早阻止できる現象ではない。今はそれを阻止しようと米国が画策している時期である。そして阻止する手段として、東アジアでの武力紛争を望んでいる。
如何に挑発を避け、長期的繁栄と安定への道の阻害を避けるかが我々に求められる英知である。日本においては、特に中国の脅威を煽る活動が展開されるものとみられる。
だからこそ、日中双方の識者が共同して①中国の発展には世界の平和が不可欠であり、その点を中国の指導者は十分に理解している、②日本が、日中共同宣言と日中平和友好条約を、そして米国が米中共同宣言を守れば台湾問題は生じない、③東アジアを不安定にしたいとする勢力が存在し、これに対抗する力を形成すべきである等について日本国内で適切な説明を行っていくことが求められている。 』
本日の最後に、世界外交でよく使われる言葉について一言。「自由と民主主義」、「権威主義」、「専制主義」などは、敢えて言うが、主義という言葉が示すように倫理的用語、理念である。そして、ウクライナ戦争とかイラク戦争とかはそういう歴史的行動、事実である。この理念と事実との関係を人を裁く裁判を比喩として語ってみよう。
「ガザからかつてないあれだけ大きな侵攻をやって、イスラエルが『寝耳に水で、軍も戦車も出さず』などということは、私の知る限りありえない」
ナルホドと思うと同時に、そのありえないことが起こった訳を「ウクライナ戦争はほぼ目的を達したから、ウ戦争に集まった世界の目に煙幕を張る必要が生じてきた」というのである。最初に述べておけば、この説が正しいか否かは、今後のウクライナ戦況とその報道との時の経過がすぐに教えてくれるはずだ。
としたら、ウクライナ「戦争」の米英狙いはこうなる。コロナでも進んだ米保護主義のさらなる促進、ノルトストリーム破壊によるロシア石油締め出しと世界エネルギーの高騰、旧式米英兵器の売却、これらを通じた米英経済・国家財政などの「延命」などなどである。
ウクライナへの米兵器輸出は、去年末以来どんどん少なくなっているという事実があるが、その事を世界は知らない。そしてこの度、少なくなった兵器売却予算すら議会が認めなかった。つまり、ウクライナ戦争をウヤムヤにして、その真の目的を隠す煙幕が必要な時期が来たのである。
それで、「反転攻勢」呼号から5か月経ってもその成功の報道はないだけでなく、全面展開の兵器や弾薬も足りないと報道され始めた。この期間ごく初期に、戦車なども多数納まる東部最大のコンクリート固め都市要塞バフムート占領の報道などなかったのに、いつの間にかロシア占領地になっている。ちなみに、孫崎享のネット「つぶやき」では、こんなニュースが流れたばかり。
『 ウクライナへの軍事支援は米国下院の混乱で減額は必至。合わせてスロバキアで軍事支援を行わないことを宣言した政党が総選挙で第一党獲得。加えて、欧州で「ウクライナ軍支援 16%減」という現象が出ている。EUの世論ウクライナへの軍事支援に否定的な回答は5-6月調査では31%。』
ブルガリア、ギリシア、キプロス、ハンガリー、ギリシャ、キプロス、ハンガリー、オーストリア、スロバキアでは否定的な回答は過半数を占めた。
ドイツのキール世界経済研究所の調査によると軍事現物援助額は22年12月の230億弗をピークに減少傾向に転じた。月間の平均額は22年3月から12月までは約57億8000万ユーロだったが23年16月は48億8000万ドルと16%減った。 』
・そもそも、5月末から叫ばれてきた『「反転」攻勢』という言葉からして奇妙だ。この語の意味は『劣勢を反転させて攻勢に出る』というだけのもの。
・それで4か月過ぎて、どんな「攻勢の戦果」があった? ロシア側の準備万端整えた三重陣地の第一線を1~2箇所突破した? 4か月でたったこれだけという今、こんな事を豪語、報道しているのである。
・「三重陣地を一気に突破して」、「アゾフ海まで」。または「補給路を絶ってクリミア分断・殲滅か」という調子だ。
・以上の間中、「米独などの戦車、長距離砲、『クラスター弾』などなど、続々届く」という報道姿勢、調子である。
以上にプラスして、ウ政権内のこんな情勢を合わせて考えてみれば、ウクライナにとっての戦況は絶望的という結論しか出てこないように思うのだが。
「国内全州の徴兵官32人を全員解任。理由はすべて汚職」
「6人の防衛副大臣が解職。理由公表は無し」
上に立つ者がこれでは、どんな戦略戦術が望めて、兵の士気をどれだけ保てるというのか? 「本気で戦っているのは、ゼレンスキーだけ?」。兵器を提供するアメリカ軍部、ミリー統合参謀本部議長の発破によって、万端整えた三重防御陣に突入している兵士らはすでに何十万なくなったのだろうか。という犠牲報道の方は皆無なのである。
戦端を開いたロシアの国際法違反の大罪は明らかだが、兵器提供国の代わりに若者、壮年がどんどん死んでいくといったこんな戦争は辛すぎる。マスコミは、その辛さをも描くべきであるのに、「反転」「攻勢」「この兵器が有望」などなど、明るい希望ばかりを描いてきたのだった! なんで?
ブラジル、ロシア、インド、中国、南アの5国同盟、BRICSに新たに6国が加わって、11カ国同盟になった。ブラジルのお隣のアルゼンチン。アフリカ連合から新たにエジプトとエチオピア。アメリカに愛想を尽かしたのか、中東からは呉越同舟でサウジ、UAEに、イランが加わった。これでもって、NATO主要国に日本がいるだけのG7は、さらに影響力を失った。
この動きに合わせるように、この度のインドG20でもいくつかの異変が起こった。なによりもまず、ウクライナ問題が共同声明にも載らなかったから、ウ外務省から批判されたこと。
「ウクライナ侵攻に関してこのG20は誇りを失った」
ちなみに、米の強い意向を押しのけてのウクライナ問題外しは、開催国インドの力が働いたからであって、中ロ首脳がいなくてこうなった意味は極めて大きいと観ることができる。これに関して、外務省元国際情報局長・孫崎享もこんな二つの報告を発出した。
『 G20の動向、一つのリトマス紙はウクライナ問題。共同声明で露を明示的に非難せず。G7では「露によるウクライナに対する侵略戦争を可能な限り最も強い言葉で非難する」。最終とりまとめに日本はカヤの外。G7主導でない。インドネシア、印、ブラジル、南アが主導的役割 』
『 ウクライナ戦争で、戦場はウクライナ、戦い死者を出すのはウクライナとロシア。だが米国のウクライナ軍事支援がなければ戦争は終わる。この中米国内で変化。共和党支持者は今年の2月に比し反対が増え、更なる武器支援に反対が多数になる 』
このようなことが中ソ首脳のいない会議で起こって、来年、再来年のG20はブラジル、次いで南アであってみれば、G20におけるアメリカ、G7の発言力がどんどん落ちているということになる。その上で、このG20にアフリカ連合が入ったのだから、世界情勢は、G7情報ばかりを報道する日本マスコミとはかなり違ったものになっているのだ。
インドと同じように、G20大国トルコも、ウクライナ戦争ではいつも、国連を立てて中立の仲介をして来た。このトルコ・国連が仲介してもうまく行かぬこと度々の「黒海穀物輸出」だが、日本ではただ「ロシアが中断した」とだけ報道されている。だけど、その理由は何処にも書かれていない。少なくともその一つが、アメリカの差し金で穀物代金がロシアに渡らないこと。ロシアはこれを「欺された」と怒っている。
ウクライナ戦争にその未来を懸けているようなアメリカは、この後どうなっていくのだろうか。新自由主義国米の新たな禁断の保護貿易主義は、世界から総スカンを食っているうえに、金融バブルは日本以上に膨らんでいる。そして、アメリカ自身による世界分断が進めば進む程、ドル以外の通貨の取引が増えているのだ。
なお、安倍から河井克行への公的資金1・5億の支払先、政治家たちが判明したと中国新聞がすっぱ抜いたようだ。支払い先その他は、このブログ友から教えられた。「グーブログ 楕円と円」。
サンデー毎日9月3日号に載った政治学者、白井聡の論文を要約する。主題と副題はこうだ。
『岸田政権「大増税」と「米兵器購入」の核心』
『「亡国のカラクリ」をすべて暴く』
「(日本の)米兵器購入の核心」とは、「悪循環」から崩壊しつつある米「三位一体世界政策」を日本に新たに支え直させようとするものと説いている。
この「三位」とは、「米国の赤字垂れ流しとペトロダラーシステムと巨大軍事力」との一体の世界政治。石油=ドル体制を維持するべく大軍事力に物言わせてきたが、その結果、国家累積赤字が垂れ流され、ドル体制も綻び、軍事力にも限りが見えるなどの悪循環が起こっていると説かれる。石油ドル体制の破綻は、サウジの離米とか、ウクライナ戦争制裁などでさらに増えてきたルーブルや人民元による支払い増とか、イラク、イラン、ベネズエラ、リビアなど産油国への過去の戦争政策とかで説明されている。
この米世界政策論、「三位一体世界政策の悪循環」における最も深刻な最先端の現実を転載すると、
『米中対立の緊迫が高まるなか、中国の仲介によりサウジがイランと和解することを米国が許容した(止められなかった)ことの重大性はどれほど強調してもし足りない。つまりは、米国はペドロダラーシステムの核心部の支配を失いつつある』
このサウジ米離反の直接原因を僕が付け加えると、シリコンバレー銀行などの破綻と平行して起こったクレディ・スイス倒産がある。サウジ・ナショナルバンクがここの筆頭株主であり、そのサウジがクレディを見限ったことがクレディへの死の宣告となったと報道されていた。さんざんアメリカに貢いだ挙げ句に種々被害ばかり被り、最後は米金融に切り捨てられたに等しいサウジの恨みはいかばかりかと推察していたものだ。
さて、白井はドルの暴落とか、米国家赤字の増大を避けるために、今度は同盟国・日本にさらなる負担を求めに来たと説いてゆく。
「今日のウクライナは明日の日本」
「他国民の犠牲のもとに敵対的大国を弱体化させることにより覇権を強化するという米国の(ウクライナ戦争の)企図は、戦争がさらに長引けば叶えられるかもしれない。ただしそうなったとき、青年壮年の男子人口を大量に失ったウクライナ国家は果たして再建可能であろうか」
古くはアフガンの米同盟者タリバンをソ連崩壊に利用してやがてこれを切り捨てて、彼らとの長い長い戦争に敗北したこと。イ・イ戦争時の米同盟者フセイン・イラクがやがて米国に裏切られていった、その末路。さらには、ウクライナやサウジ。これらの末路からこそ、日本は学ぶべきなのだ。アメリカがここまで、同盟国の国民をいくらでも犠牲にする結果になって来たのは、その覇権の維持のためなのである。そして、この覇権維持はもはや不可能と僕は観始めたその現象こそ、「新自由主義経済国が、保護貿易主義に換わってしまったという、手前勝手過ぎる醜態」。元米会計検査院長の15年の計算で、国家累積赤字は当時の米GDPの4倍という数字が報道されたが、現在は遙かにこれを越えているだろうというのも、白井言うところの「三位一体政策悪循環」の末路、結末なのである。
アメリカと日本がこのまま進むならば、「反撃能力」とかの鳴り物入りで今大々的軍拡中の日本の末路も、想像可能というものではないか。今回の岸田「反撃力」軍拡は、「毒を喰らわば皿まで」、今ルビコンを渡ったという覚悟が、今の自民党に存在しているか? ゼレンスキーも、自分が今のような立場にさせられるとは、去年の初めまで思いもしなかったはずだ。
「NATOには入るが、ロシアは攻めてこない」とどういう根拠があってか言い続けてきたその結果、「国の若者、壮年を数十万単位で殺し続けている大統領」。ゼレンスキーのこの言明は、アメリカに欺されていたのだと、僕は思う。去年4月だったか、「東部を放棄して停戦・和平へ」と進められた交渉も、なぜか突然頓挫させられたのだし。
『お返事は・・ (文科系)2023-03-18 12:01:42
お返事は、貴男のブログに書きました。世界の多極化という見方は、例えば元共同通信の田中宇(の通信)などもずっと主張してきたこと。長く続いた米ソ冷戦体制が終わって、国際民主主義が進めば、こうなって来るのは言わば人の道の必然でもあるべきこと。これからは、アジア、アフリカ、中南米が主張するように、国連が重くなって当然と考えてきましたし、そうでなければならないと思う。
それを、G7だけで世界のことを決めるようにやってきた体制自身が憎まれているはず。G7唯一の欧米でない国、日本は、少なくともG20をもっと重視すべきだ。G7唯一白人国家でなく、キリスト教国でもない国とは、これからはもっともっと国際的強みになるはずであって、従米一辺倒は理もないうえに、損にしかならない。そう考えたら、日本発展の課題は一度に増えてくる。
日本外交史で今でも思うのが、このこと。20世紀末のアジア通貨危機の時に日本が出して、困窮しきった近隣諸国から強い要望も出ていたアジア通貨基金構想。あれが、なぜ、実現できなかったか。反対するアメリカに服従し直したからだ。あれが実現していたら、世界の平和や経済に対する日本の貢献力や、日本の1人当たりの富は、今とは比較にならぬ大きさになっていただろう。以降の通貨危機も減ったはずの世界も、今とは全く違ったものになっていたはずだ。』
日本にはこのように、今の貧困化、少子化を避けうる道もあったのである。しかも、こう言う道を採れと当時、遺言としてのように叫び続けて来た日本人経済学者もいたのである。森嶋通夫。この日本で数少ないノーベル経済学賞候補者が20世紀末に「アジアとともに。これが、必至と予想される没落を避ける日本唯一の道」と叫び続けていたのだった。
日本の政治家にできることって、それほどに重大なことがあったと振り返ることができる。森嶋は政経用語として「政治的イノベーション」というものを提起したが、政治次第で経済も大きく左右されるという意味だ。それが、選挙のための利権政治しか考えていないような政治家ばかりだったから、日本経済も没落したということなのである。20世紀末の日本に勢いがあった時に、やがて閑古鳥が鳴いて壊すしかないような箱物をせっせと全国に作らせていた国政!
2019年8月19日、米の経団連に当たる経営者団体、ビジネス・ラウンド・テーブルが大々的に発表したのが、有名なパーパス文書。パーパスとは「目的」のことで、この文書は、企業の目的をこう変更すると声明したもの。この声明の新聞報道記事の見出しは、
『株主最優先を米経済界転換』
この記事の書き出しはこうだった。
『米主要企業の経営者団体「ビジネス・ラウンドテーブル」は19日、株主の利益を最優先する従来の方針を見直し、従業員や顧客、地域社会など全ての利害関係者の利益を尊重する新たな行動指針を発表した。これまで米経済界は「株主利益の最大化」を標榜してきたが、大きな転換点となる』
また、ノーベル賞経済学者クルーグマンもまたこの前後に、こう語り始めていた。
「アメリカの製造業を支えてきた中間層が経済・社会的な大変動に見舞われることに気付かなかった。中国との競争でアメリカの労働者が被る深刻な痛手を過小評価していた」(ニューズウイーク日本版2019年12月3日号)
そして、この23年4月には、こんな事が起こったが、上記パーパス文書の延長線上のものというのは明らかだろう。
現代ビジネスが、米のサリバン大統領補佐官による4月20日のある講演内容を紹介している。その最も短い要約は、このようなもの。
『自由貿易や規制緩和による市場重視の経済政策から、補助金を使った産業政策への大転換を宣言した。これは「新しいワシントン・コンセンサス」と呼ばれている』
この新しいワシントン・コンセンサスとは何か。旧来のワシントン・コンセンサスの諸要素、「貿易自由化」「海外直接投資」「(各国)政府事業の民営化」「規制緩和」「各国家の財政規律の維持」などなどは以降どうなっていくのか。
サリバン大統領補佐官が唱えたこの中身は、バイデン大統領が直面している4つの挑戦に応えるものなのだそうだ。①米国産業基盤の空洞化、②地政学的安全保障競争、③気候変動危機下のエネルギー改革、④不平等とそれによる民主主義への打撃。
①と②は、中国によって「もたらされた」もの。③と④とは、アメリカ自らが先頭に立って、日本や西欧、さらには搾取されたグローバルサウスを含めた世界に招いてしまったものである。
ところで、この新ワシントン・コンセンサスが、去年以来三つの経済・金融関連大事件に端を発していることも明らかだろう。最初が、GAFAのそれぞれ万人をこえる膨大な人員整理。次が、リーマン以来の米銀行連鎖倒産とその煽りと言えるクレディスイス倒産。最後が、2011年以来初めてと言われるフィッチ・レーティング米国債格下げである。