九条バトル !! (憲法問題のみならず、人間的なテーマならなんでも大歓迎!!)

憲法論議はいよいよ本番に。自由な掲示板です。憲法問題以外でも、人間的な話題なら何でも大歓迎。是非ひと言 !!!

世界震源マグマど真ん中の日本  文科系

2016年10月31日 10時21分54秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)
 以下のこの文章は、この間にここに要約①~③などをしてきた著作「金融が乗っ取る世界経済」関連の10本ほどのエントリーを実証的各論として、その上にまとめ上がった世界情勢の最も大きい総論ともいうべきものの積もりです。ここの10月8日エントリーにこの本の後書き自身ほとんどを『ドーア本あとがき、「米中関係」で「挑発」』と題して転載しましたが、以下はこの本を読み終え、ここに種々紹介してきた今の僕の「後書き」に当たります。よろしく、ご一読下さい。


 ここに何度も書いてきたように、米国は国家も家計も大赤字だ。

 元米国家監査院長によって国家自身の各種累積赤字が65兆ドルと報告されたのは、つい最近のこと。それでいて年間軍事費はいつの間にか冷戦時代の2倍になっていて、年60兆円も使っている。アメリカの家計も大赤字で、破産者が多い。1600兆円を超える貯蓄があるから、国家に1000兆円を超える赤字があっても円の世界的信用を維持している日本とは違うのである。アメリカには、サブプライムバブル破裂前後に家を取り上げられた破産低所得者は無数だし、消費者ローン破産者も巷に溢れかえっている。

 さて、こんな状況で年間軍事費60兆円をどう維持していくのか。この維持が出来なければ、アメリカは早晩パクスロマーナ、無敵艦隊スペイン、大英帝国と同じ轍を踏むことになろう。そこで浮かび上がって来るのが、金融である。つまり、アメリカ金融が現在世界振動の大マグマになるはずだ。

 アメリカは物の貿易収支はずっと大赤字なのだから、金融収支に国の存亡を掛けるしかない国に、90年辺りからなっている。世界各国の通貨に空売りをかけて通貨危機をあちこちで起こしたり、サブプライム・ローン組込証券のようなデリバティブを世界中の小金があるが無知な例えば学校法人などにまで巧みに売りつけて大損させたり、外国企業の株を買い占めてその操作に励んだり。株の操作は、原則こんな遣り口である。一つは、資産が多い外国企業の筆頭株主になり、その資産を売り払って株をつりあげてから、これを売り抜く。今一つは、ちょっと長期の筆頭株主になって経営権を握り、リストラに励んで株を吊り上げて売る。こういうこと、つまり金融の国際競争力を育成、奨励したいアメリカ国家だからこそ、ソロスやバフェットのような大投資家にキャピタル・ゲイン税15%などという猛烈な減税優遇を施してきたのだろう。また、こういう世界経済への金融支配の結果として、世界中に失業者や不安定雇用者が溢れることになったのだろう。

 さて、以上のような世界情勢認識からアメリカの今後の国家戦略を考える時、こんなことが浮かび上がってくる。現世界最大の資産国、日中の資産狙いだ。だからこそ、一昔前の原油操作狙いの中東重視戦略から、西太平洋重視へと世界戦略の方向転換を最近図ったのだと、僕は観ている(もちろん、歴史的結果としてイスラムの国々から徹底嫌悪されてしまったということもあるだろうが)。それも、出来るだけ日中が手を組まないように、相互反目、離反を謀りつつ。こういう目で観て初めて、以下のようにいろんな事も見えてくるのではないか。

 最近日本のGPIF投資が10兆円を越える損益を出したようだが、あれはアメリカの仕業だろう。日本最高の金融頭脳にこれだけ多額な損をさせるというような金融経験を持った大物は、いくらレバレッジを掛けた遣り口を使ったとしても、これ以外には考えられない。
 また、小沢、鳩山の「徹底排除」はその日中接近姿勢への妨害工作としてあったのだから、今の南シナ海問題にもこんな視点が必要だろうと考える。ここからまた、フィリピンのドゥテルテの反米姿勢、「中比2国間交渉主義」姿勢は、今後のアメリカが陰陽両様で大問題にしていくはずであって、この問題にも日本は否応なく巻き込まれることになるだろう。ちょうど新政権代表団を組んで真っ先に中国を訪れた小沢一郎が嫌悪、排除されたように。
 また、こういう目で観れば、韓国の大統領の国家機密漏洩問題も怪しいと愚考している。彼女が中国に接近したのは、アジア通貨危機やリーマンショックなどを通じて日米に金融搾取されたからだと僕は観てきたが、この対中姿勢が今度は日米から嫌悪され、排除されようとしているということだ。

 こうして僕には、日本の右の方方がこういう日米問題を大きく取り扱わないのが不思議で仕方ない。今の米国に付いて行っても、良いことなど何もないのである。金融搾取が謀られたり、日米集団安保法制よろしく「軍を出せ」といわれて日本人が70年ぶりに他国と殺しあいを演じるぐらいしか。それとも、「集団安保法制は形だけで、対米『物』輸出を続けさせていただくため。金融搾取はこれを跳ね退ける」などという芸当が、果たして可能なのかどうか。

 今の米国大統領選挙を観て、日本国民も気付くべきだと思う。「どちらがより嫌われ者か?」という激論が、「どちらがウォール街に近いか?」という批判合戦になっている。日本国民こそ、サンダースのようにウォール街からの距離を取るべきではないか。(日本と同じように)不安定労働者、相対的貧困者が先進国ではダントツに多いのは、金融立国だからと気づき始めた米国国民が、そんなことを教えてくれていると思う。
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素人から金を奪い取る方法   文科系

2016年10月29日 05時11分28秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)
 以下は、「金融が乗っ取る世界経済」関連で、最近書いた二つのコメント。サブプライムバブルがこうして発明され、起こり、膨大に膨らんで行き、そこに世界中が巻き込まれ、結果1000兆円という膨らんだ資産が世界から消えていき、その結果世界の素人が大損をしたのに、玄人は最も速く損から逃げていた上に、国家による税金救済があったという、その仕組みの一端をご披露したという、そういうコメントです。
 ただし、以下の前者、ギリシャはこういうもの。「死ぬほど金が欲しい人々こそ、われら最大の顧客である」。これ、あるアメリカの投資会社社長の言葉ですが、そんな人々でも資産がなければ問題外、つまり相手にはしてくれません。国家は流石に資産がありますよね。土地も建物など国家資産も、何よりも莫大な今後の税金がある、この将来の税金を「国民に回すのではなく、借金返済に回せ」というのがこう言い換えられるのである。
「何よりも財政再建!」
 金が欲しい、中小国家って、欺しやすいでしょうね。無数に欺されてきたはずです。


【 ギリシャ問題の本質 (文科系)2016-10-14 05:03:08
 一時世界で大騒ぎされた、ギリシャ国家財政危機問題。この一方の本質が、アメリカはゴールドマンの仕業とこのブログに何回も書いてきました。そのことが、この書「金融が乗っ取る世界経済」には、きっちりと解説してありましたね。こんな風に。

『企業ばかりではない。国家もそうである。ギリシャの金融危機が深刻化したのはギリシャ国債の空売りに加えて、新契約の裸のCDSの掛け金がどんどん上がってギリシャ政府が発行する新国債の利子率が急騰したためである。ドイツなどはその裸のCDSの取引を禁じているのだが、そういう取引を歓迎する金融センターが世界中にたくさん残っている』(P200)
 
 この文章の意味がきちんと分かる人が日本にどれだけ居るでしょうか。僕はこれをなんとか理解するのに、1時間以上かかった。それも、今も尚数学に強い我が連れ合いにこの前後を読んで貰った上でちょっと討論できた末のこと。「ギリシャ国債の空売り」、CDSなどはともかくとして、「裸のCDS」とか、「ギリシャ国債のCDS掛け金がどんどん上がる」とか「(すると)新規国債の利子率が上がる」とか。 
 こんなに難しいものを国民が知って反対し始めるまでには、歴史的時間が実に多くかかるもの。だからこそ、文中のこんなことも起こっているわけです。
『ドイツなどはその裸のCDSの取引を禁じているのだが(、英米では認められている)』

 裸のCDSとは何か。この金融保険の「裸の」って、難しすぎてここでは説明のしようがないので、作者の文章から易しい比喩的説明だけをあげておきます。
『保険法だったら、隣の家に黙ってその家に火災保険をかけることは禁じられている。全く当然だ。放火罪奨励はとんでもないことだからである。しかし社債のCDSの場合、国によっては、そのとんでもないことがまかり通る』(P199)
 かくして、この「裸のCDS」ゆえに、こんなことが無数に起こってきた。火災保険が掛けられた家の持ち主でない人々が、この家を燃やして保険金を貰おうという行動を密かに始めるのだ。さらにそのために、安い掛け金の同じ家の別番号CDS保険を無数に買い集め始める、とか。ちなみに、これが家でなくて社債の保険であるならば、間違いなくその会社を潰していくことになります。安い掛け率の保険が買い占められたら、新たな社債を発行しようにも利子率が高くないと誰もこれを買ってくれない。よってこの会社はもう、会社存続のための新たな借金もできなくなるという理屈です。

 皆さん、ギリシャはこうして潰されました。アメリカのゴールドマンがやったことです。】


【 情報の非対称性 (文科系)2016-10-26 02:28:25
 藤田保健衛生大学の関係者に聞いたことがあります。学校の虎の子の金を奪われたでしょ。裁判をするとかしないとか聞いてますが、やっても負けますよ。「合法的な泥棒」なんですから。その方は、こう応えられました。
「本当に、あんな泥棒みたいなことができるんですね。みんなそう言ってますよ」

 と、こんなことが世界で南山大学も含めて一定金を貯めている法人などで無数に起こったのがリーマンショック、あのバブル弾け。こう言ういかがわしい商品を勧める時には、上の「裸のCDS」などは最大限利用されたはずだ。こんなふうに。
「この商品の大元には保険がかかっていて、破綻のようなことは起こりません。起こったら保険金が出るということですし、これが信用になってAAA格付けが付いているんですから!」
 大学関係者などはころっと欺されますよね! 情報の非対称性というものです。金融工学では、これが最大限に利用されて、無数の詐欺が起こっているということでしょう。
 ネズミ講みたいなものを超高額で売る。ほとんど金がない人に家を売り、その借金証書同様の債券を不特定多数に売りつけるって、それが「信用のおける金融商品」というAAA格付けが付いているって、格付け会社も含めて「合法的な泥棒」という理解しかできないはずです。こんな大々的仕掛けがある高等な手口は、何と解説したらよいのでしょうか?
「大枠を隠して、詳細で欺す。そういう情報の非対称性詐欺」
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金融派生商品の説明  文科系

2016年10月28日 10時10分37秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)
 今の連続書評「金融が乗っ取る世界経済」で、金融派生商品というのが最大問題になっている。その説明が必要だろうと考えた。その大元の原理だけに触れておきたい。

 消費者ローンでも住宅ローンでも、借用証書がある。これは、借りた方が貸した方に出す証明書。これを債券として出すのが社債や国債。一定利子が付くのは同じだが、こちらはお金と同じような意味を持ち、売買も可能なもの。つまり、この売買のたびに貸し主がどんどん代わっていくわけである。

 そしてさて、この社債などと同じ考え方で、種々のローンの貸し主が借用証書(債権)を証券化したものが金融派生商品の元である。いわば、「誰か、貸し主を代わってくれ」というわけである。焦げ付きなどの危険が高い借金から出来た高リスク債券とか、低リスク債券でも元のローン返済が急に怪しげになったりしたら、利子を高くしなければ売れない。低リスク商品は、まー貯金しているようなものだ。ここからの最大問題は、このこと。高リスク商品は当然売りにくいのであるが、首尾良くどんどん売れていくようにできれば、儲けが凄いことになるということをご記憶願いたい。そこで、ハーバード大学院の数学科主席卒業というような優秀な頭脳が、高リスク商品を大々的に売れるようにする手をあれこれと考え出していくことになる。

 さてそして、この証券化商品というのをまた、色々に分割して組み合わせることができる。これは、1銘柄の株を買うのではなく、投資信託を買うようなものと言えばよいだろうか。とにかく、様々な負債を組み合わせるのであるが、そこに高リスク債券を巧みに切り分けてもぐり込ませていく。低所得者に売りつけた住宅ローンからできたサブプライム・ローンの債券でも、これにちょっと安全な債券を組み合わせれば信用が「保証された」証券ができあがるという理屈だ。「高リスク貸し金を分散することによって、お金が貸せないような貧乏な人にも貸し出せるようにしたという、夢のような商品」というわけだ。リーマンショックの前のサブプライム・バブルは、これが爆発的に売れたということなのである。つまり、ネズミ講同様大いに売れている間は自転車操業的資金繰りに困るどころか、大いに儲けも上がるということ。
 ただ、バブルはいつか弾ける。昔のオランダのチューリップバブルが弾けたように。これは、ネズミ講が永久には続かず、どこかで破綻するのと同じだろう。


なお、最近の書評「金融が乗っ取る世界経済 21世紀の憂鬱」が原因だと思いますが、当ブログアクセスがこの9月ぐらいから特に最近は、急に増えています。一昨日が、アクセス215、閲覧数1539、昨日が229の1611。この記念と言っては何ですが、この本の最要点をまとめた昨日のコメントを転載させて頂きます。以下の知識こそ、今これに苦しめられている世界の人々が最も知るべき事と僕は考えています。不思議なことにマスコミは、以下のような解説を全く流していません。この点ではまさに報道管制が行き届いているとも言えるほど。例えばサブプライム証券化商品などは、情報の非対称性があってこそ売れていくということなのでしょう。

【 らくせきさん (文科系)2016-10-27 21:10:08
 らくせきさんのコメントで言われているこの「逆転」こそ、正に現代世界。実体経済のために生まれた金融が、実体経済をその使い走り、道具にしたこと。金融世界の取り分のために、現実世界の人件費を初めとした出費が、すべて最少にされてきたわけです。現物経済の中にしか存在しない職場というものもどんどん少なくなる。その象徴数字が、エントリーの中のこれ。

『企業から「金融市場への支払い」が、その「利益+減価償却」費用とされたキャッシュ・フロー全体に占める割合の急増。アメリカを例に取ると、1960年代前半がこの平均20%、70年代は30%、1984年以降は特に加速して1990年には75%に至ったとあった』

 これでは、米社会全体が金融に貢いでいると言えるわけで、この全体を見ればまーとんでもない変な社会ですよね! これがあなたの言う「逆転」の正に徴表。日本社会をもこう換えようとしてきた例えば竹中平蔵はまた、とんでもない奴ですよ。

 かくして、エントリーにある「ゴールドマン幹部社員50人の最低17億円ボーナス」が生まれ、社長でも金融の馬車馬を努めたお人の給料だけが上がっていく。モトローラ社長の100億円に驚いてはいけない。史上最高給記録はディズニー社社長アイズナーで、6億ドル近い額だ。何と600億円。これ、年俸ですよ。500万円の社員が12,000人雇える金額です。これではディズニーランドがその儲けの割に従業員も増やせず、パートばかりということで、社会に職も増えず世界中が失業者、不安定職ばかりになる理屈。人が少ない企業ほど株価が上がり、それへの配当が増えるんです。これでは、アメリカのファンドや機関投資家に株を買い占められた外国企業は、社員減らしに戦々恐々となる理屈です。つまり、アメリカ金融が世界に失業者と不安定就労者を創っている。こんなことが続くのでは、世界の景気など良くなる訳がないと思います。】
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「よたよたランナーの手記」(173)筋力低下が速くなった  文科系

2016年10月28日 09時21分00秒 | スポーツ
 前回これを書いた14日以降、こう走った。すべて、ジムのマシンによる1時間走行の距離である。16日に8.4キロ、19日7.7キロ、24日8.2キロ、27日8.2キロ。前回までに分かった改善すべき以下の点に留意して走ったわけだが・・・

①ウオームアップを最低15分は取る。
②後ろ足の蹴りを、左右同じフォームで均等にする。
③9キロ時の心拍数を145程度までに抑えるように②も含めて、あれこれ工夫してみる。

 心拍数は、7キロ時で130ちょっと、8キロ時で140弱、9キロ時で145~150と幾分下がってきた。ただ、確かに筋力などの衰えが早くなったとしっかりと分かる。ジムでなり、特にジムに行かない合間の日なりで補強運動を増やさないと10キロ時などでは長く走れなくなっているから、今のままでは心拍数も下げられないだろう。10キロ時で一定走らないと、9キロ時の心拍数も下がって来ないのである。そんなこんなと、いろいろ模索中という現状。

 常用速度が果たして10キロ時まで戻るのかというと、今それは疑問だ。9キロ時の汗が多すぎるようになったと感じるから、現状維持が精一杯になったのかも知れない。なんせ、30分2回を走るのに、シャツが2枚いるようになったのである。こんなことから考えても、要注意の大事な時期に差し掛かっているようだ。

 ただこんな判断保留条件が、一つある。前立腺癌の放射線治療前の薬をずっと飲んでいて間もなく終わるのだが、男性ホルモンを抑え、女性ホルモンを増やす機能を持っているのでこれが筋力や心肺機能に影響している可能性がある。としたら、来月で薬が終わるので体力復活があるかも知れない。そんなわけで、陽子線治療が始まる12月の前に復活があるのか無いのか、今意識している改善点を励みつつ、要観察というところ。
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随筆紹介 「古ミシン」    文科系

2016年10月27日 09時20分58秒 | 文芸作品
 古ミシン  H.Tさんの作品です

 友人や近所の方に会うと、このごろよく出る話題が物の始末。これがなかなか出来なくて、家族とトラブルにまでなってしまうこと。
戦中戦後には貧しいというか、食べ物も着る物もなくて、生きるのがやっとの時を過ごしてきた私達。“わかる、わかる”と皆頷くが、私も同じだ。物を整理しようと思っても、捨てなければと自分に言い聞かせても、疲れるだけ。

 そんな中で気になっているのが、若いころから愛用してきたミシン。足踏みで直線縫いだけの古ミシン。今はミシンも大きく変わり、電動式で、スイッチ・ポン。縫い方も色々出来て、場所も取らず、机の上で使える見た目にも美しい物ばかりだ。
 年を重ねた今の私は、ミシンを使って物を作ることはほとんどなく、部屋の片隅に置いたままになっているだけ。少し前、若い人が欲しいと言ってくれて、譲ることに決めたが、急な転勤でその話はお終い。
 それから何年かして、友人が使ってくれることになり、喜んだ私は、数年間も使ってなかったからきちんと準備してと、ミシン屋を探した。新機能満載のミシンはデパートに売っているのに、整備、修理をしてくれる所はなかなか見つからない。
 ある時若い人に頼んだら、数日後に、
「探したけど、今時古ミシンを直して使う人などいない。新しいのを買う方が安くつく」
「高い安いの問題ではないんです……。それに、これはSミシンです。一応ミシンの有名ブランドなんです」
「あら、ミシンにもメーカーがあるんですか」
「そうよ。伊勢湾台風で塩水に浸かった数多くの中で、使えるようになったのはこのブランドだけと話題にもなりました」
「伊勢湾台風って、いつの話ですか?」

いろんな人に尋ね、電話帳でも調べたが、見つからない。
 “捨てる文化”という言葉もあるというが、これは私が愛用してきた物。
 友人は「そのままでいい。私の方で整備も修理もするから」と言ってくれるが、私はきちんとして渡したい。
 やっと見つけた店に、私は行った。店先に新しい機種がずらりと並び、奥の方で七十歳を過ぎた主人が私の願いを聞いて下さり、ほっとしたその上に、
「見てあげましょう。やってあげましょう」と言われる。そして、「出張費……円」、「分解して、きれいにするのに……万円」、「友人の家までの運送代が……円」。
納得して欲しいと、念を押された。
そして、二、三日もしたらこちらから電話しますと言いながら、ミシンを持って行かれた。

 物を大切に、大事にすることは、心を豊かにすることだという。“もったいない”という言葉は、古語になってしまったのだろうか。調子が悪くなったら、おじさんが自転車で修理に来てくれた昔が懐かしい。
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「金融が乗っ取る世界経済」理解のために    文科系

2016年10月26日 03時24分18秒 | 文化一般、書評・マスコミ評など
 このブログでこれまで、この本の要約・紹介・書評を3回、関連エントリーと合わせれば10本もの拙稿をあれこれと書いてきたかと思います。そのなかで最も大事なものを、こうお勧めしたい。本全体の内容としては、要約①~③(9月24日、10月1日、そして19日)が先ず上がりますが、金融化そのものの歴史的統計推移を書いたエントリーこそこの本の理解を最も助けてくれると確信します。これが同時に「金融化が実体経済を支配するに至った経過、その程度」を示すからです。そういう意味で是非、9月28日のエントリー『米企業社長たちが「金融の馬車馬」に』をお勧めしたいと思います。ここをお読み願えれば、他のすべてが分かりやすくなるはずです。

 重ねて、今のアメリカは、この複雑な金融化現象が分からねば何も分からぬに等しいと思います。また、これが分からないと、「アメリカの日本、世界へのごく自然な、かつ必然的な働きかけ」の最も深い所が分からないに等しいとも。
 よろしくお願いいたします。
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随筆紹介  葉子さんの生涯    文科系

2016年10月25日 10時43分00秒 | 文芸作品
 葉子さんの生涯  H.Sさんの作品です

 昭和三五(1960)年、転勤でA市民病院に勤務した。看護婦として病棟に配属された。配属された病棟で葉子さんに出会った。当時、葉子さんは、私が配属された病棟の婦長さん。私と葉子さんの関係は、上司と部下と言うことになる。私が準夜勤務(午後四時から午後一二時)をしていた時、当直で病院全体の管理をしていた葉子さんは、巡回中、看護婦詰所(ナースステーション)に立ち寄り、患者さんの病状が落ち着き穏やかな時間がある時は、自分の歩いて来た日々を振り返り、笑いごとのように、私に話してくれた。
 大正一五年生まれの葉子さんは、従軍看護婦としてフィリピン、ミンダナオ島に派遣され病院に勤務。昭和二〇年、終戦を迎え引き揚げてきた。二年後、最愛の人に出会い結婚。結婚生活五年で最愛の人は結核で他界。守らなければならない一歳の男子と三歳の女子の命が託された葉子さんは、二人の幼子を抱えて働く母となった。病院から自転車で五分のところにある市営住宅に住んでいた。その住宅は、木造平屋建。一棟を板壁で仕切り二軒に区切るお粗末な造りだったが、その頃はこれが普通の住宅だった。ガラス戸を開けると小さな土間、六畳二間と小さな台所、汲み取り式便所つき。風呂はないので、住宅に住む人みんなが住宅の真中ある銭湯を利用していた。道幅三メートルを境に向き合うように何軒もの建物が密集。市の職員、教員、会社員等、職業も多種多様の人達が暮らしていた。住宅のはずれには古い神社があり、そのお宮の神主さんが、戦争で夫を亡くし、幼子を抱えて働く女性達の子供を預かる保育園を始めた。葉子さんも二人の子供を預けて働いていたが、病棟勤務となれば月八、九回の夜勤がある。実家から母親が応援に来たが、母親一人で背負いきれるものではない。市営住宅に住むおばさん達が、交互に泊まり込み、幼子の面倒を見てくれた。看護婦は女性としての給料は良いと言われていたが、一人働きでは、当時の生活は賄いきれなかった。電車に飛び乗り、駅七つの距離にある実家に援助をしてもらうため、度々、駆け込んでいた。

 母親に耳打ちすれば必要なお金は兄が葉子さんに手渡してくれたが、「今日は、何円、妹に渡した」と、兄がその妻に正直に言うことが、葉子さんにとっては耐え切れないことだった。兄嫁も意地悪な人ではないが、〈また妹がお金の無心に来た〉と思われていると、葉子さんは卑屈になったと言う。母親に「兄嫁にはお金をもらいに来たとは言わないでくれ」と頼んだ。母親は「それはダメ。内緒ごとがばれたら夫婦の中が悪くなる」と、きつく言い返した。
 ミンダナオ島での戦争体験よりも、葉子さんにとっては、実家へお金の無心に行く事の方がもっと辛かったと語ってくれた。その頃の私は、女が子育てをしながら一人で働くのは大変なことだという思いばかりに捉えられ、実家に無心に行かなければならない事情がよく呑み込めていなかった。お金は何に使ったのだろうと疑問に思ったが、葉子さんに聞く事はしなかった。お金は、二人の幼児を守ってくれたおばさん達への、心づけだろうと推測はした。今思え当時の社会背景をもっと知っておれば、葉子さんが笑い話で語る事の中身を深く知ることが出来たはずだと、知力のなかったことを申し訳なく思っている。

 大正一五(1926)年、葉子さんは一歳の時に父親を失った。六歳の兄が父親の遺産のすべてを相続した。預金、家、田畑、宅地、貸家等だ。当時、妻である母親と実子である葉子さんには、女だと言う理由で相続権はなかった。
 現在なら、父親の遺産の半分は妻が相続、後の半分を兄弟で分ける。兄弟二人の葉子さんは四分の一の相続が認められるので、兄さんにお金を都合してもらうことをしなくても生活出来たはずだ。情報が全く庶民に行き渡っていなかった当時、葉子さんも私も法律のホの字も知らなかつたので、女が金に困れば頼るところは実家しかないと思い込んでいた。

 そんなこんなで大変だったが、私が出会った時の葉子さんは、子供達も小四、小六に成長し、管理職になっていたので、仕事での責任は重くなったが、夜勤は当直が月一になり、夜は子供たちの側にいることが出来るようになっていた。
 病院は、勤務する人全員が、休日に休めない職場だ。
 日曜、祝祭日に、子連れで参加できる人達を集め、葉子さんは小さな旅を計画した。回覧板を病棟、外来、事務室に回し、参加出来る人を募った。女性ばかりの子連れ集団が、電車に乗り、隣町で降り、徒歩で小高い山に登り、持参の弁当持を広げる。一面に広がる稲田、小さな木造密集住宅、その先には何物にも遮られることのない瀬戸内の海が広がっていた。たったそれだけの事だが、子供達は山すべり、木登りで大はしゃぎ。参加者達は気持よいお喋りを楽しんだ。
 男性職員が子連れで参加を希望してきた。この人たちは日曜日には、奥様が、子供から解放され体が楽になると機嫌がよい。次もご一緒したいと言ってくれた。
 平成二八年九月初め、葉子さんの訃報が届いた。九〇歳だった。
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随筆 「全体主義的感性」    文科系

2016年10月24日 11時40分13秒 | 文芸作品
(同人誌の月例冊子用に、15日エントリーを大幅改作してみました。比較してみて下されば嬉しいです)


 高校時代のある友人と昨日偶然会った時に、孫の教育で悩んでいるらしく、こんな話がいきなり堰を切ったように出された。同時にそこにいた同期女性の一人が小中教員だったからなのだ。
「近ごろの学校教育はどうなっているのかな。どうも戦後の米国流個人主義が日本人を駄目にしているように感じる。教育勅語を読んでみたけど、結構いーこと書いてあるよね」
 話はそこからどうも、個人に義務や道徳を強調し、教え込む必要というような話に移っていった。「なんだか、安倍首相と同じだなー」、そう僕は考え込んだもの。

 そうなのだ、社会に不公正、不幸、不道徳が多くなると、誰かが上からタガを締めるべきというよくある発想なのである。誰が、どのようにタガを……が不十分なら当然、旧ソ連や北のような全体主義に繋がる発想でもある。人の内面が荒れる現実的な原因をきちんと問うていない場合に、すぐに心が原因になり、ただ心を締め直せという安易な発想が出てくるとも言える。こういう人は、日本がまだ世界一安全な先進大国に辛うじて留まっているという点や、よってこういう社会悪傾向には世界的な原因があろうとも、観ようとしていないのである。原因を日本国内だけに求めている口調がその証拠になる。そこで一計を案じた僕のある質問から、こんな討論になった。
「世界も荒れてるから、当分戦争は無くせないよね?」
「なに、君は戦争は無くせると思っているのか?」
「当然そうだよ。無くせない理由がない」
「戦争は絶対になくならんよ。夫婦ゲンカもなくならんようにね。動物だってそうだし」
「やっぱりそう語ったね。ならば言うが、動物、夫婦のケンカや、村八分なんかが全部同じ原因で起こると観るという意味で、これらの背後に同じ本質を想定するのは馬鹿げている。そういう考え方は、既に誤りとされた社会ダーウイニズムと言うんだよ」
「君は絶対と言ったね? 絶対の真理なんて語ることこそ、馬鹿げている!」
 そんな言葉を捨て台詞にして、憤然と立ち上がった彼。向こうへ行ってしまわれた。ご自分も「戦争は絶対に無くならん」と絶対真理を語られたのは、お忘れらしい。僕もそうなのだが、こういうお方も短気なのである。

 さて僕のこの論法は、十年やって来たブログの数々の論争体験から学んだもの。個人同様タガが必要に見える国にも自然に戦争が想定される時代というものがあって、国同士の生存競争こそ国家社会の最大事と主張する人々が現れる訳だ。
 さて、ここが大事な所なのだが、「上からタガを締めろ」とか「国家の最大事は戦争である」と感じ、考える人はほぼ必ず政治的には右の方と僕は体験してきた。つまり僕のような左の人がこういう人に他のどんな現実的政治論議を持ちかけても何の共通項もなくただ平行線に終わると。言い換えればこういうこと。いったん上記二点のような相手の土俵に入ってこれ自身を決着付けておかなければ、他のどんな「現実的」話もすれ違うだけと、体験してきたつもりなのである。個人の悪や不道徳などがなによりもまず個人の心の中から生まれると観るなら上から心を変えるしかないのだし、そんな時代の国と国との間では国連のような調整機関は無力と観て戦争を覚悟しなければならない理屈だろう。

 この二つ(心のタガと、社会ダーウィニズム的感性)は、いずれもそれぞれの問題、その原因を現実の中に問うて、現実を変えるという道が見えなくなる考え方なのだ。それどころか、現実は悪、心がそれに抗していかねばならないという感じ方、「思想」と述べても良いかも知れない。いずれも、全体主義に結びつく考え方だという自覚は皆無なのであるが、僕は結びつくと考えている。ヒトラーも東條も、それぞれ優秀な民族が乱れた世界、人類を鍛え直すという意気込みを国民に徹底したと記憶する。そのためにこそこの戦争を聖戦として行うという決意表明、大量宣伝とともに。
 ちなみに、あの時代も今もその現実世界は同じこういったものと観ている。二九年の世界恐慌から、弱肉強食競争へ。強食から見たら子供のような弱肉を容易に蹴倒していける世界になって、普通の人々は生きるためにどんどん道徳など構っていられなくなっていく。今の強食がまた、普通の日本マスコミは報じないのだが、桁外れである。アメリカ金融の一年のボーナスを例に取ってみよう。二〇〇六年の投資銀行ゴールドマンの優秀従業員五〇名は一人最低一七億円もらった。二〇〇八年全米社長報酬トップ・モトローラ社長は、一億四四〇万ドル(約百億円」)のボーナスを貰った。これで驚いてはいけない。二〇一一年に出たある経済書の中には、こんな記述さえある。
『今でも、米国でよく槍玉に挙げられるのは、雑誌の個人報酬ランキングのナンバーワンあるいはナンバーツーになるウォルト・ディズニー社社長のアイズナー(数年前に、ストック・オプションも含めて五億七五〇〇万ドルという記録的な額を得た)……』(ドナルド・ドーア著、中公新書「金融が乗っ取る世界経済 二一世紀の憂鬱」P一四七)。
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朝鮮日報より ~他山の石~    らくせき

2016年10月23日 09時46分27秒 | Weblog
韓米両国の国防長官は20日(現地時間)、ワシントンで開催された定例の安全保障協議(SCM)において、戦略爆撃機や原子力潜水艦など米軍の戦略兵器を韓半島(朝鮮半島)に常時循環配備する問題について意見を交換したが、合意には至らなかった。これらを韓半島に1年365日配備し、北朝鮮への抑止力を高めることは韓国側が以前から望んできたことだ。これが実現すれば、米国が提供する核の傘が効果を発揮するまでの時間が短縮され、戦術核の再配備に準ずる効果がもたらされるとの期待があったからだ。しかし結論は「追加の措置については今後検討を進めていく」というものだった。


 前日に開催された韓米外務・防衛担当閣僚会議(2プラス2)直後の共同会見で、尹炳世(ユン・ビョンセ)外交部(省に相当、以下同じ)長官が「明日のSCMにおいて(戦略兵器配備の)合意が予想される」と発言したため、韓国メディアは「米国は前向きな反応を示した」と報じていたが、米国の考え方は韓国の期待通りではなかったのだ。


 しかも韓国側の期待とは関係なく、SCM後の共同声明には、米戦略兵器の常時循環配備に関する具体的な言及は一言もなかった。もちろん中国やロシアを刺激しかねない内容を文書に明記するのは不適切とする戦略的な判断があったと考えることも可能だ。韓米両国の間で事実上の合意があったとしても、外に向けてはそれを違った形で発信することもあり得るということだ。ただ韓米の国防長官の間に意見の食い違いがあったことは間違いないようだ。韓国国防部の韓民求(ハン・ミング)長官はSCM直後に現地特派員らの取材に応じ「われわれはそれ(戦略兵器の配備)をもっと具体化する必要があると訴えたが、具体的な話し合いは後日というのが米国の考え方だ」と説明した。韓長官の説明から推測すると、米国は韓国の要求を事実上拒否したと解釈することも可能だろう。


 今後われわれが望むレベルの合意が形成される見通しは決して明るくはない。1年365日にわたり戦略兵器を韓半島に配備し、これを維持するには莫大な費用が必要だ。しかも米国が韓国に配慮し、世界中に展開する戦略兵器の運用計画を簡単に見直すとも考えにくい。米国としては中国の反発や南シナ海の領有権争いなど各地の対立が激しくなる状況で、北朝鮮制裁に向けた各国の協力関係が崩壊することへの懸念もあっただろう。


 今回の結果を韓米同盟次元の問題として過大に解釈する必要はない。しかしたとえ同盟国であったとしても、彼らにも独自の利益や考え方があり、それがこちらの求めよりも優先されるという現実を今回改めて確認できた。つまり米国が何度も言及する核の傘や拡張の抑止も、米国の利益や考え方によってはいくらでも変わるということだ。ただ一方で米国の今後の動きに無用な疑いを持ち続けることも不適切だ。1つ明確にしておくべきことは、われわれは自らの力で自分たちを守らねばならないという事実だ。全ての準備はその覚悟の上に行われなければならない。

            

アメリカは中国とことを構える気力も力もなくなってきているのでは?
日本のアメリカ頼みの外交にも注意信号が・・・

ひとつの対策として日韓のさらに深い政治・経済・軍事協力が必要かも。
しかし、それは両国がリアルな現状認識とタフな外交能力を持っていて可能なこと。
それは余り期待できない。とすれば・・・


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映画「チリの闘い」3部作を観た  文科系

2016年10月21日 08時20分15秒 | 文化一般、書評・マスコミ評など
 昨日名古屋シネマテークでのこと。アメリカが起こした1973年9月11日の世界史的クーデターを図らずも前段階から目撃、撮影することになった噂の3部作を観に出かけた。2回の休憩を挟んだ合計上映時間は、4時間を優に超えたと思う。選挙で生まれた史上初の社会主義政権、大統領を、軍部クーデターが倒したという、その始終を記録した映画である。要所の報告という形式で、以下を進める。

 チリにアジュンデ大統領が自由選挙によって生まれたのは、1970年11月。その時からテレビ・ニュース映画用に撮影を始めたものを編集して、繋いだ作品なのである。監督パトリシオ・グスマンが、史上初めてのこの「政治的実験」を記録に収めるべく各方面へインタビュー撮影などを行っていた、その成果というわけだ。
 第一部はまず、右派が総力を上げたアジュンデ政権不信任投票とその政権側勝利から始まっていく。この敗北から右派がいろんな政権破壊工作を強めていき、いずれも失敗した末に、二部の最後に大統領府への空爆、軍部突入、大統領殺害クーデーター完遂で終わるまでを描いている。三部は言わば、二部までの補完作品と言って良いだろう。

 僕のメモにある、これを書くために残した記録を中心に順不同で描いていくと・・・

① アメリカが、この国への輸出を急速に止めていき、最後には往時の15%程度に仕向けて行ったこと。これはつまり、国民生活を困難に陥れる目的、反政権感情の増大を狙ったものだったと解説されてあった。

② アメリカCIA工作員が、最多時40名入っていたこと。また金銭面では最高時500万ドルの政権転覆工作資金も流れたということ。

③ この国のGNPの2割を占める銅鉱山操業を反革命ストライキで都合75日間止めて、最大の外貨獲得手段を妨害したこと。これも、国民生活を困難にする政権妨害工作なのである。

④ 運輸業経営者団体がそのトラック使用を許さないというロックアウトを敢行して、細長いこの国の物流を止めることによって、国民生活を困難に陥れたこと。他にも、生活必需品の大量隠匿が全国的に摘発されるなどという民生妨害もあった。

⑤ 軍幹部将校らには、公然と政権反対を唱え、はなから文民統制には従わぬ姿勢を示していた者も多かった。軍幹部ら高級軍人が護憲派と反護憲派とに公然と別れていた。海軍には、護憲派が多かったとあった。なお、後に軍事政権首班となったピノチェトは、「護憲派幹部」と目されていたとあった。政変後に反憲法派の黒幕として正体を現した訳である。また、アメリカがチリ軍将校らをパナマの軍事訓練学校に招いて、教育、訓練してきたという暴露もあった。

⑥ 軍隊が次々と出動を始めて、労働組合事務所などを徹底的に捜査して、人民が武器を持っていないかどうかと調べ尽くしていったという事実も撮されていた。結局どこにも何も武器はないということを確認し続けただけだったのだが。

⑦ 一度大統領官邸を戦車で包囲して警護関係者と撃ち合いになり、22名の警護官を殺し、国民の反応を伺うという様子見を敢行している。つまり、武力による政権転覆があるだろうということは、クーデターのかなり前からもはや公然となっていたのである。

⑧ アジュンデ政権が和解の相手に選んで連立政権が成功しかけたカトリック教会(キリスト教民主党)の動きを潰したと言う数々の場面もあった。

⑨ 最後に、あの細長い国の沿岸部に4艘の米駆逐艦を集結させて、その上でチリ軍部が大統領府爆撃を始め、その後に官邸突入、大統領殺害に至ったということ。大統領に「降伏・亡命」が事前提案されていたが、彼がこれを拒否して敢えて官邸に入り、そこに籠もって射殺されたというのも史上有名な話である。自ら希望して彼と同じ道を往った警護官が20数名いたとも解説されてあった。


 この後の、政権側関係者、労組役員、共産党や社会党の党員などの逮捕、殺人などが起こっていったという事実は史上よく知られているが(競技場などに多数集められて、その後行方不明者多数がでたと聞いている)、その経過は当然ここには撮されてはいない。監督が映画と共に首尾良く亡命を果たしているからである。このカメラマンに献辞が捧げられていたから、彼は亡くなったのだろう。
 こうして史上初の選挙による社会主義政権誕生を追いかけ始めた映画が、政権転覆結末を撮ることによって終わったわけである。その後の軍事政権によって没収されずに済んだのは奇跡に近いと言われてきた映画である。
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日本会議の天皇観は・・・  らくせき

2016年10月20日 10時12分25秒 | Weblog
朝日新聞の記事で、日本会議代表委員の加瀬英明氏が
「天皇とは何なのかを、今の天皇は全然理解していない」と。
自分と天皇で天皇観が違うと思った時、
正しいのは自分で間違っているのは天皇の方だ、という。
日本会議は、戦前の軍部の先鋭将校と同じ考え。
天皇を見下し、自分の野望に利用しようとする集団。



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「9条」=「現実」ということ  文科系

2016年10月20日 03時01分38秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)
 昨夜長いコメントを載せたので、エントリーにも上げさせていただきます。15日の『随筆「全体主義的感性」』に付けたコメントです。


【「9条」は信仰ではない   2016-10-20 00:32:51

 sicaさん、ご応答有り難うございました。良い折ですから、長い回答を試みてみます。

 さて、「僕の9条堅持論」は、2016年2月19日拙稿を読んで頂くとして、言われる所の「信仰の部類」という理解については、僕は賛成しかねます。長くなりますが、以下五点に渡って、思いつく所を述べてみます。

 第一に、9条派をこうみなす人に限って、社会ダーウィニズムよろしく、戦争が永遠の人間真理と案外強く信じ込んでいるだけと見ています。それも、以下のような長いスパンで見た世界史状況に不案内のままにそうなっている。
 現代では普通の国家の普通の元首などでは開戦決意などは、なかなか出来なくなっていると認識しています。以下四点はすべて、こういう認識の根拠とも言いたいです。

 これに関連して僕が第二に言いたい事が出てきます。今の中ロなどへの世界大戦級の戦争はなかなか仕掛けられるものではない。こんな国レベルの戦争などしようものなら、世界大恐慌程度では到底済まない大被害が起こる。そんなことは、いざ考えてみれば誰にも分かることだ。なんせ、ムーディーズやフィッチという格付け会社のランク付け取り入れまで含めて、中国も世界経済に組み込まれている時代です。ましてや、日本に攻めてくる国があるなどは多分もう、幻想の世界かと。もし中国が日本を攻めるようなことがあれば、中国の輸出が止まるだけで世界は大混乱。そこからまた再び、中国都市部には多くの餓死者さえ出て来ることさえ予想されるはずだ。

 第三に、日本右派は意識して無視していますが、国連というものがあります。国連を利用はするが無視することも多いアメリカでさえ、これに逆らった大々的戦争は出来なくなりつつあると考えています。そんなヒトラー以上の汚名を、今時どんな大統領が覚悟できるでしょうか。
 つまり、人類が初の国際平和組織を20世紀初めに作ってからこれが浸透してきた度合いは、社会ダーウィニズム信奉者(無意識だが実質これと同じ考え方というのも含めて)と僕には見える日本人が想像するよりも遙かに大きいものがあると考えてきました。
 国連総会などでは、アメリカが圧倒的多数で総スカンをくうことになった例えばニカラグア決議数本などのようなことも多いんです。だからアメリカは国連嫌いなのだが、アメリカの大失敗・イラク戦争は、もはや世界の戦争を巡る趨勢に決定的だったと思いますね。イラク戦争に参戦した西欧同盟国政権などは、その後ほとんど潰れましたから。イラクがくちゃくちゃになって、イスラム国も生まれましたから。これも今や、世界中が知っていることだ。
 ちなみに、アメリカという国は世界からもう半分孤立しているとともに大国から滑り落ちつつあると見ています。今の外貨金融搾取政策以外の何かがなければ、経済大国としては20年と持たないと思います。アメリカ1国ではもう、BRICSにさえ政治的には対抗できぬ時代になっていきつつある。だからこそBRICSは、「西欧と一緒になって」国連をますます強調するようになったのではないでしょうか。ちなみに、アメリカも国連海洋条約などに入らねば、南シナ海の中国批判など到底説得力を持たない状況とかもありますね。

 第四に、日本人が案外意識していない、この事も強調したい。EUの存在です。第二次大戦まで世界の先頭に立って戦争をしていた国同士が一つの国を形成していこうという流れですよね。そして、このEUがますますBRICSに接近している。アメリカには、これがまた眼の上のタンコブ。今のドイツを相当意識し、嫌っていますよね。

 第五に、日本には、意識してこういう国連・世界関連ニュース(NGOなどの大々的働きかけも含めて)が入らないようになっている。これは外務省とマスコミが結託して創っている状況だと僕は見ています。外務省が特にアメリカべったりって、ウィキリークスでも何回かすっぱ抜かれましたから。その程度も何か、恥ずかしいほどに。
 例えば、以下のような世界の動きを、どれだけの日本人が、特に右の方々がご存知でしょうか。手元にあるのは少し古い資料ですが・・・・。
 2001年のスイス・ダボス会議に対抗した「ブラジルはポルトアレグレの世界市民フォーラム」には、NGO代表などが世界から6万人も集まっています。これに引き続く2004年「インドのムンバイのフォーラム」では10万人を越えていました。ここには、アメリカのNGO代表参加なども日本人が考えているよりも遙かに多いはずです(多分、チョムスキーも参加しているはずです。僕がここで良く紹介する人文社会系の大学者です)。これらの動きと、ニューヨーク占拠運動とか、社会民主主義者サンダースの予想外の躍進とかの反ウォール街運動は密接な関係があると理解してきました。】
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書評③ 各国、世界機関の金融改革を巡って   文科系

2016年10月19日 10時41分28秒 | 文化一般、書評・マスコミ評など
 ドナルド・ドーア著「金融が乗っ取る世界経済 21世紀の憂鬱」(中公新書2012年6月第5刷発行)の終章である第3章は、計4節に分かれている。「国際協調」、「適切な報酬制度」、「現状維持に終わる金融改革」、「金融化は不可逆的か」。これを、順不同で要約していきたい。サブプライムバブルが弾けた後のG20やそのサミットでどんな改革論議がなされ、対立があって、ほぼ元の木阿弥に戻ってしまったか。リーマン以降、ロンドンG20から、10年のソウルG20とそのサミットまで、世界の金融規制論議経過は省いて、書かれている改革の内容自身を観ていきたい。

 ロンドン大学政治経済学院の「金融制度の将来」には4つの目的がこう書かれているとあった。①実体経済を攪乱しないように。②破綻金融の税金救済の問題。③そんな金融機関の報酬が高すぎる問題。④高報酬により人材が集まりすぎる問題。
 また、2010年11月のG20ソウル会議でもっと具体的に4つの討論がなされ、抽象的合意だけが成されたと言う。①銀行規制。②金融派生商品契約を市場登録すること。③格付け会社の公共性。④新技術、商品の社会的有用性。
 以上から何が問題になってきたかをお分かりいただけたと思うから、G20ソウル会議の4項目の順に討論内容などを観ていきたい。

 ①の銀行規制に、最も激しい抵抗があったと語られる。また、現に力を持っているこの抵抗者たちは規制提案に対して「否」と言っていれば良いだけだから、楽な立場だとも。国家の「大きすぎて潰せない」とか「外貨を稼いでくれる」、よって「パナマもケイマンも見逃してくれるだろう」とかの態度を見越しているから、その力がまた絶大なのだとも。この期に及んでもなお、「規制のない自由競争こそ合理的である」という理論を、従来同様に根拠を示さずに押し通していると語られてあった。

 ②の「金融派生商品登録」問題についてもまた、難航している。債権の持ち主以外もその債権に保険を掛けられるようになっている証券化の登録とか、それが特に為替が絡んでくると、世界の大銀行などがこぞって反対すると述べてあった。ここでも英米などの大国国家が金融に関わる国際競争力強化を望むから、規制を拒むのである。つまり、国家が「外国の国家、法人などからどんどん金を奪い取ってきて欲しい」と振る舞っているから換えられないと、酷く暴力的な世界なのである。

 ③格付け会社の公準化がまた至難だ。その困難の元はこのようなものと語られる。アメリカ1国の格付け3私企業ランクに過ぎないものが、世界諸国家の経済・財政法制などの中に組み込まれているという問題だ。破綻直前までリーマンをAAAに格付けていたなどという言わばインチキの実績が多い私企業に過ぎないのに。ここで作者は「ワイヤード・オン」という英語を使っている。世界諸国家法制にムーディーズとかスタンダードとかの格付けランクがワイアーで縛り付けられているという意味である。この点について、こんな大ニュースが同書中に紹介されてあったが、日本人には大変興味深いものだろう。
『大企業の社債、ギリシャの国債など、格下げされると「崖から落ちる」ほどの効果がありうるのだ。いつかトヨタが、人員整理をせず、利益見込みを下方修正した時、当時の奥田碩会長は、格付けを下げたムーディーズに対してひどく怒ったことは理解できる』(P189)
 関連してここで、つい昨日の新聞に載っていたことを僕がご紹介したいのだが、こんな記事があった。先ず見出しは、『国際秩序の多極化強調BRICS首脳「ゴア宣言」』。その「ポイント」解説にこんな文章が紹介されていた。
『独自のBRICS格付け機関を設けることを検討する』
 15日からブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ五カ国の会議がインドのゴアで開かれていて、そこでの出来事なのである。ついでに、日本でこういう記事はまず大きくは見えないようになっているということも付け加えておきたい。なお、この会議宣言4つのポイントすべてにおいて「国連」が強調されていたということも何か象徴的なことと僕には思われた。国連を利用はするが無視することも多いアメリカと、国連を強調するBRICSと。
 とこのように、国連や、G7などではなくG20やにおいてアメリカ以外の発言力が強くなっていかなければ、金融規制は進まないということなのである。

 最後に、「④新技術、商品の社会的有用性」について。金融商品、新技術の世界展開を巡る正当性の議論なのである。「イノベーションとして、人類の進歩なのである」と推進派が強調するが、国家の命運を左右する為替(関連金融派生商品)だけでも1日4兆ドル(2010年)などという途方もない取引のほとんどが、世界的(投資)銀行同士のギャンブル場に供されているというような現状が、どうして「進歩」と言えるのか。これが著者の抑えた立場である。逆に、この現状を正当化するこういう論議も紹介されてあった。
『「金作り=悪、物作り=善」というような考え方が、そもそも誤っているのだ』
 金融が物作りを「攪乱」したり、現代世界人類に必要な新たな物作りへの長期的大々投資を事実上妨げているとするならば、それは悪だろう。関連して、世界的大銀行は、中小国家の資金まで奪っていくという「罪」を史上数々犯してきたのである。そして、世界の主人公である普通の人人の生活、職業というものは、物(作り)とともにしか存在しない。

 この本の紹介はこれで終わります。ただし、この著作中に集められた膨大な数値などは今後の討論で折に触れて適宜ご紹介していくつもりです。「金融が乗っ取る世界経済 21世紀の憂鬱」という書名をどうかご記憶下さい。

(終わり)
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解説 空売りと通貨戦争と    文科系

2016年10月18日 13時09分31秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)
 現在要約中の「金融が乗っ取る世界経済 21世紀の憂鬱」をそれなりに理解して頂こうとすると、標記の「空売り・通貨戦争」理解がどうしても必要になります。そこで、以下の拙稿を転載させていただくことにしました。この通貨戦争なるものが世界史で最も激しく起こった「アジア通貨危機」の発端であるタイ・バーツ通貨戦争を専門家が解説したもの。これを、僕が紹介した旧稿を転載します。「日本の銀行を含む」世界の主要な金融機関がやったと書いてあります。1980年代には「NICS」と呼ばれて世界的にも経済が栄えたタイや韓国の外貨がすっかり底をついて、その経済が沈滞していった原因となった90年代の世界史的大経済事件でした。
 なお、「金融が乗っ取る世界経済」の要約③(最終回)は、明日載せることにしました。


【 世界経済史の今を観る(6)通貨危機の仕組み・タイの例 2013年03月29日

 24日の拙稿『随筆「退廃極まる政治」』を連れ合いに読んでみたら、この部分をもっと分かりやすく知りたいという。
『「投機家はタイに自己実現的通貨投機をしかけた。一ドル二五バーツに事実上固定していたタイ・バーツが貿易収支の悪化から下落すると予想し、三ヶ月後に二五バーツでバーツを売りドルを時価で買う先物予約をすると同時に、直物でバーツを売り浴びせた。タイ中央銀行は外貨準備二五〇億ドルのほとんどすべてを動員して通貨防衛を試みたが力尽きた。」(東洋経済「現代世界経済をとらえる VER5」二〇一〇年。一二一頁)』

 今日はタイのこの問題に最も詳しい専門家による解説をご紹介したい。なんせ通貨危機というのは、「1970年から2007年まで世界208カ国で起こり」、各国恐怖の対象とされてきたもの(岩波ブックレット12年刊 伊藤正直「金融危機は再びやってくる」P3)。世界金融資本の最大暗躍手段・場所の一つであって、世界各国から「通貨戦争」とも呼ばれている。なお、このタイ通貨危機は、97年の東アジア通貨危機の発端・震源地になった事件として非常に重要なものである。
 毛利良一著「グローバリゼーションとIMF・世界銀行」(大月書店2002年刊)243~244頁から抜粋する。

 『通貨危機の震源地となったタイについて、背景と投機の仕組みを少しみておこう。タイでは、すでに述べたように経常取引と資本取引の自由化、金融市場の開放が進んでいた。主要産業の参入障壁の撤廃は未曾有の設備投資競争をもたらし、石油化学、鉄鋼、自動車などで日米欧間の企業間競争がタイに持ち込まれた。バンコク・オフショアセンターは、46銀行に営業を認可し、国内金融セクターが外貨建て短期資金を取り入れる重要経路となり、邦銀を中心に銀行間の貸し込み競争を激化させて不動産・株式市場への資金流入を促進し、バブルを醸成した。
 このようにして流入した巨額の国際短期資本は、経常収支赤字の増大や大型倒産など何かきっかけがあれば、高リターンを求めて現地通貨を売って流出する。投機筋は、まずタイ・バーツに仕掛け、つぎつぎとアセアン諸国の通貨管理を破綻させ、競争的切り下げに追い込み、巨大な利益を上げたのだが、その手口はこうだ。
(中略)1ドル25バーツから30バーツへの下落というバーツ安のシナリオを予想し、3ヶ月や半年後の決済時点に1ドル25バーツ近傍でバーツを売り、ドルを買う先物予約をする。バーツ売りを開始すると市場は投機家の思惑に左右され、その思惑が新たな市場トレンドを形成していく。決算時点で30バーツに下落したバーツを現物市場で調達し、安いバーツとドルを交換すれば、莫大な為替収益が得られる。96年末から始まったバーツ売りに防戦するため、タイ中央銀行は1997年2月には外貨準備250億ドルしかないのに230億ドルのドル売りバーツ買いの先物為替契約をしていたという。短期資本が流出し、タイ中央銀行は5月14日の1日だけで100億ドルのドル売り介入で防戦したが、外貨準備が払底すると固定相場は維持できなくなり、投機筋が想定したとおりの、自己実現的な為替下落となる。通貨、債券、株式価値の下落にさいして投機で儲けるグループの対極には、損失を被った多数の投資家や通貨当局が存在する。
 投機を仕掛けたのは、ヘッジファンドのほか、日本の銀行を含む世界の主要な金融機関と、大手のミューチュアル・ファンドをはじめとする機関投資家であった。また、1999年2月にスイスのジュネーブで開かれたヘッジファンドの世界大会に出席した投資家は、「世界中を見渡せば、過大評価されている市場がどこかにあります。そこが私たちのおもちゃになるのです」と、インタビューで語っている。』

 以上につき僕の感想のようなことを一言。一昨年11月15日の拙稿に書いたことだが、日本の銀行協会の会長さんがこんなことを語っていた。「不景気で、どこに投資しても儲からないし、良い貸出先もない。だから必然、国債売買に走ることになる。今はこれで繋いでいくしかない状況である」。ギリシャやキプロスの危機を作っているのは、普通の銀行なのである。こんな状況で円安・金融緩和に走っても実体経済や求人関連にはほとんど何の影響もなく、株バブルや上記タイのような(通貨、株、国債などの)バブルつぶしに使われるだけという気がする。要は、それ以外の投資先そのものがないのだ。そこを何とかしなければ何も進まないと思うのだが。つまり、供給側をいくら刺激してもだめ、ケインズやマルクスが指摘したように、需要創造が問題だと言うしかないではないか。リーマンショックが起こった時に、心ある経済学者のほとんどから「ケインズ、マルクスの時代か」と言われたのは、そういう意味だったと思う。】
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重ねて、「僕の当ブログ方針」   文科系

2016年10月18日 08時28分56秒 | 国内政治・経済・社会問題
 祝、新潟知事選の大勝利!

 昨夜のアクセスは196、閲覧数も1240。これは、本当に驚いた。昨日と一昨日はエントリーがなかったから、「少なくなるに違いない」と凄く心配して起床真っ先にここを観た目に飛び込んできた数字だったからである。僕がここをやってきた経験則からこの3日ほどに色々やったことの反省も含めて、仮説を立てつつ何故かと考えてみたが、これだけの要素と結論できる。まー、このブログを読まれている方々のアクセス動機、お人柄の一端を探るというような文章と言えないこともない。

①政治だけでなく、文化をも同等以上に扱っている。
②この間の「金融が乗っ取る世界経済」(関連エントリー数本)と、15日の「全体主義的感性」とが、左右両方の人人に読まれた。
③新潟知事選の影響

 ③は、ここをやっていて10年、ずっと確認できたこと。「9条バトル」などという政治名を付けてやるブログは、そもそも左の人人が元気でなければここを覗く気も失せて、アクセスなど増えないもの。ここの10年で大きな選挙を控えるごとに週間アクセスが2000を越えるなどと盛り上がって行く傾向が常に見られたものである。
 ②は、この4週間ほど、ひしひしと感じてきたことである。アクセスもさりながら、特に閲覧数が増えてきた。週間累計閲覧数がこの2週7,024と7,854となっているが、この7000越えは6月12日からの1週間以来のことで、少ない今年の夏時期2週では2000台さえあった。なおこの4週間ほどと言えば、現日本の政治情勢認識にとって最も必要なものと強調したい名著「金融が乗っ取る世界経済」関連の記事を7本も書いてきたその初めの頃である。
 こうしてつまり、エントリーがないこの2日も皆さんが訪れられて、こういう過去記事を多く読んで下さった。

 そして、①である。僕は常々こう書いてきた。
①政治論議だけのブログが何が面白いか。普通の人間が感じられないという意味で、リアルでないから面白くないのだと考えてきた。語り手の人間が見えない文章など、僕自身が読む気も起こらない。
②普通の人間、その人の文化(活動)が感じられない「政治人」とか、その主張などは、「抽象的活動家」「抽象的活動」に決まっていると思われていないか。特に日本の政治論議(好き)男性などを観る女性の目からは。
③人生の大目的にはもちろん「生活」もあるが、生活の神髄はそれ以上にむしろ普通の人間生活の楽しい部分、つまり「文化」にある。

 この二日間エントリーはなかったが、僕は三つの努力をした。14日に「よたよたランナー」を書いておいてこの2日にコメントを付けたことと、ギターの過去エントリーにも二つのコメントを付け、15日「全体主義的感性」は随筆形式を用いて書いたことである。ちなみに、文化を実践している人は、そのエネルギーを「その活動を書いた文章」などにもどんどん振り向けて行かれることを観続けてきたつもりである。ちなみに、エネルギーの少ない人に何かを求めてもなんだかナーと、いつも感じてきた。
 こうして、昨日の「人気記事」は、こうなっている。1位と2位に『随筆「全体主義的感性」』と『ギリシャ財政危機と金融』が並んでいるのは当然として、3位が『「中部日本ギター協会」に一言』(大昔のエントリーである)、5位に「よたよたランナー」が入り、7位もこの3日掲載の『随筆「情けないブログ世界」』とあった。なお、「金融が乗っ取る世界経済」関連が3本も入っている。


 新潟知事選挙大勝利おめでとう! とにかく野党選挙協力を進めて欲しい。自民独裁が続いているのに共産党が選挙協力に背を向けてきたその独善性に対して、このブログは、発足時の10年前からこれを批判し続けてきたものだから、この勝利がとにかく嬉しいのである。これから、同盟を中心に協力破壊工作がどんどん強まっていくだろうが、僕もこのブログで頑張りたい。改めて、そんな勇気を貰った思いである。
コメント (1)
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