九条バトル !! (憲法問題のみならず、人間的なテーマならなんでも大歓迎!!)

憲法論議はいよいよ本番に。自由な掲示板です。憲法問題以外でも、人間的な話題なら何でも大歓迎。是非ひと言 !!!

随筆紹介 「子どもの声」  文科系

2015年04月30日 20時38分36秒 | 文芸作品
 随筆 「子どもの声」   K.Kさんの作品

 新聞に「子どもの声は騒音か」が取り上げられていた。
「公園で静かに過ごしたいから、子どもは入れないようにしたい」
 そんな意見だった。子どもは走り回り、大声で泣きわめく。ケンカもする。のんびりとしたい人にとっては煩わしいだろう。分かる気もする。
 そう言えば夫にも思い当たることがある。時々遊びに来る六歳と三歳の孫娘たちにも、少しは相手をするけど、すぐに疲れて「煩い。あっち行け。早く帰れ」と、ドアを閉める。彼女たちは「やだ。帰らない」。夫が逃げた部屋のドアを、開けたり閉めたりして遊びに代えている。夫は自分のペースを乱されるのが我慢できないのだろう。

 近くの保育園でも、隣の家は少し窓が開いていると「煩い」、すぐに苦情の電話があるとか。でも、横並びの隣の家では「いいですよ」。窓全開でも好意的である。それどころか、残り毛糸であやとりまで作って持って来てくれるらしい。
 保育園へ勤め始めたころ、子どもたちの声が響く部屋の中で一日過ごすと、帰宅しても頭の中は夜まで泣き声が残っていた。でも、それから十五年。同じ状況でも平気になった。慣れるものである。

 公園で大声で走り回っている子どもでも、「こんにちは」、話しかけるとおしゃべりも弾み、声も気にならなくなったこともあった。公園の使い方で、うまく折り合いがつけられる道はないのだろうか。
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東海放送人九条の会会報52号から

2015年04月29日 09時13分35秒 | Weblog
政府・自民党の番組介入に放送局の反応の鈍さは問題

                          代表委員 大西 五郎

首相が生出演中に番組構成に異議

昨年終盤から今年にかけて安倍首相やその側近、自民党による放送番組への介入が目立っています。
まず、11月18日に安倍首相は生出演していたTBS「ニュース23」で「アベノミクスは自分たちのところに届いていない」という街の声が紹介されたことに対して番組中に「実態が反映されていない。政権に反対する声を大きくとりあげている」と抗議しました。
首相側近が自民党担当記者を呼びつける
そしてその翌日(衆議院解散の前日)、自民党本部の部屋にNHKを含むTVキー局6社の自民党担当のキャップ記者が一人ずつ呼ばれ、筆頭副幹事長の萩生田光一衆議院議員から「選挙時期における報道の公平中立ならびに構成の確保についてのお願い」という文書を渡されました。そこには▽ゲスト出演者の選定▽街頭インタビュー・資料映像の使い方▽特定の立場から特定の政党出演者への集中がないこと、が書かれていました。

衆院選報道前回比4割減 「公平」要望も影響かと毎日新聞

総選挙後の12月18日に、毎日新聞は「NHKを含む在京地上波テレビ6局で、選挙関連の放送時間が前回衆院選(2012年12月)の同期間に比べ約4割減っていた」と報道しました。選挙期間中の6局の選挙関連の放送時間は38時間21分で、前回の61時間45分に比べ37.4%減りました。民放5局の情報・ワイドショー系番組での放送時間が大幅に減ったのが原因。選挙関連番組は視聴率がとれないとの判断に加え、自民党の“公平要請”も影響したと見られると毎日新聞は分析しています。
古賀茂明氏「政府の圧力で報道ステーション降板」発言
今年に入ってからも政権・与党による報道介入問題が続きました。3月27日にテレビ朝日の報道ステーションでコメンテーター役を務めていた元経産官僚の古賀茂明氏が番組中に、社長の意向などで報道ステーションから降板することになったこと。政権から激しいバッシングを受けていたと発言しました。テレビ朝日は社としてその事実を否定しましたが、古賀氏は番組関係者に政府関係者からメールが届いた事実があると云っています。

番組を特定して放送内容を批判

また最近判ったことですが、総選挙公示直前の同月26日に、自民は福井照報道局長名で24日放送のテレビ朝日報道ステーションについて「アベノミクスの効果が大企業や富裕層のみに及び、それ以外の国民には及んでいないかのごとく紹介する内容だった」として、放送法に則り公平中立な番組作成に取り組むよう配慮をもとめる文書を出していました(4月10日朝日新聞及び毎日新聞)。
番組の内容・構成にまで一々立ち入った干渉です。政権に対する批判が国民の間にどのように現れているかをどう報道するかは報道する側が最も適切と考える方法で表現することであって、政権党から指示されることではありません。
自民党がテレビ朝日、NHKを呼びつける
自民党の情報通信戦略調査会が4月17日に番組内容に問題があったとして、テレビ朝日とNHKの幹部を党本部に呼びつけて事情聴取を行いました。
自民党が問題にしたのは、テレビ朝日の報道ステーションで番組のコメンテーター役だった元経産官僚の古賀茂明氏が番組の中で「菅官房長官をはじめ官邸の皆さんにはものすごいバッシングを受けてきた」と発言した問題で、菅氏や自民党は事実関係を否定しています。NHKについてはクローズアップ現代で“やらせ”があったのではないかとされている問題です。
多くのテレビや新聞の記者が取材しようと集まりましたが、会議は非公開で行われました。事情聴取が終わった後、テレビ朝日の福田敏男専務取締役は「事実関係についてご説明しました」とだけ語り、NHKの堂元光副会長も「説明しただけ」と語りました。
情報通信戦略調査会の川崎ニ郎会長は「テレビ局の社内検証が不十分ならば、BPOに申し立てることも検討する」と、権力の側が放送を規制する姿勢を示しました。

放送法は本来放送局の編成・放送の自由を保障するもの

政府と自民党が放送法を持ち出して放送内容を規制しようとするのは本末転倒です。放送法には
第三条 放送番組は、法律の定める権限に基づく場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない。
第四条 放送事業者は、国内放送及び内外放送の放送番組の編集に当たっては、次の各号の定めるとこによらなければならない。
一 公安及び善良な風俗を害さないこと。
ニ 政治的に公平であること。
三 報道は事実をまげないですること。
四 意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。
と規定されています。番組の編集にあたっての基準は放送局が自主的に守ることを前提にしており、外部(政治権力など)から強制されることではありません(第三条)。政府と自民党が放送法に基いて放送番組を規制しようとすることは言論・報道の自由を侵すことになります。

放送局側の反応の鈍さは問題

これらの政権と与党からの介入に放送局の反応が鈍いことが気になります。直接自民党から報道ステーションのことで批判されたテレビ朝日も番組で自社の立場を説明し、自民党に反論すべきですが、していません。その他のテレビ局ではTBSが「ニュース23」や「サンデーモーニング」でこの問題を採り上げて政府と自民党を批判していましたが、他の局は殆ど無音のようです(長時間の深夜のニュース番組は時間帯が重なって全部の局を視ることは不可能ですが、新聞の番組表を見てもこの問題に触れた項目が見つかりません)。
新聞は挙って政府・自民党の対応を批判
新聞は例えば自民党の情報通信戦略調査会がテレビ朝日とNHKを呼びつけた問題で、朝日新聞が「自民党の放送『介入』は許されない」、毎日新聞は「政権与党は介入を控えよ」、中日新聞は「権力と放送 統治の具と成す不見識」、日経新聞も「首かしげる番組内容の聴取」と社説で批判しています。普段は政権寄りの社説や解説の読売新聞までもが「テレビ幹部聴取、与党として適切な振る舞いか」と批判しています。産経新聞は「自民党とテレビ 番組介入は抑制的であれ」でテレビ局側も安易に介入を招くような隙を見せぬようにすべきだとしています。
放送局は同じ言論機関として新聞社の態度を見習うべきです。

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米、アジアから締め出される?  文科系

2015年04月29日 05時26分44秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)
 中日新聞本日の社説の一つを紹介したい。この新聞を取っていない人や、東海地方以外の人々にも読んで貰いたいというのが、いつもの動機だ。見出しはこう。『和解が新たな地平開く』『経済・通貨外交』。

【 「二十年後、三十年後に米国は締め出されているかもしれない」ー。陰りが見え始めているとはいえ、唯一の超大国アメリカの大統領が今月十七日の記者会見で口にした言葉に、多くの人が驚いたのではないか。
 中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)の実現が三月末、確実になった。これに対し、日米が主導する環太平洋連携協定(TPP)は難航している。失敗すれば米国はアジア経済圏で足場を失い、締め出されてしまうという危機感をオバマ大統領の厳しい顔が示していた。
 それにしても、経済・通貨外交でこれほどの情報収集の失敗はあっただろうか。
 先進国の参加を止めてAIIBの影響力を削ぎたい米国と日本の根回し、情勢判断とは裏腹に英国など先進国は雪崩を打って参加を表明。領土問題で中国と対立するフィリピンやベトナムも加わった。一方、領土や歴史認識での深刻な対立もあり、米国とともに取り残される形となった日本は今、参加すべきかどうか難しい判断を迫られている。
 ただ、より大きな問題は「締め出される」という米大統領の言葉が浮き彫りにした保護主義の陰ではないか。
 TPPなどの地域経済協定は、相手国を選別しない自由な貿易秩序づくりを目指しながら行き詰まっている世界貿易機関(WTO)の補完と位置付けられている。
 そのTPPが日米によるAIIBへの対抗策、中国包囲網に変質すれば、中国も検討中のアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)で対抗し、自由貿易の理念とは逆の地域主義や保護主義、新たな紛争につながりかねない。
 この分水嶺ともいえる時期に日本はどんな役割を果たせるのか。同じ敗戦国のドイツは、戦後の長い年月を費やして周辺国との和解を進め、欧州の経済統合を主導している。
 成長するアジア経済圏で対立を避け、自由で安定した経済秩序をつくるために、日本は先ず中国、韓国との関係を改善し、周辺国との和解を通じた経済外交に取り組むべきではないか。和解と信頼なくしてアジアに新たな地平を開くことはできない。】

 大累積借金の国家財政・日本。国家も家計も大赤字のアメリカ。この二つの国が、そういう困難からこそ近年、アジア通貨危機や「100年に一度の大破綻」リーマンショックで、他国の顰蹙を買ったとも言える。その信頼を取り戻すのは容易なことではない。全ヨーロッパがAIIBに走った背景には、そんなこともあったはずだ。アメリカの引き締めから金利上げへ、日本の三本の矢の失敗から官製バブルもこれに重なってきた。そこへAIIBと、さらにこの後にはBRICS銀行の動きも控えている。八方ふさがりのこの日本が、お隣の中国や韓国と喧嘩していてどうするのかと、そういうことだろう。
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随筆紹介 「ナンパ」   文科系

2015年04月29日 05時10分40秒 | 文芸作品
 ナンパ   S.Yさんの作品

 ショッピングセンターで婦人服のバーゲンセールを覗いていたときのことである。
「奥さん、ええやないの。よう似合うとるわ」男のだみ声がした。声のほうを向くと、お婆さんが胸の前に服を広げて鏡の前に立ち、その横で爺さんが話しかけている。婆さんも「そうかね」と、まんざらでもなさそうだ。「奥さん、いくつやね? 七十八、そりゃあ、わしより大分若いで、もっと派手な服でもいいぜ」ふたりとも笑顔だ。
 じきに私はその場を離れたので、その先のことはしらない。ただの世間話だったのかも。

 独居の年配者が増加の一途をたどっているというご時世。家に籠もっていたら誰とも話さなくて一日が終わることもあるだろう。掛かってきた電話がたとえセールスでも、つい寂しさに話し相手となって心を許し、詐欺まがいにあうかもしれない。
 私だって人ごとではない。三十年ばかり前、見知らぬ今の地へ引っ越してきたはなに、心細さからたまたま訪れた証券会社の女性に気を許し、有り金の大半を投資したことがあった。もちろん大損をした。

 知り合いに老人ホームや施設で「傾聴ボランティア」をしている人たちがいる。何度も同じ話を繰り返し聞くことは、家族や身内ではなかなかできないことなのだろう。偉い作家や評論家の先生たちは、老いたら孤独と付き合う覚悟をしなさいというが、わかっていても寂しいものは寂しい。話し相手はいたほうがいい。人は誰かと関わっていたいもの。私だってまもなく仲間入りだ。
 そんなことを思っていると、ほんとによく中高年のナンパを目にするようになった。
 鉄道関係のウォーキングに参加をすると、私を含めてひとり参加者が多い。先日もゴール地点で休憩しようとベンチに近づくと男性が来た。私はその人に席を譲って近くの他のベンチに腰を下ろした。気配でその男性の隣に女性が座ったようなので、〈ご夫婦だな、席を譲ってよかった〉と思っていたら、「おひとつ、いかがですか?」女性が男性に何か器を差し出した。「やっ! これは……。じや、遠慮なく」男性は驚いたようだったが、果物をつまんで食べだした。会話から、あきらかに初対面の中年(初老)同士だった。これは女性からだから逆ナンパか? 勝手にいろいろと想像するのは楽しいものだ。

 今までに映画館や美術館の前で、「チケットが余分にあるのでご一緒しませんか」と初老男性に声をかけられたことはあった。人と一緒なのがわずらわしくて、ひとりになりたくて来ているのでお断りした。でも今思うと、男性のほうが寂しい人が多いのかもしれない。中高年でも一緒に映画を観たりお喋りしながら食事をしたいのかも。
 面白いご時世になったものだなあ。
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金子勝の情勢論の一部  文科系

2015年04月28日 06時44分35秒 | 国内政治・経済・社会問題
 阿修羅掲示板に金子勝の情勢論が載っていました。抜粋して、紹介します。


『 統一地方選前に株価2万円超え

 500兆円が総額の株式市場に年金資産50兆円を「官製相場」につぎこむGPIFに対し金融関係者からも「巨鯨の生み出すゆがみ」との批判。
年金を株式市場に突っ込めば、年金基金は国債を手放す。日銀がそれを支える。22日にも日銀は1兆1500億円もの国債を買った。結果、2年もの国債はついにマイナス金利に。
 日銀の国債買い付けの「財政ファイナンス」が留まるところを知らない。だが、日銀が国債のほとんどを買う「戦時状態」にあることをマスコミは伝えない。

 選挙の前になると、アベノミクスという麻酔薬を打ち続け、景気回復の嘘をつき通す。その間に、アベの本当にやりたいことは、憲法改正や安保法制だ。

 財政赤字はひたすら社会保障の削減で賄う。ポイント・オブ・ノーリターンを超え、経済はすでに戦時体制に入りかけています。滅茶苦茶です。

 だが、メディアは沈黙です。ファッショの歴史に関する知識がないので、この危険な状況が理解できないのかもしれません。やがて9月の消費税増税の頃に、さらなる破綻が明白になるアベノミクスにも沈黙し、ピンボケなことを言うのだろう。

 この国は引き返せない世界に引きずり込まれていきます

 沖縄県民の8割が辺野古反対なのに、沖縄総合事務局が反対行動の市民を「24時間監視」するいやがらせ業務に、沖縄出先機関の公務員120名が中止要請の集会を開いた。監視が必要なのは県民でなく、暴走する安倍総理、菅悪代官、中谷「防衛」大臣です。

 自民党が社民党の福島瑞穂副党首の「戦争法案」発言の修正を求めたが、民主党の長妻代表代行は逆に、1940年に、斎藤隆夫議員が帝国議会で日中戦争への疑問を表明した「支那事変処理に関する質問演説」などの「反軍演説」の公開を要求した』


 今の政権は暴力政権とさえ思いますね。日本国憲法の立憲主義って、国民が国家権力を縛るものだ。それが、僅か国民の2割ちょっとの実質得票率に胡座をかいて、その「特殊な思想」を国民に押しつけ始めている。立憲主義さえもねじ曲げようという思想がまず上げられる。憲法は政権の義務なのに、ここに国民の義務を数々入れようとしているのがその証拠だろう。
 さらには、マスコミ統制。気に入らないマスコミにはすぐに放送法を振りかざす。今の菅発言もさりながら、第一次安倍内閣のNHK介入も有名な話だ。政権がマスコミに口を出すなどということは、最後の最後の手段であるはずなのに。世界の過去の政権を見ても、マスコミにどんどん口を出すなどというのは碌なもんじゃなかったはずだ。たいていは全体主義的な政権だったということである。
 というように、政治の原則的なことでこの政権に言いたいことは僕も山ほどある。アメリカバブルの失敗、三本の矢の失敗などを隠すのが、今の官製バブル。これが弾けそうになったら、さらに酷いことになっていくという予感がする。


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随筆紹介 「若さと睡眠」   文科系

2015年04月28日 04時35分31秒 | 文芸作品
 随筆 若さと睡眠    H.Sさんの作品

 人の外見はその人の細胞年齢と同じだと大まかに考えてよい、女子大で栄養学の教鞭をとりアンチエイジングを研究している医者が言う。実年齢八十歳のAさんが誰が見ても六十歳に見えるのなら、Aさんの細胞年齢は六十歳で、若い体の持ち主だということになる。逆に実年齢六十歳のBさんの風貌が八十歳の人に見えるのなら、Bさんの細胞年齢は八十歳。ずいぶんご老体ということだ。細胞年齢はその人の体の若さを測るための目安と考えてよい。
 細胞年齢は、生活習慣をかえることで若い方に導く事は可能だと、彼は明言する。

 若さを保つ術は、免疫細胞を活発に働かせて老化を遅らせることに尽きる。免疫細胞が疲労した体細胞を修復するのに一番力を発揮するのが、午後十時から午前五時の七時間だ。この時間に合わせて睡眠をとり効率よく免疫細胞に働いてもらうことだと、力説する。
 持論どうりのことを実行しているためか、この医者の外観はどう見ても四十歳前半だ。栄養学の講義を受けるようになって五年になるが、始めて出会った日と容貌は少しも変っていない。頭髪は黒々ふさふさ、顔色よく、体格頑丈、スタイルは抜群だ。ごく最近、
「私、何歳に見えますか」と、様々な年齢構成の四十名の聴講生に彼が質問してきた。
「四十三歳ぐらいでしょう」
「還暦、すぎておりますよ」との答えだ。一同、顔を見合わせた。
 長年自分の研究でうち建てた学説を証明した見本が目の前に提示されるのだから、これは納得せざるを得ない。

 栄養状態も良くなり、運動習慣を身につけた皆様は病気から少しでも遠ざかる生活を手に入れてきた。次は、健康で活躍する時間をすこしでも延ばし、輝くような若さを保つため、質の良い睡眠を心がけ、眠ることを一大事に考える生活を実行してほしいと彼は説く。
 どうやら、睡眠の時代が到来したようだ。

 講義の後、七十七歳の私は自分の姿を鏡に映した。顔には縦横斜め十字に皺が寄り、年相応に背中が曲がり、老けた容貌の全身像がその中にあった。まだまだ元気で出歩きたい。そんな若さは、免疫細胞に元気に働いてもらわないと手に入れられない。
 わたしは十時から床に就くが、寝つきが悪いのでいつも十二時頃まで眠れない。午前三時には目が覚めてしまう。こんな厄介な癖はどう修正すればいいのだ。大いに悩むところとなった。
 彼が提言、実行していることはあくまで仮説ではあるが、試してみる価値はある。
 不眠症が治るかもしれないよ。

 体も頭も疲れて眠くなる時間を午後十時に設定し、五時間ぐらい深い眠りが取れればそれでよい。年とともに動作も鈍くなっている。六時起床を三十分早めた。暑くて外に出れないので部屋の中でこまめに動き回っている。風呂の中で体の屈伸運動の回数をふやした。テレビをやめ読書をすることにした。これを一月ほど続けた。午後九時には眠さが押し寄せ、十時には寝つけるようになった。「この調子」と声援を送り、「睡眠の時代だ。休もう、休もう」と、自分に囁いている。
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ハリルジャパン(8) 専門家予測「ロシアWCメンバー」  文科系

2015年04月25日 02時17分46秒 | スポーツ
 サッカーダイジェスト4月23日号に専門家による18年ロシアWCの日本メンバー予想が載っていた。9人の内8人が4-2-3-1で予想しているから、このフォーメーションにおける各ポジションでこの8人が押す声が多かった選手を上げてみたい。専門家というのは、秋田、福西、木崎、西部、二宮、清水2人などである。

レギュラーはこう

 予想レギュラーはこういうことになる。数字は専門家8人の内押した人数である。ワントップが岡崎(7)。2列目左から、武藤(5)、香川(5)、永井(3)。ボランチが左山口(4)、右柴崎(4)。DFが左から、長友(3)、森重(4)、吉田(右CBで3、左で2)、内田(4)である。

 ダントツ、岡崎! 本田が?

 ダントツだったのが、ワントップの岡崎。8人の専門家の7人までが彼を押していた。これが、3年後の話なのだから凄いことだと思う。次が5人が押す3選手。トップ下の香川、左サイドの武藤、センターバックの吉田だ。これを観ると、岡崎の株が現在いかに上がって来たかが分かって、隔世の感があるほどだ。
 次の4票が集まった選手は多いのだが、驚いたのはレギュラー予想から本田が外れていること。右サイドで2人、左ボランチで1人が押しているに過ぎず、右サイドでさえ永井の3票に負けている。つまり、モスクワではレギュラーになれないという予想なのである。「サッカーマスコミの顔」が形無しというところだ。ハリル好みのスピードで永井に負けたのかと考え込んでみたり、円月板手術をした膝が予想以上に悪いのかも知れないと思ったり。僕が予想してきたように、ミランに行ったのが失敗だったとならねば良いのだが。ミランにとっては元々ただで取った選手、どんな扱いにも出来るのである。

 長谷部、武藤、宇佐美

 長谷部が少なかったのも意外や意外、だった。でも、彼は出てくると僕は思う。長谷部のような総合力の選手は専門家でも案外見えにくいのではないか。岡崎も総合力の選手として使われ続けてきて、やっと今点が取れるようになったと、そういう結果だけを専門家も観ているのではないか。今までそんなに岡崎の評価が高くはなかったはずだからである。
 こういう長谷部、岡崎と対照的な宇佐美が武藤に大差を付けられたのは、僕の認識ではなるほどなのだ。ドイツで成功できなかった理由と同じで、守備が弱い、ダッシュを繰り返せないということだろう。岡崎の1ゲームダッシュ回数が50回近いのに対して、宇佐美はせいぜい30回程度が限度だろう(この場合のダッシュ回数とは、百メートル・15秒程度のスピードの一定距離短距離ダッシュのこと。Jリーグも今年から、ドイツのようにこれを数えるようになった)。この差が守備力の差になって出てくると観てきた。宇佐美はもの凄い長所を磨き、それに頼ってきたので、犠牲にしてきたものも多かったと言えるのではないか。彼はやはり、岡崎、長谷部と対照的に代表世界レベルというものを勘違いをしているのだと、そんな気がしてきた。ただまだ22歳。点取りリザーブ1番手はもちろんだが、今からでも欠陥の修正はできるはずだ。
 
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「よたよたランナーの手記」(116) 8年前の走力に・・・  文科系

2015年04月24日 14時45分57秒 | 文芸作品
 30分2回の各前半は7~8キロ時で走り、各後半を10~11.5キロ時で走るというのが、最近のやり方になっている。そして、22日、前進がさらにはっきりしてきた。

 22日の後半30分では、5.3キロ走れた。これは、10年にカテーテル手術をするに至った心房細動が酷くなる直前の07年以来の記録だろう。高速時の心拍数もその頃と同じように下がってきて、平均するとこんな風になったと言える。まず、時速7キロでは125を切る。10キロ時でも140を切り、11キロ時で145ほどになってきた。これは前の好調時1~2月よりも、同じスピードでの心拍数が5ずつ下がってきたということ。その成果は例えば11キロ時で特に顕著に現れて、当時は160近かったものが今は145になっている。上に書いたように、本日22日に8年ぶりほどで30分に5.3キロ走れたというのは、このように高速の心肺機能が前進、安定してきたおかげなのである。23日にはさらに、時速11.8キロで走ってみたが、これも07年以来のスピードだろう。

 こうしてまたまた、思った。こんなに年をとってもまだ前進できる!

 ただ、何度も言うように身体は明らかに老いているのである。ウオームアップ時間、つまり汗が出始めるまでの時間が8年前は5分で済んだのに、今は15分以上と長くなってきた。ちょっと部分補強運動をサボると、最高速度走行をした日などには例えば膝の疲労痛が出たりする。11キロ時以上で走った時の汗などは、凄い量になる。1枚のTシャツがほぼずぶ濡れになり、その重いこと! 11.8キロ時で走り終わって着替えたシャツを膝にのせた時、そのずしりとした重さに一種心地よさを感じていた。一つの山を究めた感慨でもあったのだろう。近く12キロ時にも挑戦してみようとか、まだまだ夢は膨らんでいく。12キロ時の心拍数も、155にはならないだろうと十分に計算できるからである。155なら、今の僕の守備範囲なのだ。
 こんなに身体は老いても走りがまだまだ前進していると感じられるって、この歳まで試行錯誤して貯えてきた知恵のおかげというもの。故障も以前より少なくなったし、僕のトレーニング方法が僕の身体にどんどん合ってきているということだろう。心拍計と相談しながら走る科学的トレーニングで07年時点の走力にほぼ戻れたわけだが、その威力は本当に凄いものだ。
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世界と米中日、GDPの伸び方  文科系

2015年04月23日 12時29分54秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)
 今朝の中日新聞に標記の数字が載っていた。丹羽宇一郎元中国大使の講演資料として。冷戦が終わった頃から過去25年ほどの伸び方だから、こういうものこそ目前のことに振り回されない近未来を観る力として大変重要な資料になるはずだ。日本人では、マクロ経済専門家には当たり前の知識だが、案外知られていないものではないか。今は、マクロ経済学こそ必要な時代なのだろう。二、三年の「量的変化」に関わる知識、学問だけでは10年後は見えないという「質的変化」の時代に入ったのだと考える。株だけを人為的に上下させて世界の個人投資家の金をかっさらうような、バブル的マネーゲーム時代は、終わった。

世界全体 18兆ドルから74兆ドルへと4倍
アメリカ  5.1兆ドルから15.5兆ドルへと3倍
日本    3兆ドルから4.7兆ドルへと1.6倍

中国    0.4兆ドルから10兆ドルへと25倍。

 世界の進化は怖ろしく速くなっている。世界全体が多く伸びているのが民主主義の進化としてちょっと嬉しいことかも知れないが、その分日米の沈滞はキツイ。世界GDPに占める両国の割合が、45%から27%ちょっとへと急落しているのだから。その分中国が凄い。この数字こそ、AIIBに57ヶ国を集め切った中国の力の温床なのであろう。中国はきっと、日米の相対的貧困者の多さや、マネーゲーム経済による没落から学び、中産階級の育成、内需の拡大に励んでいくことだろう。国内でも、海外インフラ整備などでも。心から、そう期待したいのだが、果たしてどうなることか。

 黒田日銀総裁が首相の経済財政諮問会議で「国債、円、株の暴落可能性」を警告したそうだ。ヨーロッパからも日本に「財政ファイナンス」が指摘され始めた。そんな今、当然の黒田発言と思うが、アメリカとともに、すべてが苦し紛れなのだ。バブルは明白なのだから。アメリカの利上げ時こそ、当面の問題だと思う。
   
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AIIBを巡るIMF前副専務理事(元財務官)の見解  文科系

2015年04月22日 13時40分56秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)
 日経新聞12日朝刊に、AIIBを巡ってこんなインタビュー記事が載っている。政府、外務省などとはちょっと違った見方と感じ、最近の日経にはAIIBについてこういうスタンスもあると読んだのだが、どうだろうか。日本財界の中にこういう意見もあるということだろう。また、この篠原氏がIMF前副専務理事であって、ここの総裁は代々西欧の人。AIIBにいち早く入った西欧諸国にこういう世界情勢分析が多いということでもあろうか。


【 日本、参加で役割果たせ IMF前副専務理事 篠原尚之氏(元財務官)
  米中心の一極構造に転機



 ――中国が準備作業をけん引してきたAIIBをどう評価しますか。
「アジアに新しいスタイルの開発金融機関ができる、という観点でとらえている。世界経済が多極化する中で、新しい構造の国際機関が出てくるのは当然のことだ。1997年のアジア通貨危機に際して、日本が主導しようとしたアジア通貨基金の構想は、米国の反対で頓挫した。今、中国経済は見方によっては米国を追い抜く勢いがあり、米国は抑えようとしても抑えきれなくなっている」

 ――日米が実質的な筆頭株主であるアジア開発銀行(ADB)と、新設のAIIBは並び立ちますか。
「補完関係にできると思う。互いに補完しながら、ある意味で競争する。インフラ計画を進める利用者の側に立てば選択肢が増えることになり、悪い話でない」

 ――日本は3月末の段階でAIIBへの参加表明を見送りました。今後どう対応すべきですか。
「タイミングの問題はあるが、参加せざるを得ない。AIIBはアジアの機関であり、アジアの一国である日本は米国と立場が違う」
「中国や韓国との関係は大事だが、東南アジア諸国連合(ASEAN)との関係は日本にとって『命綱』といえる。ASEANから見ると、日本と中国が拮抗し、けん制し合ってほしいはずだ。地域の枠組みの中で日本の役割を増やさないと、どんどん中国にとられてしまう。ましてや、参加しないなんてことになってはダメだ」

 ――日本がAIIB構想に乗り遅れたとすれば、政府の初動が失敗したとも映ります。実際はどうなのですか。
「答えにくい質問だ。AIIBの統治(ガバナンス)構造や審査について注文を付けるのは重要なことであり、最終的には内部からチェックするのが大事だ。そのためには参加を前提に議論すべきだろう」

 ――英国をはじめとして欧州の主要国がAIIBへの参加を相次ぎ表明し、日米との対応が明確に割れました。日米欧の主要7カ国(G7)の結束は揺らぎませんか。
「かつてはG7が世界経済における大きなシェアを占め、流れを決めてきた。しかし、主要な議論の場がG7から20カ国・地域(G20)に移ってきたように、G7の比重はかなり下がっている。特に開発や環境といった広いテーマはG7だけで対応できない状況になった。それなのにG7の結束を議論しても仕方ない。米政府は議会との関係でAIIBに否定的なままだが、欧州は是々非々で臨む判断をしたのだろう」

 ――中国が近年のユーロ危機に積極対応するなど、欧州との関係を深めたことも欧州各国が参加する判断の背景にありそうです。
「欧州と中国は距離が離れているため、両者の関係は地政学的な要素がなく、経済や貿易の比重が大きくなる。中国との関係を考えるとき、日本と欧州のポジションが違うことはある」

 ――中国は新興国の発言権を高めることを目的とした国際通貨基金(IMF)改革の遅れを批判しています。
「批判は当然であり、中国以外の国々からもさまざまな批判が出ている。加盟国が合意したにもかかわらず、拒否権を持っている米国のせいで実現できないことに対する不満は非常に強い。国際機関は加盟国の相対的な経済力を反映して発言権を与えていかないと有効性を失う。IMFだけでなく、ADBも投票権の配分が変わらず、(見直しに向けた作業を)サボってきた感じがする」

 ――日本は対米関係を軸とした経済外交の基本を見直すべきですか。
「ブレトンウッズ体制と呼ばれる、米国中心の一極構造の国際金融の枠組みが確立して70年になる。早い段階で先進国の仲間に入った日本は、この体制での既得権益を確保してきた。今は新興国がものすごい力を付けてきており、その勢いはしばらく続く。一極構造から多極構造へこの10年程度で変わった。ブレトンウッズ体制を見直すべき時期に来た」
「我々の頭の中には世界で第2位の経済大国だった日本のイメージが残っている。しかし、昔の栄光を追っても仕方ない。今の状況で日本の立ち位置をどう決めるかは本当に難しい作業だ。まだ答えは無いが、探っていかざるを得ない」

 しのはら・なおゆき 通貨外交の要の財務官として金融危機を経験。10年から今年2月まで国際通貨基金(IMF)副専務理事。62歳

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<聞き手から>対中戦略、思考停止脱却を
 AIIBを巡り、中国と日本が接触を始めたのは昨年春ごろだ。それから1年近く、政権内での詰めの議論は乏しく、3月12日に英国が参加を表明してから慌てて間合いを探り始めたように映る。与野党はともに財務省や外務省の対応を批判するが、日本の対中外交そのものが「どうせ中国のやることだから」と思考停止に陥っていなかったか。

 巨大な外貨準備を抱える一方、国内の成長力が陰る中国は、資源の確保や安全保障も絡めてアジア全域に活路を求めている。中国に対する好き嫌いに関わらず、その動きは止められない。

 日本がAIIB問題で米国に同調することは、中国にとっても想定内だろう。裏返せば、日本の出方は読みやすい。相手の意表を突かないと、戦略に影響を及ぼして自身の利益に転じることなどできない。対中戦略は単に「友好」を唱えるのでも、遠巻きに警戒するのでもなく、現実のリスクと利益を冷静に計算する時代に入っている。

(北京=大越匡洋)】


[日経新聞4月12日朝刊P.11
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随筆  「ハリルの魅力」   文科系

2015年04月22日 11時06分28秒 | 文芸作品
 新しいサッカー日本代表監督は、バイッド・ハリルホジッチ。過去の代表監督をずっと追ってきた僕だが、その中でもずば抜けて魅惑的な人間、監督と言いたい。そして、僕なりにこれを描く努力をしてみる。まず、完璧に近い当初二つのゲーム結果と、次いで、それに至った現状分析・チーム修正の見事さ。そして最後に、日本選手評、日本人評に出てきた魅惑的な着眼点や表現の数々。そんな順番で進んでいきたい。

 着任早々の最初の相手、世界二五位のチュニジアには、二対〇で勝利。第二戦、同じアジア勢でいつも苦戦するウズベキスタンは、五対一で負かした。この結果が先ず鮮烈だったが、それ以上に、ゲーム内容に現れた現状分析力とチーム修正能力に驚いた。第一の修正点が、守備陣形の厳しさ。特に、一対一の相手への寄せの甘さを徹底して直していた。第二の修正点は、縦に速い攻撃。横や後ろへの無駄なパスを減らして、タッチ数少なくボールも選手も縦に速く進むようになっていた。ブラジル大会監督ザッケローニもとても良い監督であって、着任直後にこの二つに目を付けた点は全く同じだ。が、指導し切る力に差があったと観る。厳しいハリルと温厚なザックと言えるのだろうが、日本選手には前者が合っているようだ。かと言って、ハリルが人格者であることは全く否定するものではない。それは、後に観る通りである。ハリルは、指導現場では厳しく、その外では一対一の人間としてと、選手との付き合い方を使い分けているようだ。「人としての信頼関係をまず大事にするが、プレーには厳しく。結果も出させてみせる」というわけで、非常に賢いやり方だと思う。

 ハリルのチーム分析などについての言葉、表現力を観てみよう。まず来日直後に日本選手を表現したもの。
『日本代表にはクオリティがある。ただ、ポジティブなものが多いなかで、複数の短所もあり、それらは改善していかねばならない。(中略)このチームは規律、信念、そして自信という面をもっと高めていかねばならない』
 日本選手の短所の筆頭に「規律」を上げた監督を。僕は初めて見た思いだ。ただ僕は、ザッケローニ時代末期にこれが幾分乱れていたと観ていたから、我が意を得たと感じたのである。特に攻撃に偏りがちで、守備陣形がおろそかになっていたはずだ。
 来日後十日ほどたった「報知スポーツ」には、こんな記事もあった。
『画面に映し出されたのは、苦い記憶の数々。失点シーンを流しながら、ハリルホジッチ監督は課題を列挙した。「寄せるレベルがまだまだ、寄せられていない」「マークを簡単に外している」「簡単にボールを奪われる。失点はそういうところから生まれている」「自信がなさそうにプレーしている」―。ダメ出しの言葉は辛辣(しんらつ)だった。
 午前中に行われたミーティング。新指揮官は昨年六月のブラジルW杯三戦や一月のアジア杯など過去の代表戦などを編集した約一時間の映像を用意した。(中略)「この短い期間で僕たちの問題点をしっかり捉えていることは正直、驚いた」とMF長谷部。過去の戦いを厳しく総括し、日本の弱点を代表戦士に突きつけた』
『ミーティング中、指揮官は選手にこう語りかけたという。「批判するために見せるのではない。君たちのクオリティーは分かっている。できるのにできていないから見せるんだ」。』

 さて、当初二ゲームが勝利に終わって、十日ほどたった評はもっと面白い。彼が得点王二回などと選手時代を過ごしたフランスのレキップ紙インタビューから取ったものだ。
『ーあなたはとても晴れやかに見える。
「これは夢のデビューだ。これほど早く、これほど気持ちがよく感じたことはなかった。私が好きなのは、選手たちが常に目を見ることだ。私はこれほどリスペクトのあるチームを見たことがない。ハードにトレーニングし、決して不平を言うことはない。これは並外れたことだ。この態度を見ながら、何かが起こるだろうと私は思っている」』

 最後に彼の日本人評。とても面白く、そこに彼の人格も現れて来る点が特に気に入った。
『ーあなたはすでに日本で有名な人物になっているのか?
「私は通りにでることさえできない! 私は信じられないことを体験している。新聞には至る所に私の写真がある。最初の二試合では、約十人のカメラマンがいて、大半がベンチの私の方へ向いていた! 信じられない。ある夜、事務所での仕事を終えた夜中の一二時ころ、ホテルに戻った。すると二人のファンが私に会いに来た。多分彼らは四歳か五歳ぐらいだった。その後、十分で約二〇〇人の人々がやって来て、夜中の一時まで私はサインをした! しかしリスペクト、心遣いがあるから断ることはできない」』

 仕事に前向きで、世界水準のサッカー指導能力を備え、人の誠意が分かって、それにはキチンと付き合おうとする人柄。そんな姿が浮かんで来る。同じ代表監督イビチャ・オシムが同国人なのだが、戦乱の国、旧ユーゴはボスニアが生んだ二人の「人物」なのだと思う。この二人、攻撃指導方法がそっくりと感じるのは僕だけではないはずだ。二人ともフランスで活躍したFWで、オシムの方が10歳ほど年上である。
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「よたよたランナーの手記」(115) 前進は続いている   文科系

2015年04月21日 12時19分33秒 | 文芸作品

 前回から2週間経った。前回までの好調時から学んで、階段往復と外走りなども交えて一日置き以上で1時間ほどは身体を動かしている。ただ、無理は全くせずLSD(ゆっくり、長時間走る)中心で、この間の1時間最速時でも9.6キロで、好調を維持している。30分2回の各前半は7~8キロ時で走り、各後半を10.5~11.5キロ時で走るというのが、最近のやり方だ。

 好調というのはこういうこと。10.5キロ時が常用速度になったことと、11.5キロ時でも10分は走れるようになったこと。それでも、1時間の半分ほどはLSDでやっている。それが走力の維持、向上に良いと分かるからである。来月74歳になるこの身体でよくまだ前進できるものだと、我がことながら驚き、喜んでいる。
 身体は明らかに老いているのだ。ウオームアップ時間が、つまり汗がで始めるまでに以前は5分で済んだのに15分以上と長くなってきた。ちょっと部分補強運動をサボっていると、最高速度走行をした日などには例えば膝の疲労痛が出たりする。心拍数も減ってきて、155を続行するのは少々きつくなったいる。よって、心拍数155に近くなる11.5キロ時で走った時の汗などは、凄い量になる。1枚のTシャツがほぼずぶ濡れになり、その重いこと!
 こんなに身体は老いても走りがまだまだ前進していると感じられるって、これは年寄りの知恵のおかげというものだろう。僕のトレーニング方法が身体科学にどんどん合ってきているということなのだ。なんせ、59歳からのランナー。頭を使うしかないのである。

 

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 中国、一党独裁の弊害、そして・・・  文科系

2015年04月20日 11時11分47秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)

 昨日こういうコメントを書いたが、これに補足したいことがある。コメントは一部書き直した。

『区別 (文科系)2015-04-19 20:06:40
 現在中国には、大変な2面性があると思う。江沢民時代から続く共産党幹部の腐敗が騒がれているが、これと、現在の共産党(中央)に傷を付けても汚職を無くそうとする潮流と。らくせきさん言われたラオスの(中国による阿漕なインフラ建設支援のような)ケースは、現在の国家自身?の仕業ではないと思うがどうだろうか。
 もちろん、一党独裁の現首脳部を信じるというわけではないが、一党独裁の範囲ではあるにしても普通の近代国家に近づけようとしていることは確かだと信じる。一党独裁の範囲でこれが完遂できるとは思わないが。
 ただもちろん、現在中国のこの国家でも、共和党主導で産軍複合体や金融独占が牛耳るアメリカ政権よりは遙かにましだと思うが。現在中国のどんな罪よりも、地球の裏側まで出かけた嘘の理由イラク戦争やシリア内戦工作ほどの酷さはないと言いたい。
 今の主要国家比較では、大きな問題と小さな問題を区別して論じられなければならない。旧大国は、大悪事をやるにしても中国よりは遙かに洗練したやり方にたけている。洗練しても隠せないのが嘘の理由開戦という大悪事だ。イラクへもシリアにも、この21世紀における独立国に対する戦争を仕掛けたのである。』

 僕がここで上に付加して論じたいのは、共産党が取る民主集中制のこと。この民主集中制と、国家や自治体などの行政処理との関係である。
 結論はこういうことだ。一般行政の決定・命令・実行・報告・評価ルートと、その行政に関わる党員内部の決定・命令・実行・報告・評価ルートとの間で、後者の方が決定や実行のスピードが手っ取り早いところから、前者の一般行政規則・人事がつい無視されがちになるのではないかという問題である。このことには、以下のような一般的難問も加わってくると思う。

 民主主義は時間がかかるし、アイディアや実行や、これに関わる人々の参加や評価も難しいということだ。「民主集中制(における党内決定、実行)は法律を遵守して」と唱えるのは簡単だが、民主主義的に物事を進めて行くには、より多くの人々に大きな決定にも、実行段階の小さな話し合いにも参加して貰ったほうがよく、それには時間がかかるということである。つまり、民主集中制に基づく党内決定に頼って物事を進める方が手っ取り早いのであり、そこに公務員の中で党員が出世しやすいという問題が生じているのではないか。以上のことが、長年公務に携わり、政府最高首脳にまで上り詰めた党員もつい法を軽視、無視して腐敗に染まっていくという、そういうことの温床になるはずだ。

 旧社会主義国が官僚制度に堕した問題は、20世紀の世界政治に甚大な悪影響を与えた。例えば、「いーかげんな『国家計画経済』などよりは、新自由主義競争の方が遙かに合理的かつ民主主義的である」などと。よって、以上は世界の将来が関わって、極めて重要な問題だと考えてきた。

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AIIBに関するもう一つの視点。    らくせき

2015年04月19日 09時08分48秒 | Weblog

中国が主導して設立するアジアインフラ投資銀行(AIIB)。日本とアメリカが参加せず、議論を呼んでいる。

この問題、もうひとつの当事者がいる。被援助国。これらの国々にとっては、どうなんだろうか?

いずれにせよ、先進国が自分の国の企業を使って海外でもうけようというシステム。この主導権争い。

競争があったほうが被援助国にはありがたいかも。  

 

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戦争前夜って、こんなもの   文科系

2015年04月17日 14時34分51秒 | 歴史・戦争責任・戦争体験など

 歴史、国民世論というものがいかに愚かになる時があるかという記念碑として、以下を再掲します。このままだと近いいつか、日米揃って中国に何かしでかすという、そんな気がしてなりません。イラク戦争のような嘘の理由(部分)戦争か、シリアのような内戦攪乱か。はたまた、ロシアに対したように冷戦を仕掛けてハリネズミにさせる道だろうか。とにかく、前の戦争前夜の民衆(の熱狂)ぶりをもう一度紹介してみます。 

【  ”東条英機首相への熱狂ぶりと、その源泉”  文科系

2010年11月24日 | 歴史・戦争責任・戦争体験など
はじめに
 本日ネット虫さんが興味深い記事を載せて下さった。41年12月8日、この日を当時の子どもがどう覚えていたか。これを一気に読んで、すぐに表記の記事を書こうと、僕は思い立った。当時の子どもたちの心にさえ深く刻み込まれた「戦争への感動」、その象徴的存在であった東条首相への熱狂ぶりについて書いてみようと。僕の同人誌にも軍国少年、軍国少女がお一人ずついらっしゃる。お二人とも、その後の人生はなかなか優秀だったろうとお見受け出来る方々である。今は多分、その正反対の人生観をお持ちのはずだが。
 東条英機は、A級戦犯の象徴的存在。41年12月8日開戦時の首相にして内相であって、陸軍大臣までを兼務した、現役の陸軍大将である。また、陸軍参謀総長も兼任していたから、大元帥・天皇の大本営の幕僚長でもあった。彼の前歴には、関東憲兵隊司令官というものもあった。満州国の治安の要に位置する機関であって、35年9月から37年2月のことである。娑婆、「地方」(軍隊は軍隊の外の世界をこう呼んだのでした)、世相にも、よく通じているのである。
 彼は、天皇の信任は篤く、水戸黄門まがいの「民衆査察」を行い、ラジオ、新聞を上手く使って民心を躍らせ、掌握した。ヒットラーにも劣らないその掌握術を、ご紹介したい。種本は例によって、岩波近現代史シリーズ10巻本の第6巻「アジア・太平洋戦争」。この巻の著者は吉田裕・一橋大学大学院社会学研究科教授である。【 】がほとんどであるが、ここからの抜粋を示している。 

1 人々の東条支持熱
 その人気は、一時の小泉旋風などという次元のものではない。戦争の英雄たちの、そのまた大元締、空前絶後の国民的大英雄なのである。そういう大英雄が、マスコミによって実に身近な存在に描かれるところがまた、お見事というほかはないのである。
 【 東条首相は、各地で国民に熱烈に歓迎された。42年7月27日、大阪の中央公会堂で開催された「大東亜戦争完遂国民総力結集大講演会」の折には、講演を終えて退場する東条首相を熱狂した群衆がとりかこんだ。28日付の『朝日新開』は、その場の状況を、「熱狂した数千の聴衆は帽子、扇子を打ち振り打ち振り、〃万歳々々″と歓声をあげ、(中略)あつといふ間に東条さんを取り囲む。「しつかりやります、やりますとも」「米英撃滅だ、東条閣下お願ひします」「東条首相万歳」と群がる市民は熱狂して全く感激のるつぼだ」と報じている。これが誇張でないことは、同日の首相秘書官の記録に、「公会堂発」、「総理自動車会衆の圧倒的歓迎に取り囲まれ約十分、会衆の中を徐行す」とあることからもわかる(伊藤隆ほか編『東条内閣総理大臣機密秘録』東京大学出版社1990年)。
 さらに、東条に関するすぐれた評伝をまとめた作家の保阪正康も、この頃の東条について、「東京・四谷のある地区では、東条が毎朝、馬に乗って散歩するのが知れわたり、その姿を一目見ようと路地の間で待つ人がいた。東条の乗馬姿を見ると、その日は僥倖に恵まれるという〈神話〉が生まれた」と書いている。東条は、一般の国民にとって、「救国の英雄」だった(保阪『東条英機と天皇の時代(下)』) 】

 当時、東条報道を新聞がどう行ったかもなかなか興味深い。【例えば、42年8月18日付の『読売報知』は】として、こんなことが抜き出されていた。
【 「忙中忙を求める東条さん」、「割引市電で街の視察 鋭い観察力と推理力の種は正確なメモ 拾った民情必ず”決済”」という見出しの記事を掲載し、「キビキビした政務の処理、そして電撃的な民情視察・・・国民は曾てこれほど”首相”を身近に感じたことはなかった。・・・とにかく、そこに新しい一つの”指導者の形”が打ち出されているのは確かだ」と論じている 】

2 民心操縦術
【 総力戦の時代は、多数の国民の積極的な戦争協力を必要不可欠なものとする。そうした時代にあっては、力強い言葉と行動で、直接国民に訴えかけるタイプの指導者が求められる。東条は、そのことをよく理解していた。43年9月23日、東条は側近に次のように語っている(伊藤隆ほか編『東条内閣総理大臣機密秘録』東京大学出版社1990年)
  国民の大多数は灰色である。一部少数の者が批判的言動を弄するものである。そこで国民を率いてゆく者としては、此の大多数の国民をしっかり摑んでぐんぐん引きずつてゆくことが大切である。大多数の灰色は指導者が白と云へば又右と云へばその通りに付いてくる。自然に白になる様に放つておけば百年河清を待つものである。
 東条の芝居がかったパフォーマンス、特にたびかさなる民情視察は、識者の反発と顰蹙をかった。特に、東条が住宅街のゴミ箱をチェックしてまだ食べられるものや再生可能なものが捨ててあると非難したことは多くの国民の失笑をかった。首相として他にやるべきことはないのかという批判である 】

3 政治的力の源泉、宮中工作など
 マスコミ総動員で作ったこういった東条の「表の顔」の他に、政治家としての裏の顔があるのもまた当然。
 【 政治資金の面でも、東条首相は有利な立場にあった。陸相として陸軍省の機密費を自由に使うことができたからである。この点については、いくつかの証言がある。例えば、元陸軍省軍務局軍事課予算班長の加登川幸太郎は、「何に使ったかわからんけど、東条さんが総理大臣になった時、(中略)三百万円という機密費三口を内閣書記官長に渡せ、と来るんだね。(中略)あの頃二百万円あったら飛行機の工場が一つ建ったんだから」と回想している(若松会編『陸軍経理部よもやま話』)。 (文科系による中略)
 なお、臨時軍事費中の機密費の支出済額をみてみると、42年段階で、陸軍省=4655万円、海軍省=2560万円、44年段階で、陸軍省=1億2549万円、海軍省=1865万円であり、陸軍省が機密費を潤沢に使用していたことがわかる。
 東条首相の政治資金の潤沢さについては、44年10月15日に、反東条運動の中心となっていた政党政治家の鳩山一郎が、近衛文麿と吉田茂(戦後の首相)との会談の中で語っている内容が参考になる。同席していた細川護貞は、その内容を次のように記録している(『細川日記』)。
  一体に宮内省奥向に東条礼賛者あるは、附け届けが極めて巧妙なりし為なりとの話〔鳩山より〕出で、例えば秩父、高松両殿下に自動車を秘かに献上し、枢密顧問官には会毎に食物、衣服等の御土産あり、中に各顧問官それぞれのイニシアル入りの万年筆等も交りありたりと。又牧野〔伸顕元内大臣〕の所には、常に今も尚贈り物ある由。
 この後、鳩山は、「東条の持てる金は16億円なり」と語り、近衛は東条の資金源は、中国でのアヘンの密売からあがる収益だと指摘している。アヘン密売との関係については確証がないが、46年7月の国際検察局による尋問の中で、近衛の側近の富田健治が、東条はアヘン売買の収益金10億円を鈴木貞一陸軍中将(興亜院政務部長)から受けとったという噂があると指摘している。興亜院は、アヘンの生産と流通に深くかかわった官庁である。皇族への「附け届け」については、史料的に確認することができる。42年12月月30日付の「東久邇宮稔彦日記」に、「この度、陸軍大臣より各皇族に自動車をさし上げる事となれり」とあり、この日、東久邇宮のところには、陸軍省関係者から、アメリカ製の自動車が届けられているからである 】 
 
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