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株価時価総額、中国2社が日本トップ10社分    文科系

2018年10月31日 09時16分20秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)
 以下に見る表題の数字は、雑誌「世界」11月号の寺島実郎の論文「2018年秋の不吉な予感 臨界点に迫るリスクと日本の劣化」から取ったもの。会社の大きさや国の富などをさえ示す株価時価総額というものがどれだけ得体の知れぬ泡のようなものかと、つくづくとバブルという物を考えさせてくれる数字である。

・米ITビッグ5社の8月末株価時価総額合計は、4・3兆ドル(478兆円)である。グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン、マイクロソフトのことだ。

・同じく中国のIT、テンセントとアリババのそれは、1兆ドルに迫る。「(この)わずか二社で日本のトップ10社を飲み込む額なのである」。

・対して日本は、1位のトヨタでさえも、22・6兆円。


 寺島は、以上の数字をこのように解説している。
『(上記の米中)七つのIT企業の株価時価総額の肥大化が、技術優位性で生まれたものではなく、「ITとFTの結婚」、つまり金融による増幅という形で実現されたことである』
『事業が成果を出す前にベンチャー・ファンド、ベンチャー・キャピタル、M&Aと金融事業が蠢き、成功案件は異様なカネを引き付けるのである』

 
 どうだろう、日本の商社、会社などが昔から大事にしてきた「信用」というものと、この「株価時価総額」という「信用」と、同じものとは到底言えないのではないか。だからバブルが育ち、弾ける。否、弾けるバブルを常に、どんどん育て上げていく人々が居た。リーマンやエンロンのように弾ける寸前の会社株価にAAAを付けてきた格付け会社や、ひとたびことが起これば国庫に助けて貰う以外には払えるはずのない「保険金約束」をする金融商品保険会社も含めて。詐欺が堂々と認められて、行われている社会、世界と言えるはずだ。

 
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ある書評、斜陽米の本質(3)社会、政治、教育も「金融化」  文科系

2018年10月31日 08時56分59秒 | 文化一般、書評・マスコミ評など
 中公新書、ロナルド・ドーア著「金融が乗っ取る世界経済 21世紀の憂鬱」(2011年10月初版)の要約を4回に分けて行っている。第一回目に本のさわり部分を紹介した後、同書が以下の3部に別れているのに合わせて。「金融化現象とは何か」、「これにより、社会、政治、教育などがどう変わるか」、「各国、国際機関による、これの弊害是正、金融改革の試み」である。今回はその第二部の要約とする。この30年ほどの英米社会全体がその経済の金融化によってこう変わったと言う内容である。


 社会、政治、教育も「金融化」  

 ロナルド・ドーア著「金融が乗っ取る世界経済 21世紀の憂鬱」(中公新書、2011年10月初版)を要約している。その第二部は、金融化が社会、政治、教育、そして学者たちをどう変えたかという内容。これがまた4節に分けられていて、各表題はこうだ。①社会を変える金融化、②金融化の普遍性、必然性?(疑問符が付いている事に注意 文科系)、③学者の反省と開き直り、④「危機を無駄にするな」(括弧が付いている事に注意 文科系)。

 第1節では、格差、不安の増大、最優秀人材が金融にだけ行く弊害、人間関係の歪みの四つに分けて論じられる
・「格差」では、06年のゴールドマン・トレイダーら50人のボーナスが、一人最低17億円だったという例を28日のここで紹介した。こういう強食の背後には、無数の弱肉がいると解説を付けて。(この点については、28日拙稿を参照願いたい)
・「不安の増大」では、こんな例が良かろう。日本の国民年金掛け金未納者が38%にのぼること。日本で新たに導入された確定拠出年金が、10年3月末の110万人調査で63%が元本割れとなっている発表された。これらの人々の老後はどうなるのだろうか?
・人材の金融集中では、2010年8月の日経新聞広告を上げている。
『野村、「外資流」報酬で新卒40人採用へ 競争率16倍 専門職で実績連動 11年春、初任給54万円』
 マスメディアのライターからも、大学人やフリーライターとかジャーナリストらがどんどん減って、金融アナリストが急増している。
・人間関係の歪みでは、情報の非対称性(情報量に大差がある2者ということ)を利用して起こる諸結果から、「人をみたら泥棒と思え」と言う世の移り変わりが説かれている。

「金融化の普遍性と必然性?」の要は、金融に特化する先進国に不当な世界的優位性を与えているということである。そこから、西欧がアメリカを追いかけ、今日本がつづき始めた、と。ただし、主要国の家計に占める株と証券との割合は05年でこうなっている。アメリカ46・6%の6・7%、ドイツ23・7%の9・7%、フランス28・0%の1・4%に対して日本15・0%の4・0%である。
 この程度でもう100年に一度のリーマンが起こって莫大な公金を注ぎ込まざるを得なかったとあっては、これで儲けるしかないアメリカがいくら頑張っていても金融立国はもう駄目だという文脈と言える。上記4国の証券%合計は21・8%となるが、1980年のこれは合計34・9%となっていた。4国で割れば、この25年で8・7%から5・5%へと家計における証券保有率は大幅に低減したという事になる。ただこれは家計に占める率であって、世界から金融業者に掻き集められた金はカジノばかりに膨大に投入されているということである。

「学者の反省と開き直り」は省略させて頂く。作者自身も嘲笑的になりそうになる筆を押さえつつ書いているようだし。

「金融危機を無駄にするな」に括弧が付いているのは、掛け声だけという意味である。アメリカの妨害でちっとも進まないからだ。
 リーマンショックが起こって、「100年に1度の危機」と叫ばれた08年秋のころはアメリカも大人しかったようで、金融安定への不協和音はゼロだったとのこと(ただ、この「危機」の長期的根本的意味が一般には1割も理解できていたかどうか、僕はそう思う。)ところが、国際機構をきちんとして罰則を入れるようなものは全くできなかった。決まった事は、G7よりもG20サミットが重視され始めて、保護主義を排し、経済刺激策を取ろうという程度だった。IMFとこれによる規制との強化とについて、新興国と西欧とがかなり主張して端緒についたはずだったが、その後はほとんど何も進まなかった。
 ここで作者は、世界政府、国際制度作りの歴史などの話を起こすことになる。特定分野の国際協力機関は20世紀初めの国際連盟やILO設立よりも前に12もできていたと述べて、「万国郵便連合」などの例を挙げる。
 同じ理屈を語って日本人に大変興味深いのは、日本の戦国時代統一の例が語られている下りだろう。
『日本が16世紀の終わりに一つの国になったのは、信長、秀吉、家康の武力による統合と、幕府という統治制度の意識的な創出が決定的だった』(P132)
 アジア通貨危機やギリシャ危機は、大国金融が中小国から金を奪い取る金融戦争、通貨戦争の時代を示している。そんな金融力戦争はもう止めるべく、戦国時代の戦争を止めさせた徳川幕府のように、金融戦争に世界的規制を掛けるべきだという理屈を語っているのである。IMF(国際通貨基金)のイニシアティブ強化以外に道はないということである。


 金融の国際制度とこれによる執行力ある万国金融規制についてさらに、前大戦中から準備されたケインズの国際通貨、バンコール構想も解説される。が、これはドル中心にしようとのアメリカの終戦直後の実績と強力との前に脆くも崩れ去ったということだ。ドルが基軸通貨になったいきさつ説明なのである。
 以降アメリカは自国生産量より4~5%多く消費でき、日本や中国はその分消費できない国になったということである。それぞれ膨らんだドルを米国に投資する事になってしまった。その意味では、中国銀行総裁、周小川が09年に「ケインズ案に帰るべし、新機軸通貨、本物の国際通貨の創設を!」と叫び始めた意味は大きい。中国は今や8000億ドルの米国債を抱え、不安で仕方ないのであろう(この8000億は現在では1兆2500億ほどになっている。文科系)。中国のこの不安は同時に、アメリカにとっても大変な不安になる。「もし中国が米国債を大量に売り始めたら。国家、家計とも大赤字の借金大国の『半基軸通貨』ドルは大暴落していくのではないか」と。周小川中国銀行総裁が「本物の国際通貨の創設を!」と叫ぶのは、そんな背景もあるのである。

 なお、これは私見の言わば感想だが、アメリカが中東重視から西太平洋重視へと世界戦略を大転換させたのは、以上の背景があると観ている。中国に絶えず圧力を掛けていなければ気が休まらないのだろう。
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対中で、首相・外務省に重大対立   文科系

2018年10月30日 05時05分12秒 | 国内政治・経済・社会問題
 今日の新聞を読むと、日本政府部内に標記の一大事が起こっていることが分かる。しかも、事が事、中国に対する今後の政府新方針に関わる対立だから、米中冷戦勃発との関係もあって、今後日本のブロック経済方向絡みで以下のような重大な意味を持たざるをえない対立である。先ずは、新聞報道を要約しておこう。要約する記事は、中日新聞2面の『「日中3原則」で混乱』、『会談で確認?食い違う主張』と見出しされた物だ。

 事は、26日北京における日中首脳会談で確認された今後の3方針に「原則」という概念を使うか否かという対立である。習首相らと「原則」と確認し合ったと国会答弁や官邸フェイスブックなどで外に向かって大きく表明した安倍首相に対して、内閣官房副長官や外務省が「3原則という言い方はしていない」とか「中国側が確認したと言っているわけではない」と叫んでいるから、大事件なのだ。政府部内で一体、何が起こったのか。折しも米中貿易戦争の真っ最中とあっては、米よりの外務省と、対中経済大接近の現状を追認しなおすしかなかった安倍首相という構図も見えてくるのである。さて、その「三原則」とは、このように重大な物ばかりだ。
『競争から協調へ』
『互いに脅威とならない』
『自由で公正な貿易体制を発展』
 どうだろう、これを今後の対中日本外交の原則と呼ぶかどうかは、米中貿易戦争・冷戦開始の間に立った日本の方向をすら示していると言えないか。先ず3番目がトランプアメリカへの批判になることは明らかだし、その上で2番目を宣言し直しているというのでは、アメリカの神経を逆なですることになろうから。確かに、対米追随の外務省が顔色を変える事態なのである。

 さて、これだけの理解では、事の重大さにはまだ半分程度しか迫れていないと思う。このことの全貌をきちんと理解するには、最近の日米関係、日中関係等や、世界史の知識なども必要だ。例えば、①日本の対米輸出よりも対中輸出の方が圧倒的に多くなっている、とか。②アメリカが自由貿易を捨てて、カナダ、メキシコなどを引き連れたブロック経済圏作りに走り始めたが、日中は「自由貿易支持」を表明し続けてきた、とか。③EUも自由貿易支持の立場から、アメリカの姿勢を批判し続けてきた、とか。④そもそも世界恐慌時のブロック経済圏作りとは、世界史においてどんな意味を持っていたか、とか。

 今はこれ以上のことは何も言えない。が、首相を中心において政府部内で重大対立が現れるほどの切羽詰まった局面に日本が立たされている事だけは確かなのである。世界経済第3位の日本は、2位のお隣中国に寄っていくことによって、アメリカの保護主義批判の立場を一層鮮明にするのだろうか。としたら、戦後日本の大転換点にもなる。こんな局面では普通なら、アメリカが安倍を切ることになる。田中角栄や小沢・鳩山がやられたように。


 以上の理解につきたった一つ、保留を付けておきたい。ここで「原則」という言葉を使った安倍首相が何も分かっちゃいなかった、だからこそ今時あまりにも安易にこんな言葉を使ったのだという、そんな大山鳴動ネズミ一匹という事態もあり得ると思う。だとしたら、あまりにも田分けた空騒ぎ!
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ある書評 斜陽米の本質(2)経済の金融化現象 文科系

2018年10月30日 03時53分18秒 | Weblog
 経済の「金融化」現象


 中公新書、ロナルド・ドーア著「金融が乗っ取る世界経済 21世紀の憂鬱」(2011年10月初版)の要約を3回ほどに分けて行いたい。同書が以下の3部に別れているのに合わせて。「金融化現象とは何か」、「これにより、社会、政治、教育などがどう変わるか」、「各国、国際機関による、これの弊害是正、金融改革の試み」である。今回はその第一部の要約とする。

 第一部の目次はこうなっている。①金融化ということ、②資本市場の規模拡大、③実体経済の付加価値の配分、④証券文化の勃興、と。

 金融化について、ある人の要約が紹介される。『国際国内経済で、金融業者、企業の役割や、一般人の金融志向が増していく過程』。この「増していく」の中身は、こういうもの。社会の総所得における金融業者の取り分が増えたこと。貯蓄と企業との関係で金融業者の仲介活動が急増したこと。株主資本主義。政府がこの動向を国際競争力強化の観点から促進してきたこと。

 米企業利益のうち金融利益の割合が、1950年代までは9・5%であったものが急増して、02年には41%と示される。その後非金融業の巻き返しがあってやや減少期があったものの、2010年度第一四半期はまた36%まで来たとあった。サブプライムバブルの膨張・破裂なんのそのということだろう。

 次は、こうなった仕組みとして、金融派生商品の膨張のこと。
 著者は先ず、シカゴ豚肉赤味の先物市場投資額を、急増例として示す。初めの投資総額はその豚肉生産総費用にもみたぬものであったが、これが、生産費用とは無関係に爆発的急増を示すことになる。1966年の先物契約数が8000だったものが、2005年に200万を超えるようになったと。そして、これも含んだ金融派生商品全体のその後の急増ぶりがこう説明される。2004年に197兆ドルだった国際決済銀行残高調査による派生商品店頭売り総額が、2007年には516兆ドルになっていると。この期間こそ、08年に弾けることになったサブプライム・バブルの急膨張期なのである。同じ時期の現物経済世界取引総額とのこんな比較もあった。同じ2007年4月の1日平均金融派生商品契約総額が3・2兆ドルだが、これは世界のこの月の1日実体経済貿易総額(320億ドル)の実に100倍であると。

 これほど多額の金融派生商品の売買は、証券化という技術が生み出したものだ。
 証券化の走りは売買可能な社債だが、『住宅ローンや、消費者金融の証券化、様々な方法で負債を束ね「パッケージ」にして、低リスク・高リスクのトラッシュ(薄片)に多様に切り分けて売る証券や・・』というように進化していった。リスクが大きいほど儲かるときの見返りが大きいという形容が付いた例えばサブプライム債券組込み証券(の暴落)こそ、リーマン破綻の原因になった当の「パッケージ」の一つである。
 そんな金融派生商品の典型、別の一つに、これに掛ける保険、クレディット・デフォルト・スワップ(CDS)という代物がある。この性格について、有名な投資家ジョージ・ソロスが「大量破壊兵器」と語っているとして、こう紹介される。
『ゼネラル・モータースなどの倒産を考えよ。その社債の持ち主の多くにとって、GMの再編より、倒産した場合の儲けの方が大きかった。人の生命がかかった保険の持ち主に、同時にその人を打ちのめす免許を持たせるようなものだ』
 まさに「(会社再建よりも)打ちのめした方が儲かる」というCDSの実際が、投資銀行リーマン・ブラザースの倒産でも、見事に示された。倒産時のリーマン社債発行残高は1,559億ドルだったにもかかわらず、その社債へのCDS発行銀行の債務総額は4,000億ドルだったのである。社債を実際に持っている者の保険と言うよりも、単なるギャンブルとしての約束事だけの保険のほうが2・5も大きかったということになる。約束事だけへの保険ならば、競輪競馬に賭けるようなもので、無限に広がっていく理屈になる。

 こうして、こういうギャンブル市場がどんどん膨張していった。政府も国際競争力強化と銘打って証券文化を大いに奨励した事も預かって。各国年金基金の自由参入、確定拠出年金・・・。これらにともなって、機関投資家の上場企業株式所有シェアがどんどん増えていく。1960年アメリカで12%であったこのシェアが、90年には45%、05年61%と。そして、彼らの発言力、利益こそ企業の全てとなっていった。
「経営者資本主義から投資家資本主義へ」
そういう、大転換英米圏で起こり、日本はこれを後追いしていると語られる。

 この大転換の目に見えた中身は語るまでもないだろう。企業から「金融市場への支払い」が、その「利益+減価償却」費用とされたキャッシュ・フロー全体に占める割合の急増。アメリカを例に取ると、1960年代前半がこの平均20%、70年代は30%、1984年以降は特に加速して1990年には75%に至ったとあった。
 彼らの忠実な番犬になりえた社長は彼らの「仲間」として莫大なボーナスをもらうが、「企業の社会的責任。特に従業員とその家族、地域への・・」などという考えの持ち主は、遺物になったのである。こうして、米(番犬)経営者の年収は、一般社員の何倍になったか。1980年には20~30倍であったものが、最近では彼の年金掛け金分を含んで475倍平均になっている。その内訳で最も多いのは、年当初の経営者契約の達成に関わるボーナス分である。全米の企業経営者がこうして、番犬ならぬ馬車馬と化したわけだ。

「証券文化」という表現には、以上全てが含意されてあるということだ。企業文化、社長論・労働者論、その「社会的責任」論、「地域貢献」論、「政治家とは」、「政府とは・・?」 「教育、大学とは、学者とは・・?」、そして、マスコミの風潮・・・。


(二部、三部に続く)
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ある書評、斜陽米の本質(1)   文科系

2018年10月29日 09時02分01秒 | 文化一般、書評・マスコミ評など
 トランプが、物経済の保護主義的貿易に強引回帰している今とは、冷戦時代の終末期以降米英が中心になって世界に広げてきたこの40年の「マネーゲーム経済」、「金融グローバリズム」のどん詰まりを認めて、現物経済にも回帰し始めた時期だと言える。つまり、トランプの今の諸行動は、マネーゲーム経済破綻が分からなければ理解出来ないことになる。
 ところが、このマネーゲーム経済の理解がまた、大変難しい。金融派生商品とか、債権の証券化商品、CDSなどは、素人には難しいものだからだ。これを出来るだけ広く深く理解する格好の書物がある。ロナルド・ドーア著「金融が乗っ取る世界経済 21世紀の憂鬱」(中公新書、2011年10月第一刷発行)だ。金融が世界を支配して、南欧、アジア、アフリカなどに大量失業者を生みだし、日米等先進国からまともな職業を無くして不安定労働者ばかりにし、現在の超格差世界を作り上げたと。だからこそ今や、この膨大な金持ち資金を有効に投資すべき有効需要など世界のどこにも見いだせなくなってしまったのだと。
この本の内容は、僕が12年ここで新たに勉強し直しては原稿を書き続けてきて、たどり着いた現代世界の諸不幸の大元の解説と言える。ここに展開されていることは、日本人にはなかなか書けないもの。著者は、イギリス経済学の伝統を学び継いだ上で、確か20代前半に日本江戸期教育の研究目的で東大に留学され、以来熱心な日本ウォッチャーを続けられたという政経版ドナルド・キーンのようなお方。以下は、この書評第一回目として全体のさわり部分の要約である。世界経済がこのようになったからこそ、今の世界の諸不幸が生じていると、そういう結論、大元解明のつもりだ。

『米企業利益のうち金融利益の割合が、1950年代までは9・5%であったものが急増して、02年には41%と示される』

『機関投資家の上場企業株式所有シェアがどんどん増えていく。1960年アメリカで12%であったこのシェアが、90年には45%、05年61%と。そして、彼らの発言力、利益こそ企業の全てとなっていった』

『企業から「金融市場への支払い」が、その「利益+減価償却」費用とされたキャッシュ・フロー全体に占める割合の急増。アメリカを例に取ると、1960年代前半がこの平均20%、70年代は30%、1984年以降は特に加速して1990年には75%に至ったとあった』

『彼らの忠実な番犬になりえた社長は彼らの「仲間」として莫大なボーナスをもらうが、「企業の社会的責任。特に従業員とその家族、地域への・・」などという考えの持ち主は、遺物になったのである。こうして、米(番犬)経営者の年収は、一般社員の何倍になったか。1980年には平均20~30倍であったものが、最近では彼の年金掛け金分を含めば475倍になっている。その内訳の大部分は、年当初の経営者契約の達成に関わるボーナス分である。全米の企業経営者がこうして、番犬ならぬ馬車馬と化したわけだ』

『「証券文化」という表現には、以上全てが含意されてあるということだ。企業文化、社長論・労働者論、その「社会的責任」論、「地域貢献」論、「政治家とは」、「政府とは・・?」 「教育、大学とは、学者とは・・?」、そして、マスコミの風潮・・・』

 最後のこれは、以下のような数字は日本人には到底信じられないもののはずということ。この本の73ページを要約した、アメリカ資本主義の象徴数字と言える。
『2006年のように、ゴールドマン・サックスというアメリカの証券会社がトップクラスの従業員50人に、最低2,000万ドルのボーナスを払ったというニュースがロンドンに伝われば、それはシティ(ロンドン金融街)のボーナスを押し上げる効果があったのである』 
 これだけの強食がいれば、無数の弱肉が世界に生まれる理屈である。2006年とは、08年のリーマンショックを当ブログでも予測していた史上最大のバブル弾け、サブプライム住宅組込証券が頂点に達していたウォール街絶頂の時だった。この結果は、失った家から借金まみれの上に放り出された無数の人々の群であった。しかもこの動きはアメリカのみに留まらず、イタリア、スペイン、ポルトガル等々にも、そこの失業者の大群発生にも波及していくのである。こんな所業を放置しておいて、どうして世界の景気が良くなる時も来るなんぞと言えるのだろうか。

 さて、これから3回に分けて、この本の出来る限り忠実な要約をしていきたい。
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改めて、世界の中の米窮状(2) 文科系

2018年10月28日 09時59分04秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)
 一昨日表題の記事を書いたが、今日の中日新聞には、このことを示す比較的大きい記事が二つ出ている。
 ひとつが、3面トップの『米、国際的枠組み次々離脱 多国間主義の危機 深刻』。今ひとつが4面社説の『今度は何が燃えるのか』。
 この二つの記事は言わば兄弟のようなもので、前者が国際刑事裁判所書記局ナンバー2というお人に、アメリカによる国連破壊危機を語らせた物で、後者はこの国連破壊を新聞社説批判として描き出した物。「強者が弱者を殺し、世界の人々の自由が燃え始めている」という含意である。

 ちなみに、このブログ拙稿でも度々描き出してきたが、アメリカによる国連離脱事件が前者の記事に列記してあるので、それを転載してみよう。

 2017年
1月 TPP離脱の大統領令
4月 国連人口基金への資金拠出停止を決定
6月 パリ協定からの離脱を表明
10月 ユネスコからの離脱を表明
 2018年
5月 イラン核合意離脱を表明
6月 国連人権理事会離脱を表明
8月 国連パレスチナ難民救済事業機関への拠出中止を発表
9月 国際刑事裁判所への制裁を勧告
10月 国際司法裁判所の管轄権を定めた議定書からの離脱を決定
10月 万国郵便連合からの離脱手続き開始を発表

 さて、これらはそもそも今何故起こっているのか。どういうアメリカの事情から生み出されてきた物なのか。今後の日本、世界を観る場合にはこれこそが問題だろう。ということに関しては、近年アメリカのこれらの事項を想起するのである。
 何よりも先ず100年に一度の出来事と言われた08年のリーマンショック。これは、冷戦以降に世界経済をますます風靡した英米グローバル金融経済時代の終焉を意味した。そして、これを招いたにも等しい、あの03年勃発のイラク戦争に続く「テロとの戦い」の数々。こうして、「金融栄えて物経済滅ぶ」のアメリカは軍事だけが幅をきかせ、他にまともな職もない貧しい国になりはててしまった。アメリカの富とは今や「ITビッグファイブ」の株価時価総額でしかない。その本年8月末現在478兆円は、トヨタの同額22・6兆円の何倍になるだろうか。とはいえこの総額は、日米国庫ぐるみバブルが崩れたなら、紙切れになるようなはかない命と言えないか。(以上の数字は、ここから取った。雑誌「世界」11月号所収の「2018年秋の不吉な予感」著者は寺島実郎)それでいて、アメリカの赤字や浪費ぶりはと言えば、国家累積赤字が65兆ドル、年間軍事費が6110億ドル(16年版ストックホルム国際平和研究所報告より)である。

 以上に観たように、アメリカが国連規則も守れなくなった、あるいは守りたくなくなったのは、ここ約40年ほどの歴史の結末なのだ。
 トランプ大統領は、こういう断末魔の帝国アメリカに咲いた暴君ネロの強がり同様のあだ花にすぎない。
 こんなアメリカに運命を預けるようにして貢ぐばかりだった安倍政権だからこそ、日本はすっかり貧しい国になってしまった。国民一人当たりGDPがわずか20年で世界3位から30位に落ちたのである。なのに米への輸出さえ止められようかというこの局面に立たされて、「日本(精神)主義と言う趣味」で政治をやってきたような愚かな安倍は一体どう対処していくつもりなのだろう?
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ポイチジャパン(10)凄まじいの一言、水原・鹿島戦!  文科系

2018年10月27日 05時42分44秒 | スポーツ
 アジアチャンピオンズリーグ準決勝、水原×鹿島戦をテレビで観た。例によって、観戦メモをとりながら。

 日本勢のゲームとしては代表戦以外ではめったに観られないほどの、身体を張り合った凄まじいゲームだった。このゲームの凄まじさが、韓国でも日本でも以降ずっと大評判になっている、そんな闘いだったのである。

 60分に水原が得点して3対1。2ゲーム合計5対4で鹿島敗退かという瀬戸際到来。これを、2得点して同点、鹿島が1勝1引き分けに相手を引きずり込んで行ったというゲームだった。

 鹿島はよく勝ったが、それ以上に印象深いのは水原の健闘。本当に良いチームである。何よりもよく走る。それも、選手の視野の広さが鍛えられてあるからこそ、全員が速い走りのなかでもパスは繋がるし、鹿島ボールに対する協力し合った集団的潰しがまた見事。ゲーゲンプレス発祥で名高い香川がいた往時ドイツ・ドルトムントを観ているような錯覚を覚えたような走りだった。ただ、前半30分ほどの僕の観戦ノートに書いてあることだが、「走り合い、激しく当たりあう、インテンシティー・ゲーム。走る力が落ちた方が負ける!」
 相手水原の監督らが世界の趨勢を良く取り入れているということだろうが、このチームはまだまだ強くなる。また、この監督が代表監督になるかも知れない。
 そして、こういうチームが現れてくると、韓国の明日にも非常な期待が持てるというものだ。これは、お隣同士の日韓が切磋琢磨し合って強くなれると言うことで、日本のサッカーファンにとっては、まー嬉しい限りである。

 さて、鹿島だがやはり地力がある。「相手への詰めなど、ほんの数センチの厳しさの差」と浦和などがこのチームを評するが、それがいわゆる小笠原などを通じて受け継がれて来た「ジーコの遺産」なのだろう。ちなみに、若い選手がどんどん生まれてくるのも、このチームの特徴だ。振り返れば、内田篤人も大迫勇也も高卒すぐにここでレギュラーになったのだった。

 決勝の相手はイランのペルセポリスで、ゲームは11月の3日と10日。テレビ放映もある。ちなみにイランはこの10月世界ランクによればアジア最強の30位、日本は50位だ。実際は日本の方が上だと僕は思っていることだし、鹿島には是非ペルセポリスを負かしてほしい。そして、一昨年暮れのように世界クラブカップ大会で南米代表クラブ勢を負かして、今度こそヨーロッパ・チャンピオンクラブをも破ってほしい。そんな僥倖をさえ願えるようになったのは、16年暮れの決勝レアル戦が90分時間内では2対2だったことによる。これらのゲームの報告も当ブログにはあって、16年12月15日、22日に載っている。この記事の開き方は、右欄外のカレンダーした「バックナンバー」年月で「16年12月」をクリックすると、すぐ上の今月分カレンダーがその月のものに替わるから、15日なり22日なりをクリックして頂けばよい。

 アジア最果ての日本は強い国と当たれないから世界順位得点が低いだけで、実際は20位ほどの力だと僕は観ている。でなければ、ロシア大会のベルギー戦とか、先日世界5位のウルグアイをあれだけ驚かせたようなゲームはできないはずだ。
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改めて、世界の中の米窮状   文科系

2018年10月26日 15時27分00秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)
 世界株価が一斉に下がり始めた。「日米など国家主導株バブルが近く弾ける」とか、「日本の金融緩和が米株価も支えてきたが、日本の『緩和出口時期』こそが問題だ」と予測されてきたのだから、固唾を呑んだ世界が、今の情勢に血眼だろう。
 面白い旧稿、コメントやりとりを改めて再掲する

『 アメリカの窮状が原因 (文科系)2018-09-23 19:33:38
 最も古いチリ政権転覆はともかくとして、シリア、イラン、トルコ、ベネズエラなどに対する、アメリカの狙いは何なのだろうか。今はその意図は明確になったと考えている。斜陽帝国アメリカの現在最大の悩み、困窮を考えてみれば分かるというもの。こんな悩みである。

① 日本も含めて人件費が安く技術もある先進国、中進国によって、米の物貿易がすっかり赤字にされて来た。

② その赤字を帳消しにしてきた対外金融利益が、リーマン以降にはもう、思うに任せなくなっている。

③ ①②から税収がどんどん下がって来たのに、軍事費は冷戦時代の2倍の6110億ドル(2016年、トランプがさらに輪を掛けて、猛烈に増やしている)などと浪費して来た結果、国家累積赤字がGDPの4倍にもなっている。この数字は2015年に元会計検査院院長が2015年に試算・公表したものだ。

④ こんなアメリカを救う対外金儲け手段の第一が、原油(独占価格)にあるということだ。あわせて、世界通貨としてのドルの価値が実質どんどん落ちてきているが、これはどうしても守らねばアメリカの将来はない。つまり、原油の支払いをドルでという世界の現体制死守が、アメリカ当面の至上命令になっている。
 
 さて、フセイン・イラクも、イランも、原油をドル以外の通貨支払い可と動いたから、アメリカから憎まれた。また、イラク(原油埋蔵量5位)、リビア(同9位)を潰して以降、原油価格を乱しうる大元はイラン(4位)、ベネズエラ(1位)になった。この二つの国の原油自由輸出は、アメリカとして絶対に許せないということになった訳だ。現在日本のガソリン155円などと言う途方もない価格が、半額になりうる行動も取りうる国ということである。

 こう考えればもう、打倒ベネズエラ、イランは言わずもがな。執拗な打倒シリアは、イランの兄弟のようなこの国を潰し、イランを裸にする狙いだと考える。トルコ潰しの意図はちょっと複雑に思われるが、単一経済圏としてのユーロ瓦解をずっと狙ってきたその狙いの一環だろうと愚考する。ユーロ単一経済圏を瓦解させなければ、ここの各国に対する金融的各個撃破が果たせないということだろう。ちなみに、イギリスのユーロ離脱は、英米金融による画策の成功という事だと見てきたものだ。』


『 Unknown (Unknown)2018-09-24 17:13:10
 アメリカの窮状?
むしろ、今、アメリカの一人勝ちなんだが・・』


『 情勢を観るスパンと視野 (文科系)2018-09-25 20:56:30
 これは一応お応えが必要だろう。そう思う人も多いだろうからである。

 名無し君と僕とでは、情勢を観るスパン、視野の広さが違うと言いたい。「一人勝ち」とは、世界の何を何年ぐらいのスパンで観て言っているのか。
 過去2~3年を観て、愚かなトランプの根拠のない強気発言を観て、国庫ぐるみ必死の株操作を見て、そのくせ年60兆円を超える軍事費は観ないで、物を言っているだけではないのか?

 対する僕のスパンは、もっと長期的で、かつ広範囲に深刻に影響して来たことで物を言っている。

・GDPの4倍の国家累積赤字は、アメリカの政治を凄く縛っているはずだ。これで尚、年60兆円を超える軍事費を使っているのでは、5年程度ではどうする事も出来ない大困難を抱えていると思われる。
・物貿易におけるドルの威信低下、他通貨の台頭も数十年単位の、長期的根本的な悩みだったはずだ。イラクを潰したのも、イランを憎むのも、原油をドル以外の通貨で販売しようとしたからだ
・中国の物貿易台頭と、ユーロ統一などから、「原油独占価格命」になっている現在、アメリカはもう一つ兵器押し売りにも血道を上げている。これが、トランプ最大の仕事になっている死の商人ぶりである。
・数々の国際的横車から、国連では既に全く孤立してしまっている。信頼がない所へ持ってきて、今のトランプの馬鹿さ加減・・・。

 以上のどこが、「一人勝ち」になるのか、僕が聞きたい。』


『 トランプの勝因にしてからが・・・ (文科系)2018-09-25 21:06:02
 トランプの勝因にしてからが、「錆びた工業地帯」などの、すっかり落ちぶれた白人労働者たちのヤケのヤンパチが原因と言われてきたはずだ。いわゆる既成支配層、エスタブリッシュメントへの反乱とも言われている。これは反乱にならない「無知な反乱」にすぎないのだが。だって、トランプの閣僚は、先ず軍人、次いでゴールドマン等金融関係者が中心であって、相変わらず産軍複合体の面々なのである。
 これらのどこに「アメリカ一人勝ち」の将来が見えるというのか?』
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随筆紹介 遺族年金への疑問   文科系

2018年10月26日 09時11分30秒 | 文芸作品
 遺族年金への疑問  H・Sさんの作品です


 朝日新聞be紙面に連載される「サザエさんをさがして」のタイトルで毎週土曜日、漫画サザエさんを素材にして昭和の時代を語る連載ものがある。2017年(平成二十九年)九月三十日、この日掲載の内容が軍人恩給についての記述だったので書き写した。この写しを紹介するとこのようなことになる。軍人恩給はこれまで60兆円が支払われた。1946年(昭和二十一年)2月、GHQの非軍事政策により一時支払いは中止されていたが、1952年(昭和二十七年)十一月には翌年度の予算編成に盛り込まれた。支給開始は1953年(昭和二十八年)七月からです。支給金額が旧軍隊の階級に基づき計算。一定年以上勤務すると給付されます。普通恩給は1953年(昭和二十八年)度で大将年額最低十六万四千八百円、二等兵二万二百円。一九五四年の改正で戦犯の刑死も公務死扱いとなる。東条英機未亡人が五十六万万円を受け取ったと、新聞の大見出しになって話題を呼んだ。赤紙一枚で招集された元軍人や遺族には恩給ですくわれた人も多い。軍属は国と雇用関係にあったのでこの様に年金の恩恵に浴しているが、雇用関係のなかった民間人の空襲被害者や戦後日本国籍を失った元軍人、軍属には保証は0円に近いと、書かれていた。対象者は減ったが現在も年三十四億近い金額が支給されている。私がこの記事を読んだ時〈なぜ戦争犯罪者にこれだけのお金が払われるのだ。未亡人はこれを拒否したとは聞いた記憶がない。戦場で真っ先に命を落としたのは二等兵ではないか〉と、怒りで心が治まらなかったので、この記事を書き留めた。

 また、これを書き留めたのにはもう一つ理由がある。それも併記することとする。
 昨年(2017年)春ごろの事だった。温泉場で風呂友として仲良くなった八十六歳のおばさんがいる。一月ぐらい顔を見なかったので病気でもしたのかと心配していた。久しぶりに出会い元気な姿を見たので嬉しく近況を聞いた。
「遺族年金を請求する人達のお手伝いをするため、区役所へ日参していたの」と答えた。
 その時おばちゃんが話してくれたことはこの様な内容だった。
「私の家はね。兄が戦死して両親が遺族年金をもらっていたの。両親が死んだ後は妹の私がもらっているの。十年間で五十万円だから親がもらっていたお金より少なくなったけれど、区役所から送られてくる書類に生きていることを書き込み提出すれば、私は死ぬまで遺族年金はもらえるの。軍属の家族は、お国と雇用関係があるから、こういう事になっているのよ」
 話を聞いて親がもらうのはわかるがどうして妹にまで支払われるのだろうと不思議だったが、これは国との契約だから本人が辞退しない限り支払われる、そういう事なのだと知った。
 もう一例は、親しく付き合っている人ではないが七十六歳になる女性の場合だ。彼女は四歳の時に父親が戦死。母親が遺族年金をもらっていた。母親の死後、遺族年金はこの女性が受け取っている。この人は短大卒業後、幼稚園に勤め定年を迎え年金生活をしている。彼女は共済年金と遺族年金との二本立てだが遺族年金を辞退する気はないと語っている。

 この様に軍属は国との雇用関係が成立していた。そのことを知りえる手段を持たない人は何の保証も受けていない。終戦と同時に軍の指導者だった人達は、自分が戦争犯罪人になることを恐れ、証拠隠滅のため、膨大な記録を部下に命じて焼き捨てた。
 1953年、(昭和二十八年)総務省恩給局が出来たが、終戦当時焼き捨てられた記録の中に恩給該当者に関する記録もあったのではないかと、私は勘ぐっている。
 当時、一般の人で新聞を購読できた人、ラジオから情報を得ることが出来る人は少なかった。1953年(昭和二十八年)7月軍人恩給証書が発行されたが、私が育った村では、役場の職員が運んでくる小さな紙切れでしか知る手段はなかった。恩給を受け取るため、字の読めない人、書けない人は親戚の人に付き添ってもらい手続きに行った。自己申告だったから、漏れてしまった人もいたのではないだろうか?。
 時がたち戦争の実態が少しずつ明かされた時、軍の上層部に居た人達は、危険を察知、部下をほったらかして生き延びたことも知られて来た。これらの人達は、学歴もあり仕事も出来るので、戦後の社会でもそれ相応の地位につき、軍事年金を生涯受け取った。

 空襲で両親を失った戦災孤児は、捨て置かれ、悲壮な生活を余儀なくされた。戦災孤児は、国との雇用関係がないと言う理由で国は一円の保証もしていない。
 この様な国のやり方はおかしいと気づいた戦災孤兄達が、戦後何十年もたってから裁判を起こすようになって来た。が、この裁判での勝訴は一例もない。国が勝手に起こした戦争で、犠牲になった幼い子供達に、手を差し述べもしないでほりっ放しにしてきたこの国がとった非情な行為は、どう考えても理不尽で不公平だ。
 戦災孤児の裁判記事を読むにつけ、戦争犯罪人に多額の遺族年金を支払ったこの国の為政者のやり方に、私は納得出来ないでいる。
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随筆紹介  「新婚さんいらっしゃい」が受けるわけ    文科系

2018年10月24日 11時25分14秒 | 文芸作品
 「新婚さんいらっしゃい」が受けるわけ  K・Yさんの作品です


 四十八年目に入った最長不倒記録の番組がある。桂文枝と山瀬まみが司会の「新婚さんいらっしゃい」です。「きっかけは」と文枝が問いかけると、新婚さんは、甘い過去を喋り始める。ここからスタートする。視聴率も高く、国民的番組となっている。なぜ日本の人々にこれほど愛され受けるのか。長年に渡り日本人を魅惑させる。いったいそれは何か。

 この番組のユニークさは、結婚カップルの秘話の露出にある。しかも本人が自ら話し始める。きわどいトークが若い二人から飛び出してくる。「この人で十人目。一番良かった」と。男女間は化かし合うのが世間だが、ここではアケスケである。
 事実は小説より奇なり。だから面白い。新婚ほやほやのカップルが、この時はまさに主人公。でも客観的には、タデ食う虫も好き好き、割れ鍋に綴じ蓋というケースが多い。熱々の二人だから有頂天で、暴走あり、思い上がりあり、見ていてハラハラで楽しさが二倍にも、三倍にも広がります。カップルのそれぞれドラマがある。様々な出会い、好み、ストーリーがある。大半がハッピーで、喜劇的だから笑える。
 この時間は内緒話しのオンパレード。キスはいつ、結ばれたのはいつ、どこでと、二人の関係を赤裸々にあかす。司会の文枝が根掘り葉掘り聞く。ツッコミが絶妙。冷やかしたり、けなす。大いに茶化す。新婚の二人は大真面目に説明する。この落差が笑いを呼ぶ。
 なぜ視聴率が高いのか。自分には恥ずかしくて出来ないことを二人はやっている。その度胸にまず驚く。熱々のカップルが勢いに任せ、普段はロにしない初キスを、初体験をズバリ話す。奥ゆかしさの反対、露出趣味に近い。これはエロ小説。否、エロのエッセイ。エロの映像ではないので、法律には触れないが、倫理的には脱線。だから見る側は、何かしら得をした感じ。エロ小説を買わなくても、真実のエロのエッセイが聞けるからだ。
 新婚夫婦だから、不倫でも、若者の遊びでなく真面目に、出会い、恋心、プロポーズ、新婚生活を具体的に披露する。そこには起承転結、愛の物語がある。奥ゆかしい日本の社会をこの番組が笑い、脱線で風土を破壊しつつある。

 見方を変えれば、結婚への生きた教育かも知れない。独身が急増する時代に結婚の楽しさを吹聴するのは、いい社会教育とも言える。この番組のポジティブな側面は独身対策となっていて、皮肉にも結果的に社会貢献していることは否定できない。
 二人のトークは、その時代の恋愛観、結婚観、夫婦観を反映している。さだまさしの「関白宣言」、飯は上手く作れ、いつも綺麗にしておけ、というセリフは、今ではとんと聞かない。女性が強くなった。女性がリードし、男性を叱り飛ばす時代に変わった。「うちの旦那は優しい」という新婦の発言が多くなっている。文枝が出会いを質問すると、新婦が喋り始める。男性は弱くなり、甘えたり、幼稚化している。文枝は「あんまりや。もうちょっとしっかりしなはれ」とあきれる。個人差はあるが全体像はこんな姿だ。
 文枝は言う。「奥さんのほうがノビノビ。奥さんの回りを天下が回っている。そんな感じが年々強くなっている」と言っている。料理が不得意な女性が増えたのは、コンビニの出現、電子レンジの普及と関係している。
 新婚さんも浮気する。以前は浮気は男性の話し。が、最近は女もする。時代は確実に変化している。この点は男女平等が着実にすすんでいる。新婚さんに限らず長年の夫婦の浮気、不倫も男もすれば女もする時代になった。これは電話人生相談を聞けば、妻の浮気で夫が悩む事例の多さに驚く。新婚さんいらっしやいと電話人生相談とを繋ぐと、面白い現象が見えてくる。結婚前の数々の婚前交渉で飽きもあり、出産後はセックスレスが急増しているようだ。

 さて、長く続いた最大の理由は落語家、文枝の人間性、話題性にもよる。早く父を亡くし母子家庭で育った彼は家庭を大切にしたい思いが強く、この番組を愛した。受け手の国民と番組側とが上手くマッチした。果たしていつまで続くのか。この化け物のような番組が。
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「よたよたランナーの手記」(232) 心肺機能が落ちている  文科系

2018年10月23日 20時44分31秒 | スポーツ
 ランニング日誌によれば、前回7日に231回目を書いてから、9、11、15、18、22日と、僕としては多く走り始めた。22日には30分2回で、その前半にはウオームアップ歩行時間なども入れて9キロを超えた。これは、冬春に蓄えた走力が残って居た8月1日の9・2キロ以来の距離になる。この時の9・2キロは、4・4プラス4・8というもので、10月22日は4・3の4・7だから、もう一歩というところ。こうして、全体として感じてきたのはこんなことだ。

①走っている割には、高速時心拍数が下がってこないし、たまに下がっていてもまた上がったりしてムラがでている。心肺機能が落ちているということだろう。不可逆的な低下かどうか、80近い年寄りとしては、ちょっとの不調でもいつもこのことが頭をかすめる問題になるのだ。
②筋力関係は補強運動もストレッチもやっているのでまーまーだが、右足首に時に違和感が出る。これは、左蹴り脚の弱化によるフォームの乱れから来ていると分析しているから、左脚の腿と右足ふくらはぎの強化に励んでいる。

 さて、中1日置きでも十分すぎるほどに走れると、この9日8・7キロ、11日9・0キロ弱という実績で分かったから、涼しくなった今はもう少し走行日を増やしていきたい。ただし、家事とか娘家族への助っ人とかが結構大変なのだ。我が家は、この助っ人を婆でなく僕が主体でやっているから。
 もし9・5キロまで行けたら、また自信が戻ってくるのだが、できるかどうか?
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ポイチジャパン(9)大エースと10番と   文科系

2018年10月22日 00時43分11秒 | スポーツ
 ウルグアイ戦に関わって、二つのコメントを付けたので、これを再掲したい。今後の日本代表の成長、強化を見込んで、いずれも重要すぎるものだから。以下二つの、記事を知っていると、日本代表がまだまだ強くなると確信が持てるのである。
 大迫勇也はチーム全体の長短を見ながら若手に貴重な忠告を与えられる大エースになったのだし、中島翔哉は24歳にしてもはや、堂々たる「日本の10番」である。

『 南野と大迫とのゲーム評で (文科系)2018-10-19 04:03:06
 2得点した南野が最高評価を受けているが、ご本人は「大迫さんが僕より凄かった」と述べている記事を読んだ。ワントップの彼が世界最高クラスのディフェンダー相手にボールを上手く収めてくれるからこそ、2列目の三人が常に前を向けたと。
 全く同じことを、右ウイングの堂安も語っていた。サッカーではそれほどに、攻撃陣が前を向き合ってボールと共にゴールに殺到していく事が大事なのだ。大迫はその入り口、きっかけを作る大事な大事なポストプレーヤーとして、南野、堂安も見たように日本攻撃陣の太すぎる柱に育ち上がったのである。身方最前線で敵の矢面に立ちつつ、敵本陣目指す突破口を見事に切り開いてくれる勇者、それがポストプレ-ヤーだ。

 さて、その大迫はまた、2列目のこの若手三人に向けてこんな貴重な教えを語っていた。
「長友と酒井が前後左右のバランスを良く取ってくれたからこそ、2列目があれだけ攻め続けられたのだと、忘れてはいけない」

 見ている人は見ているものである。つまり、大迫は前も後ろも見えている。

 岡崎もこういう特徴を持つが、やはり大迫が日本の大エースということだろう。確かに昔から「半端ない」といわれ続けてきただけのことはある。それがずっと続き、これだけの広い視野でゲームが見えている点が、半端ない。』


『 中島、9月MVP (文科系)2018-10-21 12:14:55
 20日発表で「ポルトガルリーグの9月MVP」に中島翔哉が選ばれた。9月絶好調のこの大活躍のままに、強豪ウルグァイを翻弄した事がよく分かるのである。長友の表現で「ドリブルお化け」というそのプレーによって。
 ちなみに、ポルトガルが世界5位前後に位置する国だとは、日本人にはあまり知られていない事だ。つまり、スペインやドイツでMVPになる事と同程度の実績なのである。若き本田のオランダ二部年間MVP以上の価値があるはずだ。本田はこの後ロシアへ行って失敗したと僕は見てきたから、中島には是非良い選択をしてほしいと切望している。

 長友が言うように、来年はこのクラブにはもういないだろう。得点力を備えたこういうドリブラーがほしいチームは、多分イングランド? それともスペインのどこか? まだ24歳の中島には、次のステージでも長い活躍が期待できる。』
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ポイチジャパン(8) 川崎が抜けた   文科系

2018年10月21日 02時39分41秒 | スポーツ
 広島突然の停滞などもあって、川崎が急に抜け出してきた。昨年の優勝チームとしてはここでの抜け出しはとても大きく、優勝が見えたと言いたい。このチームにしてさらに、斉藤学が初得点して自信を付けたことが、優勝への着実な一歩になっていくと思う。選手たちの喜びようを見ると、斉藤のドリブル・シュート初得点を全員が待ち望んでいたようだし。

 ついでに、名将オリベイラが率いることになった浦和が鹿島を破り、ACL参加権内に殴り込んで来た。どうも、東京が落ちそうな気がする。J1降格争いがまたかってなく熾烈で、Jは近年珍しいほどの大混戦になっている。


 さて、川崎の神戸戦である。33分までに神戸の3対1には、驚いてしまった。それも、神戸出だしの高位プレスが凄まじく、神戸ゴール前30メートルほどの潰し守備がまた強烈だった上に、先発したイニエスタが例によって視野が広く、力が抜けたトリッキーなパスを自由に回していたし。正直、川崎の負けかなとも感じたが、「神戸がこのまま、前でも後ろでも強烈という潰しに走り続けられるとは思えない」とも、僕の観戦ノートには書いてある。
 案の定、前半43分、家長の得点で2対3、前半の内のこれが大きかった。しかも、アシストは10番大島のドリブルである。

 後半10分過ぎ辺りから、神戸の走り、プレスが甘くなり始めた。予想外に速く、走力が落ちている。監督の「とにかく、守備に走れ!」が、通じない走力、体力しかないチームなのだろう。これは名古屋にも似ていて、今のJでは致命傷になる欠点だと考えている。だからこそ、再三繰り出されていた斉藤学の左外からのドリブル侵入が効き始めて、16分にドリブルシュート、3対3。ここまでの経過、結果全体からみて、ここで勝負あったというものだ。
 あとは、川崎の一方的な走りばかりが光っていく。25分には神戸ゴール正面近くで、家長・大島・小林・大島と回された失点。これは神戸の走力のなさをも示し、アスリート集団としては屈辱の場面と言える。家長のヒールパス、小林のワンツー壁役までが入った回しだったのである。

・久々の先発、斉藤学の初フィットが、川崎のJ優勝やACLに向けてこの上なく大きい。パスが上手いこのチームにあって、学のドリブルは凄まじい武器になるだろう。このことが分かっているからこそ、川崎選手全員が寄ってたかって、学の初得点に大喜びしていたのだろう。
・家長という選手を、改めて見直したもの。小林悠と並んで、万能の選手だと思った。技術は申し分ない上に、身体は強いし、最後まで走りきる走力もある。
・それにしても、川崎はよく走る。この走りを守備にも発揮させたところに、鬼木監督による去年のJ初優勝があったのだろう。今のJでは、チームとしての走力がなければまず勝ち抜けない。ということは、選手層が厚くないと勝てないということでもある。
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安倍の恐怖政治  文科系

2018年10月20日 13時02分27秒 | 国内政治・経済・社会問題
 以下の文中にもある通りに、これは『9月22日ブログ拙稿「文科省「汚職」事件へのある論考」』の続きの文章である。安倍一強長期政権の悪い「政治主導」という恐怖政治が、どうやら始まったようだ。佐川や首相官房など各省庁官僚らの「忖度」もふくめて。財務省佐川の忖度改ざん事件などは既に部下を1人殺しているのである。
 以下は、昨日付けたコメントを一部書き直してエントリーにしたものである。


【 先日の文科省汚職、次官ら2人の辞任事件は、安倍政権の悪辣きわまる恐怖政治の一環と、僕は見ている。この次第は9月22日ブログ拙稿『文科省「汚職」事件へのある論考』に書いた通りだが、ここにも一言。

①「汚職」金額が、10万円前後までのもので、大々的に犯罪者扱いされて辞任とは??!

②汚職と言えるかどうかも怪しすぎる事件であった。その証拠は・・・
 一つ、政治家主催の会合だったから「利害関係者ではない」という判断、認識の下に次官らはこの接待に出席している。
 二つ、別件で以前に逮捕された同僚がこの会合の中心人物であって、辞任した次官らは彼に「参加費を払おうか?」と申し出ていて、「必要なし」と返事されても、一部は支払っていた。
 三つ、というように、この事件は先に逮捕された同僚の自白が無ければ何も起こらない「別件逮捕」のようなもの。それを、この逮捕者の自白だけでずるずると芋づる式に罪を作って大々的な新聞報道にした。こんな点には、検察の恣意、悪意を感じざるを得ない。

 前川喜平氏やモリカケ問題から始まった「文科省VS安倍政権」がもたらした「文科省弾圧・恐怖政治」開始というのでなければよいのだがと、願うばかりだ。美濃部達吉事件、滝川事件のような・・・・。】


 安倍の政治は「経済、国民生活」は口先だけ。本当にやりたい事は趣味のような「日本主義」。
 現に政治生命をかけると述べてきたに等しい2%目標などは、どんどん先延ばしになったのだし、自慢している株高などは日銀や政府積立金をつぎ込んで、国債を日銀が買うという財政ファイナンスという禁じ手までを総動員したに過ぎないもの。この大幅緩和からの出口戦略が関係者の恐怖になっているのである。それでいて、国民1人当たりGDPはこの20年で、世界3位から30位に下がっている。失業率の改善などとマスコミ連呼が続いているが、昔だったら誰も就かぬような低賃金の不安定職ばかりではないか。だからこそ内需は冷え冷えのまま、外需にのみ頼って行くという悪循環。それが今アメリカの保護主義で大慌て、言われるままに大型兵器をどんどん買い込み始めるという始末なのだ。

 そして、安倍が実際にやってきた事はこれ。憲法改悪、教育勅語さえ賛美する教育・教科書改悪、靖国などで中韓と仲違い、マスコミ右傾化、産軍の大々的復活などなど。彼のやっている事を「趣味の政治」と述べている人々も多いのである。
 
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ポイチジャパン(7) 長友佑都が、中島翔哉を絶賛!   文科系

2018年10月19日 01時56分23秒 | スポーツ
 18日中日新聞夕刊に、表題のことで良い記事があった。見出しが、まさにぴったりの、これ。
『「10番」中島 風格十分』
 この記事内容が、本人以外からも取材していることがわかるものであって、記者の熱意、研究心なども感じられて、単なる報道ではないもの。文化記事はこう願いたいものである。野球にはこういう記事は常にあるのだから、サッカーでもどんどんこれを増やして欲しい。

 最も目が行った箇所がここ。長友がウルグァイ戦の中島にこんな最高評価を与えたというのだ。
『ドリブルお化けですね。この勢いならビッグクラブに行ける』
 これが、長くヨーロッパ第一線で世界の若手を蹴落としてはレギュラーを張り続けてきた長友の言葉だからこそ価値が高いと読んだ。それも、ディフェンスを職業としてきたベテランの目が見た評価なのである。僕としてはまた、この「ドリブルお化け」という表現に思わず微笑んでしまった。ここには「足が速い、そして、体幹も強いと自負して来た自分から見ても『お化け』に見えて、このドリブルはちょっと潰す自信がないかもしれない」とのニュアンスも感じられる。中島から見たら最高の褒め言葉だろうし、事実、ウルグアイ戦の中島はそんなプレーばかりだった。

 南野の先取点への、密集を縫ったような長いグランダー・アシスト・パス。同点に追いつかれて引き離した2得点目は大迫のシュートによるものだが、このシュートは中島のシュートを相手GKがやっと弾いた地点へ大迫が詰めたもの。いずれの得点も、中島のドリブルが生みだしたものとも言える。このようにどんな時でも前へ、ゴールへと攻め入り、シュートに結びつけてしまう選手なのである。相手DFから見れば、こんな怖い選手はいない。『だから俺は「お化け」と感じたよ』・・・。同じ左サイドで、後ろから中島を見守り、支えた長友のこの言葉! これとは別記事にこんな彼の言葉もあった。「(前目に出て自分がおとりになったり、後ろを支えたりして)中島には『行って来い』という感じだったね」。

 165センチの小回りだからこそ、大男揃いの世界のDFを恐怖させられるのだろう。つまり、身体が小さすぎることを武器に換えている選手なのだ。この姿は、スポーツの一つの醍醐味だろう。
『(中島が)何度も繰り返す言葉がある。「サッカーは楽しいもの。常に楽しむようにしている」』。
 記者が伝える中島のスタイルだそうだが、日本人が大好きな牛若丸や舞の海の楽しさや、日頃の独特かつ厳しい鍛錬やを偲ばせてくれる。屈託が無くかつ晴れやかな中島のあの笑い顔にいつも惹かれて来たのは、こんな醍醐味の勝者と感じられてきたからに違いない。


 こういう記事を書いたこの記者に大きな賛辞を贈りたい。
コメント (3)
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