九条バトル !! (憲法問題のみならず、人間的なテーマならなんでも大歓迎!!)

憲法論議はいよいよ本番に。自由な掲示板です。憲法問題以外でも、人間的な話題なら何でも大歓迎。是非ひと言 !!!

これでは、ウクライナは勝てない  文科系

2023年09月19日 11時50分09秒 | #ウクライナ戦争#マウリポリ陥落#アゾフ大隊

 標記のことを書いてみよう。

 ウクライナでは先に、各地方の徴兵責任者全員が解任されて、その理由が汚職であると伝えられた。各省の徴兵責任者が大金もらって、若者の生死を選別していたのである。そして、その余韻も冷めぬうちになのだがこの度、6人いる国防次官が解任。今回に限っては理由は公表されていないが、不正に絡むものなのだろう。さて、これでこの戦争に勝てるだろうか。と言うよりも、下が真面目に戦争に参加できるのか? 最上層から降りてくる戦略戦術自身もいい加減になるはずと誰でもが思うだろうしして、勝敗の答えは明らかだろう。そんなわけで、この戦争は勝てるわけがない。軍事大国ロシアが、長い時間使って三段構えで構築し、かつ制空権を持った東南部境界防衛戦への突入に対して、軍最上層部を不審に思っている兵士のどれだけが命を懸けられるかという話なのである。

 こんな上層部を持った国の勝てない戦争にどんどん兵器をつぎ込むアメリカは、どんなつもりでこんな事をしているのか。ロシアをなくして、その資源などをEUの下に起いた上で、中国を孤立させてその崩壊を図っていくという地政学からなのだろうが、こんな戦争はここに何度も書いてきたように初めから本当に胡散臭いものだった。それをよく知る上の人々こそ、馬鹿馬鹿しいとだけ思ってきたのではないか。相次ぐ上層部の腐敗というのは、そういうことしか考えられない。

 こんな時に例によってまたまた、こういう「ウクライナの希望、期待の『反転攻勢』情報」が流れ出した。5月末に流れていまだに成功していない「反転攻勢」情報と同じように。

『ウクライナ国防省のブダノフ情報総局長はイギリスの「エコノミスト」誌のインタビューでロシアとクリミア半島をつなぐ陸上の補給路を遮断する作戦が冬の前に実現するかもしれないと語りました』

 「かも知れないと語りました」? こんな語りがニュースになるなら、そう、どんな戦争にも「希望」があるだろう。僕が思うに、こんな「希望だけ情報」が多すぎる。

 

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小泉悠論文に一言  文科系

2023年09月16日 08時23分26秒 | #ウクライナ戦争#マウリポリ陥落#アゾフ大隊

 岩波の雑誌「世界10月号」に、ウクライナ問題で小泉悠の論文「ウクライナ戦争をめぐる『が』について」が載った。この雑誌に多い「ロシアの侵攻は大きすぎる罪だ『が』・・・」という内容の論文を意識して、この「が」を批判するものだと言って良い。「大罪だが・・」などと前置きしてあれこれと語るのは、ロシアの罪を軽減しているとの批判と言えよう。以下は、彼の論文の骨格に関わる部分に、アメリカの過去について重大過ぎる見落としがあると指摘したい。この見落としによって小泉の論議の骨子が、米ロ比較で冷戦後最大の戦争犯罪国、米の罪を減じたことによって、ロシアが冷戦後世界で唯一最大の誤りを犯した国になっている。

『アメリカという、時に残虐性を孕んだ戦争を行う大国との同盟に関して倫理的な忌避感はないではないが、少なくともアメリカは民間人を無差別に殺傷する戦争を過去半世紀にわたって行っておらず、まして占領地域の住民を選別キャンプに集めて拷問・レイプ・殺害するような行為にも(少なくとも冷戦後には)及んでいないという点では、現在のロシアと全く同列に論じるべき存在でもない』(同誌52ページ)

 この一文を読んだ時にすぐに大きな疑問が浮かんだ。この論文全体の論理の筋における骨格に当たる部分への疑問だから、この疑問は大きい。

 まず、アメリカによる民間人無差別殺傷だが、史上有名な例が存在する。ウイキリークスでこれをすっぱ抜いたからこそジュリアン・アサンジは米政府に執拗に追いかけられた末に、終生監獄の憂き目に遭うことになったのではなかったか。米ヘリコプターからのイラク人無差別射殺映像を世界に流したのだった。というほどに、アメリカは自らの民間人無差別虐殺を世界史から意図的計画的に隠してきたのである。

 また、キューバ・グァンタナモ基地における、中東の人々の監禁、拷問はつとに有名な話ではなかったか。

 この二つを無視して上のように語るのでは、小泉氏語るところの「が」への反論は、あまりにも弱いものになるというべきだろう。と、このように僕が述べたとしても、ロシアによる民間人無差別虐殺や選別キャンプ・拷問を許すものではないというのは、言うまでも無いことだ。ただし、「少なくとも冷戦後に」もしそれがあればの話だが、ウクライナ戦争でこのことが世界白日の下に証明されたということではない。ブチャの大虐殺なるものも、アメリカのイラク一般市民への機銃発砲・虐殺のような場面そのものが証明されたわけではないのである。ちなみに、自らの虐殺を上記のように組織的・大々的に隠してきたアメリカは、他国による虐殺などはいくらでも作り、宣伝してきたと覚えてきた。

 

 なお、上記「米ヘリコプターからのイラク人無差別射殺映像」には、このような証拠もある。2010年4月7日に出た「2007年米軍ヘリによるロイター記者とイラク市民銃撃映像」だ。その映像に付いた文章は、以下のようなものだった。

『米軍ブラボー2-16部隊の元隊員に聞きます。ウィキリークスが公開した軍所蔵ビデオにある、ロイター従業員2人を含む12人の死者を出した 2007年の米軍ヘリによるイラク民間人爆撃事件は、米軍部隊のブラボー2-16が起こしました。
この部隊に所属していた帰還兵ジョシュ・スティーバーは「このビデオの兵士たちを直ちに非難したり批判するのが自然なことでしょう。でも、彼らの行動を正当化するわけではありませんが、軍隊の立場からいえば、彼らは訓練された通りに行動したのです・・・もしこのビデオを見てショックを受けるのなら、より大きなシステムを問題にするべきです。なぜならば、兵士たちの行動は、このように行動せよと訓練されて行ったことだからです」』

 

 
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ウクライナ、二つの人道回路頓挫  文科系

2023年08月29日 08時57分24秒 | #ウクライナ戦争#マウリポリ陥落#アゾフ大隊
 黒海からの農産物輸出合意履行がまた中断している。ロシアが停止したからとだけ報知され、プーチンは「だまされたから、停止した」と述べたと報知されたが、銀行間支払いが制裁で止まったままで売上金が入らないからだろうなどと考えていた。そうとしたら、停止の原因はこの問題でも制裁を持ち出したままにしているアメリカということになる。アメリカが国連仲介合意を無視した?

 この構図は依然のこれと全く同じ、瓜二つ。アゾフスターリ製鉄所のアゾフ大隊壊滅時に「人道の回路」を提案したロシアを、トルコと国連がウクライナに仲介した時、この回路が何度か頓挫した。トルコの仲介によって国連主導で行われたことまでが、農産物輸出合意・履行の頓挫と同じなのだ。だから僕は、「人道回路」も「穀物」も誰が妨害したのだろうと考えてきた。このいずれも、戦争中の心温まる話と思えたから、色々観察しつつ、見守りたかったからだ。

 日本でも有名な「敵に塩を送る」故事にあるように、戦争中であっても人道は別という回路も常に存在するようにしてきたのが人類だったが、国連が仲介したこういう回路を壊すことは、本当に許せない。何度も起これば、事故とか行き違いとかが原因とも思えないし。国連を無視するのはアメリカ最近のやり方だから、僕はアメリカを疑っている。ロシアへの憎しみを造成して、一刻も早く速くロシアを潰したい一心なのだと観測してきた。ロシアには、普通の国民もいるのだが、彼らがどんどん死んでいくのも「悪い大統領を選んだせいで、自業自得」とするのだろう。

 ちなみに、アゾフスターリ製鉄所で捕虜になったアゾフ大隊幹部たちは、「戦争が終わるまでウクライナには戻さない」という約束の元にトルコに移送されていて、最近ウクライナに返されたと写真付きで報知された。ロシアが「ネオナチ」と呼んできた元私兵連隊(どこから金が出ていたのか?)の司令官たちである。ちなみに、この「ネオナチ」について、日本外務省もこの戦争前まではそう呼んでいたはずだ。ヘイトクライムにも励む行動的人種差別主義者と言う感じ、意味なのだろう。

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ロ・ウ戦争、大本営発表に大爆弾   文科系

2023年06月12日 13時13分52秒 | #ウクライナ戦争#マウリポリ陥落#アゾフ大隊
  ウクライナ戦争では、G7側の大本営発表、それも情緒的な報道が多すぎて日本人には何も見えなくなっていると、ここで繰り返してきました。日本ウクライナ関連一般ニュースは「欧米よりも日本的だろう」とさえ見てきたほどです。ニュースを作る人々の多くが、台湾に引きつけたいからなのでしょう。
 例えば、ダム破壊事件でも「ロシアの仕業」と固く信じ、いち早くそう書いている人がいた。アメリカ軍でさえ真相はまだ分からないと繰り返しているのに。一例、クリミア半島はこのダムの水で生きていて、この水位の低さでは大変な窮状に陥るとありました。1年続いたバフムート(要塞都市)の闘いでも、まだ一部固守されて落ちていないと報知し続けてきたのに、いつの間にか「今回の反転攻勢でウクライナがバフムートにも迫っている」と書いている始末。
 さて、こんな時ロシア問題の専門家、佐藤優がとうとう書きましたから、紹介しましょう。以下の記事を真実と総合判断します。そろそろこういうものが出る時期だ。そもそも、アフガン、イラクであれだけのことをやったアメリカが、なんらか善意からこれだけの大量の兵器提供などするわけがないのです。佐藤優は別にこんなことも語っている。
「ノルトストリームが破壊されたのでドイツは米国から石油を輸入している今は、ノルトストリーム経由ロシア産の4倍の値段になった」


『 去年9月「ハルキウの大攻勢」の前線を突破したのは、実は「休暇中のアメリカ・イギリスの特殊部隊」だった…⁉《ロシア専門家・佐藤優がひも解くウクライナ戦争の真相》 6/12(月) 7:04配信  現代ビジネス

 数十年後に2023年を振り返ったとき、今回の「戦争」は歴史家からどのように評価されるだろうか。そしてこれから21世紀の世界史はどうなっていくのか。ロシアの ”プロ” 佐藤優氏が解説する―。

「なぜ戦争が起きたのか」本当の理由

 2022年2月24日にロシアがウクライナを侵攻してから、1年3ヵ月が経過しました。ロシアは「特別軍事作戦」と称していますが、実態は戦争にほかなりません。
 未だ停戦交渉は進まず、両国は交戦を続行しています。ウクライナ侵攻について簡単におさらいしておきましょう。

 初動の段階では、争いはまだ地域紛争の様相を呈していました。ロシアに言わせると、ウクライナ東部で暮らすロシア系少数民族(すなわちロシアの在外国民)が蜂起した、と。ドンバス地域(ルハンスク州とドネツク州)に住むロシア系住民の処遇をめぐる問題が、ロシアとウクライナの二国間係争の争点でした。
 軍事侵攻から1ヵ月余りが経過した昨年3月29日、トルコのイスタンブールで両国の和平交渉が開かれます。ロシアとウクライナの代表団が対面で停戦協議のテーブルにつき、対立はいったん解決しかけました。
 ところが、ロシア軍がウクライナの首都キーウ周辺から軍隊を引き揚げると、キーウ近郊のブチャで民間人を含む大量虐殺を行っていた事件が報じられました。この「ブチャ事件」が停戦の可能性を御破算にしてしまいます。
 ウクライナ側は「こんな蛮行に手を染めるような連中とは交渉できない」と激怒して交渉のテーブルから離れ、以後一度も和平交渉ができなくなってしまいます。

変局する戦争の大義名分

 さらにアメリカをはじめとするNATO(北大西洋条約機構)諸国、西側諸国がウクライナに送る兵器の物量が一気に10倍以上に増えました。ブチャ事件をトリガーとして、西側諸国がこの戦争を ”価値観戦争” に変えたのです。
 「民主主義VS.独裁」の争いに変わった価値観戦争を、どうすれば終わらせることができるのでしょう。相手の政権を殲滅するか、あるいは屈服させるか。相手が自分の価値観を放棄しない限り、戦争は終わらなくなってしまいました。
 西側諸国が兵器をどんどん送りこむ中、昨年4月以降のウクライナとロシアは「地域紛争」という枠組みで戦闘を継続します。この枠組みが9月に変化しました。

 9月上旬(主に6~10日頃)、「ここが手薄だ」と見込んだウクライナ軍はハルキウ州で猛烈な攻勢をかけました。ハルキウ州が手薄だったことには理由があります。ここの住民はロシア語をしゃべる正教徒が多く、ロシアへの共感が強いのです。ロシア軍が入ってきても人道物資の受け取りを拒否せず、ロシア軍から仕事をもらって学校も機能している。統治が比較的うまくいっていたため、ロシア軍は兵力を南に移動させました。

実質的な西側諸国の参戦

 一方で、ハルキウ州が手薄だという情報をつかんだのは、アメリカの軍事衛星です。ペンタゴン(国防総省)はウクライナにその事実を伝え、ウクライナ軍はロシア軍の8倍もの兵力を投入して一気に攻勢をかけました。
 戦争の教科書では、兵力の差が1対3以上になったときには、全滅か捕虜になるかいずれかの選択しかありません。全滅を避けるためにロシア軍は、オスキル川を渡って川の向こうに逃げました。
 その際、ハルキウ州の攻防戦で前線を突破したのは、ウクライナ正規軍ではなくアメリカとイギリスの特殊部隊員です。「休暇中」という名目で、米英の特殊部隊員によって構成された事実上の傭兵部隊が前線に送りこまれてきた。西側諸国が兵器を送りこむのはまだロシアも我慢できるものの、もはやこれは容認の限度を超えています。
 「事実上西側諸国が参戦しているに等しいではないか」とプーチンは激怒しました。

 その頃、黒海沿岸に位置するザポリージャ州とヘルソン州の住民は「ウクライナがハルキウ州と同じように攻勢をかけてきたら大変なことになる」と危機感を抱きます。

 2つめの記事『アメリカはロシアの「南極経由からも来る核・サルマト」を恐れているが、同時に「ウクライナの勝利を望んでいない⁉」《佐藤優がひも解くウクライナ戦争の真相》』につづく。

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佐藤優(さとう・まさる) '60年、東京都生まれ。作家・元外務省主任分析官。同志社大学神学部卒業後、外務省に入省。ロシア大使館、国際情報分析第一課などで情報活動に従事し、「外務省のラスプーチン」の異名をとる。2002年に背任容疑で逮捕。『自壊する帝国』など著書多数
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 「週刊現代」2023年6月17日号より』

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戦略的要塞都市・バフムート決戦の結末  文科系

2023年05月28日 00時49分12秒 | #ウクライナ戦争#マウリポリ陥落#アゾフ大隊
 CNNが22日、こんな見出しの記事を出している。『ウクライナ陸軍司令官、バフムートの大半は支配下にないと認める 2023.05.22 』

 CNNは、こう報告している。
『 ウクライナ陸軍の司令官は21日、ウクライナ軍が東部の激戦地バフムートの大半を支配していないと認めた。だが、同市を取り囲む態勢を維持しているという。
 司令官のオレクサンドル・シルスキー上級大将は軍メディアセンターを通じた声明で、「我々が支配しているのはバフムートのわずかな部分だが、その防衛の重要性は変わらない。それにより状況が変われば我々に同市に入る機会を得られ、それは必ず起きる」と述べた。
 シルスキー氏によると、ウクライナ軍はバフムート周辺に沿って進み、市の「戦術的包囲」に近づいているという。「状況は困難だが統制下にある」としている。
 ロシアの民間軍事会社ワグネルのトップ、エフゲニー・プリゴジン氏は20日、バフムートの完全掌握を宣言した。
 一方、ウクライナのゼレンスキー大統領や政府当局者はロシア側の主張を否定。ウクライナ軍は同市最西端の小さな地域を維持していると述べていた。
 CNNは戦地の状況を独自に検証できていない。』


 さて、バフムートを調べたら、去年の春から激戦が続いてきた東部交通要害の地。なぜこんなに長く持ったかというと、以下のようにドンパス地方全体を見張るべき「戦略的重要拠点」として、東部防衛の軍備万端を整えていた都市だったからである。以下はウィキペディアで調べたことだ。

 NATOの支援で全都市がコンクリート要塞化されて、武器・弾薬・ミサイル・戦車などの備蓄基地でもあって、地雷原、対戦車障害物などで堅固に守られていた要塞都市。現地司令官からはかなり前に撤退が要請されたが、ゼレンスキーが「死守せよ」と命じたところでもあった。ちなみに、ここが陥落しそうだから「5月反転攻勢」が鼓舞され続けていたのではなかったか。それが今では、この要塞の大部分にロシア兵が立て籠もり、ウクライナ兵がこの周辺を取り巻いて奪還の隙をうかがっていると司令官自身が語っているわけだ。「今度こそ春の攻勢を成功させる」と声明しつつのことである。できるのか?

 日本マスコミのアメリカ流大本営発表では、以上の決戦地状況の戦況はほとんど報じられていない。その上で「2014年時点での国境地処理に返るなど論外で、そんな和平案を受け入れるなど笑止」と論陣を張っているのだから、ウクライナ不利のままにその国民がどんどん死んでいくことにしかならない。今やほとんどの武器を提供しているアメリカの代理戦争をさせられているのである。日本もそんな報道ばかりをし続けていて良いのか?


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トルコ政治のが日本よりマシなのに?  文科系

2023年05月16日 05時30分29秒 | #ウクライナ戦争#マウリポリ陥落#アゾフ大隊
 トルコ大統領選挙について、日本マスコミの扱いがどうにもおかしいと思う。「酷い政権!」と描き、明らかに「エルドアン、負けろ!」という論調なのだ。敢えて言えばこれは、「G7に特有の偏った政治観」なのではないか。エルドアンは例えばウクライナ戦争について、誰もできなかった良いことを二つやっている。

・まず、マウリポリの製鉄所にこもったアゾフ大隊(ロシアが「ネオナチ」と呼んできた典型的な集団である。その初めは、米ロの軍隊会社のように私兵集団としてスタートしていた。どこから金が出ていたのか?)が壊滅させられたときに、実質人間の盾のようになっていた一般人らに「生還の道」を創ってみせた功績。
・次いで、ウクライナとロシアの農産物を黒海経由で積み荷として輸出させる道を作った功績。
・この二つの功績はともに国連の下で行われることになったのだが、国連介入があったからこそ現に起こったいくつかの妨害を廃して成功することができたのである。そして、国連をそこまで動かしたのが、このエルドアンだった。つまり、エルドアンがいなかったら、この二つは実現しなかった。そして、この二つともが悲しいことが多いウクライナ戦争下では、嬉しいという意味で非常にユニークな出来事ではなかったか。

 さて、こんなエルドアンが日本マスコミによってどうして悪人、悪政とだけ描かれるのだろう。G7や、トルコも属するEUとは違うユニークな動きがアメリカの気に入らぬという事、それに日本が迎合しているところから発しているだけのやり方ではないのか。ちなみに、この度のトルコ大統領選挙投票率は9割近く、そのほとんど50%をエルドアンが獲得しているのだ。投票率が5割で、そのうちの比較多数と言うだけの日本の自民党よりも遙かに国民の支持も厚いのである。普通選挙が民主主義の徴表だとすれば、日本よりもトルコのほうがはるかに民主主義度が高いと言える。ちなみに、国としてのこのトルコは歴史的成り立ちからして東西文化の交差点として文化度の高い国であった。確か世界の三大料理の一つはトルコ料理で、僕が旅行をした印象だが多様なスープがとても美味く、非常に親日の国である。

 最後になるが、このエルドアンについては、アメリカ在住のある宗教要人による政権打倒(未遂)という大事件が起こり、政治家とか軍人とかの多数の要人が逮捕されたと世界の話題になったことがあった。また、この国の悪評の一つ、超インフレも、過去に何回もこれが起こったアルゼンチンのそれと同じで、外交的に仕掛けられたものと僕は推察している。
 マスコミは、G7の視点からだけの「勧善懲悪報道」をやるべきではない。

 ここでおまけを一つ。「ブログ しんばし写真館」を推薦します。野鳥、昆虫などの素晴らしい写真を僕は長く観てきました。検索して覗いてみてください。


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ウクライナ戦争から「反撃能力」?  文科系

2022年06月18日 18時14分19秒 | #ウクライナ戦争#マウリポリ陥落#アゾフ大隊

 気づいてみれば、二月から僕の心が大騒ぎを始めていた。遠い過去に二度ほどやった精神疲労性の鬱病の症状さえ出ていたのだが、そう気づいたのはやっと最近になってから。初めはただ「もう八一歳、おかしくもなる年だ」とだけ、このおかしさを自分一身に引き受けていた。が、これは勘違いと二か月も時が経って、やっと気づいた。地球の一角で始まった大変な殺し合いを見せられて来たからであり、またこの周辺にいてこれを報道しているその世界大元の人々がこれまた戦争の当事者で嘘まみれ、大本営発表ばかりと知ったからだと、やっと自覚できるようになった。ちなみに、大本営発表とはこういうもの。
「身方はすべて正義。敵はすべて凶悪で、こんなにも残酷」。

   二〇一四年の暴力革命による当時の親露ウクライナ政府転覆の背後にはアメリカが居たというのは、すでに証明済みのこと。そしてこの時以来、ロシア人が多いドンパス地域とウクライナ新政府軍との間に重火器も含めた応酬が続いて、延べ一万人を超える死者が出続けて来たというのも、国連が認めていることである。という経過などはすべて省いて、「ロシアが侵攻!」「こんな残虐行為の数々・・・!」から、「(ロシアのお仲間)中国も攻めてくる!」、「日本も本気の国防を!」までと賑々しさの極みになっている。馬鹿じゃないか。戦争という以外に、ウ・ロ戦争と日中戦争と「あれが起こったから、これも起こる」というそんな共通性がどこにあるか? そもそも日本では、暴力革命が政府を転覆させるか? さらには、中国に代わって自衛隊と戦争する国内勢力なんぞどこに居るのだ? さらには、八年で一万人が死ぬような内乱武力衝突が続いてきたか?

 ロ・ウ戦争から、日本の敵基地攻撃能力を反撃能力と言い換えてその必要性を説く安倍晋三氏などは、牽強付会の、荒唐無稽、普通の知性の持ち主とは到底思えないのである。日本タカ派、右翼ポピュリストの「戦争論」って、まーそんなものなのだ。

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やっと表面化「ウクライナ政権の胡散臭さ」  文科系

2022年06月16日 10時26分37秒 | #ウクライナ戦争#マウリポリ陥落#アゾフ大隊

    以下は、ウクライナ戦争に関わって来た旧拙稿「ウクライナ戦争の起こり方総集編 2022年05月04日 」の続編に当たるものになる。アメリカが支援した2014年の暴力革命によって生まれたウクライナ政府の現在はやはり、右翼ポピュリズム、汚職の巣窟という側面があったのである。と言ってロシアの進行が毫も許されるものではないのだが、2014年ウクライナ暴力革命の工作主アメリカのサイド(利益)ばかりのニュースに満ち溢れた日本マスコミ界に辟易としていたから、今改めて、以下を紹介するものだ。ゼレンスキーが対ロ交渉を言い出したが、一刻も早く停戦協議を進めて欲しいと願うばかりである。以下は、デイリー新潮の記事の抜粋。
 
【(前略)
 6月3日付フィナンシャル・タイムズは「西側諸国に漂い始めたウクライナ疲れ」と題する論説記事を掲載した。ウクライナ危機で生じた経済的打撃についての西側諸国の我慢は限界に達しつつあるからだ。

 情報戦での優勢が功を奏して西側諸国では「ゼレンスキー大統領は善で、プーチン大統領は悪だ」という勧善懲悪的な構図が定着し、ゼレンスキー大統領を批判すること自体がタブーになっている感が強いが、このような状況ではたして大丈夫だろうか。

同情を一身に集めているが…
 今年10月の大統領選挙で返り咲きが確実視されているブラジルのルーラ氏は5月上旬「連日のように世界各地のテレビで演説し、拍手喝采を受けているゼレンスキー大統領も戦争を望んだと言える。そうでなければ同国の北大西洋条約機構(NATO)加盟に向けた動きに反対するロシアに譲歩したはずだ。交渉を重ねて紛争を回避すべきだったゼレンスキー大統領にもプーチン大統領と同等の責任がある」と述べている。西側諸国で生活しているとわかりづらいが、国際社会ではこのような見解が案外有力なのかもしれない。

 国際社会の同情を一身に集めているウクライナだが、世界に冠たる汚職大国である点も見逃せない。政治の素人だったゼレンスキー大統領は「汚職撲滅」をスローガンに掲げて2019年に大統領となったが、国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)は昨年「ゼレンスキー大統領は英国領バージン諸島にペーパーカンパニーを設立し、就任後2年間で8億5000万ドルの蓄財をなした」ことを公表した。オランダの民間団体が作成した「組織犯罪汚職報告書」によれば、「ゼレンスキー大統領の資産はロシアの侵攻後も毎月1億ドルのペースで増加している」という。これらの指摘が正しいとすれば、ゼレンスキー大統領も「同じ穴の狢」だと言われても仕方がないだろう。(後略)

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮編集部  】

 

 開戦直後の要所への長い猛爆撃など、ウクライナ戦争よりも遙かに酷いイラク戦争などを21世紀になっても続けて来たアメリカに、他国の戦争を批判する資格など到底認められない。そして、そのアメリカが立ち上げ、持ち上げて、どんどん武器を提供して来た現ウクライナ政府が実質米傀儡政権であるという疑いなど、中南米などでアメリカが歴史的に行ってきた外交政策を鑑みれば、これも抱くのが当たり前のもの。上のニュースなどもこうして、やがて出てくるべき当然のものだったと思われるのである。

 過去を覚えていなければ、刻々の世界情勢も正しくは見えてこない。そして今や、当該諸国の人々に過去が正しく見えていなければ、米中争覇が世界を暗黒にすることだろう。いや、もう暗黒になり始めている。(ウクライナ戦争でさらに進んだのだが、)世界経済のブロック化が、世界戦争の前触れでなかったことがあるか? その下のスタグフレーション、失業の群れが、世界をますます奈落の底に落とし込んでいくということがなかったか? 今のアメリカは平気でそんな悪循環の方向にどんどん舵を切っている。株主・株価資本主義の覇権国の座を死守するためだけに。そして、日本は、ちょうどロシアに対するウクライナのように、その覇権闘争の先頭に押し出されつつある。日本の高すぎる官製株価がアメリカによる日本動員の脅迫手段にならねばよいのだが・・。

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ロウ戦争終結へのある提案  文科系

2022年05月12日 05時00分07秒 | #ウクライナ戦争#マウリポリ陥落#アゾフ大隊

 この実現を望む。今この停戦は、これしかない。アメリカからウクライナへの兵器提供がなければこの戦争は継続できない事態になっているからだ。国連がなんとか、この仲介をしてくれないかな。

『ドラギ伊首相、米ロ首脳の会談促す ウクライナ戦争終結に向け 5/12(木)

イタリアのドラギ首相は11日、ウクライナの戦争終結に向けた道を模索するため、バイデン米大統領とロシアのプーチン大統領が交渉を行う必要があるという見解を示した。10日撮影(2022年 ロイター/Leah Millis)

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戦争ニュースの読み方で  文科系

2022年05月09日 06時56分44秒 | #ウクライナ戦争#マウリポリ陥落#アゾフ大隊

 標記のことについて一言。戦争の一方的な残酷ニュースは疑ってかかるべし。また、相手政治家に対してはともかく、国民を鬼のように見てはいけない。憎しみの連鎖になって、また戦争を起こすことになるようなマスコミ手法だから。

 戦争って、大量殺人もさりながら、何でもありになるから恐ろしいもの。そこから「酷いニュース」を拾い上げ、数え上げれば切りなくあるだろう。永年の友人や仲間を殺された人間は鬼にもなろうし、さらには「鬼畜米英」のように敵を「鬼畜」とさえ描き出してきたもの。そういう印象操作・宣伝こそ国を挙げての戦意高揚の最大手段の一つなのだから。
 出所、証拠が示されていない伝聞様のものとか、確証がどこにあるのかというニュースなど、今回に限ってはまたアメリカ発のニュースがどんどん流れるが、全くの印象操作、戦意高揚操作・発表も多いはずだ。これは普通の大人の判断を少し働かせてみれば分かることも多いと分かるほど。

 プーチンの開戦がアメリカのイラク戦争と同様に残酷なものであるのは明らかだが、だからロシア(国民)も鬼畜だとはならない。イラク戦争からアメリカ(国民)を鬼畜とは描けないのと同じだ。戦争の双方とも国民は欺されている場合が多いというそんな操作に乗せられれば、誤った世界観、歴史観さえも持たされることになっていく。これこそ、戦争による憎しみの連鎖になっていくもの。戦争双方だけでなく直接間接の関係国をすべて含めてのことである。ちなみに、この7日にアメリカのCIA長官がこんな談話を発表している。時事通信の記事だ。

『バーンズ氏は、侵攻で明らかになった「ロシアがこれだけ残酷ならば、ロシアの残虐性により、ロシアと緊密な関係を維持する中国が「評判を落としかねない」と指摘。習氏は「予測可能性」を重視しており、「戦争に伴う経済の不透明感」も習氏の動揺につながっていると説明した。』

 ちょっと前の「テロとの戦い」も、そんな悪循環の塊を形成していったと思う。その挙げ句が「イラクに大量破壊兵器があり、テロ集団が使うかも知れぬ」という嘘の理由に国民も熱狂して、そこから起こったのがイラク戦争。ちなみにこのイラク戦争開戦には、国連がアメリカに猛反対した。以来アメリカは国連を軽視して来た。が、国連がなければ、憎しみの連鎖が今後の世界を二分していくだけだ。ウクライナ戦争でも、マリウポリなど無数の市民開放は国連だけに可能であったことも多いという、貴重な功績である。戦争や核兵器やの恐怖がない世界は、国連のような国際組織を将来的に強化し合っていく以外には道はないのである。

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ウクライナ・マリウポリの怪と朗報!  文科系

2022年05月08日 11時10分29秒 | #ウクライナ戦争#マウリポリ陥落#アゾフ大隊

 マリウポリの製鉄所に立て籠もるアゾフ連隊を巡る情勢は奇々怪々だった。玉石混淆含めて米報道ニュースばかりの日本の新聞が、昨日はこんな事を伝えていた。

『国連は赤十字国際委員会のほか、ロシア、ウクライナ当局と協力し、今月に入り500人近くを退避させてきた。そのうち101人は、人道危機が深刻化するマリウポリ市内の製鉄所「アゾフスターリ」から救出した。
 一連の作戦は先月下旬、グテーレス(国連事務総長)氏がロシアとウクライナを訪問してから動き始めた』
これまで2度の退避が実現したことについて、グテーレス氏は「一定の成果」と表現。「3度目も進行中だが、成功の可能性を損なわないよう完了前に詳細を語らない方針だ」とした』

 さて、「成功の可能性を損なわないよう・・詳細を語らない」って、どういうことだろう? 今まで邪魔が入ったということだが、どういう邪魔なのか。日本外務省もこれまで「ネオナチ組織」と認定してきたアゾフ連隊は市民を実質的に人間の盾として閉じこもったはずなのだし、だからこそここを完全包囲してもロシアは殲滅作戦には出られないで「人道回廊」を提案、協議してきたのだが、両軍がこの新たな市民退避機会を自軍有利になるように利用しようとしてきたということだろう。だからこそ、この人道回廊通過が難しくなって来たということだ。

 国連頑張れ。 

 

 などなどと気に病んでいたら今日はこんなニュース、大変な朗報である。国連が頑張った証拠だ。

『 マリウポリの製鉄所「全ての女性・子供・高齢者が退避」…部隊は潜伏して抵抗継続か
5/8(日) 2:57配信 読売新聞オンライン

 ウクライナのイリナ・ベレシュチュク副首相は7日夜、ロシア軍が制圧を目指している南東部マリウポリのアゾフスタリ製鉄所について、「全ての女性、子供、高齢者が退避した」とSNSに投稿し、取り残されていた住民の退避が完了したことを明らかにした。

 製鉄所の敷地内には約1000人の住民が取り残されていたとされる。今月初め頃に、国連と赤十字国際委員会の支援によって退避が始まったが、その後も露軍による攻撃が続き、住民の退避が完了するかどうか懸念されていた。

 ただ、退避に関する詳細は不明で、敷地内に残されているとされる負傷者の退避も進んだのかどうかは不明だ。また、製鉄所内ではウクライナの部隊が潜伏し抵抗を続けているとみられ、露軍の攻撃が一層強まる可能性がある。』

 

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「ウクライナ戦争の起こり方」総集編   文科系

2022年05月04日 12時58分50秒 | #ウクライナ戦争#マウリポリ陥落#アゾフ大隊

 ウクライナ戦争の起こり方について改めて総集編をまとめてみる。以下の歴史的経過は、アメリカ発ニュースで覆い尽くされている西欧、日本マスコミ社会ではほぼ無視されてきたものと言える。これらの経過の無視がどうして起こっているかを論じたものも併せて紹介する。これはちょうど嘘の理由で始まったイラク戦争に本当の理由が別に存在したのと表裏の関係になるだろう。と言っても、プーチンの世界史的戦争犯罪が軽減されるわけでは全くない。これはイラク戦争が国連(総長)によって真っ向から非難されていたのと同じ理由であるはずだ。

 

 二月二四日に始まったロシアのウクライナ侵攻は、人類戦争史を半世紀前に戻したような酷い蛮行と観る。アメリカは二一世紀に入ってもこの野蛮を繰り返しているが、それ以外の大国のこんなあからさまな戦争は近年珍しいからだ。それだけに、戦争嫌いの僕はこの戦争までの彼の地の紛争経過を知りたくなった。この地の紛争と言えばまず、二〇一四年ウクライナ東南部を巡るロ・ウの暴力応酬、戦闘にまで遡らねばならない。

(二〇一三年から一四年にかけての反政府運動において)二〇一四年二月に突然、暴力革命の様相を帯びるに到り、ヤヌコビッチ(二〇一〇年の選挙でウクライナ南部、東部を基盤として選ばれた同国大統領)は国外逃亡に追い込まれます。その背後の事情は明らかではありませんが、整然たる市民運動のなかに過激な暴力を持ち込む極右勢力が紛れ込んだようであり、そのなかにはネオナチ的な人たちもいたようです。このような「マイダン運動」の暴力革命化は、ロシア語系住民の多いクリミアやドンパス二州の住民を刺激し、前者のロシアへの移行、後者における「人民共和国」樹立を引き起こしました。これは国家秩序の非立憲的な変更であり、諸外国から強く非難されました。もっとも、当事者たちからすれば、その前にキエフで非立憲的な暴力革命があったということが正当化根拠とされるわけです』(月刊誌「世界 五月号」の塩川伸明東大名誉教授「ウクライナ侵攻の歴史文脈と政治理論」)

 次いでこの時の状況を、岩波新書「アメリカの制裁外交」(杉田弘毅元共同通信論説委員長、現在国際ジャーナリスト著。二〇二〇年二月第一刷発行)から、紹介する。以下のこの事件によってロシアがここから追放され、G八がG七になったのである。
『(二〇一四年の)クリミア併合とその後の(ロシアへの)制裁は、ロシアと米国の関係を決定的に悪化させ、中ロを接近させた。その結果、北方領土返還の道筋も見えなくなった。地政学的に大きなインパクトを持つ対ロシア制裁とはどんなものなのだろうか。
 クリミア半島は帝政ロシア時代の一九世紀から保養地として知られ、ロシア系住民が六〇%を占め、ウクライナ人は二五%と少数派だった。黒海に突き出ている半島にはロシア黒海艦隊の基地があり、ロシア海軍が地中海に出る戦略的要衝である。(中略)
 ウクライナでは二〇一三年一一月から親ロシアのビクトル・ヤヌコビッチ政権への激しい市民デモが起こり、翌一四年二月には政権が崩壊。これを受けて親ロシア派の武装勢力がクリミア半島の議会や空港を占拠し現地の政治権力を奪取し、さらには半島全域で行われた住民投票で九六・七七%がロシアへの編入を支持し、欧米が猛反発する中、三月一八日プーチンはクリミアの編入を宣言した』
  この後のことについては、この三月二四日の朝日新聞に、元国連難民高等弁務官事務所職員、千田悦子氏がこういう文章を寄せていた。
『一四年以降のドンパス地域は、ウクライナ政府の非制御地(NGCA)と制御地(GCA)との境界線を中心に戦闘が常態化し、人々が西へ逃げていた。親ロ派によるロケット弾発射や発砲、それを迎え撃つウクライナ軍の砲撃戦で、家や学校、病院、公共施設などが破壊されたそれらの修復を初めとするプロジェクトの進行調整を私は担当した。日中、砲弾の音を間近に聞きながら仕事をする日もあった・・・・ロシアの歴代大統領が恐れてきたNATO拡大についてロシアの言い分を聞きつつ、今後の緊張を緩和する方向性をNATO全体で探る必要があるのではないだろうか』

  この境界線戦闘によって以降一九年までに双方一万人を超える死者が出ているという資料もあったうえで、今年二月二四日のロシア侵攻である。ついてはこの侵攻直前まで、こういう事実があったと明記しておきたい。ウクライナの大統領はあくまでもNATOには加盟すると、それでも「ロシアは攻めて来ない。来るという人はその証拠を見せて欲しい」と表明し続けていた。なぜ、どういう根拠でこの表明があったのか。

「BSフジ・『プライムニュース』三月二八日放送」のネット記事から、真田幸光 愛知淑徳大学教授の見解を以下に紹介してみよう。三菱UFJ銀行出身の国際金融学者である。
【 英米が真に狙うはロシアの先の中国叩きか。日本は慎重に様子見を
(前略)
新美有加キャスター 国際的な信用を落としてまでも各政策を行うプーチン政権。経済的にはどういう利益が出るものですか。
真田幸光 基本的にはない。むしろ、そこまでロシアが追い込まれ、貶められている。
反町理キャスター プーチンがそうするように仕向けていると。その主体は誰ですか?
真田 英米だと思います。今の覇権争いにおけるアメリカの一番の敵は中国。中国とロシアがくっつくことは極めて怖い。まず、ロシアの力である資源と軍事力を徹底的に落とす。最近の国際金融筋は、ウクライナ問題においてプーチンの力がかなり落ちていると見ている。そろそろ落としどころを探し、金融で中国の首を絞めることが始まるのでは。
反町 なるほど。ロシアに対して英米は、経済制裁や国際世論、武器供与も含めて追い込み、プーチン大統領が愚策を打たざるを得ないようにした。すると、武力をもってウクライナを救うつもりは最初からなく、ロシアを潰して中国を叩くことに向けたステップとしてウクライナ侵略を見ていたと聞こえるが?
真田 そう申し上げました。ウクライナが、そして大陸ヨーロッパが踊らされた部分が結構あるのでは。
反町 怖い話だ。畔蒜さんは?
畔蒜泰助 笹川平和財団主任研究員 これまでの米露の交渉を見ると、アメリカはロシアがウクライナに侵攻する危険性を相当感じていて、かなり警告をしたと思う。一方、私が知っているロシア人の専門家は皆、ウクライナへの侵攻などあまりにも愚策でやるはずがないと言っていた。今は当惑している。プーチンにはもっと別の手もあった。
反町 英米が本当に睨んでいるのがロシアの先の中国であるとすれば、日本はどのようについていけばよいのか。
真田 難しい。日本最大の同盟国はアメリカで、価値観の共有という意味できちんと合わせる必要があるが、先んじて対露制裁や中国への何らかの動きをし過ぎると、はしごを外される危険性がある。また場合によっては、世界の中でかなりの実体経済を握る中国の側が勝つ可能性もある。どう転ぶかわからず、とりあえず様子を見るのが生き延びる手だて】

  戦争嫌いの僕は例によって、この戦争を起こしたプーチン・ロシアを今でも、どれだけでも非難する。だからこそそれだけでは済まず、一般マスコミ物の他にもここまでの詳しい経過などをいろいろ読むことになった。そこで出会ったのが「プーチンもウクライナも英米によってこの『あまりにも愚策』へと追い込まれた」論なのである。すると、これを傍証するようなものをどうでも探したくなって、やっと一つ見つけた証拠が、これだ。

『「ヤツェニュクには政治と経済の経験がある。クリチコが入るとうまくいかないだろう。国際的に信頼されている人物を招いて一役買ってもらえるといいが・・・」
 政変のさなか、アメリカのヌーランド国務次官補とキエフ駐(ちゆう)箚(さつ)のパイアット大使のふたりが、この政変を支持し、暫定政権の人事について電話で話し合う様子がリークされたエピソード(BBC、二〇一四年二月七日)も、いまでは忘れられた感がある。
 果たしてその後、ふたりが描いた筋書きどおり、クリチコはキエフ市長になり(プロボクシングの元世界チャンピョンで、ロシア軍と戦う現キエフ市長である)、ヤツェニュクはマイダンで開かれた勝利集会で〝革命〟政権の暫定首相に指名される。』

 この文章の出典は、月刊誌「世界」四月臨時増刊号「続・誰にウクライナが救えるか」。二〇一四年マイダン革命当時のウクライナ政権人事をアメリカが握っていたと示されている。筆者はエコノミスト・西谷公明氏。早稲田の大学院を出て、長銀総合研究所、ウクライナ日本大使館専門調査員、その後トヨタロシア社長という経歴の東欧専門家である。

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G20、孫崎享の正論  文科系

2022年05月01日 12時37分05秒 | #ウクライナ戦争#マウリポリ陥落#アゾフ大隊

「孫崎享のつぶやき」にこんな記事が載ったが、多くの日本マスコミの「時流に乗っただけとか、アメリカ発ニュース・アクセス記事とか、その場限りの無責任論調」に比べていつも正しいと思う。彼が吐くのはいつも正論と読んできたから毎回愛読している。今時異色の元外務省国際情報局長である。だからこそ、普通のマスコミには載らない珍しい重要海外ニュースや意外な正論視点を提供し続けてくれている。

『 インドネシア、素晴らしい外交を展開。

 11月開催されるG20にロシアを出席させない様強い圧力。バイデンは3月24日、露をG20=主要20か国の枠組みから排除すべきとの考えを示す。この中、インドネシアは露主席し、同時にゼレンスキーも招待。
 日本においては一億総ロシア糾弾、一億総制裁で世界中が同じものを求めていると思っている。
 国連で非難決議は採用されたが、アルゼンチン、トルコ、ブラジル、インド、インドネシア、サウジアラビア、中国は制裁を実施していない。
 こうした中、G20首脳会議が11月に予定され、米国等はロシア排除を呼び掛けている。この中インドネシアはロシア出席、ウクライナのゼレンスキーを招待の方向を出した。
 紛争に対し、一定の方向を出す時、双方の主張を聞くのは当然のことであろう。その当然のことを米国の圧力でG7等は出来ないが、それをG20の議長国のインドネシアが提言した。(以下略)』

 

 アルゼンチン、ブラジルは、アメリカの中南米搾取に苛め抜かれた国。トルコは、アメリカによる革命輸出によってシリアのようにあわや政権崩壊にまで行きかけた国。インドはなぜか今回もはっきりと米ロ中間をとり続けている。サウジは最近、言わばアメリカに裏切られた国である。いずれも、イラク戦争のことを忘れていないのだろう。ちなみに、孫崎文中の7国は、G20加盟国だ。G7にBRICS5国に加えて、アルゼンチン、メキシコ、オーストラリア、インドネシア、韓国、サウジ、トルコ、EUである。

 これらの国々は、「ロシアは確かに酷いが、嘘の理由で世界を巻き込んであれだけのイラク戦争をやったアメリカがどの口でこのロシアをこれほど非難できるのか。世界に向けた対ロ印象操作技術を総動員したこれほどの『冷酷、残酷なロシア』は、何か邪な意図あってのことに違いない」という正しい認識なのだろう。戦友を目の前で殺されたら人は鬼にもなるだろう。戦争とは、いつもどこでも冷酷で残酷なものである。だから極悪なのである。だからこそ、憎しみの連鎖など作ってはいけない。

 ちなみに、米軍ヘリコプターが一般イラク住民を機銃掃射しまくっていた映像を後の世界に送り出したウイクリークス主ジュリアン・アサンジは、米国家重大犯罪者として永久に獄に繋がれる運命になっている。この正義の人を、今世界はどれだけ覚えているか!

 

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米、対ロ世界戦線司令官に    文科系

2022年04月28日 16時53分46秒 | #ウクライナ戦争#マウリポリ陥落#アゾフ大隊

 今、ロシアのウクライナ侵攻に対して、アメリカが「対ロ世界戦線最高司令官」に躍り出てきた感がある。まずいくつかのその例を上げてみるが、これはとてもおかしなことじゃないかと、気付き始めた人々も多いはずだ。

 まず、今日の朝日新聞「天声人語」にこんな下りがあった。
『ウクライナ側は、米国などから渡された武器を使って対抗している。武器供与は今後も続くという。気がかりなのは、オースティン米国防長官による勇ましげな言葉だ。米国の目標について、「ウクライナ侵攻のようなことができない程度に、ロシアが弱体化することを望む」と語ったという。自衛のための支援が、いつからロシアつぶしに変わったのか』

 次は、本日の日刊ゲンダイの記事から。
『ブリンケン米国務長官が26日、上院外交委員会の公聴会で、6月下旬にスペイン・マドリードで開催予定のNATO首脳会議に日本が参加すると明言。ロシアによるウクライナ侵攻について「日本が素晴らしい形で立ち向かった」と称賛してみせた。(中略)
 ブリンケン発言は、NATO拡大を忌み嫌うプーチン大統領を刺激したに違いない。松野官房長官は会見で「日本の出席については何ら決まっていない」と慎重だったが、内心は大慌てだったようだ。
「ブリンケン発言は、日本側と調整せずに突然飛び出したとみられている。11日にはバイデン大統領が、インドとの首脳会談の場で、日米豪印の4カ国からなるクアッドの首脳会議を『5月24日に日本で行う』と突然公表。まだ水面下で調整中だったのに、『5.24』と日付までブチ上げられ、岸田官邸はてんやわんやでした。この時も松野長官が『具体的な日程は決まっていない』と火消ししていた。米国は先手を打って情報を出し、重要日程の既成事実化を図っているフシがある」(官邸事情通)』

 ちなみに、クアッドの一つインドは、米ロ間で中立と言うよりも、国連総会決議などでアメリカを疑惑の目で見始めていることはすでに有名な話である。

 さて、アメリカはいつから、対ロ世界戦線の総司令官になったのか。他国がまだ決めていない「軍事外交方向」の決定を予告する「世論操作」にまで打って出たとあっては、その国は米軍支配下の司令官(国)も同じではないか。ただでさえ世界のウクライナ戦争ニュースにニューヨーク発が多くなりすぎて、米の「ウクライナ戦争・世界世論操作」が急なのに(朝日新聞でさえ、そうだ。米の大本営発表をそのままに報知している)、こんな事までしているのである。僕に言わせれば、このウクライナ戦争はもうイラク戦争と同じ性質のアメリカ「ドル=石油世界体制死守」という世界支配の一環と証明されたようなものなのに。

  この戦争とアメリカの世界地政学・ドル世界(金融資本主義)体制とを結びつけて考える日本人はごく少ないと思う。が、これが見えなければこの戦争の本質が見えていないに等しいはずだ。それは、イラク戦争についても同じことなのだが、9日の拙ブログにおいて真田幸光 愛知淑徳大学教授が現下の米世界地政学・ドル世界体制死守がこの戦争の片面の本質だとしっかり述べているのを紹介している、それと同じ「ウクライナ戦争はアメリカが関わってこそ起きた」論なのである。
 今のドル(で)石油代を支払う世界体制があるからこそ、ドル世界通貨体制が守られ、GDPの4倍もの米国家累積赤字(日本は2倍と言われているが、その倍)や、毎年打ち続いた大きな米貿易赤字やがあってもドルが下がらないという超大国恩恵をアメリカは享受してきた。そのためにこそ、石油(天然ガス含む)=ドル体制を崩そうとする国はすべてアメリカの戦争相手にされてきたのである。フセイン・イラク、カダフィのリビアは滅ぼされ、ベネズエラ、イランも訳の分からん「悪の枢軸国」扱いをされて、有志国を募る戦争さえ呼びかけられてきた国だ。この4国の石油埋蔵量世界順位はそれぞれ、5位、9位、1位、4位で、ロシアが8位なのだ。しかも今回のロシア侵攻は、西欧へのノルトストリーム2を完成させるやいなや起こったもの。つまり今回も、アメリカによってロシアがウクライナに煽り出されたという仕組が存在し、働き続けてきたと、このブログではここまでその証拠などを提示してきたつもりである。もっとも、煽り出されたプーチンが「右翼ポピュリズム独裁体制に固有の弱みを突かれた」戦争犯罪国の極悪指導者であることには変わりはないのだが。

 ちなみに、このロシア孤立化・「世界の敵」化の先に、中国を裸にして「トゥキディデスの罠」戦争よろしくこれを引きずり下ろす米世界地政学が存在するというのは、誰にも分かりやすいことだろう。アメリカは今や、物作りがすっかりダメになってバブル株価(とドル世界通貨体制と)だけで持っている国。そして、そのバブル株価が有効な内に世界の物作り企業を買い占めようとしている国。こういうグローバル金融資本主義米国の世界制覇をば、物作り国中国の台頭を打ち破って死守していくためには何でもやる国になっているのである。米金融が世界経済を握り尽くしたら世界の庶民の職業というものがどうなるのか、皆さん是非考えて見て下さい。

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ロ・ウ戦争、日本マスコミの偏向  文科系

2022年04月27日 08時14分01秒 | #ウクライナ戦争#マウリポリ陥落#アゾフ大隊
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