九条バトル !! (憲法問題のみならず、人間的なテーマならなんでも大歓迎!!)

憲法論議はいよいよ本番に。自由な掲示板です。憲法問題以外でも、人間的な話題なら何でも大歓迎。是非ひと言 !!!

民間「金融」の時代が終わった?   文科系

2016年08月31日 07時52分50秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)

 今朝の中日新聞2面に僕から観たら凄い記事が載っている。そもそも、二つの見出しが、こうあった。
『証券会社勤め やばいやつだ』
『麻生氏 首相時にも「『株屋』は信用されない」』
 これって一体、何事が起こったのだ? 時の財務相が証券業界を全面否定する発言を敢行したわけだが。同記事中にはこんな言葉も紹介されていた。
『債券、株に投資するのは危ないという思い込みが(国民に)ある。あれは正しい。われわれの同期生で証券会社に勤めているのは、よほどやばいやつだった』
『詐欺かその一歩手前のようなことをやり、「あんなやくざなものはやめろ」と親に勘当されたやつがいるぐらいだ』

 さて、僕は、これらの言葉にはほとんど賛成だというだけでなく、これに類するエントリーを昔から今日まで、ここに幾つも書いてきた。しかも、現世界経済の最大問題として。最も古くはこれ。『日本財界が2週間で7500万ドルをパクられた話 2007年01月21日』。ここには、アメリカのモルガン・スタンレー、あるトレイダーの、こんな言葉を紹介している。95年2~3月のある金融事件をめぐる話なのだが。
「日本の証券会社はアメリカよりずっと進んでいて、何年も金融的な詐欺を手がけて、みごとに成功していた」
「日本の最大手の投資家たちは、どれだけ切羽詰まっても、もう財務的詐欺を犯すために日本の証券会社を使いたがらなかった」

  次の例はこれ。『日本5大銀行、「国債売買が収益源」? 2011年11月15日』。当時の日本五大銀行についてその業務をこのように描いていた。
『本業の貸し出しが伸びず、貸出金利と調達金利の差に当たる利ざやも縮小。国債の売買に収益源を求めざるを得ない現状に、りそなホールディングスの細谷英二会長は「銀行経営からすれば、国債に代わる商品はなかなかない」と苦しい胸の内を明かした』
 『各グループが保有するギリシャやイタリアなど欧州債務国五カ国向けの国債や貸し出しなどの投資残高(九月末時点)は約二兆円。欧州問題への警戒感は強く、今後も推移を見守る姿勢を示した』
 つまり、ギリシャなど南欧で当時騒がれていた国家債務危機、膨大な失業者の群について、日本の五大銀行が片棒を担いでいたと述べているわけである。空売りなども行っていたのだろうと、推察したものだ。

  もう一つこんな例を挙げるならば、アジア通貨危機もある。
『投機を仕掛けたのは、ヘッジファンドのほか、日本の銀行を含む世界の主要な金融機関と、大手のミューチュアル・ファンドをはじめとする機関投資家であった』(『世界経済史の今を観る(6)通貨危機の仕組み・タイの例 2013年03月29日』)

 さてさて、マイナス金利と言い、昨日のエントリーで観たGPIFなど公的資金の大企業筆頭株主ぶりと言い、対証券会社だけでなく、金融業一般に対して、特に短期投資に対して、政府が恐ろしく厳しい姿勢で臨み始めたということだろう。いつまでたっても国連が動かなかった金融規制を、日米政府が遅ればせながら率先して始めるということなのだろうか。そういえば、アメリカの5大証券会社もすべて、あのリーマンショックの直後に潰れているのである。1、2位のそれが、ゴールドマンとモルガンの銀行にそれぞれ吸収されたことも含めて。それでもなお、アメリカの銀行には世界10位に入っているものはないのである。リーマンショックがそれだけ大きかったということだろう。こんな不良債権・疑心暗鬼の中で「リーマン以前に株価が戻った!」って、一体どんな意味があるのだろう。社会主義的官製バブルの道を採っても、リーマンの煽りを受けた南欧など世界の失業者は全く減っていないし、日米などの不安定雇用はどんどん増えているのである。物が売れていく、買われていくという本来の意味で、職業も増えて景気も良くなるという方向がどこに見えるというのだろうか。

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公金株買いが、ここまで・・・とは   文科系

2016年08月30日 19時36分47秒 | 国内政治・経済・社会問題

 近ごろちょくちょく覗いている『おぢの山暮らし』というブログで、とんでもない記事を読ませて頂いたので、ここに転載します。書き手は、小樽の南、ニセコの山中に棲まわれる音楽とお酒、そして体育を愛される65歳ほどの面白い方のようです。みなさんも、是非訪問してみて下さい。

『 きのうの日経新聞電子版が「東証1部企業の4社に1社、公的マネーが筆頭株主 市場機能低下も」と 危惧しておる。

まことにごもっともじゃ。

株価は自由な市場経済の下で形成されるという。

1株あたりの利益だったり、利回りだったり、業績の良し悪しで株は買われたり売られたりする。

ところがギッチョン、我がニッポン国では東証1部に上場する会社の4社に1社の筆頭株主が、GPIFだったり日銀だったりの公的マネーというから驚いた。

日経新聞は以下のように書いておる。

「株価を下支えする効果は大きい半面業績など経営状況に応じて企業を選別する市場機能が低下する懸念がある

つまりは自由な経済の下で形成されるはずの株価が、公的年金や日銀の売買に左右されるということだ。

自由主義経済国では考えられん異常事態でござる。

だから日経は「日本株は『官製相場』の色彩が強まっている」と指摘しておる。

大量の資金が企業の業績に関わらず投入されてしまう可能性ありってこと。

そうなると、業績が悪くても、経営が多少怪しくても、その企業の株価が下支えされて、企業は資金調達が容易になる。

潰れるはずの企業がゾンビのように生き残るって、そりゃ自由主義経済の根幹を揺るがす一大事ではないのか?

ヤバくないか?』

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生存競争社会とその思想   文科系

2016年08月28日 13時53分28秒 | 文化一般、書評・マスコミ評など

 25日の『随筆紹介 「不寛容社会」』に付けたコメントを、大幅に補足修正して、エントリーとさせていただく。何度書いても良い事と思うから。

「対立」の理論化の末に・・・ (文科系)2016-08-28 12:06:41 ドイツは、2度の世界大戦を戦った。兵器の生産力を競う史上初の世界「総力戦」、第一次世界大戦がドイツ社会にもたらした後遺症はもの凄いものだったから、1度目で懲りたはずなのに2度までも。なぜだったのだろうとは、世界でも度々話題になることであって、今の日本こそ何度でも考えてみるべき事と愚考する。ドイツにはこれだけの要素や結末が揃っていたと言われてきた。

①1929年の世界大恐慌で世界中に失業者が溢れていて、国、会社、個人の世界的競争が極限まで厳しくなっていた。エントリーに見る、不寛容社会ということだろう。ちなみに日本も、こういう大恐慌時代への対処として「満蒙開拓」に国家戦略的活路を見出そうとしていた。両方ともが、遅れて発達した「持たざる先進国」と、僕等は世界史で学んだものだ。

②ヒトラーは、膨大な失業者をこのようにして「救った」。軍隊と軍事生産の大増強によって。ちなみに、この事によってヒトラーを支持した最右翼が主婦たちであったと言われてきた。家政を預かる身であってみれば、子どもを喰わせられるということが、こんな時代にどれだけ大きな意味を持ったかということであろう。このことは、この8月17日「中日新聞」の「ナチスの時代を見つめて(中)」で知った。ヒットラー政権下の33年から36年までに、ドイツの失業者は601万から155万人へと4分の1に減り、GNPは5割も増えたと、同記事にあった。

③優生学的な民族優越思想とその敵(ユダヤ、ロマ、障害者、有色人種)を説き、広めて、一つの全体主義社会をまとめ上げた。勿論暴力政治と一体としてこれが進められた。「敵対者」を殺すというのは、最大の暴力である。全体主義は、反対派に対する暴力、抹殺を伴い、それへの恐怖によってこそ強化されていくものと言われる。こういう国家全体主義思想が、上記①②を逆にまた強化していくということだ。よく言われるように、思想は現実から生まれ、その現実を逆に強くもするということだろう。

④以上への、補足として、ある余談をご紹介しておきたい。これも前記「ナチスの時代を見つめて(上)」(16日)で知ったことである。ヒトラー・ドイツから米国に亡命したアインシュタインらの物理学者らが「ヒトラーを倒すためなら」と原爆製造に手を貸した。ヒトラーが出なければ、広島、長崎原爆投下はなかったはずだ。原爆自身はいくらか遅れて生み出されていたとしても。ファッショの時代に入ってしまえば、それへの反対派も黙ってはいないということだろう。皆が野獣になり、究極の対立を演じるということではないか。

 さて、今の世界、日本には、このほとんどが揃っていると思う。以下のように。
①不安定労働者、相対的貧困者が圧倒的に多い先進社会で、人々は景気、株価に一喜一憂している。世帯主の年収は15年ほど前と較べて100万円ほどは下がっているはずだ。失業者が若者に多いので、結婚出来ない男性も増えている。
②武器輸出三原則は放棄され、武器で立ち行く会社もどんどん増えていくことになった。その暴力でイスラムなど世界から嫌われているアメリカへの憎しみを、集団安保強化で日本国自らも引き受けることになったわけだし。ちなみに、兵器生産はいったん始まると後戻りも出来ず膨らんでいくだけだから怖い。縮小すればこの物作り不景気の中ではたちどころに景気が下がり、失業者も増えるから、「行く所まで行くしかない」という性格を持つからだ。この好例がヒトラー、アメリカであろう。
③朝鮮、中国の民族や政治的左派へのヘイトスピーチ、蔑視(丸出し)言動も、当局は一向に押さえる気配がない。北や中国を仮想敵国のように扱いたい人々も多いのだろう。仮想敵が「深刻」でなければ、軍隊増強は出来ない。ソ連が無くなった後のアメリカが「テロとの戦い」を大々的に掲げなおしたように。アメリカはいつの間にか、あの冷戦時代に比べて2倍の軍事費になっている。

 どんな人も、政治家も何も好き好んでこんなファッショ・戦争世界を作りたがるわけではないと、僕は考えてきた。現実と思考・思想との悪循環の中から、時々の政権、最悪の政権でさえ気付いてみたらそうなっていたというようなものというのが実相だと愚考してきた。ヒトラーや東條には確かにそういう人間疎外論では説明できないような思想的能動性があるとも思うが、ある思想というもの自身がそれ以前の社会的諸条件を踏まえてしか広がりえないという意味で純粋に「好きこのんで生み出された」とは言えないと考えてきたのである。

 誰かが意図してファッショを招くというならばかなり分かりやすいが、いくつかの既成事実が積み重なっていつしか取り返しが付かない状況になっていたというものだから、人類愚行は繰り返されたのではないか。とすると、「そういう既成事実」が何かという問題こそ最も重要なことであろうに、そんなことを考える保守政権はごく少ないだろう。それこそが、ファッショを阻止する最大の難問なのではないか。

 とは言え、何という社会になりつつあるのか!   

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随筆  各国ばらばらな「失業率」     文科系

2016年08月27日 10時12分37秒 | 国内政治・経済・社会問題

 訳あって、失業率という数字を調べていた。こういう統計数字は定義次第でいくらでも加減できるはずだし、若者失業率が大問題になっている今の世界公民として必須の教養とも思いついたからだ。

 原則は失業者数を労働力人口で割って%にしたものだが、この分母と分子が、国によって定義を異にしているという現実を知った。つまり、世界統一基準はない。まず分母については、公務員、軍人を入れるか否かがバラバラ。彼らには原則倒産が無く、失業という概念が適用できないかららしい。分子は、日本の場合「調査時期に、週一日でも働いている」とか「家事手伝い(週何日?)」とかは除くとあった。これだと、分母に公務員や軍人を入れてその数が多くなり、分子からは「失業を隠すべく、家事手伝いと書く独身女性」「週1~2日のアルバイトにやっとありつけた人」などを除いたとしたら、そういう国の失業率は大変下がるはずである。ちなみに、先日集団殺人事件に至ってしまった中卒無職少年たちや、あの事件の被害者などは、当然失業者に入ってはいまい。そのせいかどうか従来日本政府は単に失業率でなく「完全失業率」を発表してきたし、失業率と完全失業率は「同じ」とも述べてきたようだ。本当に同じか?

 若者の一生や、家族の生活そのものを大きく左右するこんな大事な数字に、世界統一定義がない。国連も、正しい各国比較のためには国際統一定義を作りたいだろうに、どうして? この現状に誰が得をし、誰が損する? それも、人の生涯に関わる大問題なのだ。労働という権利と義務、納税の義務という言い方をすれば、憲法や国家社会の存立やに関わってくる大問題である。 

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ちょっとした想像力    らくせき

2016年08月27日 09時41分07秒 | Weblog

北朝鮮の潜水艦ミサイルの発射。危険な火遊びです。

日本にアメリカの基地があれば、攻撃の対象になることも。

一方、日本が名実ともに独立を果たして、米軍基地もなく

北朝鮮との間に平和条約を結んでいたらどうでしょう?

こんなに脅威に感ずるでしょうか?

 

 

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随筆紹介  本物が食べたい   文科系

2016年08月26日 14時06分56秒 | 文芸作品

 本物が食べたい  K・Kさんの作品です

 八歳と五歳の孫娘は最近エビフライが好きになった。初めは一本ずつ買っていたが、よく食べるので作ることにした。市販のは衣ばかり厚くて中のエビはやせ細り小さい。手作りすれば中身のあるぷりぷりのエビフライを食べられる。久しぶりに揚げ物をした。夫と二人ではほとんどしないから「おっ、珍しいなあ」夫も言う。

 喜ぶかなと期待したが、一口食べで「いらない」箸を置いた。「本物が食ペたい」と言う。どうやら総菜コーナーで売っているのは、衣に味がついているらしい。私のはケチャップソースをつけても箸はすすまない。張り切って作ったのに、がっかりする。なるべく手作りして添加物の入っていない物を食べさせたいと思うけれど、時間がかかり毎日とはいかず、買っていた。その味に慣れてきたのだろう。

 本物が食べたいについて思い出した事がある。私の子供たちが小学校のころ、インスタントラーメンをよく食べていた。ある日、ホテルの中にある中華料理店でラーメンを食べた。「これが本物のラーメンだよ」。話をすると、「違う、いつもの本物のラーメンがいい」息子はかおを横に振った。いつもはインスタントラーメンで目の前のが本物なのに。あの時もがっかりした。

 家で手作りするのが内食、買って並べると中食、外で食べると外食とか、最近は内食が充実している。たすかっているが家庭の味は薄れていくかもしれない。

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随筆紹介 不寛容社会    文科系

2016年08月25日 17時45分03秒 | 文芸作品

 不寛容社会   M・Aさんの作品

 気温が三十五度近い日が続いた頃だった。暑さに弱い私は、虫刺されから始まってひどい皮膚炎になったので、やむを得ず二日後に病院に行った。
 そこは南区内でも名医といわれる女性の先生で、個人病院である。待ち時間は、よほどすいている日で一時間余り。初日はそれで済んだが、翌日も来なさいというので行ったところ、予想以上の待ち時間になった。待つこと二時間二十分近く。午後の予定も入っていたのでさすがの私も……。新書を一冊ほとんど読んでじっくり落ち着けていたはずの腰が浮きそう。

 待合室は狭くはないけど、ずっと立っている人も多くいたし、夏休みになって小さい子どもからお年寄りまでいて、ごった返していた。待っている人たちも、この込み具合に疲労感やイライラ感が顔にじみ出てくる。
 けっこう幼児もおり、乳児もいたのだが、その中で二歳になるかどうかくらいの女の子がぐずりだして泣き続けている。「うるさいな!」突然私の横に座っていた七十歳は過ぎている男性が言い放った。日焼けして細身の彼は、目を三角にした。

 確かに、皆イライラしているときに、泣き声は愉快ではない。が、なにせまだ聞き分けのない年齢。もう一人姉とみられる女の子も連れたお母さんは、泣いている子をなだめているのだ。〈仕方ないではありませんか、まだ小さいですから)と言いたいけど、角刈りの短気そうな人だし、彼をも傷つけない言葉は見つからず、私は言葉をのみ込んだ。やはり他の誰も何も言わなかった。この男性には、孫や子どもでそういった経験はないのだろうか。もし自身にそうした幼児がいたら分かるかもと思うのだが。私の次男も集合住宅にいて、幼児の泣き声に気をつかうと言っている。「理解してくれる人もいるけど、そうでない人がいるのも確かだよ」と、私の現状認識が甘いと思ってかそう話す。

 うるさいからと、近くに保育園などの建設に反対する住民もいるご時世である。ある報道によると、「不寛容な人が多くなってきた社会」をレポートしていたが、確かに住みにくく、余裕のない人が多くなっている気がする。

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人間思考の前提、実証、結論  文科系

2016年08月24日 16時49分33秒 | 文化一般、書評・マスコミ評など

 右の方々が僕をよくこう批判される。「結論ありき」とか、「悪い事は何でもアメリカのせい」とか。8月17日エントリー「僕とアメリカ」とか、7月25日エントリー「随筆 ならず者国家」とかはそういうことに応えてきたものだが、改めて標記のことをまとめてみたい。人間の思考というものが辿らざるを得ない道、「前提と実証と結論の相関関係」についてのことである。

 例えば社会ダーウィニズムなどは、感性的で無意識のそういう見方もふくめて、人が歴史的事件を「実証」する際の「前提」となるものだろう。こんなふうに。
① 例えばある人が社会ダーウィニズムよろしく「人は争うもので、戦争は無くならない」と考えているとしよう。これは、人の思考を大きく方向づける大前提になる。

② そういう目で真珠湾不意打ちを見れば、以下のような「実証(的弁護論)」などはいくらでもできる。
A「そもそも西欧諸国は弱肉強食を地で行ってきた。奴隷制度なり、植民地なり、白人優位思想なり」。
B「日本が同じアジア人として虐げられてきた人々を救おうとしただけのこと」。
C「現にルーズベルトは真珠湾を事前に知っていて、そこに日本を突入させた。このように、善意の日本を戦争に巻き込んで敗戦させた。それが太平洋戦争である」
 とこれらは今度は、思考を更に細かく方向付ける諸前提になる。「A~Cそれぞれの目で見たさらに細かい事実」を探しだし、付け足して、これらを実証していくわけである。

③ ①の大前提にも、②のA~Cにも、反対派はいくらでも実証的反論を挙げられる。これらについてはここで詳論はしないが、このブログで僕が述べてきたことなどもこの部類になるだろう。

④  さて、①を持っている人が②、③に出会ったとき、論理として二つのあり方がありうる。③を無視し②だけを取り上げて前と同じ①を言い続けるか、幾分か③を取り入れて①を改変するかというように。前の「①の維持派」は「新たな結論」としての①を相変わらず大前提として今後も太平洋戦争を見ていくことになり、「①の改変派」は改変されたそれを「新たな結論」として、以降太平洋戦争を見ていく大前提にすることだろう。

 さて、結びである。人は実証論議をしているつもりでも、上のように論じているのである。過去に築き上げた大前提や小前提でものを見て、実証し、変わったり変わらなかったりする結論をば更に次の実証の前提にしていくというように。こうして、どんな偉い理論家や哲学者でも、無前提にものを見て実証し、白紙から結論を出すなどということはあり得ない。問題は、その思考が非常に実証的だとか深いとかは何によって保たれるかということになる。よって、これを上記①④とか②③を例にとって論じてみよう。

 ①④に関わって言えば、こういうことになる。こういう人間思考を方向付けるような思考の大前提への豊富な知識が、「意識されたその深さ」がそもそも思考そのものの中身になる。これは、①④の中に、過去の勉強なり論議なりで②③をどれだけ取り込んでいるかなどによって保証されると言える。なおこの取り込みに於いては、日本のことしか知らない人、さらには日本近代のことしか知らない人の①④は、実に脆い、砂上の楼閣である。己の中の無意識の社会ダーウィニズム(的考え方)を意識して、学問としてはこれが正しくないとされていることなども知ったならばこれを放棄することも含めてこういう取り込みが成されねばならない。その意味では、①に囚われ、③を無視して②しか見ていない人というように、②③どちらかしか知らぬ人は駄目だ。これは僕が逆に反対派から、ここの10年で教えられたことである。
 
 最後になったが、「初めに結論ありき」だとか「何でもアメリカのせい」などとは軽々しく言わぬ事である。相手の「それらしい前提、結論」を指摘することなど実に容易なことだ。むしろ、その結論にどれだけの実証、中身(反対派のこれらも含めて)が付いているかをこそ、注意深く見るべきである。以上述べてきたようなこんなに単純な批判言葉はある意味語ったご本人など万人に跳ね返って行くものだし、いかにもご自分が無前提、実証だけと語っているようで単純さの極地である。そんなことよりも、他人の①④や、③を無数に取り入れてご自分の①④の強化に努めることである。本物の学者って、こんなことをずっとやり続けて生きた人のはずだ。

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 「アイデンティティー」論議で   文科系

2016年08月23日 12時53分29秒 | 文芸作品

 長野の山小屋で、10人ばかりの人と朝4時まで論議をしていた。主催者による「自分のアイデンティティーを述べて下さい」に始まったものだ。年齢は40歳前後が6人、60台3人、僕。最近よく使われるこの言葉だが、内外の辞書で調べたら理解がえらく難しいもの。英語の個性には別に二つの言葉があるからである。

 という前置きはここまでにして、そこでの拙論を少々。ここら辺りの思考が、マスコミ、ネット時代の最近は随分いい加減になっていると感じてきたし。英語では、余人ならぬ自分独自の感性、信念ということらしいが、普通は良いことに使われる言葉らしい。例えば「卑怯者という個性」などとは使われない。また、いやしくも個性というならば、どうでも良いことには使われず、人としてかなり大事なことに使われる言葉だろう。

 さて、大事なことで余人ならぬ自分の特徴と言っても、人間の場合二つのことがあるはずだ。現実の自分と目指している自分となのだが、アイデンティティーの定義は、「他人もそう認めている」という意味も入るようだから、現実の自分なのである。と、そんなこんなで何を話そうかと色々迷ったが、どうせ話すなら孔子流にやってみようと考えた。「一言にして終身これを行うべきものありや」という調子で

 僕の恩師である哲学者が、「人間に最も大切なこと」として三つのことをよく話していたのを覚えている。きちんと働けること、社会・他人をちゃんと観ていること、精神の高さと、理解した。後2者は、これを僕流に解してきたなかで、いつしかこうなった。「弱い人、困っている人を見たらほろっとすること」と、「自分と他人、社会を観ることを通じて、世界、人間観を深めること」と。

 さて、こう語っていた終わりがけに当然のことながら、こういう質問が出た。「それらが、ご自分のアイデンティティーにどう関わるのでしょうか?」
 僕は当然こう応えるしかない。「現状の自分というよりも、恥ずかしながら目指している自分でした。だが、こういう時代にはこんな論議も必要と考えまして。失礼いたしました」

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東亜日報より    らくせき

2016年08月21日 19時28分23秒 | Weblog

「負け方が分かる男」。テコンドー代表のイ・デフン(24=韓国ガス公社)が韓国男子テコンドー選手では初めて2大会連続で五輪メダル獲得を果たした。

 

世界ランキング2位のイ・デフンは19日、リオデジャネイロ五輪のテコンドー男子68キロ級の銅メダル決定戦で世界ランキング1位のジャウアド・アチアブ(24=ベルギー)を11-7で下して銅メダルを獲得した。

4年前のロンドン五輪58キロ級で銀メダルを獲得したイ・デフンは階級を変えて2大会連続でメダルを獲得した。女子代表ではファン・ギョンソン(30=高陽市庁)が2004年のアテネ五輪67キロ級で銅メダルを獲ったあと、2008年の北京五輪と2012年のロンドン五輪で大会2連覇を達成し、3大会連続のメダル獲得を記録した。

1回戦でダビド・シルベロ・パトリク・ブイ(26=中央アフリカ)に第1ラウンド終了後に棄権勝ちを挙げたイ・デフンは準々決勝でアフマド・アブガウシ(20=ヨルダン)に8-11で負けて準決勝進出に失敗した。アブガウシは優勝を飾り、ヨルダンに初の五輪メダルをもたらした。

準々決勝が終わった後、アブガウシの手を持ち上げたイ・デフンは、「以前は負けると悔しいき気持ちに駆られて相手選手の喜ぶところを祝福してあげるような余裕がなかった。勝者が決まった瞬間、敗者が認めると勝った方もより軽い気持ちで次の試合に臨めると思った」と話した。また、「準々決勝の相手は試合を楽しんでいたのに、自分は勝とうとした。それが敗因だったと思う。五輪で金メダルが取れなかったからと言って、ここに自分の人生が終わるわけではない。数ヵ月後にはすべて忘れられるだろう。より素晴らしい人間になるために、もう一つ新しい経験をしたと受け止めている」と語った。

アジア選手権、アジア大会、世界選手権で、いずれも2度ずつも優勝しているイ・デフンは、リオ五輪で金メダルを獲ればグランドスラムを達成するところだったが、それはまた次を期待することになった。

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アジア諸国は軍拡競争の扉を開けるのか?   らくせき

2016年08月20日 09時12分54秒 | Weblog

中国の南沙諸島への軍事的な進出が、アジアの緊張を高めている。
アメリカも、軍事力の軸足をアジアに移している。
尖閣諸島でも同じ構図。
今やアジアは軍拡競争の時代に入ろうとしている。
日本の安倍政権も、軍事費をアップする気配。
またアメリカは中国に脅威を感じている国を支援を表明。
これらの国々も将来的には軍事費を増やしていくことは間違いなさそう。

これから軍拡競争は本格的になりそう。
これを機会にお金を稼ごうと皮算用しているのがアメリカの軍事産業。
そして日本の軍事産業。

アジアはなぜ緊張状態に陥ったのか?
もう一歩過去にさかのぼれば、石油などの資源が発見されたため。
では、誰が資源があると公表したのか?

ここから、どんなことを想像されるかは、各人それぞれでしょうね。

             

さて先回の選挙は、安倍さんの唱える改憲・革新と現状維持派との戦い。
結果はさまざまな読み方がありますが、安倍さんの優勢勝ちといったところでしょうか。
現状維持派は、なぜ敗れたのか?
答えは明白。中国の進出にたいする策が現状維持派に欠けているから。

とくに難問の安保と9条をどうするのか?
私は難しいけれども、日本は真の独立国となるように努めるのが一番と考えました。
安保を少しづつ改訂。対等にする。
これは沖縄問題を解決することでもあります。

軍事力をアメリカの手下としての役割を脱して、独自で自衛できるように
増強する必要もあります。貧乏になりますが・・・

結果的には軍拡競争から一歩距離をおけるようになる可能性があります。
これを目標として掲げるしかないと、今は考えています。

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朝鮮日報を読んで   らくせき

2016年08月19日 14時53分57秒 | Weblog

先日の朝鮮日報に、こんな記事がありました。


【ソウル聯合ニュース】8月15日の光復節がやってくる。
日本による苦難の一つが、旧日本軍による慰安婦問題だ。
元慰安婦の女性が、今回、韓日両政府による昨年末の慰安婦問題に
関する合意を受けて、初めて韓国メディアのインタビューを受けた。

 女性は咸鏡南道(現北朝鮮)で暮らしていた16歳の時、
買い物に出かけた街で日本の警察に脅され中国に連れて行かれたことや、
解放(日本の敗戦)まで約1年にわたり日本兵の相手をさせられたことなどを、
声を震わせながら語った。

女性は多くの親族を奪われた上、慰安婦にされた日本を
「どうして許すことができるのか。人生をむちゃくちゃにされた」と憤る。
ただ、昨年末の韓日合意については一定の評価をしている。
慰安婦を売春婦扱するような発言をしたこともあった安倍首相が
合意の中で謝罪と反省を表明したほか、日本政府が慰安婦被害者を
支援するために10億円を拠出するからだ。「合意は良かったと思う」と話す。

韓日両政府の外相は12日、ソウルの日本大使館前の少女像撤去を前提とせず、
日本が早期に10億円を拠出することで合意した。

           

この旧慰安婦の救済で、日韓両国が合意したことは、とても重要な一歩。
帝国主義の時代に、宗主国であった国と植民地であった国とが
こうした合意に達することが出来たのは、日本と韓国の間だけ。
植民地をもっていた先進国と植民地の間では、このような謝罪や補償はない。

さまざまな経緯はあっても、両国の国民は、この合意をもっと誇りに思っても良いのでは。

 

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僕とアメリカ  文科系

2016年08月17日 19時06分08秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)

 以下は、7月25日エントリー「随筆 ならず者国家」に先程付けたコメントです。長文にして、それなりの内容と判断しましたので、エントリーにも上げさせていただきます。

 僕がアメリカを書くときはいつもこのエントリーのように、何らかの事実、史実を書いている。それを「何でもアメリカのせいと述べている」とだけの批判を返されている方が何人かいらっしゃるが、まーこれは、こう理解するしかないと思っている。
 僕が提起した史実に答えたくないから、あるいは答えられないから、信用を落としてやろうと遠回しかつ抽象的に罵倒しているだけ、と。最近そういうことがここに多すぎないか?

 アメリカと言えば、1789年のフランス革命に先駆けて近代民主主義国家を作った栄光の歴史を持った国。その後は、欧州旧制度、悪弊にウンザリしてモンロー主義を取っていた国。
 第二次世界大戦も、全体主義国家が同じ民主主義国家フランスを滅亡させ、イギリスも滅ぼすかという危機の世界にあって果然と東西2正面作戦に打って出た国であった。東西における米国参戦がなければ全体主義国の天下は確実と、そう思えばぞっとするのである。アジアでは日本天皇を批判したら死刑。ヨーロッパでは、ユダヤ人、ロマ、障害者らは殺されるままで、ヒトラーの大言壮語が世界中に正しいものとしてばらまかれていたはず。こんな世界にならなかったのはアメリカ様々と言うべきであって、ここまでのアメリカを僕は全く嫌いではない。ケネディまでのアメリカだって、ソ連があんな国と分かってみればまだまだ捨てたもんじゃなかったのだとか。

 特に悪い国になったのは、90年に冷戦が終わった前後からだと思う。まず、ニカラグア内乱工作、ついでユーゴ、イスラエル・中東、その末がイラク戦争によってイスラム国を生んだのも、アメリカ。かくして、米軍事費は、冷戦時代の2倍に!これは、戦後の世界史から言えば「なんでそうなるの?!」と言いたい所である。
 結局金融マネーゲーム立国の道を取ったというのが、悪の帝国の始まり。そう理解すると今のアメリカの全てが丸く収まって「分かる」のである。日本がこれに従っていくのも同じ金融立国だからと僕は解している。今は、過剰生産の物よりも、金融投資の方が儲かるのである。要はすべての秘密を「パナマ文書」「ケイマン脱税」が握っていると。

 これが僕の結論で、確かに僕はアメリカの行動全てをこういう結論から観ている。が、そう言う観点で観た諸事実そのものを折に触れて描いているのであって、論議は僕が上げたその事実に基づいてやられればよいはずだと言いたい。それをしないで、「結論ありき」とだけ言っても何も批判できたことにはならない。人は皆、自分なりの「結論」から事実を見ているのであるから。ネトウヨ諸君などはその拙いやり方の典型である。ただし、こういうネトウヨ諸君と全く違って、この結論と事実の相互変遷的往復が自分の中で過去に多かった人の論議こそ洗練されたものと言えるはずだ。とこんなこと、それこそ曲学阿世の結論受け売りが専門の右の人に分かるかな?

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ここにも右論の特徴すべてが・・・    文科系

2016年08月17日 14時16分36秒 | 歴史・戦争責任・戦争体験など

 以下は、15日のらくせきさん「オリンピックは平和の祭典」における日本戦争史論議において、今書いたばかりの回答。相手が右の人々の典型的特徴を全て示しているし、僕も長く書いたので、エントリーとして載せることにしました。

 最初のコメントに
 なら、最初からそう書いて下さい。論者の名前とポストを書いたら、学問専攻を書くのは資料への第一信用問題。歴史家でない人の歴史文章が右の人の引用に多すぎるからいつもそう思ってきた。専門でない学問でいい加減なことを書いても学問的制裁は最小限度で済みますから。
 ただこの人の言い分は、日本の法律家では圧倒的に少ない学説だとは上のコメントでも述べた通り。面と向かって聞かれれば、こんな意見はまず10%もいないはずだ。
 1(自衛のための武力は禁止していない),2(集団的自衛権は国際法で認められている)については、僕の反論への反批判になっていないから、らくせきさんにもそう指摘されてしまった。つまり、僕への答えではなく、前と同じ言い分を繰り返しただけで、不勉強かつ無能甚だし過ぎる文章です。こういう「同じことを繰り返すだけの論議」こそ、「結論ありき」というのではないですか。

 次は、2番目のコメント
①アメリカとの関係が良好だった時期もある?
②戦前戦中の日本が悪と裁かれていたわけではない?
③日韓併合が「合法」?
 良くこれだけ歴史学への無知をさらけ出して、恥ずかしくないものですね。

①帝国国防方針の第一仮想敵国が1923年2月から米国(だけ)に替わっていたことも知らないのでしょうね。1918年からのそれが「ロシア、アメリカ、中国」と並列だったものが23年にはこう替わっている。
 さらに満州事変以降真珠湾までは、米国は日本の中国南下にどんどん警告を発してきた。東京裁判は満州事変から裁いています。帝国軍部だけではなく近衛文麿など政治家の予想にも反してね。

②日本の第一仮想敵国アメリカが特に日本不審を極めたのは、その満州事変からです。リットン調査団でこれが違法戦争で、満州国は傀儡政権と「裁かれた」(総会で反対は日本1票)からこそ、日本が国連を脱退したと、そんな史実も無視するんですか?? このころの日本はこのように、関東軍独走を追認してきただけって、あなたも知ってるでしょ?

③征韓論以来朝鮮併合までに40年近い年月を費やしたのは、反日運動が激しかったからだ。それに、1910年にやっと併合できたのも、今顧みることが出来るのだが世界史上初の反戦世界組織・国際連盟も生まれていず、植民地への風当たりがまだ弱かったことによる。併合以来も含めて70年の日本による朝鮮鎮圧史は、道義的に観たら到底威張れたものではありません。「合法」か?などは、最低の裁きと言えるに過ぎません。

 というように、右の方々は、国際反戦組織のことと、国際連盟による満州事変の裁きと、70年の朝鮮併合史に全く無知なのが大きな特徴です。重ねて言いますが、国際連盟及びアメリカは満州事変から太平洋戦争終結までを一連の戦争犯罪と観てきました。東京裁判自身がそう裁きました。15年戦争(1931年~1945年)とか、「アジア太平洋戦争」とか呼ぶのはそういう意味です。

 天カスさん、これへのそれなりのお応えが今まで同様いただけなければ、あなたは論議相手としてつまらない人としか申し上げられません。今回ここに書いた二つのコメントも、どちらが「結論ありき」の「歴史修正(というよりはねじ曲げ)主義」であるかをはっきりと示していますから。以上に答えられなければ、第一次資料どころか歴史資料も示せないという意味の「結論ありき」になりますからね。 

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福島子ども癌調査結果論に新説  文科系

2016年08月16日 01時48分51秒 | Weblog

 この問題をここでずっと追ってきた僕として見逃せない記事が阿修羅掲示板にあった。最近出たある本の紹介なのである。宗川吉汪・大倉弘之『福島原発事故と小児甲状腺がん』(本の泉社)。宗川氏は京都工業繊維大学教授で生命科学の専門家、大倉氏は数学(確率論)を専門とするとあった。結論紹介部分を転載してみる。

『「先行検査(事故後3年の1巡目調査のこと。チェルノブイリの経過から原発の影響はないものとされている数字ー文科系注)と本格検査(第2巡目調査のことー同上)で甲状腺がんの発生率を比べて、両者が等しければ原発事故の影響はなかったことになります。しかしもし、本格検査の方が先行検査より発生率が高くなれば、がんの発生に原発事故が影響したことになります」
 その方法は、まず先行検査から陽性者の比率を計算し、それを本格検査と比較するものだ。その結果は10万人あたりの発生率が先行検査で90.2人、そして本格検査では162.6人と実に1.8倍の結果が出ている。
 これに加え、がん発症の頻度や陽性者全員が二次検査を受けていないなどの誤差を統計学的に計算した結果、その比率は11.7対35.4、つまり3.03倍になり、子どもたちの甲状腺がんの67%以上は原発事故によるものと推定されるのだ。
 そのため113人の患者が発見された15年6月の段階で、それを大きく上回る326〜464人の患者が推定される。』

『それだけでない。本書ではさらに興味深い調査結果も示される。それが、がん発生の男女比だ。
「甲状腺がんはもともと女性に多い病気です。国立がん研究センターの2010年のデータによると、全国罹患率推計値(人口10万対)は、15歳から19歳で男子0.4:女子1.9(1:4.75)、40歳〜44歳で男性4.9:17.9(1:3.65)、60歳〜64歳で男性12.4:女性26.3(1:2.12)でした。このように自然発生の甲状腺がんは、年齢とともに男女比が変化しますが、特に若年では女子に大変多い病気です」
 ところが、福島での男女比は先行検査で男子26:女子45(1:1.73)であり、さらに本格検査では男子11:女子14(1:27)と、男子の比率が上がっているのだ。』

 なお、この問題をここでずっと追ってきた足跡拙稿もご覧願えれば嬉しいです。以下に、この問題を扱った拙稿の半分ほどの題名・年月日をご紹介します。これらの簡単な出し方は「年月日」から入ること。右欄外今月のカレンダー下「バックナンバー」で当該年月をクリックするとすぐ上の今月のカレンダーがその月に替わりますから、今度は求める原稿の日をクリックして下さい。すると、エントリー本欄がその日のエントリーだけに替わりますので、お求めの物をお読み願えます。

・保安院の大罪(67)「被害後遺症の誤魔化し開始か!」2012年05月18日
・保安院の大罪(87)尿検査ナシの怪 2012年10月27日
・保安院の大罪(93)福島県健康調査座長の不思議な謝罪 2012年11月20日
・規制の虜復活(15)書評「福島原発事故 県民健康管理調査の闇」 2013年11月16日
・規制の虜の復活(18)悲しい小児癌の広がり 2014年02月08日
・「福島県民健康調査の闇」(13年11月16日エントリー)、その後  2014年05月19日
・甲状腺癌は「風評被害」に非ず 2016年01月28日
・子ども甲状腺癌、新調査結果数発表2016年06月11日

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