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随筆紹介 春彼岸   文科系

2018年04月07日 07時13分07秒 | 文芸作品
 春彼岸  K・Kさんの作品です


 春らしい陽気に誘われて夫と散歩に出た。寺の前にはしだれ桜が見事で、永代供養の案内もある。夫も古希を過ぎた。私たちの永眠先を考えようと思っていたところ。「下見をして行こうか?」、話しかけた。「縁起でもないこというなよ。早く逝ってしまう気がする」、気乗りしない様子。でも境内の花につられて歩を進める。

 樹木葬は芝生の中にプレートが並び陽を浴びている。供養塔は厳かな雰囲気だ。扉を開けると仏壇のように祀られていた。今は家族にとらわれず、友人関係、隣近所など横のつながりで一緒になるのもあると事務所の方に聞いて、時代の流れを感じる。
 私が生前予約を考えるのは父の影響から。父は卒寿を過ぎたころから終活を始めた。大学ノートに没後に連絡してほしい人の電話番号もあった。そのころ菩提寺に母と永代供養も申し込んでいた。戒名までつけられていたのには驚いた。墓の土地を処分してまで永代供養に切り替えたのは、子どもたちに将来の負担をかけたくないという思いだったのだろう。父は九十二歳で急に旅立ったが、生前の準備のおかげで迷うことなく終えることができた。七年前のこの時から、私は父と同じように準備したいと思っていた。

「俺も次男だから自分たちの事をなんとかしなくてはな」、夫は考え始めた。兄弟や子どもたちに相談している。「決めよう」、夫は決心した。父の遺影に「私も見習ったよ」、話しかけた。


(この作品は、中日新聞「暮らしの作文」に載りましたので、覚えのある方もいらっしゃると思います)
コメント (3)
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