三苫薫が、世界の脚光を浴びている。リバプール、マンチェスターユナイテッドなどイングランドの3強豪の他、独仏トップの2強豪バイエルンとパリサンジェルマンまでが、彼を採ろうと猛烈な競合を演じているようだ。所属チームブライトンは、彼との契約更新にチームの浮沈を賭けているようだし、この評価の高さはなぜなのか、日本人ファンには理解がなかなか難しい問題のようだ。そこを解明してみたい。
サッカーの強豪理解はとても難しい。難しい理由は、攻撃と守備が組織・チームで行われ、そういうチーム戦略が絶えず進化していくからなのだ。野球の投手や、四番バッターのような立場はなく、点取りに目が行きすぎたチーム組織は失点が増え、失点に目が行きすぎると得点できないと、そんな組織ゲームだからだ。言い換えればこうなる。
「守備に穴をあけぬ得点手段が欲しい」
ところで、サイドからの得点手段を持つ選手が、ぴったりこれにはまるのである。とくに三苫、伊東純也、中村敬斗のように足が速くてクロスが上手い選手が、彼ら個人で攻撃手段、攻撃戦術になりやすいのである。短時間に、個人で得点チャンスを作ってしまうからだ。サイドの薄い敵防御網をスピードでぶっちぎって、シュートまたはアシストに繋げるのである。コンパクトプレスが進歩した敵の防御網に引っかかりやすいドリブル・パス攻撃よりは、現在全盛の「短いカウンター」を食らう危険度が極端に低くなるということだろう。その意味では、左三苫・右伊東純也と左右にスピード・ウインガーがいれば相手も左右にDFを配置せねばならず、中央が空くから正確なクロスも狙いやすくなるのだ。左三苫・右伊東って、実に相性が良いし、左がクロス狙いならば、右は堂安、久保のようなパス・ドリブル攻撃でも良いわけだ。
こうして、スピードのあるサイド選手は、今どこからもモテモテの時代なのである。長友や中村敬斗、菅原も、DFとはいえ、そんな強みを持つ選手と言えよう。2014年ブラジル大会で、監督ザックがサイド攻撃重視を命じたのに、選手らが中央からのパス(繋ぎ)攻撃に拘って来た末に惨敗したことを今度々思い出すのである。遠藤(保)とともにこの中央攻撃に拘ってきた本田が、こう述べた大会であった。「サッカーという物がとんと分からなくなった」
弱いチームが強いチームに立ち向かうときの最重要攻撃手段と言えるのだと思う。