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憲法論議はいよいよ本番に。自由な掲示板です。憲法問題以外でも、人間的な話題なら何でも大歓迎。是非ひと言 !!!

イラク戦争と、米の退廃(3)難民流出の実態  文科系

2020年06月30日 06時30分42秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)

 現代の膨大な難民は、アフガン戦争、イラク戦争、シリア内乱などによって生み出された。全て、アメリカ絡みである。アメリカは自国にとっては地球の裏側で、なぜこんな凄まじいことを成してきたのか? ある書評をもって報告に変えたい。

書評 「ルポ・難民追跡」(完結編)    文科系
2016年12月23日 08時34分01秒 | 文化一般、書評・マスコミ評など
 既載の3回連載を1回にまとめてみました。気を入れた僕にとって大事な記事とて、できるだけ多くの方々に内容を知って欲しいと思いまして。よろしくお願いします。
   
「ルポ 難民追跡 バルカンルートを行く」(著者は、坂口裕彦・毎日新聞外信部。岩波新書)の内容をご紹介したい。
 二〇一五年に西欧への難民大移動が特に激しかった時期、著者はウィーン特派員。記者として避けて通れない問題と考えた。ルポとはルポルタージュの略で、「現地報告」を決意したのである。それも、西欧への入口トルコ・ギリシャからドイツへという典型的ルートを通るだろう一家族に密着同行取材を認められて、その家族が属していた千人程の一団を追跡していくことになる。
 いろいろ断られた揚げ句の取材相手は、イランから来た三人家族。アリ・バグリさんはアフガニスタンはバーミヤンの出身で三二歳、蒙古人の血を引く日本人に似た容貌のハザラ人。彼がイランに亡命したのが二〇一〇年、そこで同じアフガン出身のハザラ人、タヘリー・カゼミさん三〇歳と結婚した。一人娘のフェレシュテちゃんが四歳になったこの年に、ドイツへの移民を決意したのである。彼らに坂口さんが出会ったのは二〇一五年一一月二日。約一か月前イランを後にしてドイツに向かうべく移動し続けた末に、ギリシャ領レスボス島からアテネ・ピレウス港行きの難民船乗り込みを待って延々数百メートルも続いた隊列の中のことだ。なんとか英語が話せるアリさんが密着同行取材を快諾してくれたと、これがこのお話の始まりなのである。ちなみにレスボス島とは、トルコ領北西端の沖十キロにあるギリシャの島で、この島への渡航が密航業者で有名なすし詰め、決死のゴムボート。ここからアテネのピレウス港までは一日がかりのフェリー航海になった。
 それからのこの家族の行程は、アテネには一一月一〇日まで居て、一一日がマケドニア、一二日がセルビアで、一三日にクロアチア、スロベニアを経て一四日には目的のドイツは南部メステュテッセンに着いている。マケドニア、クロアチア、スロベニアなどは特別列車を仕立てて、他は難民用バスで、千人単位以上を次の国に送り込んでいく。なんせ一五年に欧州に渉った中東難民は凄まじい数とあって、オーストリア、ドイツ、スェーデンなどの大量受け入れ国へと、どんどん送り込んでいくというやり方である。このルートは、二〇一五年春から二度変更された末に自然に出来あがったものと述べられている。セルビア・ハンガリー国境などをハンガリーが塞いでしまったことから以降二度大移動の流れが変わっていたということだ。

「世界総人口の一一三人に一人が強制移動」
 これは、二〇一六年六月二〇日の国連難民高等弁務官事務所発表の見出しである。二〇一五年末で紛争や迫害で追われた人々が過去最多の六五三〇万人を、世界総人口七三億四九〇〇万人で割り出した数字だ。一五年度の新しい数字は一二四〇万人である。よって、一五年度末難民総数の五分の一近くが、一五年度に生まれたことになる。一五年度に生まれた難民の出身国内訳の五四%が、シリア、アフガン、ソマリアの三か国で占められているともあった。また、いわゆる地中海ルートなどを除いたこの本の舞台・バルカン半島北上ルートで多い順を見れば、シリア、アフガン、イラクの順になる。よって、難民が、戦争、内乱などから家族の命を守るために生まれるというのも明らかだろう。ただ、この本に書いてあったことだが、「豊かな人しか国外脱出難民にはなれない」のである。家など全財産を売って旅費が作れる家族とか、親族の「希望」が込められた金をかき集めて「先遣隊(後には「本国に残った親族などの呼び寄せ隊」に変わる)」として出かけてきたという人々が多いと言われていた。彼らは希望を求めて難民の旅に出たのである。掲載された写真にある顔はほぼ全員明るく微笑んでいて、僕が持っていた難民というイメージとはかなり隔たっている。

 さて、これを受け入れる側には明確に二種類の国がある。その両巨頭がドイツとハンガリーなのだが、この本の四,五章の題名が「排除のハンガリー」と「贖罪のドイツ」となっている。貧しいハンガリーは一五年秋に四メートルのフェンスを設けてセルビア、クロアチアとの国境を閉ざしてしまった。クロアチア国境のそれは約三百キロにも及ぶもの。他方のドイツは、「ドイツ、ドイツ!」、「メルケル、メルケル!」との掛け声が難民達から出る局面もあるような凄まじさだ。なぜドイツか。その理由は、想像にお任せする。
 断る国の理由は当然理解できる。が、関ヶ原の戦い直前に、岐阜や三重に逃げてきた人々が居るとしたら、人としてどう接するべきか。その答えもまた、自明だろう。いわゆる経済難民との区別も難しいし、とても難しい問題だ。そして、この難問に向けて今の日本政府が世界一遅れた先進国だということだけははっきりしている。上記「排除のハンガリー」でさえ、排除策実施前の一五年夏時点では、首都ブダベスト東駅が列車待ちをするシリア、アフガン難民の「難民キャンプ」と化していたという事実もあったのだ。

 最後に、この本末尾における、アリさんら三人家族の置かれた状況を、報告しておこう。著者は、最後に別れた仮収容の土地、ドイツ南部メスシュテッテンで再会してから、約四か月ぶりにチュービンゲンの新しい仮住まいを訪れている。当時チュービンゲンに身を寄せた難民は約一二〇〇人で、その九割はシリア、イラク、アフガンの人々という。三人家族は街の中心部からタクシーで十分程の閑静な住宅街の古い二階建て住宅に住んでいた。一階には三部屋があって、シリア人など他の二家族と十畳一間ずつをルームシェアしている。この三家族皆が難民申請が認められる日を待ってドイツ語教室にバスで通いながらいろんな猛勉強をしているということだった。
「フェレシュテちゃんは、相変わらず快活だ。ギリシャのレスボス島で、ボランティアにもらった象のぬいぐるみは、ベッドに大切そうに置かれていた。二週間前から、バスで五分程の幼稚園に、午前八時から午後一時まで通っているという。こちらも無料だ」

 なお、こういう難民ルートとか受け入れ状況などの事実はすべて、仲間の難民や出身国に残された親類などに瞬時に伝わっていくのである。現代の難民らは皆、スマートフォンを持参し、ワイファイなども使いこなすから、これが難民の爆発的増加に拍車を掛けているようだ。酷い国は捨てられるということ。これも貧し過ぎ、人を虐げすぎる世界へ民衆が投げかける究極の抗議なのだろう。

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イラク戦争と、米の退廃(2)国連の嫌われ者  文科系

2020年06月29日 10時29分01秒 | 歴史・戦争責任・戦争体験など

 トランプが大統領になって間もなく、ある日のテレビニュースを見ていたら、トランプがこんな不平不満を力説していた。
「何億ドル、何十億ドルと(米国から)受け取る国々が私たちに反対する。彼らの投票を注視している。反対すればいい。大きな節約になる」
 アメリカが、エルサレムをイスラエルの首都と「認定」したことを巡る国連論争の話だ。このエルサレム首都問題論争での国連総会採決の後では、米国国連大使のこんな言動も報道された。
「国連や国連機関への拠出金を最も負担しているにもかかわらず『米国だけが軽蔑を受けている』と不快感を強調した」
 
 イスラムの聖地があるエルサレムの東半分は今なおパレスチナ自治政府のもののはずだが、イスラエルが軍事力で占領したままの状態で国連が凍結していたもの。そこへトランプ政権突如の「首都と認定」だから、イスラム教世界という蜂の巣をアメリカが激しくつつき直した形になった。
 イスラム世界が協力して国連に提出した「認定反対決議案」が、まず、決定には強制力が伴う国連安全保障理事会でアメリカの拒否権に会って、否決。そこでイスラム諸国は、世界政治対立の道義、良識を判定する国連総会の採決にこれを持ちこんだ。こちらは、賛成128、反対9、棄権35か国、他に21か国が採決に参加しないという結果。冒頭の米発言二つは、この採決に対するアメリカの事前事後二つの反発発言なのである。

 他宗教の聖地への冒涜が酷い上に、それへの抗議に対して「たくさん金を出してやってる場でこの『軽蔑』!」等という対応、発言は、普通の日本人なら到底できないものだろう。「エルサレム首都認定反対国には、米支援を止めるぞ」とか「国連拠出金が最も多い『米国だけが軽蔑を受けている』のは、おかしい」とか。むしろ、過去の国連調停を踏みにじって、どういう権利によってかは知らぬが米単独で首都認定を出した上にこんな発言をするからこそ、この国が余計に軽蔑されるのではないのか。そもそも国連決定を無視するということ自体が加盟国を侮辱する行為であると、そのことがわからないふりをしたアメリカのこんな言動こそ、「金で人のほほをひっぱたく」ものとして軽蔑されたのではなかったか。

 さて、こんな内容を僕のブログに書いた日に、常連のネット右翼さん方から、反応、反論があった。
「アメリカが自分の好きにするだけじゃない? 他国も、国連も、無力です」
「米国の軍事力、ロシアの軍事力、中国の軍事力、イスラエルの軍事力、すべて、同じように軍事力をちらつかせて外交を展開しています。結局力が物を言う現実はそうそう変わらないということが証明され続けていますね」
 こういう弱肉強食世界はそうそう変わらないと言いつつ、これを肯定しているのである。金で人のほほをひっぱたく政治とか、軍事力で恫喝する外交とかを、ネットという公論の場において人類の普通のことと主張しているのだから。これと同様に、米政府から冒頭の外交発言が普通に出てくるという事態も、アメリカという国の日常がもう「金で人の頬をひっぱたく弱肉強食社会」になっているから起こった事なのだろう。こういう人々こそ、人類には公論、公正などは存在せず、戦争こそ自然という法則を自ら作っているのである。

 社会正義とか公正が消えていく政治頽廃と人間自身の頽廃との悪循環。世界征服戦争に打って出た日独など全体主義国家が滅びて民主主義国家が中心に座りなおした終戦直後しばらくは、この良循環があったような気がするが、世界はいつの間にこんな悪循環に陥ってしまったのか。今の米中冷戦が深刻化する世界の諸現象をば、第一次世界大戦の後の世界に似ていると評する識者も多いのである。

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イラク戦争、米の退廃(1)  文科系

2020年06月28日 16時19分50秒 | 歴史・戦争責任・戦争体験など

 コロナによる世界的惨禍で、日本と世界とを動かすアメリカの動向がマスコミから消えてしまったように感じる。が、アメリカはコロナ渦中にありながら米中冷戦をばますます進展させていく勢いだし、ブロック経済という禁じ手に踏み出したアメリカは国連でも孤立を深めている。21世紀のアメリカ外交史を復習しておく意味は改めて大きくなっている。まずイラク戦争、次いで米経済、さらにはトランプ外交と国連におけるアメリカなどを連載で触れてみたい。

 

 イラク戦争は世界史にすさまじい傷跡を残した。その前後経過を改めて振り返ると、アメリカがいかに当時の国連を無視したかなど、その狂気が浮かび上がってくる。旧稿の再掲だが、何よりもここから。

【 イラク戦争の世界史的意味  文科系 2017年05月09日 | 国際政治・時事問題(国連・紛争など)

 イラク戦争は、国連破壊の確信犯行だったのだと、今確信している。その次第を書いてみよう。

①9・11のアルカイダは、元々はアメリカがアフガニスタンにおいて創り育てたもの。そして、イラク戦争開戦時アメリカ国民のあの熱狂ぶりを思い出すと、ぞっとする。嘘の理由をでっちあげて強引に持ち込んだ開戦であった。

②後遺症も含めた大罪が凄い。難民や、そのキャンプ以降の生活・運命やによる関連死含めて50万という国際調査団結果もある死者数。イタリア、スペイン、イギリスなど、当時の有志参戦国政権がほとんどつぶれたこと。IS国などのテロを世界中に喚起したこと。膨大な難民を生みだして、EU混乱やイギリスのEU離脱にも繋がったこと。などなど、この戦争は21世紀世界をどれだけ大きく換えてしまったことだろう。

③そして、世界の未来への影響という点では、なによりも国連無視。という以上に、「米軍主導の『国際警察』」で国連に換わる「指導者」にアメリカがなろうとした国連破壊行動だったのだと愚考したものだ。1990年の冷戦終結以降一強になってすぐに起こった湾岸戦争から、アメリカの国連無視が酷くなるという姿勢がずっと一貫しているのである。ちなみに、「史上かってない大連合」と、ラムズフェルトがイラク戦争有志国連合について獅子吼したのも有名な話だ。中ロを除いたG7運営も、これと同じ発想なのだろう。なお、米軍事費はいつの間にか冷戦時代の2倍になって年間60兆円、日本の国家予算の実に3分の2になった。

④以上の世界政治史的意味は、開戦時の国連総会アナン演説に何よりも雄弁に示されている。以下の言葉の歴史的意味は限りなく重いと振り返ることが出来る。読者には是非、以下を熟読玩味されたい。

『「私たちはいまや大きな岐路に立たされています。国連が創設された1945年にまさるとも劣らない、決定的な瞬間かも知れないのです」
 2003年9月23日、第58回国連総会開会日の冒頭演説で、アナン事務総長はそう述べた。その年の3月にイラクで戦争を始めたアメリカを、名指しではなかったものの厳しく批判した直後である』

「今日に至るまで、国際の平和と安全に対する幅広い脅威と戦い、自衛を超えた武力行使をすると決める際には、唯一国連だけが与えることの出来る正当性を得なければならないという理解でやってきました」。にもかかわらず、先制攻撃の権利といった根拠で武力を行使する国が現れた──。
 それは「いかに不完全であれ、過去58年間、世界の平和と安定のために頼りにされてきた大原則に根底から挑戦するものなのです」と彼は言う。つまり、「単独主義的で無法な武力行使の先例を作ってしまうもの」なのだと言うのである。アメリカにとっては厳しい批判だが、総会議場は長い拍手に包まれた』
(以上、「国連とアメリカ」(最上敏樹・国際基督教大学教授 2005年刊))

⑤対するに、アメリカ政府の正式なイラク戦争総括は今日現在までなにも無い。イギリス・ブレアの反省に比べて、犯罪的だと思う。国連、世界平和を重視するアメリカ国民、他国民の責任は、今限りなく重くなっている。ちなみに、アメリカ国民は今こそ、ケネディ大統領の六一年国連総会演説を思い出すべきだ。
『戦争にとって代わる唯一の方法は国連を発展させることです。……国連はこのあと発展し、われわれの時代の課題に応えることになるかもしれないし、あるいは、影響力も実力も尊敬も失い、風と共に消えるかもしれない。だが、もし国連を死なせることになったら──その活力を弱め、力をそぎ落とすことになったら──われわれ自身の未来から一切の希望を奪うに等しいのであります』

 こうして今考えると、アメリカはイラク戦争によって国連に換わるような世界の盟主になろうとして失敗したのだと思う。そういう起死回生の無謀な大ばくちが失敗した。65兆ドルの国家累積赤字、冷戦時代の2倍になった年間軍事費、経済の衰退、そして何よりも世界に決定的な不信感を与えたということ。トランプアメリカが示しているのは、もはや衰退しつつある帝国における種々の末期的症状ということでもあろうか。世界の彼への不信の目が、これを何よりも雄弁に物語っている。】

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恥を知れ、内閣解散   文科系

2020年06月26日 04時32分52秒 | 国内政治・経済・社会問題

 安倍内閣に今、「恥を知れ」と言いたい。妻の参院選挙に大々的に金をばらまいた人物が、その直後の内閣人事で法務大臣になった。そして、この不正選挙の疑いからすぐに辞任。次いでこの度は贈賄理由の逮捕。新聞で伝えられるように多数の地方政治家達に、白昼堂々と現金封筒を配り歩いていたのである。「自分だけは大丈夫」というような、まさに無法者である。ちょっと前にも120万だかの金を使って、自分の選挙民に大々的にうちわをばらまいた罪で辞任した法務大臣もいた。

 法務大臣とは、国の正義の顔だろう。こうしてつまり、社会正義を司る日本国最高の機関をば、すっかり地に落とし続けて来た内閣である。例えばちょっとものが分かり始めた青少年にこう言われるような。
「何が国の正義か! その正反対を白昼堂々と衆目に曝しておいて正義の司って、こんな内閣はむしろ、反社会的集団というべきである」
 ちなみに、こんな内閣の続投を許している多数与党の国会もまた、国家正義を投げ捨てたという同じ意味において「反社会的集団」の共犯者である。

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ダーウィン「誤用」の俗流戦争論  文科系

2020年06月25日 08時24分08秒 | 時事問題

   この23、24日、自民党広報の標記のことが新聞を賑わせている。自民党や(おそらく世界中の)右翼とこの論議とは昔から親密なのであって、日本でのその歴史は明治期までさか上ることができると、当ブログでは幾度も繰り返してきた。明治の東大総長・加藤弘之がこんな議論を展開して、戦前日本外交戦略の基礎理論としたからである。
『ダーウィン進化論における「優勝劣敗」の人類闘争のなかで、我々東洋人は現在の優者たる白人国家にどう対処していきうるか。天皇の下に一致団結して富国強兵を図ることによってのみ、その道が開かれるであろう』
 これが世に言う社会ダーウィニズム。これと同類の思想を自民党広報が今回また憲法改定目指して掲げ直したわけだが、二階幹事長はマスコミ批判に対してこう開き直って見せたものである。「ダーウィンは喜んでいる」。こういうダーウィン「誤用」に対して当ブログでは、ずっとこんな批判を繰り返して展開してきたので、一部をご紹介したい。

『・・・・さて、戦争違法化が、二十世紀になって世界史上初めてその国際組織と法が生まれたりして着手されたが、地上から戦争はなくせるのだろうか。この問題で極めて簡単な正しい理屈が一つある。戦争はずっとなくならないと語る人は「その方向」で動いていると言えるのだし、なくせると思う人はそういう方向に「参加していく」のである。つまり、戦争が未来になくなるか否かという問題とは、人間にとって何か宿命的に決まっているようなものではなく、今及び将来の人間たちがこれをどうしようと考え、振る舞うだろうかという実践的な問題なのである。世界の政治課題というものは、人間が決めるものだと言い換えても良いだろう。ところが、人間が決めるものだというこの真理を意識せずして否定する以下のような「理論」に最も多く出会えたのだと理解してから、僕の頭はすっきりした。

 社会ダーウィニズムという今は誤りだとされた社会理論がある。その現代版亜流の世界観が存在するようだ。「動物は争うもの、人間もその国家も同じだろう。そうやって、生物は己自身を進化させてきたのであるから」。この理論で言えば夫婦ゲンカも国同士の戦争も同じ(本質の)ものになる。そして、夫婦ゲンカは永遠になくならないから、戦争もそうだろうと、大威張りで確信できるわけだ。
『動物の争いは永遠になくならないのだから、人間も永遠に争うものである』
『人間は争うものだから、国家の戦争も無くならない』
 これが、ネット右翼諸氏の世界と政治を観る無意識の出発点なのである。最近、そう気付いた。対案はこれしかない。「二十世紀には人類史上初めて戦争違法化に向けた国際法、国際組織も生まれたではないか」などの歴史的事実と戦争はなくせるという世界観とを広めていくこと。その実を例え少しずつでも、粘り強く作り広げていくこと。

 以上ありふれて見えるようなことを書いたが、正面からは案外批判されてこなかった誤った戦争に関わる信念が巷に溢れていると言いたい。この日本には特に広く。集団主義ムラ社会の中で激しい競争を演じてきた団塊世代以降では、自然に持つ世界観なのかも知れない。』

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今、米中「罪」の度合について  文科系

2020年06月24日 12時05分56秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)

 米中冷戦が深まっていく今、標記のことを改めて論じたい。このこと周囲の是非判断は、両国の間に挟まれた世界第三の経済大国日本の国民の将来にとって死活問題とも言えるものになるのだから。

 国連を尊重するなら、「国際問題」と「国内問題」とは厳然と区別されねばならない。前者は、国連で問題とされる大問題、後者は国内トラブルもしくは、まだ2国間同士で解決しようとしている段階なら両国(の国内)問題ということだ。
 例えば、香港問題は国内問題である。「一国二制度」という言葉があるように。ウイグル問題も基本的に国内問題だ。南シナ海問題でも、例えばベトナムはともかくフィリピンやインドネシアは中国との2国間で解決しようしているのであるから、国連は出動不要ということだろう。ましてやアメリカはガタガタ言うな、である。

 中国のそういう問題を大きくあげつらうアメリカはといえば、イラク戦争も、シリア戦争も、完全な国際問題である。それも、国連の力を削いでいくようにこれを無視、敵視してきたような。こういう国際間無法暴力をこそ世界は、人類悲願である世界平和を目指したい人々は、何よりも問題にし、憎むべきなのである。
 また、ベネズエラやイランやボリビアの内政、国内問題にいちゃもん付けて革命の輸出まがいの行動をアメリカは採って来た。つまり、中国よりもアメリカの方が対外暴力という意味で、はるかに酷い国際平和騒乱国なのである。

 以上の点を日本マスコミは全く観ていなくて、筋が通らぬ酷すぎる扱いをして来たと思う。中国的全体主義が国内問題である内は、極端に言えば外っておけば良い。しかし、有志国戦争などとなれば、イラク戦争開戦時にアナン国連事務総長が宣言したように、国連最大の危機なのである。人類悲願である世界平和の実現は、国連のような世界組織の発展抜きには図られないのに、アメリカが国連を無視した行動に出たのであるから。

 有志国戦争で世界に難民をばらまいたあの西欧他国などへの大混乱をこそ、世界中の人々が忘れてはならない。アメリカの明白な国際暴力と、国連敵視とには、世界平和を願う人々、機関は口をつぐんではならない。暴力に口をつぐむのは、いじめを恐れ、見逃してこれを蔓延らせる傍観者と同罪である。それも国際間のいじめだから罪が大きい。アフガン、イラク、シリアでは、関連死含めて二百万の人が死に、何百万の難民が出た。

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随筆紹介  祖父母力   文科系

2020年06月24日 10時52分07秒 | 文芸作品

  祖父母力      H.Sさんの作品です

 新聞の投稿欄に「働けよ払えよそしてころり逝け」という川柳が掲載された。一瞬笑えたが気持ちが沈んだ。私も八十三歳の高齢者だ。この国には高齢者が多すぎる。不要だー。社会保障費が大変だー.これを支えている現役世代の苦労を考えろ、という風潮が社会に満ち溢れるようになって来た。だけど私の周囲を見回すと高齢者が現役世代を支える光景を目にすることが多い。
 私の友人A夫妻は、近くに住む仕事を持つ二人の娘の子供(孫息子三人、孫娘一人)の保育園の送り迎え(保育園から熱が出た。怪我をしたから迎えに来てほしい)という救護要請も引き受け、水泳教室、習いごと、サッカー競技等の送り迎えを八十歳近い今も続けている。この祖父母の助けがないと、娘達は仕事が出来ないという有様だ。
 コロナ禍の緊急宣言で、娘たち家族の生活が様変わりした。パパ(娘婿)ママ(娘)はテレワーク(在宅勤務)。孫達は休校で家族が家に閉じ込こもりになった。家の中のどの場所からも、徒歩七歩という通勤距離の書斎が、パパとママ二つの会社の仕事場になった。二人の会社とのテレビ会議が始まると、それが終わるまで、壁一つで仕切られた居間にいる小学生の孫達は、息を詰めるようにして時間を過ごす。
〈会社は交通費削減でハッピーだろうが、パパ、ママが、ちょっとでも喋ると、煩いと叱りつけるので、孫達の明るさが消え、縮こまってしまった。これはいかん〉
 Aさん夫妻は給食付きで孫たちを預かる祖父母学校を始めた。

 小学校からは、きめられた日時に保護者が出向き、教材を受け取り、説明を聞く事になっている。高学年の学童でも自分で教材を受け取ることは出来ない決まりだ。テレビ会議時は、孫たちを連れて二つの小学校に教材を受け取りに行くことが仕事になった。Aさんと同じように、学童が祖父母に伴われて教材を受取りに来ていた。娘達が、親の近くに住み仕事場も近いから、手助けしやすい環境だといえるが、管理職のシングルマザーは、低学年の一人娘を、家に閉じ込め仕事に行けないので、他県に住む両親に預け、学校教材は宅急便で送っていると言う。
 高齢でも知力、体力もあるAさんだ。家族の期待に十分応えられる人だが、さすがにあれもこれもは無理になってきた。孫達の世話に追われ、時間の余裕が無く家庭菜園が草ぼうぼうになってしまった。自慢の夏野菜が食べたい。胡瓜、茄子、トマトを栽培しようと草ぬきをはじめた。四人の孫達がAさんの野菜作りを手伝い漸くにして苗を植え終えた。

 祖父母達の静かな手助け、柔らかい気遣いは、今回、非常時をやり過ごすのに、大きな役割を果たしたと言える。私の周りには、働く世代の子育てを支援している高齢者が大勢いる。世の中は、前記の川柳のような流れになって来たが、こうした人達の祖父母力を見くびってはいけなと思うことも多い。

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内閣解散が当然、「河井克行法相」   文科系

2020年06月22日 12時23分10秒 | 国内政治・経済・社会問題

 ここ数日の新聞などを読むと、河井克行がいかに堂々と選挙違反資金を配り歩いていたか、驚くべき光景ばかりが描写されてあった。

「弁当の提供でも違反、ましてや現金なんて」と断わっている某広島市議訪問の場面では、「まあまあ」と言いつつ二つ目の封筒まで押しつけて帰って行ったとあった。これが昨年7月のこと。

 そして、この二ヶ月後の9月にはこんな彼が、法務大臣に選ばれている。このこと、一体何なんだと呆れるばかりだ。まるで、選挙の後には法務大臣になるから検察を押さえられるとでも考えていたのではないか、などと。事実、法務大臣になった時に「これで、検察を押さえた」との声を上げたと、これは周囲から漏れ出たマスコミ報道の一つだ。

 さて、こんな人選に対して、直後の10月31日には「妻の参院選で違反」の文春報道から、法相辞任である。この時の安倍、例によって曰く、「私の責任です」。そして今回の逮捕にも「私の責任です」。さてさて、こう何回も首相が同じ文句を繰り返すだけで、今回も果たして済ませることができるのか。事は法務大臣なのであって、国の唯一の司法機関・裁判所に対してある事件を裁判にかけられるか否かを決める唯一の機関・検察官を掌握する立場なのである。検察官とはこうして、国が制度として定めた「国の正義の代表者」、「国の正義の顔」なのだ。だからこそ、河井克行が既に選挙前から、こんな確信犯だったのではないかという疑問も湧いてくるのだ。
『法務大臣になるから、何をやっても大丈夫。指揮権発動だってできるのだ』

 さて、その後の黒川「検事総長」騒動である。どう考えてみてもこれは、河井・安倍死守への戦略・謀略だったのだと考えるのが、今は自然なことになろう。こんな疑いが必然という法務大臣も、これを選んだ内閣総理大臣も、内閣不信任、解散が当然ではないか。これで居座るとしたら、日本国家行政府を社会正義も何もない「反社会的集団」に堕落させたということであって、関係者は万死に値するというもの。日本国最高の正義を司る機関をば、すっかり地に落としてしまった内閣なのである。ちなみに、こんな内閣の続投を許す多数与党の国会は、国家正義を投げ捨てたという意味で「反社会的集団」の共犯者である。

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「縄文血統はアジア最古」   文科系

2020年06月21日 03時11分10秒 | 歴史・戦争責任・戦争体験など

 僕が面白いと思った旧拙稿を再掲します。

 

「縄文血統はアジア最古」 文科系  2016年09月03日 11時28分50秒 | 歴史・戦争責任・戦争体験など

 表題内容は、1日の中日新聞34面、とある新発見の記事内容の一つ。僕は、源平系や天皇家などの家系図にも、先祖どころか自分のお墓にもこれっぽっちも興味はないが、人類と日本人の起源については、長年オッカケをやってきた。ついでに言えば、若いころから類人猿にも興味があって、こんなこともあった。20年ほど前、動物園の特別期間に僕より重い子どものオランウータンと肌を接し、手も取り合い、時に抱き合ったりして、長時間戯れさせて頂いて、有頂天になっていた記憶もある。ちなみに、チンパンジーは、99%以上人と同じDNAを持ち、ゴリラよりも人間に近いということだ。
 さて、この記事の紹介と、もうひとつ別に現存全人類の起源からの家系図について、学んできた所を少々述べてみたい。

①「あなたの12%は、アジアでも『古い古い』縄文人?」
 縄文人血統は、アジアで古いという意味においてかなり特殊な人類だと、最新の遺伝子研究によって判明したとあった。その出現は、アメリカ大陸先住民の先祖がベーリング海を渡ってアジアから別れて行った15,000年前はおろか、2万年以上前にさかのぼるとも。そして、現代日本人がまた、中国や東南アジアの人々に較べてこの縄文人に最も近いというのである。もちろん、昔から言われているように、アイヌ、沖縄の人々はさらに縄文人に共通した部分が多いということだった。まーこれらすべて、日本がアジア最果ての地であることから起こったことなのだが。
 アメリカ原住民から日本人までの祖先を含んだアジアに最も昔にいた人々というひとまとまりが、縄文人と別れた時期以前となると、もうオセアニア人との枝分かれしかないということになった。つまりこういうことだ。他の現存アジア人から、先ずオセアニア人が枝分かれして、その残ったアジア人系統全体の中で次に枝分かれしたのが縄文人で、その残りのアジア人からアメリカ原住民が次に別れていったと。そうして残ったアジア人が現在日本、中国、東南アジアに住んでいるというわけだが、このなかで日本人がもっとも縄文人の痕跡を多く留めているというのである。

②現存人類全体の「家系図」
 まず、現存人類は全て、15万年ほど前にアフリカにいたある女性(たち)の子孫であることは1990年頃に分かった。それ以前にいたネアンデルタール人、ハイデルベルグ人や、ジャワ原人、北京原人などはこの現存系統とは全く別の人類で、その子孫は既に死に絶えているとも分かっている。ただ、ネアンデルタール人だけは、現代人との混血がヨーロッパで起こったようだ。
 このアフリカに生まれた現存全人類の先祖がアラビヤ半島南部からアフリカを出たのが約10万年前である(85000年という説もある)。そこからまず、西ヨーロッパの人々が枝分かれするのだが、それは5~10万年前とちょっと幅が広い。このヨーロッパ人と共通の先祖から東へ向かったインド人系統から最初に枝分かれしたのがオーストラリアやニューギニアなどの原住民オセアニア人で、これが約5~6万年前。そして次に起こった枝分かれが縄文人だということになって、以下は①に述べた通りである。オセアニア人以降の全ての人類をまとめて環大平洋人と名付けた人がいるが、その斉藤成也氏こそ今回の「あなたの12%は縄文人?」を発見したご当人のお1人である。そう、冒頭9月1日の中日新聞記事にあった。

③この新説発表者に関わって
 冒頭の中日記事内容は、斉藤成也・総合研究大学院大教授らの共同研究の成果とあった。ただ、この人の古い著作には既に今回に近い仮説が建てられていたように思われる。例えばこんな記述だ。2006年に発行された彼の著作「DNAから見た日本人」(ちくま新書2005年3月第1刷)に書かれていたことである。
 父子に伝わっていくY染色体内に起こる「Aiu配列挿入」という突然変異が、チベット人と縄文人、アイヌ人、沖縄人にとりわけ発生頻度が高いことに目を付けて、こう述べているのである。
『数万年前のユーラシアのどこかで、縄文人とチベット人の共通祖先集団がいて、そこに生じた・・・突然変異が現代までに伝わってきた可能性がある』(同上書103ページ)
 こうして、朝鮮人はもちろん中国人も、否地球上の全人類が、同じ15万年ほど前アフリカに生まれた数人の女性から出た兄弟のようなもの。自国の偏った歴史論しか知らぬ偏狭なナショナリズムからののしりあっていたりしたら、大祖母さんが泣くというものだ。

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「無法内閣」の法相たち  文科系

2020年06月19日 13時54分04秒 | 国内政治・経済・社会問題

 毎日新聞の世論調査で安倍内閣支持率が24%になったのは、5月下旬。当ブログ5月24日に拙稿「安倍が、終わったな!」をお読みいただいたが、河井克行前法相逮捕は安倍内閣終焉にだめを押したと信じたい。

 この河合克行とは今はもう言うまでも無く、安倍晋三の最側近。彼の逮捕を妨げるためにこそ、コロナで忙しいはずの国会に「黒川弘務検事長定年延長」・検察庁法改定も強行されたのだとずっと噂されてきたが、これがもはや真実だとはほとんどの国民の認めるところとなった。加えて、この検察庁法改定には、以下のような異常事態が数多く付随していた。

・「検察官には国家公務員法の定年制は適応されない」という過去の政府答弁を内閣が知らなかったか、無いものと無視して黒川氏の定年を延ばしたことが分かっている。
・ここまでして実現目指した「黒川検事総長」が、こともあろうに常習賭け麻雀で辞任。そんな彼への懲戒が、訓告に終わったことも大変な「信賞必罰」異常事態と解されてきた。
・これら全てが、コロナ渦中と遅れた行政対応とによって国民があえいでいる真っ最中に起こった事だから、「黒川検事長定年延長はそんなに急を要することか」と非難されたのも当然のこと。というのも、急いだ理由が分かってみれば、大変な無法・異常内閣である。

 さて、この河井克行とは、前法相である。しかも法相に座った途端に、こう述べたと新聞にあった。
「これでもう検察は押さえた」
 こんなのが法相と訝るが、安倍内閣最近の歴代法相を振り返ってみるが良いのだ。
 14年10月に辞任した松島みどりは、うちわ配布事件から。まー盆踊りが大好きなお方とのことだが、120万円という金を使った賄賂に違いないのだ。これが法相!
  そして、この河井克行前法相を検察の追及から守るために、黒川弘務検事総長実現に奔走したのが、今の森雅子法相。「東日本大震災の時、検察官は最初に逃げた」と国会で叫んだのは、「検察庁憎し」でどこか固まっていたお人なだろう。なんで?
 
 そして、僕がここでもう一人上げたい法相が上川陽子。18年7月のオウム大量死刑にサインした法相である。どんな極悪人といえど国家の主権者。その厳粛な命へのこの対処!「国民の命と国法」という極めて厳粛な問題についていかに不見識だったかということを、今一度示してみたい。

 

 【 掌編小説  オウム死刑に見えた国家暴走   文科系
2018年07月23日 17時47分33秒 | 文芸作品

 二〇一八年七月一六日夕方、小さな居酒屋の半分ほどが座敷になったその一角の座卓で、連れ合いと飲み始めた俺。すぐ隣の机で、三〇前後らしい三人の男性にちょっとした討論が持ち上がるところだった。教祖初めオウム真理教関係者七人の処刑が十日ほど前に執行されたばかりとあって、そのことについてである。

「あれだけの殺人事件じゃ当然だよな。弁護士一家三人皆殺し場面を読んだことがあったけど、まー酷いもん。子どもだけでも助けてという奥さんの悲鳴なども全く無視されたようだし」
 最初にそう切り出したのは、仮に目がね君と呼んでおこう。これを引き継いだのが、小さな顎髭を付けた細身の男性だ。
「でも、あれだけの人数の一斉死刑って、先進国世界はもちろん日本でももう希有なことらしいよ。EU、ヨーロッパ連合では死刑廃止が加盟条件の一つともあったし、日本でもA級戦犯処刑などの例外を除いて、明治末期の大逆事件以来の人数だそうだ」
 この顎髭君のニュースソースで、今度は太めのおじさん風が解説を加える。
「そうそう、俺もそんなネット記事読んだけど、大逆事件って政府がでっちあげた明治天皇暗殺計画で、一一人死刑という大事件だそうだ。先日は七人だから、A級戦犯処刑数と同じだよね。俺も何となく嫌な気分になったよ」。
 この二人に目がね君が改めて反論する。
「テロや難民問題などこれだけ世界が荒れてるんだから、EUの方がむしろ時代遅れなんだと思う。大量処刑実施って確かに良い気分になれんけど、『最大多数の最大幸福』とか『公序良俗』維持のためやむを得ず……とか、大学で習ったような……」
「確かに俺らはそう習ったね。そういう大目的のために、個々人が自制すべく契約しあって作ったのが国家だという社会契約説」と、顎髭君が付け加える。この三人、どうも大学の同窓生らしいが、法学部の学生でもあったのだろうか。さてここでこの話は一段落したようで、暫く無言時間。やがて、おじさん風がぼそっと語り出した。

「でも、明治末期以来では日本史上ほぼ初めてのことを今やったっていうのは、やっぱり引っかかるなー。もうかなり前から『死刑大国日本』とも言われているらしいし。明治末期って、国民主権国家とも言えなかった時代だろ? その時以来のことを民主主義国家になって半世紀をとっくに過ぎた今やるって……どういう理屈を付けるのか?……麻原らだって立派な主権者なんだろ? 主権者らがその幸せの手段として作った国家がその主権者を殺すって、改めて考えてみればやっぱりおかしくないのかな?」
 目がね君がまた答える。
「そこがそれ『最大多数の最大幸福』を目指し続けるためにやむを得ず『こういう方には死んでいただかねばなりません』という理屈。さっきも言ったけど、この数十年、世界もどんどん荒れてきたしね」
 これに同調するように顎髭君がウーンッという感じで一つ頷いたその時、おじさん風がウンウンと小さく相づちを打ちながら、またもぼそっと呟きだした。
「上手くまとめてくれたけど、そう解釈すればこそ全く理解できない政府の態度が、あるネット記事に書いてあったんだよ。こんな内容だった。『死刑執行の前日五日夜のことだが、自民党若手議員四十人ばかりが集まった二七回目という恒例の宴会に上川陽子法相も出席。会合の締め間際らしい全員写真も別記事に載っていて、その最前列真ん中に座った安倍首相の左手隣に上川氏が正座して、にこやかに右手親指をたてている光景があった』と。これって、明日の死刑執行決済書類に判を押したばかりの法相の態度かと問われているわけだ。この政府から見ると、めったになかったようなこれだけの大量処刑に異例という感じがまるでなかったことになる。」

 さて、急いで家に帰った俺、酔いも残っていたが、ネット記事を猛然と漁り始めた。まず、自民党議員・片山さつきさんのこれ。
『今日は27回目の #赤坂自民亭 @議員宿舎会議室、若手議員との交流の場ですが、#安倍総理 初のご参加で大変な盛り上がり!内閣からは#上川法務大臣 #小野寺防衛大臣 #吉野復興大臣 党側は #岸田政調会長 #竹下総務会長 #塩谷選対委員長、我々中間管理職は、若手と総理とのお写真撮ったり忙しく楽しい! 22:58 - 2018年7月5日』 
 次いで、ジャーナリスト斉藤貴男氏のこんな文章。
『死刑をリアルタイムで見せ物にすることで、国家権力の強大さと毅然とした態度を国民に見せつけた。意図的な公開処刑であり、死刑が政治に利用された』
 ここに言う『リアルタイムで見せ物に』とは、こういう異例なやり方の数々を指している。先ず死刑の予告がマスコミを通して国民に流れた。しかも、これが既に前日に流されていた。加えて、再審請求中だとか、国会会期中だとかには執行無しという諸慣行にも全て反していた。つまり、従来慣行を文字通り無視する形をさらに開き直らせるようにして、国家の力を国民に見せつけるという挙に出たわけである。というように、近代国家理論の諸原則を全て無視する形で改めて主権者の遙か上にそびえ立って見せた今の安倍流日本国家って、一体全体何物なのか?】

 というこの時、多人数死刑前日夜に宴会で大騒ぎしていた法相が、上川陽子。

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喜寿ランナーの手記(295) 「コロナで劣化」から復活の道が見えた  文科系

2020年06月17日 15時23分59秒 | スポーツ

 16日のジム・ランで、やっと標記のことが見えた思いになった。3ヶ月のジム閉鎖で走る回数が減って「思いのほか重症になっていた劣化」からの復活である。6月1日の市営ジム解禁から、3、8、10、16日とジムに行き、5日など、家の階段90往復。5月30日には50キロとかその他10キロ程度の所用はサイクリングでやることによって。とにかく16日にはやっと大きく見えてきた弱化ポイントと回復の目途とを書いてみよう。

 16日は5月後半からの努力がこんな実を結んだという実感が初めてあった。ジムの30分×2回の距離を振り返っても、3日8・2キロから16日の8・9キロまで急回復を遂げてきたからこそ、見えてきた弱点と対策である。
 以前のタイムに近ずくにつれて分かったのは、翌日などの疲労感はどんどん少なくなるけど筋肉が張るということ。ただ、その張りは強い無酸素運動後のような痛みは無く極めて健康なものであって、「これくらいで走り続ければ走る筋肉が付いてくる」という感じのもの。僕のスポーツ体験では、これは希望になる。近く、回復可能という希望。例えば、15メートルほどの僕にできる範囲のダッシュを日に2~4回も繰り返せば、僕のランに今必要な筋肉は付いてくるという、そんな感じ。そしたら、マシン時速9・5~10キロで、30分は走れるようになり、その時は外走りもキロ6分30秒切りが秋に向かって見えて来るはずだと。

 いや、この過程はもっと早まるかも知れない。それもこれも、ここ2回ほどのジム・マシン「実験」で分かるはずだ。全ては、脚の血管を含めた心肺機能が衰えていず、急激に回復してほぼ元に戻っていることによって、確信できたことである。時速10キロでも心拍160を切る時も多いというそのことによって。僕の一定持続最高心拍数は165ちょっとだと思うが、これで走り続ける速度が次第に上がっていけば、良いのである。9・5キロ時が確実に155を切れば、これで30分は走れるだろう。ただ、同じスピードでも心拍数上下動が激しくなるのが年寄りだから、そのことはいつも注意していないといけない。マラソンで死ぬ人は、ほとんどこれなのではないか。無理して走り終わった後に、心拍数が全く下がらないとか。ただこういう人は、自分の速度との関係での心拍傾向など調べたことがないとか、とにかくこれに不注意であったとしか思えないのである。僕も来年5月で80歳なのだから、慎重に慎重に、事は運びたい。速度と心拍数との関係を常に見て自覚しながら走ることだろう。

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国民1人当GDPで、韓国に抜かれる  文科系

2020年06月16日 11時32分09秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)

   IMF発表の標記の購買力平価数字最新版は2018年度のもので、日本は世界31位で44,246ドル。32位の韓国が43,290ドルと迫ってきたから、抜かれる寸前だった。ところでここに来て、コロナ対策・被害の差によるGDPマイナス分で日本は韓国に圧倒的な差を付けられた。2020年度分GDPではこの順位が抜かれる事は確実になった。16位の台湾にはもうとっくに抜かれているのである。アジアでもだんだん貧しい国に落ちてきた。

 いつまで経ってもアベノミクスの最大目標、物価二%を達成できなかった安倍政権では、この挽回はおよそ不可能だろう。無理無理日銀にまで圧力を掛けて大株主に担ぎ上げてきても何の前進もないというその政策の誤りによって、大変な無能をさらけ出して来たわけだ。

 せめて、世界5位であった親の代の家庭生活水準をという若者の願いも虚しく消えて、50歳まで1度も結婚した事がない男性が4人に1人。日本の少子化。小国化はますます進んでいくだろう。安倍の「美しい日本」「愛国」って、他人に「そう思え!」と言うだけなのだろう。

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ギター発表会のでき  文科系

2020年06月15日 14時50分50秒 | Weblog

 三日に書いた、ギター教室発表会の僕の出来の報告をします。コメントに一部補足などを加えまして。

『 本日の出来 (文科系)  2020-06-14 23:35:35
 僕は、自分のその曲の平常演奏の半分ほど弾けたら上出来と思う事にしている。指が震えるというあがり症なのだ。「震えなかったらまず4割のでき」というほどの。ただ、ギターで特に右指が震えたら、お話にならないのである。そして、過去出場した8年で半分ほどの出来というほどに弾けたのは、1~2度。その時と曲目は以下の通り。
・2013年の初出場で、先生とのソルの「月光」2重奏と、モレノ・トローバの「トリーハ」
・2016年のタレガ「エンディーチャとオレムス」とポンセの「スケルチーノ・メヒカーノ」

 それで言うと今日の出来はまー3~4割。はっきりと指が震える寸前で、強張っていたから。でも、これだけで満足。80歳になる来年も出ようと、改めて思えた。習い始めて5年間発表会には出なかった分、出始めたらどこまで出られるかという気持でやって来たものだ。

 来年はもう一度、バリオス「郷愁のショーロ」(17年に弾いた)か、ソルのエチュード・セゴビア編集17番(18年に弾いた)をやってみたいなどと、今は考えている。これらと、今日弾いたバッハBWV998プレリュードが、僕の好きなベスト5に入る曲だからこそ、暗譜群に加えて10年も弾き続けてきたわけだ。ただ、今まで発表会で2度弾いた曲はタレガの「エンディーチャとオレムス」、ヘンデルの「サラバンド2重奏」しかない。』

 

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僕らのビストロ(続き)  文科系

2020年06月15日 14時29分58秒 | 文化一般、書評・マスコミ評など

 13日の随筆に付けたコメントを、エントリーとして再掲させていただきます。新規開店後ちょうど9年たった今も、このお店と僕らとの関わり方はこんなふうに続いているという報告です。

『今もこの店は (文科系) 2020-06-14 19:57:10
 9年経った今も、この店はYさんたった1人で立派に続いています。1人だから人件費が少なくて済み、値段の割に良い食材などが使えたりするのでしょう。僕はこの間も、この店でずっといろんなことをやってきました。僕(の一族)の誕生会はいつもここ。ギター仲間で会食もするし、同人誌仲間の忘年会場でもあります。
 ギター仲間のときは、その時のお客に了承を取った上で、持参のギターを代わる代わる弾いたりもします。女性客が多いから大抵は快く了承して下さるだけではなく、帰り際にはお礼を言われる事が多いです。だからYさんも、僕らのギター持参をほぼ公認みたいにしてくれています。ただ無礼講ではなく普通の礼儀をわきまえる事は当然、貸し切りにすれば別の話ですが。
 同人誌仲間は、外国旅行に慣れていて、口が肥えている女性が多いのですが、みんなここの料理を褒めてくれます。去年の忘年会はクリスマスの日でここが取れずにあるホテル・レストランでやったのですが、後である人にこう言われました。
「Yさんとこのが、百倍美味い」

 嬉しい事です。そのお店、杏亭と言います。平和公園の北東、平和が丘のサンパークマンション1階にあります。バス停では猪高車庫前。
 念のために言っておきますが、僕は広告料など一銭ももらっていません。純粋にファンなんです。30年を超えるファンで友人。Yさんが選ぶグラス・ワインも美味しいし。

 もう一つ但し書き。僕はあくまでもビストロと書きました。ビストロのギリギリ値段でレストラン料理を食べさせてくれるわけです。ただ、そうしてもらおうと思ったら、5日ほど前に予約をする事です。小さなビストロは、丁寧な予約があるのと無いのとでは、料理内容が変わってきます。予約客に食材などをきちんと準備できることによって、リピート率が高くなるからでしょう。』

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アフガン戦争犯罪で「盗人猛々しい」米  文科系

2020年06月13日 14時43分18秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)

 今日の中日新聞5面、「米、アフガン戦争犯罪捜査承認に反発」「国際刑事裁を制裁可能に」は、最近のアメリカが連発してきた対外「制裁」の、新たなとんでもない無法者ニュースだ。日本の言葉で言えば、「盗人猛々しい」極地だと思う。

 国際刑事裁判所(ICC)が、『米兵や米中央情報局(CIA)要員がアフガン戦争で拷問やレイプなどの戦争犯罪を行った疑いが強いとみて』捜査を再開したことに、アメリカが反発して、ICC当局者への制裁を始めるのだそうだ。その理由がまた振るっていて、『米国の主権を侵害する恐れがあり』『米国の主権と国民を守る』『ICCは役立たずで無責任だ』とあった。対するICCやEU代表は、『大規模な残虐行為の責任を明確にするわれわれの努力を損ねる』、『深刻な懸念』と表明とのこと。なお、アメリカはICCには加盟していないのだそうだ。
 
 さて、このニュースをどう評したら良いのだろう。ただでさえ、国連を振り切って、訳の分からない「有志国集団安保」として出掛けた戦争である。その国に2001年からこれだけ長く居座った米軍が重ねてきた拷問やレイプなど「大規模な残虐行為」を裁くのが、どうして「米国の主権を侵害する」のであるか。例によって暴力にものを言わせて、屁理屈も良いところ。「米国による主権侵害」というならば、よく分かる話だ。
 
 そもそも、こんな戦争が長く放置されて、こんな大規模残虐行為が続いてきた事に諦めが先に立っているのか、世界が無感覚になりすぎていると思う。マスコミ記事を読んでいても「戦争? アメリカの? まーこれが人間だよ」という感じ・・・。第二次大戦直後に示された「世界大戦の反省」の時代、雰囲気を体験したものからすれば、アメリカが起こす戦争に、世界が慣れっこになりすぎている。その暴力による反国際社会的行為を普通の、自然な事のように・・・。

 アフガンから始まった戦争が、イラク、シリア、さらには本命のイランへと続き、関連死含めて200万ほどの人を殺し、何百万という難民を世界にばらまいてEUをパニックにさせたのである。その始まりの地における「大規模な残虐行為」が裁けない?・・・。神も仏もないものか! 米国民の4分の1を占めると言われ、トランプ当選の原動力となったキリスト教福音派には、「神」などいないのだろう。
 

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