九条バトル !! (憲法問題のみならず、人間的なテーマならなんでも大歓迎!!)

憲法論議はいよいよ本番に。自由な掲示板です。憲法問題以外でも、人間的な話題なら何でも大歓迎。是非ひと言 !!!

世界を変えていく、EU・中ロ重要協定  文科系  

2020年12月31日 13時23分00秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)

 「マスコミに載らない海外ニュース」のサイト本日付けで、重要なニュースが載った。EUが二つの重要経済政策で、ロシアと中国への急接近が実現したというもの。一つは、ロシア産天然ガスのパイプライン引き込みで、今一つは中国との投資協定である。いずれも、ワシントンの強硬な「イデオロギー的妨害工作」の数々を無視して進められたと、解説が付いている。日本の対中経済関係もすでに後戻り不可能な深化に達しているが、保護主義転換でその自由主義イデオロギーさえ投げ捨てたアメリカは、一体今後どうしていくつもりなのか。GAFAやテスラの株価バブルをいくら大きくしても、日本と並んで先進国としては多すぎる相対的貧困家庭の助けにはならず、「購買力平価GDPでは、アメリカはすでに中国に抜かれた」(ポール・クルーグマン)という状況なのである。

 

【 2020年12月31日 (木)

ノルド・ストリーム2と中国投資協定で多極世界を受け入れるヨーロッパ Finian Cunningham

2020年12月29日 Strategic Culture Foundation

 普通は、物質的必要性が、イデオロギー的信条に勝る。教理より必要性。今週二度、欧州連合は、ロシアとのノルド・ストリーム2のガスパイプライン、次に、中国との主要な投資協定でも、ワシントンを拒絶して、この格言を実証した。

 今週ドイツのハイコ・マース外務大臣は、ヨーロッパ・ブロックは、ロシアとの協力でノルド・ストリーム2プロジェクト完成を推進すると、あてつけ気味に述べた。バルト海底パイプライン建設は、アメリカ制裁によって一時的に止められていた。だが今ドイツは、プロジェクト完成は阻止されないと言っている。EUは、バイデン新政権下、より良い対米関係を期待しているが、ブロックは主権の問題として、天然ガス供給を増やすためロシアと取り引きする権利を行使するとマースは述べた。「将来我々がワシントンが欲するあらゆることだけするのを意味するなら、我々はヨーロッパの主権について話をする必要はない」というマースの言葉が引用された。「[ドイツ]連邦政府はノルド・ストリーム2に対する姿勢を変えない」と彼は付け加えた。ノルド・ストリーム2パイプラインが相対的に安価なロシア・ガスのEUへの供給を二倍にすることを考えれば、これはヨーロッパ経済を押し上げる極めて重要なことだ。

 EUは、より高価なアメリカのガスを買い、ロシア・エネルギー供給元を外せというワシントンが繰り返す警告や経済封鎖の恫喝にもかかわらず、ヨーロッパは過去の冷戦時代と共に放棄するのが最善のイデオロギーより経済的、物質的利益を断固優先している。

 ナワリヌイ騒動という文脈で、ヨーロッパがワシントンから独立を進めるのは、一層顕著だ。反体制ロシア活動家に対するクレムリン工作員による毒物中毒とされるものは、ドイツに対してノルド・ストリーム2プロジェクトを放棄するよう圧力をかけるのに使われていた。多くの批判者は、アレクセイ・ナワリヌイ暗殺計画とされるものは、モスクワとの関係を妨害し、特にノルド・ストリーム2をぶち壊すのが狙いの偽旗挑発と見ていた。今週ガス・プロジェクトを完成するというベルリンの主張を見れば、策略は明らかに失敗したのだ。

 

 対する注目に値するワシントンに対するEU二つ目の拒絶は、中国との主要な投資協定締結の発表だった。協定は、七年継続していたが、今や両者は今週末までに署名する準備ができている。EUと中国間のこの貿易投資協定の重要性は、いくら言っても言いすぎることはない。それは世界の二大貿易実体を、より緊密に統合するものだ。これは多極世界構想を下から支える新シルクロードを舗装する中国の世界政策の重要な表明だ。ロシア極東から日本、韓国、中国を通って、中央アジア、中東、西ヨーロッパまでの「ユーラシア」は今や、益々新たに出現しつつある巨大経済圏だ。

 巨大な中国市場のへの事業参入強化に関し、北京がヨーロッパに、うまく譲歩したように思われる。それは中国と対決するために、大西洋横断で団結するというワシントンの高圧的要求から、ヨーロッパを引き離す効果があった。EU-中国投資協定発表の前日、ジョー・バイデン次期大統領は中国の勃興に対決するため、アメリカ・ヨーロッパ間の統一的手法を再び呼びかけた。ヨーロッパ人は明らかに、彼らのパンが、どちら側からバターを塗られるのか知っていて、冷戦風敵対を求めるバイデンの要請を無視したのだ。

 これは非常に重要な進展だ。それは偶然のはずはない。先週、締結されつつあるEU-中国協定への期待が増大する中、バイデンが指名したジェイク・サリバン国家安全保障担当補佐官は、ワシントンの懸念を表明した。審議中のEU-中国貿易協定に言及して、サリバンは述べた。「バイデン-ハリス政権は、中国の経済慣行に関する我々共通の懸念から、我々のヨーロッパ・パートナーとの、より早い協議を歓迎する。」

 まあ、どうなったと思われるだろう。EUはワシントンの要請を二の次にして、中国との投資協定締結に邁進したのだ。これは多極世界の現実の証拠だ。統合され相互依存する世界経済の本質は、アメリカ合州国が推進してきた冷戦イデオロギーが、もはや維持できないことを意味する。世界覇権を追求する何らかの考えで、そのイデオロギーを推進するのは、ワシントンにとっては、望ましいかもしれない。だが、現代世界の多極の現実と、主権と法と秩序の相互尊重に基づく提携と共同開発が、唯一進むべき道だという各国の認識を考えれば、その概念は、もはや実行可能ではないのだ。アメリカ合州国の政治、経済制度は新しい多極パラダイムに順応する能力がないように思われる。その行動様式と、世界のイデオロギー的表現が、変化した政治環境では、もはや実行可能ではないので、恐竜のように絶滅する定めなのだ。

 自己保存のための物質的必要性と認識が、ヨーロッパをロシアと中国と貿易するよう駆り立てている。おそらくは、ヨーロッパ政治支配体制内にも、頑強に抵抗する冷戦派がいる可能性はあるが(それ故のナワリヌイ大失敗だ)大部分は、経済的、社会的要求が、を究極的な決定要素なのだ。

 アイルランド欧州議会議員ミック・ウォレスがStrategic Culture Foundationに以下の鋭いコメントをした。「EUには、アメリカ帝国主義への盲従という、消えずに長年続く問題がある。だが中国ということになると、話は変わる。真実は、中国が、アメリカの経済支配に対する脅威に過ぎない時に、アメリカは中国を安全保障上の脅威として扱うと決めている。だがアメリカが中国を軍事的脅威として扱い続ける限り、アメリカ軍産複合体にとって日々幸せだ。ヨーロッパは失望するが、愚かではない。欧州会議には多くの無分別な反中国言説があるが、委員会や評議会からのものは、ほとんどない。EUは実際はドイツの独り舞台で、ドイツが支配している。ドイツは、ブレグジットがまとまるか、まとまらないか気掛かりで夜も寝られないわけではないが、中国との良い関係に非常に興味を持っている。ドイツはお金を追求するだろうが、中華人民共和国という勝者一人しかない行き詰まりの経済戦争で、アメリカについて行くつもりはありそうにない」。

 だから、次期バイデン政権は、ロシアと中国に対す対決を宣伝して、アメリカの世界覇権と同盟諸国という手段を見直そうとするかもしれない。だが楽観的な調子でも、世界の他の国々は、このようなアメリカのゼロサム思考に耽っている余裕がないのを知っている。現在の難題に対する唯一の解決策はグローバル協力だ。今週EUはロシアと中国に関して、現実の正しい評価を示した。一方、アメリカ政府はイデオロギーのお荷物を抱えたままの状態だ。

 Finian Cunninghamは主要報道機関の元編集者・記者。国際問題について多く書いており、記事は複数言語で刊行されている。】

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「呼吸するように」嘘や「空約束」を吐き出す・・  文科系

2020年12月30日 14時56分50秒 | 国内政治・経済・社会問題

 一昨日、赤木雅子さんが起こした夫俊夫さん死因究明訴訟を巡る攻防も結局のところ「私や妻が関係していたら、総理どころか議員も辞めます」という首相国会答弁の後遺症と書いて来た。そして、この答弁が、「安倍昭恵名誉園長」に始まってそれ以後赤木俊夫さん自死にまでどう繋がっていったかは、大人の日本人なら今やほとんどが知っているところ。安倍がこの約束を「守れる」ように、「私や妻が関係していたら・・」というその事実「関係」の方を無かったことにするべく財務省全体が動いたということを。約束を守れるように、あったことをなかったことにする、財務省総ぐるみの大変な努力・・・。

 そして、この問題は、今は桜の陰に隠れるようになっているが、桜よりも重大な事件ではないだろうか。安倍周辺の国政私物化・公職選挙法違反とは違って、森友の方は「政治主導」に名を借りた「財務省ぐるみの大嘘、事実のもみ消しという頽廃」を示しているのだから。国政が行った事実を後になって打ち消す工作で1人の人間が死んだのである。ただしもちろん、桜にもこの「行政府全体の頽廃」は示されているのである。国政功労者を呼ぶと称する「桜」に「保守党政治家個人の国政選挙功労者」がどんどん呼ばれていたことを、官僚らが知らぬ訳もなかったのだから。ここでは、「国政功労者=個人選挙功労者」という大嘘を、安倍が選んだ数年間無数の人々を通じて、つき通しているのである。

 ところで、「桜」について118回の国会嘘答弁とあったが、この関係も含め安倍という人間は「桜」周辺も含めて「・・なら議員も辞めます」というような「違約」の方は、一体どれだけやって来たのだろうか。嘘を定義すれば過去の事実を否定してみせることであり、違約とは将来の約束を守らないこととなるのだろう。そして、嘘が多い人は当然、違約も多くなる理屈だ。

 またこういう嘘や違約がこれだけ多い安倍のような人物を巡っては、こんなことも言える。こういう人物を支持する人々は、嘘や違約を人の普通のことのように考える人、まーそういった「世界」で暮らしてきた人なのかも知れない。当選した時から嘘が多いと言われていたトランプを支持する人々にも、同じことが言えるはずだ。

 ところで嘘や違約は人間の普通のことだろうか。そんなことを改めて考えてみた。これが普通のことならば、政治家の公約など何も信じられぬはず。そして、政治など私利でやるもの、その政治家の私利とは国会議員など到達した地位を守ること、となる。選挙民の方も、その私利のために国会議員を活用すると、そんな政治世界がどんどん膨らんでいくのだろう。こうなると、政治家に大きい私利を与えられる人々しか、政治の恩恵は受けられないことになる。そんな政治で良いのだろうか?

 こういうトランプや安倍に投票する人々には、こんな言葉を贈ってみたい。「彼らのどの約束、言葉を信じておられるのか?」。

 

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

赤木雅子さんに「裁判放棄」の工作  文科系

2020年12月28日 14時48分47秒 | 国内政治・経済・社会問題

  週刊文春最新号に載ったもう一つの記事内容を要約しよう。その見出しは『森友 赤木さん申立書は「すり替えられていた」』というもの。このライターは、赤木さんの妻・雅子さんにずっと寄り添ってきたやの大阪日日新聞記者・相澤冬樹。複雑すぎる財務省のこの「工作」を要約するとこういうことになる。

① 赤木雅子さんが、国へ「改竄の真相解明」を求めた裁判は無意味と「弁護士」に説得されて、いったん裁判を諦めかけていた。夫の死の直後財務省に申し立てた「公務災害認定申立書」に「死因は、野党、マスコミが騒いだのを苦にしてと書いてあるから」というのが、その説得理由だった。

② ところが、この申立書は俊夫さんの死後一か月半後に出されたものであって、これにかかわった中川勘太弁護士は財務局関連から雅子さんが紹介された人。動転していた雅子さん相手に、死因をすり替えた申立書内容に署名させていたと分かったということなのだ。

③ 後にこんなことも分かってきた。この申立書の主要部分が、近畿財務局がまとめた「公務災害報告書」の主要部分と表現までそっくりになっている、と。

④ 以上をまとめた双方対決の結論部分は、そのまま抜粋しよう。

『こうした雅子さんの疑問を私は質問状にまとめ中川弁護士に送った。なぜ申立書と報告書がそっくりなのか? なぜ雅子さんの知らない事実が申立書に書かれているのか? 財務局が準備した文書をそのまま出すのは出来レースではないか?
 中川弁護士は文書で回答を寄せた。・・・雅子さんの知らない事実が書かれていることについては「近畿財務局から提供を受けたエピソードを記載しております」。・・・「現時点において、かかる対応が依頼人の意向に背いたと受け止められているのであれば、誠に遺憾であり、当職の不徳の致すところと考えます」としている。・・・  
 この回答を見た雅子さんはつぶやいた。
「あの頃から私の代理人じゃなく財務局側の人やったんやなあ。よく分かりました」』 
 
 それにしても、ご本人が夫の死に呆然としていた過去において勝手に加筆した文章に署名してあるということを楯にして、国相手の死因追究裁判を諦めさせる瀬戸際まで雅子さんを追い込んでいくとは、財務省も後々まで、手の込んだことをやるものだ。
 それもこれもすべて、発端はこの言葉。これへの忖度からなのであって、これが未だに長く尾を引いているということなのだ。
「私か妻が関係していたら、首相どころか、議員も辞めます」 

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

現代の戦争・通貨危機、タイの例  文科系

2020年12月27日 09時27分50秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)

 今また、米一国支配になった世界でアメリカが今日までやり尽くした「戦争」を紹介しておこう。張本人が隠していて、その告発も抑えているから、ほとんどの人が知らない通貨危機の仕組である。以下は、このブログで度々ベスト⑩に入ってくるエントリーの一つなのだが、いわゆるアジア通貨危機の勃発点タイで起こったことの学者による解説である。このタイの通貨空売りから、このタイに投資していて大損したアジア諸国の通貨空売りへと発展し、韓国などがその通貨で大損して儲けたのは誰か。この同じことが、ブラジルに、ロシアに、アルゼンチンに世界中で30年間にわたって何度も何度も起こされたのであった。これこそ、現代の実質的戦争なのだ。帝国主義の植民地戦争は直接暴力に物を言わせるが、通貨危機は現代の目に見えない暴力である。

 

【  「100年に1度の危機」とはなんだったのか(3) 文科系  2016年11月28日

 第3節 アジア通貨危機の発端、タイの例

『「投機家はタイに自己実現的通貨投機をしかけた。1ドル25バーツに事実上固定していたタイ・バーツが貿易収支の悪化から下落すると予想し、3か月後に25バーツでバーツを売りドルを時価で買う先物予約をすると同時に、直物でバーツを売り浴びせた。タイ中央銀行は外貨準備250億ドルのほとんどすべてを動員して通貨防衛を試みたが力尽きた。」(東洋経済「現代世界経済をとらえる VER5」』

 タイのこの問題に詳しい専門家による解説をご紹介しよう。なんせ通貨危機というのは、「1970年から2007年まで世界208カ国で起こり」(前掲書 伊藤正直「金融危機は再びやってくる」)、中小国家などからは「通貨戦争」とも呼ばれて恐れられてきたもの。中でもこのタイ通貨危機は、97年の東アジア通貨危機の発端・震源地になった事件として重要なものだ。毛利良一著「グローバリゼーションとIMF・世界銀行」(大月書店2002年刊)から抜粋する。

『通貨危機の震源地となったタイについて、背景と投機の仕組みを少しみておこう。タイでは、すでに述べたように経常取引と資本取引の自由化、金融市場の開放が進んでいた。主要産業の参入障壁の撤廃は未曾有の設備投資競争をもたらし、石油化学、鉄鋼、自動車などで日米欧間の企業間競争がタイに持ち込まれた。バンコク・オフショアセンターは、46銀行に営業を認可し、国内金融セクターが外貨建て短期資金を取り入れる重要経路となり、邦銀を中心に銀行間の貸し込み競争を激化させて不動産・株式市場への資金流入を促進し、バブルを醸成した。(中略) 投機筋は、まずタイ・バーツに仕掛け、つぎつぎとアセアン諸国の通貨管理を破綻させ、競争的切り下げに追い込み、巨大な利益を上げたのだが、その手口はこうだ。(中略) 1ドル25バーツから30バーツへの下落というバーツ安のシナリオを予想し、3ヶ月や半年後の決済時点に1ドル25バーツ近傍でバーツを売り、ドルを買う先物予約をする。バーツ売りを開始すると市場は投機家の思惑に左右され、その思惑が新たな市場トレンドを形成していく。決算時点で30バーツに下落したバーツを現物市場で調達し、安いバーツとドルを交換すれば、莫大な為替収益が得られる』

 分かりやすく説明するとこういうことだ。
 1ドルがタイ通貨25バーツの時点で、3か月後に1ドル25バーツでドルを大量に買う先物予約をしておく。その上で、バーツを一挙に、どんどん売り始める。そこには、予め同業者などから大量に借りる契約がしてあったバーツなども大量に含まれている。自分が所有していない債券、商品などを売る行為を空売りと呼ぶが、これらの結果、3か月後1ドル30バーツになって起こることを、例示してみよう。1億ドルで30億と安くなったバーツを普通に買ってから、先述の先物予約を行使してこのバーツでドルを買えば1億2千万ドルに換えられる。また、普通は不安になるこんな「大商いへの確信」も、世界大金融には比較的容易なものだ。動かせるバーツとタイ政府の「防御体制(金額)」とを比較でき、そこから勝利の目処となる投入金額に目算も立つからである。

 上記毛利良一氏はこう続けている。
『投機で儲けるグループの対極には、損失を被った多数の投資家や通貨当局が存在する。
 投機を仕掛けたのは、ヘッジファンドのほか、日本の銀行を含む世界の主要な金融機関と、・・・・機関投資家であった。また、1999年2月にスイスのジュネーブで開かれたヘッジファンドの世界大会に出席した投資家は、「世界中を見渡せば、過大評価されている市場がどこかにあります。そこが私たちのおもちゃになるのです」と、インタビューで語っている』

 なおこのアジア通貨危機理解に関わって、「内因説」「外因説」が存在する。後者は、世界経済フォーラム(ダボス会議)に対抗して開かれた世界社会フォーラムの主張が代表的だと、そう述べるのは前掲書「金融危機は再びやってくる」。またこのことについて、後にリーマンショックにかかわった「国連のスティグリッツ(を代表とした)報告」を出したこのノーベル経済学賞受賞者は、世界認識をちょっと変えている。初めは、単にこうだった。「バブルが自然にできて、それが自然に破れた」。それが後にはこうなった。「あの出来事は、自然なバブルが無くても起こった。国際資本寄りの世界機関対応が起こしたものだ」と。つまり、80年代に「ジャパン・アズ・ナンバーワン」を筆頭とした日本とともに世界で経済的に最も栄えたNICSの金が、タイ、韓国、台湾などを中心として、計画的に略奪されたのである。スティグリッツは、そう観直したわけである。こういうかってないような壮大な歴史的事件については、こう言い直した方がよいかも知れない。「結果としては、計画通りに」と。】
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「分断米国で、バイデンは何もできない」と、クルーグマン  文科系

2020年12月26日 15時23分12秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)

 文春は嫌いだが、商売が上手いと言わざるを得ない。週刊文春最新号の「森友 赤木さん申立書は『すり替えられていた』」、「アメリカの前には茨の道しかない ポールクルーグマン」が目について、買ってきた。後者は言わずと知れたアベノミクスが常にご教示を仰いできたようなノーベル経済学賞受賞者。この記事を今日は紹介する。

 記事の副題は、こうだ。
「V字回復はない。問題は山積みだが、バイデンは何もできない可能性がある」
 初めに書いているのは、コロナ情勢。
「バイデンは新型コロナ対策を最優先させようとしているが、その方針が東京でのオリンピック開催にマイナスの影響を与えるかも知れない。アメリカがオリンピックに選手を送らないと言ったとき、それでもオリンピックを開催するのかどうか

 この後に来るのが、バイデン民主党政権の展望とあって、概略こんな風な。

「バイデンが大統領になって、政治において礼節と協力の復興が見られると思ったら、それは救いようがないほど甘い考えだ。2020年代のアメリカは陰謀論に満ち溢れ、深く分断されたままになるだろう。この分断はそもそもトランプが作ったものではなく、もともと存在していたものである。トランプがやったことは、その分断を可視化し、さらに悪化させたことだ。」

 このアメリカ分断の根深さを描いてその現れとしたトランプの大統領選挙善戦と、同時期の連邦議会選挙民主党苦戦とをあげて、こんな可能性にも言及する。24年にはトランプ再立候補と「バイデンは4年だけの可能性も」と。その上で、「米中関係は改善しない」という小見出しの文章がこう始まっていく。

国際舞台ではトランプはかなりひどいことをしてきた。独裁者を支持し、民主主義を弱体化させた。パリ協定を脱退し、WHO(世界保健機構)からも脱退すると表明した。
 バイデンがこれを元の状態に戻そうとしても、割った卵を元の形に戻すことができないのと同じように、失われた信用をこれからの4年で取り戻すことはできないだろう。信用を取り戻すには何十年もかかるだろう。アメリカという国がドナルド・トランプという反民主主義的な指導者を選んだことをどの国も忘れないだろう。しかも、2024年の大統領選挙にトランプがまた立候補する可能性も出てきている。アメリカには茨の道しかない」

 最後に文章の結び部分、言わずと知れた対中関係である。購買力平価GDPはすでにアメリカを超え、かつ、日本の五倍になっていると述べつつ、こう結んでいく。

「アメリカにとって国際舞台で最も重要な国は言うまでもなく中国だ。台湾問題にしても習近平の言動にしても最近の中国を見ていると、中国がますます勢いを強めていることは論を俟たない。
 中国との関係でも日本は難しいかじ取りを強いられるだろう。米中関係はバイデンが大統領になるぐらいでは改善しないからだ。
 中国の国内総生産は購買力平価ベースではアメリカをすでに上回っている。日本は中国の五分の一にすぎないが、日本にとって中国との経済関係は非常に重要である。日本の輸出先は中国が断トツに多いからだ。
 アメリカが中国に対する攻勢を強め、日本が同調するよう強いられた場合、日本はどう動くのか。中国との経済関係が悪化すれば、日本経済が受ける打撃は甚大である

 国連では特に信用がないアメリカという事実は日本マスコミには少な過ぎる論調なのだが、アメリカの国際的信用凋落はことのほか激しいのである。信用というのは長年かけて作り上げるものだから、「その時だけに生きている人々」には分かりにくいもの。そんな信用を落とすのはあっという間なのだが、その後遺症を思い知るには、長年かけていくことになる。シリア、イラン、ベネズエラ、そしてアラブ・イスラエル問題絡みのエルサレム・・・今も続くいわゆる西欧流入難民問題は全てアメリカ軍事外交がその遠因。米のお膝元においてさえ、反ベネズエラ(参戦)国結集を呼びかけたがほとんど応募がなかった事にも示されていたように、中南米の貧窮に対してアメリカ(による通貨危機など)積年の罪科があることも今はもう白日の下にさらされているのである。1990年代の日本住宅バブル弾けや、タイ、韓国などにも波及したアジア通貨危機がまたそうであったように。アジア通貨危機では日米が儲けたようだが、あれはタイ・バブルが無くとも起こったと、これはもう一人のノーベル経済学賞受賞者ジョセフ・スティグリッツによる後の分析である。つまり、アメリカヘッジファンドが意識的に起こして、日本もこれに便乗した。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

テスラ・EVと、豊田の社長が吠えた話  文科系

2020年12月24日 15時42分08秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)

  世界が、カーボンニュートラルで沸き返り始めた。
 米のEV自動車会社テスラの株価時価総額が65兆円とかになって、トヨタの2・5倍だとかから、色々調べてみて驚いた。完全な株価先行のつまりバブルなのである。そのバブルぶりも凄まじいもので、2010年に17ドルであった株価がこの8月末には2318・49ドルとあり、とくに近年は500%の上昇などとあった。10年にはパナソニックのリチウム・イオン・電池と提携したり、同じ頃だったかトヨタが5000万ドル出資したが16年には全て売り払ってしまったとか、話題にだけは事欠かない会社である。そして今や、アメリカの花形企業のような顔をしているのだが、一体どれだけの車がアメリカや日本で走っているのか? そもそも一体、1000万円などというロードスターなどがどれだけ売れているのだろう。しかも、中古になっても値が変わらないと宣伝してあったから驚いた。世界の有り余った資金の有望な投資対象なのか、それともサブプライムバブルと同じ「破綻する虚業の稼ぎ方」なのか(などとは思いたくはないが・・)。

 さて、これに比べて、新たに出た中国のミニevは1回の充電で120キロ~170キロ走れて50万円だとか、ホンダが極めて有望なSUVeをこの18、19年に中国で出して、これは500キロ走れる、とか。ホンダは、日本で200万円をちょっと超えるクラスもあるヴェゼルという車を出していて、これとEVとを結びつけて行くようだが、一体、トヨタは大丈夫なのだろうかなどとも考えていた。この愛知県は、トヨタがくしゃみをすると、いろいろ困るのである。

 ところで、この豊田章男社長がこの17日、これらの問題に関わって特別な記者会見(懇談会風記者会見とか?)を持ったようだ。その発言内容を、国沢光宏というライターの要約文章で紹介しよう。

『 多くのメディアはすべて電気自動車にすべきだというけれど、いまの電力状況のままクルマをすべて置き換えようとすれば電力不足になるうえ、そもそも日本は火力発電所がメインのため二酸化炭素の排出量削減にならないという。この件、裏を返せば、日本という国全体のエネルギー問題のほうが大きいということだと考えます。現時点でカーボンフリーの電力をどうやって確保したらいいかという論議はまったく進んでいない。原子力発電所を新設するどころか、既存の施設の再稼働すら出来ない状況。十分な安全性を担保出来なければこのまま廃炉になっていくと思う。
 そもそも、脱ガソリン車で困るのは国民です。地方で移動手段の主力となっている軽自動車もどう対応したらいいかわからず、このままだとユーザーが困る。

 返す刀でメディアもバッサリ切った。電動化車両のなかにハイブリッド(HV)や、プラグインハイブリッド(PHV/PHEV)も含まれているのに、報道を見ると電気自動車しか販売出来ないようなミスリードをしているという。これはもう、報道するメディア側に大きな問題があります。大手メディアの記者は勉強不足のため、電動化車両にハイブリッドやプラグインハイブリッドも含まれることを認識していない。結果、少なからずそうした報道を見た人が、東京都は2030年からすべて電気自動車になると理解している。』

  さて、このカーボンニュートラル問題、この10年の世界現物経済を世界エネルギー問題をも巻き込んで、動かしていくものになりそうだ。テスラに集っているやの短期金転がし金融業自身は人の職業など作れず、豊田の社長も言っているように、時々の世界主流の現物経済が職業を作るのだから(だから、ロボットなどには安易に代えないで欲しい)、この動向は我々の孫たちの生活に直接間接に大事な将来問題そのものにもなっていくのである。ちなみに、僕はこの4月から軽のアルトワークス・マニュアルシフトに乗っているけど、歳で乗れなくなるまでこの車で行くつもりだ。新車でなければ、カーボンも認められていくはずと考えて。

コメント (3)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

随筆  友の「音楽」  文科系

2020年12月23日 12時43分44秒 | 文芸作品

  そのギター曲を弾き終わってすぐに顔を上げ、彼の様子を見る。目の前の車椅子から、コルセットをきつく締めて斜め前に曲がった身体で、いつもと同じように僕の目に向かって「良かったよ」と無言で語りかけてくる音のない小さな拍手を贈ってくれている。なんとかかんとか形だけはやっとという前回の演奏よりももっと長い拍手と感じたのは、僕の気のせいではないだろう。ここまで一か月以上かかって暗譜や、この曲の難しい和音装飾などもあれこれと考えて何とかひとまず完成と、そんな彼の前での二回目の演奏だった。

「この曲を弾いてくれないかな。挑戦したけど、物にならなかった奴で、僕の葬式に弾いてくれると嬉しい・・・」。
 本気なのか冗談なのか、六十年も前に入った大学同級生一番の親友からこんな注文がでたのは、一か月以上前のこと。家も近くて以来ずっと行き来が続いてきた彼はパーキンソン病を患い、この二年程で急激に悪化した。なんでも、運動神経がやられ、歩行も困難になり、骨密度が通常の四割を大きく割って椎間板などあちこちの圧迫骨折から車椅子と、そんな段階に達している。ついこの前までは、訪れた時には、悪化防止のための運動・スクワットなどを普通に手助けしていたのに、あっという間に要介護五度の重病人なのである。ただし、意識、頭脳は明晰で、明らかに僕の訪問を楽しみにしている。こちらも大学同級生であるお連れ合いさんも僕を歓迎してくれる。そんなある日、僕がギター教室の帰りに思いつきギターを弾いた折、彼自身がギター曲集を持ち出してきて注文したのだった。結構難しいと感じた曲名に覚えもないこの楽譜だったが、すぐに思い出したことがあった。
「これって、あんたが大学時代にもちょこちょこ弾いてたやつだよな?」
「鏡の中のアンナ」。付き合い始めたころ彼の家で、彼が持っていたクラシック・ギターをいつも一緒につま弾いていたそのおぼろげな記憶が蘇ってきた。〈あれ以来ずっと、どうしても弾いてみたい曲で、これまで何度も挑戦してきたけど・・・、独学のギターでは、確かに難しそうだ・・・〉。同じように僕にも、あの曲、この曲・・・、音楽が持っているそんな力は、いろんな場の自分自身にあれこれ活用してきたから、よく分かった。そう、尾瀬を唄った「夏の思い出」のように、昔を思い出しているようなちょっと愁いを帯びた曲で、美しい和音装飾がその懐かしいような情感を倍増させている。

 さて、二回目の演奏のこの時、思いついてアンコールをやった。ギターの高い単音だけで十分すぎる程に聴けるある名曲を。弾き終わって前と同じような拍手を贈りながら彼が訊ねる。「いーねー。何と言う曲なの?」。彼も当然これを知っていると思い込んでいた僕は、面食らいつつ答えたもの。「シューベルトのアベマリアという曲だけど・・・」。
「ところで、最近の句作はどんなのがある?」と、今度は僕がご披露を注文。彼は今でも十五人程の句会を主宰していて、コロナ渦中で会は開けないのだが、ネット句会という形で開会を続けているのだ。十一月は「新蕎麦メール句会」とあって、彼の提出作はこれ。
 新蕎麦や野武士のごとき指が打つ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

喜寿ランナーの手記(333)ジムと外と、走りの違い  文科系

2020年12月22日 22時38分10秒 | スポーツ
 この332号に「ブログ・ラン友だち」げたのうらさんから、とても良い助言コメントがあった。今の僕はこの助言の意味が分かり、この点でこそ苦闘中と理解しているその内容を、お答えした。ジムランの方が外走りより楽で、それは何故か。外走りでジムランと同じ記録を出そうとすれば、走りのどこをどう直さねばならないのか。そういう僕なりのお答えを返したつもりだ。以下、そういうコメントやり取りを、エントリーにも上げておきたい。但し書きを一言。以下の内容は、332号にあるラン方法を前提としているというのは、押さえておきたい。
トレッドミル(げたのうら) 2020-12-22 08:14:25
トレッドミルと外走りの違い

トレッドミルはベルトが勝手に動いてくれるので飛び上がっている間に距離が進んでしまいます。実際に外で走る場合は地面は動いてくれませんので自分の力で前へ進まなければなりません。
なのでトレッドミルの方が楽に距離を走れてしまいますし、地面を蹴る時の筋肉を使わなくて済んでしまうので益々楽に走れてしまうのです。

トレッドミルと外走りでは使う筋肉が違ってきますからトレッドミルと外走りを半々ぐらいで練習をするのが良いと思います。

バイクの3本ローラー台も同じです。ローラー台はとても楽にスピードが出せますが、外で乗った場合はそうはいきません。ローラー台では40km/hを数分間持続できますが、外ではほんの一瞬だけなんです。原理は一緒です。
 
ありがとう (文科系) 2020-12-22 21:50:30
 
ゲタさん、有り難う。
 言われていることの半分程は気づいていました。それで、今は外走りのが多い。11月16日からこの22日まで37日間で、外が9回、ジムが6回です。でも、実際に走る方法のどこを直すかが(今まで書いてきたことは当然として、それ以外に)まだ明確でない点がある。というよりも、頭で分かっていることが実行できないでいるというのかな。
 分かっていることは以下です。
① 骨盤の下よりも前に脚を持っていってはいけないのだが、これがちょっと気を抜くと膝さえ前気味になってしまう。これはジムランの癖でしょう。だからこそ、外ランを増やしてきたんです。
② ①を正すと、ストライドが小さくなる分ピッチを上げる必要があるのだが、そのために必要な後ろ脚の「押し」が弱い。この押しとは、蹴るのでなく(地面をつついた後で)離陸寸前になった後ろ脚の膝を伸ばすことを僕流に表現している積もり。つまり、後ろのつま先で地面を擦るのではない。
③ さらに、僕の場合の②はこうなってしまうことも多い。ピッチが異常に速くなって、制御できないからダウン、と。

 さて、今の僕にはこういう①②を守って「小さなストライドで良いから」ピッチ170ほどまでで走るというのが、全ての要諦のようです。こういう走り方が出来た時は、ストライドも95センチとか結構い広くなっているんです。これは、小さなストライドのつもりでも、スピードが付いているということなのでしょうね。

 というように、しばらく頑張ってみます。1月中頃までには、良い便りが出せると思います。身体の不可逆的老いは始まっているが、1年越しの新走法マスターでこれを乗り越えるって、自分でもちょっと格好いーかなというナルシストよろしく。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

喜寿ランナーの手記(332) 依然として苦闘中、なぜ?  文科系

2020年12月21日 11時01分14秒 | スポーツ

 去年の12月からこの1年改造してきた合理的な走法で、外走り8キロ程の内の後の方5キロをキロ当たり6分12秒まで持って行く目標を立てて励み始めて、約1か月経った。19~20年それぞれ各1回ずつ1週間の手術入院で戻せなかった力を、18年12月の記録に戻す意味を持つ努力だ。なお、何度も述べてきた新たな合理的走法とは、こういうものである。
① 骨盤の下に持ってきた脚で地面をつつく力で走り、それ以上には膝を曲げた脚を前に出したりはしない。よって、前足の着地時間が極端に短くなり、ピッチ数を上げるために腕を小さく速く振る。
② 上半身は伸ばして、骨盤からやや前傾させ、臍から前に出していく感じ。脚で地面をつついた力で浮いた脚腰をそうやって前に持っていくという走法である。腰や背中を曲げたり、顎を前に出したりは、厳禁。そういう体幹力が大事な走法でもある。

 このキロ6分12秒に未だ苦闘中で、6分20秒さえなかなか突破できないでいる。LSDによる心肺鍛錬目的のジムマシンを同じ走法で走るのには随分慣れてきて、その感じも上々なのに。例えば、20日はこれを90分やり、4・2+4・5+4・5の合計13・2キロのLSDをやったが、明日も走れることありありの疲労度で、この新走法に必要な膝を伸ばして地面を跳ねる筋肉なども随分強くなっている。以前なら160を優に超えた10キロ時の心拍数が150bpm内外に下がってきたのも好調の徴といえて、マシン走なら9・5キロ時で30分は優に走れる感じになっている。これがキロ当たり6分19秒になるわけで、外走りでは何故これが容易でないのか。それが不思議だと、戸惑っている真っ最中だ。ちょっと不可逆的な老いが始まったいう感じは拭いきれないが、この老いと闘うギリギリの峠越え時期なのだと言い聞かせつつ励んでいるところだ。

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

証人喚問でなければ筋が通らない  文科系

2020年12月19日 11時27分04秒 | 国内政治・経済・社会問題

 安倍晋三の「桜」関連国会招致について、さすがの自民党執行部も止む無しという結論に達したようだ。ただ、偽証罪に問える証人喚問という野党の要求は、議会多数派の力で押しつぶすつもりらしい。このことは、以下のように、筋が通らず、選挙目当てだけの恥知らずなやり方である。

① 国会で何百回も自ら「嘘」を突き通し、他人にもそうさせてきたのは、国権の最高機関たる日本国議会を侮辱している。言われているように、「嘘とは知らなかった」としても、次の問題が生じる。

② そもそも、自分自身で前夜祭ホテルの見積もり、請求書、領収書などを一度も確認せずに、こんな答弁をしていたのか?  それも、数年間にわたるものを一度も確認せずに、こんな答弁を?
『事務所側が補填した事実は全くありません』
 このこと自身が国会、国会議員に対して恥知らずな無責任である。

③ このことに関わる、数年間にわたった政治資金収支報告書未記載収入をどう考え、弁明するのか? こんなことを首相自らが数年間も続けられるのなら、政治資金収支報告書など不要に、政党交付金さえ無意味になるはずだ。  

  これだけ国会を馬鹿にした首相がかっていただろうかとさえ思う。歴代首相にも証人喚問に応じた例は多いのだから、安倍がこれに応じないとしたら「多数自民党の数に物を言わせた(選挙目当ての)横暴」、国権の最高機関冒涜という恥知らずである。

コメント (8)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

独裁間際にいた安倍  文科系

2020年12月18日 10時30分30秒 | Weblog

 昨日のエントリー『三権分立破壊寸前だった安倍』に標記のこと「安倍は、既に独裁者寸前だった」と、書いた。そしてだからこそ、以下に紹介するこういうコメントを付けた。最後に残った抵抗勢力・人文社会系学者の表舞台の世界から、政権に逆らっている者を排除しようとしたのだ、と。すると、このエントリーに、とても面白い反論が来たものだ。そのやり取りを紹介する。日本における右翼ポピュリズムの一論議が、いかに稚拙なものかと分かるからだ。彼らには、三権分立や、「指名」と「任命」との区別、学問の自由などなどの意味だけでなく、「独裁政治」というもの自身も分かっていないのである。

【 『学術会議問題の根っこは・・ (文科系) 2020-12-17 00:35:10
 このエントリー内容と、日本学術会議会員任命拒否問題とは、実は深く繋がっている同根の現象なのだと考える。
 「黒川検事総長」で、三権分立をほぼ無力に出来つつあった。あと怖いのは、そういう独裁体制を正しくも批判する人文社会系学者たちである。これの自立性、批判力を削ごうとし続けてきたのが、数年前から着手してきたとはっきりしたこの課題だ。学者を押さえつければ、マスコミでも反対・政権批判をする人物がいなくなるということなのだろう。
 社会正義の顔、代表たる検察、司法は、この安倍がここまでの独裁国家建設に至った問題をば、よくよく事実経過を残しておかねばならないはずだ。』

Unknown (学術会議問題の根っこは・・) 2020-12-17 17:07:01
日本学術会議会員任命拒否問題が、どんな法律(憲法)に反したのか、何条の何処なのか、サヨ達が言えないまま、イチャモン付けている事でしかない。』

『国会答弁 (文科系) 2020-12-17 17:44:24
 今の日本学術会議規則が決まった時に、国会質問・答弁で当時の内閣がこう答えている。
「ここで言う任命とは、単なる形式的なものである」
 政治法律用語の任命とは、形式的なものであることは普通の学問常識。そのことを日本学術会議にかかわり、国権の最高機関たる国会の答弁で明確に述べたもので、これは準法律に相当する。
 ちなみに、内閣総理大臣は国会で「指名」して、天皇が「任命」するとなっているが、この任命について「この任命解釈は、どの法律でそうなっているのか」などと述べて、天皇が国会の指名を覆してもよいなどと馬鹿なことをいう人はいない。それが、指名と任命との当然の解釈だからだ。』 】

 天皇や総理大臣が「任命する」とされている人事において、気に入らぬ者を全て排除して気に入る者が指名されてくるまで待てば、独裁政治が出来上がるのは自明のことである。安倍はそんなことを始めようとしていたわけだ。ちなみに、国権の最高機関とされた国会で無数の嘘をつき通して来られたのも、既に独裁者になりかかっていたという証明になるだろう。日本は本当に危ない瀬戸際にあったのである。検事総長人事までを自分の意のままに出来る寸前まで来ていたというのは、そういう事実経過を意味するだろう。

 さて、「以上全てを分かった上でこそ、安倍『桜』の機を『公序』の危機と捉えて検察が動いた」と、僕は思いたい。が、そう思っても、安倍がここまで来られた理由が分からないのである。佐川の忖度国会答弁、出世の際に検察が動いていなければならなかったと考えるからだ。独裁者の妻が関わった事件を、官僚総出でもみ消しに懸かっていたのだから。ほとんどの官僚が、安倍の悪辣な「政治主導」に忖度でなびいているという危機が現出していたのである。あの時にもう、一人の公務員の鏡が(こういう国家体制への)抗議自殺を遂げていたのである。

 赤木俊夫さん、彼こそ「炭鉱の危急」を告げていたカナリアではなかったか。

コメント (7)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

三権分立破壊寸前だった安倍  文科系

2020年12月16日 14時59分55秒 | 国内政治・経済・社会問題

 日本のように議院内閣制を取る国は三権分立が危うくなりやすいと覚えておかねばならぬ。今回安倍が裁判への起訴権を握る検察首脳人事に手を入れようと図ったのを見て、そう心したものだ。

①国会で多数を取ると行政権を握る。これが議院内閣制だ。②それが長くなると官僚らが政権を忖度し、違法でも何でもやってしまう。③そんなことが続いた政権は、己の独裁的罪科を隠すためにも、長年の行政公序をどんどん破っていくだけでなく、裁判への起訴権を握る検察人事まで握ろうとした。④これでは、三権分立も何もあったものではない。つまり、立法・行政が長年一体となって司法までを握ろうとしていたのであって、日本は三権分立が危うかったのである。

 そんな情勢を反省しなおすためにも、以下の記事などは貴重なものだと教えてくれる。検察頑張れ。今はもう、ここまでやってしまった安倍を逮捕しなければだめだろう。後の世に独裁政権の出来方、防止の教訓を残すためにも。あれだけ国権の最高機関とされた国会に嘘をつきとおしても許されてきた内閣なんて、とにかく異常を通り越していたと言える。

 

【 日本学術会議任命拒否の岡田教授、権力の暴走に危機感 12/14(月) 19:03配信  週刊金曜日

「違憲違法でも権力は何でもできると居直っているのが現状だ」

 法曹・学者3団体主催の司法制度研究集会「今の司法に求めるもの」が11月14日、東京都内で開かれ、最高裁判事の任命手続きが時の政権に政治支配されている現状について改革案を議論した。日本学術会議会員への就任を拒まれた当事者の岡田正則・早稲田大学教授(行政法)がゲスト発言し、司法人事への政治介入との相似を強調した。

『朝日新聞』で長年、憲法問題に取り組んできた豊秀一・編集委員が基調報告し、近代憲法が達成した「法の支配」が学術会議会員任命拒否問題に典型的に見られるように「人の支配」に変質していることを指摘。「法の終わるところ、専制が始まる」(ジョン・ロック)と警鐘を鳴らした。

 学術会議問題について豊氏は日本学術会議法が会員数210人を明確に規定し(欠員状態が違法となる)、会議側が候補者を推薦すること、会議の独立性などを保障していることなど、同法が「政治介入の防波堤」になることを説明。一方で、最高裁判事は「内閣でこれを任命する」としか規定がないことからくる懸念を表明した。

 主催者団体の一つ、青年法律家協会(青法協)弁護士学者合同部会の元議長、梓澤和幸弁護士は、自らの司法修習生時代に裁判官志望者への大量任官拒否があったことや、その経緯を当局に質した同期生が罷免された経験を披露。「当時の石田和外・最高裁長官が戦前の治安維持法下で予審判事として思想を裁いてきた経歴を隠し、戦後は戦争責任を問われぬまま司法官僚の階段を上り詰めてきた結果だ」と断じ、「こうした事実を歴史の中に位置づけ、忘れない覚悟、忘れさせない覚悟が必要ではないか」と問いかけた。

 さらに「最高裁判事は判例を作るだけでなく、2千数百人の全国の判事の人事を支配し、判決の内容に大きな影響を与えている」と訴え、裁判所が「人権を守る砦」となりにくい構造を説いた。

コメント (8)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

フェイク社会は誰が作った?  文科系

2020年12月15日 10時15分43秒 | 文化一般、書評・マスコミ評など

 「もう一つの真実」などという言葉も生まれたり、フェイク人間・トランプも出てきたりで、フェイクニュース発信が、それも嘘と知ってやっているようなフェイクが、今や当たり前の、これが普通という世界になった感がある。こんな風潮から今度は、他人の発信内容にも余りにも安易に「フェイクだ」と返す世になっている。僕も一昨日の当ブログであっさりと「フェイクニュースを信じている」とシン君から言われてしまった。それがこともあろうに「イギリスのイラク参戦時首相ブレアが、イラク戦争参戦を反省した総括文を長期間かけて提出させられた」ということを、「どの新聞にも載っていないからフェイクだ」と断定、批判されたのである。これって、どう考えたら良いのか、僕としてはしばし戸惑っていたほどで、僕にとっては一つの事件になってしまった。

 彼の詰問と、僕の回答を転載すると・・

【 新聞に載ってますか? (シン) 2020-12-13 15:12:54
>イラク戦争第一の参戦国イギリス元首相が、重大な参戦反省文書を長年かけて出さされているのが、何よりの証拠。
新聞に載ったことは、ありませんよね(^O^)
つまり、あなたはフェイクニュースに騙されているだけなんですよ。

【 フェイクニュースは書かない (文科系) 2020-12-15 09:45:05
 僕はフェイクニュースは書きません。以下は全て事実です。ちなみに、調べもしないでフェイクニュースと決めつけるのは、自分が書いた物がい-加減だと証明しているようなもの。その程度の調査力、思考で自分も物を書いているよと、わざわざ叫んでいるような。僕は一応、50年前の某旧帝大の文学修士。修士論文以来も色々書いてきたが、剽窃とかフェイクニュースとかはやろうと思ったことさえありません。恥ずかしいことだという教育が徹底していましたから。

 「イラク戦争後に主要参戦先進国政権は全て潰れた。イギリス、スペイン、イタリア。だから、以降アメリカの参戦呼びかけにはどこも答えなくなったのね。今のイラン、ベネズエラなどでもアメリカは参戦有志国を募る「脅し」に出たが、応じる国はほとんどなかった。世界中が、アメリカの「嘘の理由開戦」に懲りているのだろう。イギリスはこの戦争で176人死んだ。」
 イギリスの反省文は、「イギリス イラク戦争総括」で検索すればすぐに出てくるが、君はこんなことも知らないで、というよりも調べないで、フェイクニュースと応じるのだ! そんな歴史知識で戦争をも語っているということが丸分かりとあって、僕は恥ずかしいよ】

 ところで、日本の商習慣では「信用」という言葉は重い歴史を持ってきたし、学術論文などでは剽窃はもちろん、フェイクもこれをやったら学者生命終わりというそんな伝統も続いてきたはずだ。誰が嘘やごまかしが当たり前という日本に換えてきたのだろう。他人の話を、特に自分に都合が悪い話を、調べもせずに安易・簡単に「嘘だ!」と言い返す社会。安倍、管両氏は、こういう世界の先頭に立ってきた人らしいとは分かるのだが、彼らを支持出来る人々もまた、そういう人々なのか?・・・。」

コメント (15)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

武漢の闘いドキュメンタリー『76 Days』  文科系

2020年12月15日 09時15分29秒 | 文化一般、書評・マスコミ評など

 管首相が、やっとグズグズと長引かせた愚策に終止符を打ったようだ。こんな一昨日、「マスコミに載らない海外記事」のサイトに、コロナ爆発時の武漢の闘いを描いたドキュメント映画の紹介があった。映画の特徴と同じらしく、いくつかの場面描写に徹したまさに現地報告になっている。この映画の成り立ちや監督は、こう紹介されてあった。「中国系アメリカ人映画監督のウー(Beijing or Bust, The Road to Fame, People’s Republic of Desire)が、二人の協力者に武漢で撮影されたビデオ映像を編集した」。

【 2020年12月13日 (日)
『76 Days』:武漢でのコロナウイルスとの戦いの前線
デイビッド・ウォルシュ 2020年12月7日 wsws.org

 世界的流行が始まった中国の都市武漢での11週間の封鎖(1月23日-4月8日)についてのドキュメンタリー『76 Days』は、今年のトロント映画祭における最良の映画の一つだった。この映画には、実に本物の忘れ難いドラマがある。ドキュメンタリーは今「virtual cinema」プラットホームで、アメリカで見られる。
 映画はハオ・ウー、ジーン・チエンと匿名の人物(身元を明かさないために匿名を望んでいる武漢現地の記者)によるものだ。
 中国系アメリカ人映画監督のウー(Beijing or Bust, The Road to Fame, People’s Republic of Desire)が、二人の協力者に武漢で撮影されたビデオ映像を編集した。

ドキュメンタリーは、いかなる全体的評価も分析もしていない。ほとんどがクローズアップだ。ほとんど全員ウイルス感染者か医療従事者だ。極端な臨場感は制約だが、アメリカ政府による執拗な新たな「黄禍論」プロパガンダ宣伝の時に、『76 Days』は、親密で、完全に合法的な方法で、聴衆に中国人の人間性や苦しみを紹介する。
 更に全般的に、主にコロナウイルスで亡くなる人々が、無価値で、重荷で、完全な人間以下のもののように主張したり、暗示したりする、至る所のメディアや政治支配体制の冷淡さや無関心に対する打撃だ。

 ドキュメンタリーで、女性が半狂乱ながら、空しく(健康上の理由から)、死に瀕した父親にもう一度会いたいと懇願する場面がある。「父さん!私は父さんを決して忘れません」と彼女が叫ぶ。最も心が痛む、実情を現す別の場面の一つで、病人の自暴自棄な群衆が病院入り口で入ろうとする。「どうか協力してください!」と職員たちが訴える。職員たちは、彼ら全員が、最終的に入れますと約束する。
 ある看護師が、故人のIDカードと携帯電話を集める。携帯電話は、故人や家族の画像が多いが、小さな光を放つ幽霊のようだ。ウイルスに感染した女性が出産する。「女の子ですよ。」だが赤ん坊は、母親が感染しているため、すぐ連れ去られる。その後で、母親と夫の両方が、心配して、赤ん坊を待っている。看護師が、二人に、赤ちゃんは「良く寝て、良く食べましたよ」と陽気に言って、幸せな再会になる。

 一人の「言うことを聞かないおじいさん」が立ち上がり、家に帰るため外に出る方法を探して廊下を歩き回り続ける。誰かが言う。「彼は漁師でした。彼は落ち着きがありません。」病気で、おびえて、彼は泣く。「私はもう、お墓に片足を突っこんでいる。」だが彼は幸運な一人であることが分かり、生き残る。彼が最終的に退院する際、職員たちが彼にさようならを言うため、エレベーター近くに集まる。「私は決して皆さんを忘れません」と彼は職員たちに言う。

  最終場面の一つで、誠実な看護師が死んだ親の持ち物を家族に返す。「ごめんなさいね」と彼女が言う。「私達は出来る限りのことをしました。」泣いている女性が帰るため向きを変えながら簡単な返事を言う。「わかっています」

 監督としての発言で、ハオ・ウーは、地方自治体が、ウソをついて、発生を隠すため、内部告発者を抑圧していたことが益々明確になる中での、流行初期の彼の反応を説明している。武漢での状況は悲惨だった。人々は死につつあり、医療は崩壊し、医療関係者には適切な保護器具がなく、彼らも病気にかかり、死に瀕していることが明白になった。
 後に、ニューヨークで、彼は「準備不足の政府、ウソをついているか科学的に無知な政治家、怯える住民、保護具がない疲れ切った医者や看護師のアメリカで、武漢物語を再体験しているように感じた。アメリカには一流医療インフラと遥かに優れた政治制度があると思われているので、この二度目は、私にとって、より大きな衝撃だった。」

 率直に言って、中国当局者の役割を称賛せずに、アメリカが武漢経験を「再体験した」ことを示唆するのは非常識だ。武漢での措置に伴う封鎖は、ウイルスを封じ込め、抑制した。今中国は、4,600人の死者で、死者数ランク・リストで、77位に落ちている。人口が四分の一のアメリカでは、政府の殺人政策のおかげで、290,000人の死者が出ている。

 とにかく『76 Days』は貴重で感動的な作品だ。】

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

書評 池上彰「そうだったのかアメリカ」  文科系

2020年12月14日 12時03分42秒 | 文化一般、書評・マスコミ評など

 池上彰が、オバマが大統領になった2009年に集英社文庫から出した本だが、この本で僕は、正直に言うが、彼を見直した。このブログで描いてきたアメリカ論とほとんど変わらない内容だったからちょっと驚いたのである。進化論を否定する宗教国家だとか、中南米や中東に対する「帝国主義国家」だとか、世界経済へのその武力支配の現状だとか、今も残るその人種差別の歴史的根深さとか・・・。終章を除いた全9章にはそれぞれ「この章のまとめ」がついているのだが、そのいくつかをご紹介してみよう。

 第1章 アメリカは宗教国家だ
『アメリカは、憲法で「政教分離」を定めているが、これは「国教」を定めないという意味であって、国民の多くがキリスト教徒であることを前提としている。(中略)
 国民の多くは神の存在を信じ、宗教保守派の影響力が増大している』

 第3章  「帝国主義」国家だ
『「理想」に燃えて建国されたアメリカは、次第に領土を広げ、海外に植民地を持つまでに、「帝国主義化」した。その過程で多くの戦争を経験した。
 その野望はやがて「世界支配」へと進み、世界規模で支配力を拡大した。
 しかし、イラク戦争により、アメリカ軍は泥沼にはまってしまった』

 第4章 「銃を持つ自由の国」だ
『アメリカでは銃を使った犯罪が後を絶たない。アメリカの憲法修正第2条が個人の武器を持つ権利を保障していることを理由に、銃の規制は進まない。アメリカは、個人が武装することで専制政治を阻止することができるという「理想」を掲げているためである』

 第7章 差別と戦ってきた
『アメリカという国は、そもそも奴隷制度を前提に成立した国だったが、やがて奴隷制度の扱いをめぐって南北が対立し、南北戦争に発展する。
 南北戦争中にリンカーン大統領による「奴隷解放宣言」が出されたが、黒人奴隷の実質的な解放に至るまでには、長い長い黒人自身による戦いが必要だった。
 現在では各界で黒人が活躍する姿を見るまでになったが、黒人差別の深刻な実態は依然として存在している』

 第8章 世界経済を支配してきた
『アメリカは、第二次世界大戦中から戦後の国際通貨制度の検討を始め、イギリスのポンドから「基軸通貨」の地位を奪うことに成功した。
 やがてブレトン・ウッズ体制は崩壊するが、ドルが「世界のお金」であるという地位は揺らいでいない』 
 
  第9章 メディアの大国だ
『アメリカの報道界には、新聞、放送のどちらにも、時の権力と戦い、報道の自由を守り抜いてきた歴史と伝統がある。
 その一方で、メディアの巨大化と共に、その伝統は危機にさらされようとしている』

 

 最後に、感想を少々。流石に元NHK記者32年というだけあって、それも事件記者という経歴もあった人らしく、色んなアメリカのニュース、興味深いエピソードに溢れかえった本であった。それで面白く、あっという間に読み進んでしまった。たとえば、オバマが出現した驚きも、ついで、この本が出て何年か経ってトランプが出てきたわけもなんとなく分かるような。もっとも、メイフラワー号到着が日本で言えば関ヶ原合戦の直後であったり、黒人奴隷を巡るあの南北戦争が起こったのが明治維新の頃と知ってみれば、近代(民主主義)政治育成の伝統でさえ極めて薄い国なのだと分かる。僕自身がボストンのホテルで体験した人種差別が、今でも根深く残っているその訳も少し分かったような・・・。一言で言えば、日本はアメリカを美化しすぎている。負の面を知らず、正の面しか見えないようになっていた? 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする