5.福音派とキリスト教原理主義
前回の投稿で福音派についての記述を終えるつもりであったが、急ぐあまり、教義そのものについての記述も省略して、きわめて不十分であったと反省しこの稿を起こした。
百科事典「ウィキペディア」によると、キリスト教原理主義は「キリスト教のプロテスタントの中の福音派右派の思想」とある。福音右派とあるが、福音派と考えてもさしつかえない。つまりこの記述では、キリスト教原理主義=福音派として扱っている。この「ウィキペディア」の記述は日本版だけの記述で、ヨーロッパ版では、決してこんな記述にはなっていないであろう、と私は思う。長くなるからここではそれに触れ得ない。キリスト教原理主義の概念の方が福音派より広い概念である。狭くアメリカの福音派に限定するのはどう考えてもおかしい。ただし、アメリカにおいてはイコールと考えることはできよう。
福音派の教義の核心は、「聖書を文字通り一字一句が真実で、過ちは決してない」とし聖書至上主義の立場を取っていることにある。したがって創世記の物語もそのまま、世界の歴史そのものと捉えている。この教義の核心は次の5つに整理できよう。① 聖書の無誤謬性、② イエス・キリストは処女から生まれたこと、及びその神性、③ 購いの教義、④ イエス・キリストの復活、⑤ イエス・キリストの再臨、を信ずることにある。
6.布教活動と政治活動
福音派は、アメリカにおける他のキリスト教諸派と異なり、政治活動に熱心である。さらに福音派は布教にきわめて意欲的に取り組む。
「アメリカを、キリスト教倫理を根本にすえる国家に作り変える」という理想を掲げ、政治の世界と社会の底辺に積極的にかかわっていくという姿勢を持っているからである。
福音派は4万2千の協会が属している南部バプティスト連盟(1960年から2000年にかけて、信者数は1000万人から1700万人へ) ペンテコステ派(200万人から1200万人へ)などいくつかの教派に分かれている。さらに特徴的なのは無協会派のビリー・グラハム師、その子供で後継者のフランクリン・グラハム師の大衆伝道の活動である。きわめて意欲的に全国にわたって集会を組織遊説し、さらにはテレビを積極的に利用して、意欲的に大衆伝道に身を捧げている。アメリカで最も有名な牧師になっていて、NHKの特集番組にもこの活動が取り上げられたので記憶している方もいるであろう。
さらに、連日テレビに登場し時事解説や分かり易い説教で人気のあるテレビ伝道師パット・ロバートソン師もいる。彼は、破産したテレビ局を買収し、それを基にキリスト教放送網を作り上げたのだ。このような活発な伝道活動のなかで、信者数は1960年以降急速に増大してきているのだ。
2004年12月の「ニューズウイーク」の実施したアンケート(18歳以上の1009人対象)によると、「イエス・キリストは、処女マリアから、人間を父親とせず生まれた、と信じますか」という問いに、79パーセントが「はい」と答えている。「聖書にあるすべての記述は、文字通り正しく実際にあったことであると思いますか」の問いに、55パーセントが「はい」と答えている。この数値をすべて福音派の成果であるとは私は思わない。が、次の図式は成り立つと思っている。「はい」と答える人々の増加(保守的意識の広まりとあいまって)→それを基盤に福音派の広がり→「はい」と答える人々のさらなる増加。
政治活動の面でもきわめて積極的である。政党は組織していないが、さきほどのロバートソン師が福音派の政治組織「キリスト教連合」を創設した。その会員は1994年段階で200万人を組織し、各種選挙で共和党を支持して積極的に活動していた。2000年代にはいるとこの「連盟」の活動は表面では目立たなくなるが、それに代わって、共和党の下部組織のなかに浸透し共和党を下から支える活動を展開している。この力がブッシュ再選の原動力となったのだ。ロバートソン師は「35万の信者が熟達した活動家になった。そして、現在は共和党の中枢を担っている」と豪語している。
前回の投稿で福音派についての記述を終えるつもりであったが、急ぐあまり、教義そのものについての記述も省略して、きわめて不十分であったと反省しこの稿を起こした。
百科事典「ウィキペディア」によると、キリスト教原理主義は「キリスト教のプロテスタントの中の福音派右派の思想」とある。福音右派とあるが、福音派と考えてもさしつかえない。つまりこの記述では、キリスト教原理主義=福音派として扱っている。この「ウィキペディア」の記述は日本版だけの記述で、ヨーロッパ版では、決してこんな記述にはなっていないであろう、と私は思う。長くなるからここではそれに触れ得ない。キリスト教原理主義の概念の方が福音派より広い概念である。狭くアメリカの福音派に限定するのはどう考えてもおかしい。ただし、アメリカにおいてはイコールと考えることはできよう。
福音派の教義の核心は、「聖書を文字通り一字一句が真実で、過ちは決してない」とし聖書至上主義の立場を取っていることにある。したがって創世記の物語もそのまま、世界の歴史そのものと捉えている。この教義の核心は次の5つに整理できよう。① 聖書の無誤謬性、② イエス・キリストは処女から生まれたこと、及びその神性、③ 購いの教義、④ イエス・キリストの復活、⑤ イエス・キリストの再臨、を信ずることにある。
6.布教活動と政治活動
福音派は、アメリカにおける他のキリスト教諸派と異なり、政治活動に熱心である。さらに福音派は布教にきわめて意欲的に取り組む。
「アメリカを、キリスト教倫理を根本にすえる国家に作り変える」という理想を掲げ、政治の世界と社会の底辺に積極的にかかわっていくという姿勢を持っているからである。
福音派は4万2千の協会が属している南部バプティスト連盟(1960年から2000年にかけて、信者数は1000万人から1700万人へ) ペンテコステ派(200万人から1200万人へ)などいくつかの教派に分かれている。さらに特徴的なのは無協会派のビリー・グラハム師、その子供で後継者のフランクリン・グラハム師の大衆伝道の活動である。きわめて意欲的に全国にわたって集会を組織遊説し、さらにはテレビを積極的に利用して、意欲的に大衆伝道に身を捧げている。アメリカで最も有名な牧師になっていて、NHKの特集番組にもこの活動が取り上げられたので記憶している方もいるであろう。
さらに、連日テレビに登場し時事解説や分かり易い説教で人気のあるテレビ伝道師パット・ロバートソン師もいる。彼は、破産したテレビ局を買収し、それを基にキリスト教放送網を作り上げたのだ。このような活発な伝道活動のなかで、信者数は1960年以降急速に増大してきているのだ。
2004年12月の「ニューズウイーク」の実施したアンケート(18歳以上の1009人対象)によると、「イエス・キリストは、処女マリアから、人間を父親とせず生まれた、と信じますか」という問いに、79パーセントが「はい」と答えている。「聖書にあるすべての記述は、文字通り正しく実際にあったことであると思いますか」の問いに、55パーセントが「はい」と答えている。この数値をすべて福音派の成果であるとは私は思わない。が、次の図式は成り立つと思っている。「はい」と答える人々の増加(保守的意識の広まりとあいまって)→それを基盤に福音派の広がり→「はい」と答える人々のさらなる増加。
政治活動の面でもきわめて積極的である。政党は組織していないが、さきほどのロバートソン師が福音派の政治組織「キリスト教連合」を創設した。その会員は1994年段階で200万人を組織し、各種選挙で共和党を支持して積極的に活動していた。2000年代にはいるとこの「連盟」の活動は表面では目立たなくなるが、それに代わって、共和党の下部組織のなかに浸透し共和党を下から支える活動を展開している。この力がブッシュ再選の原動力となったのだ。ロバートソン師は「35万の信者が熟達した活動家になった。そして、現在は共和党の中枢を担っている」と豪語している。