新聞の下にある本の広告面に目が行ったら、こんな歌が飛び込んできました。
頭を下げて 頭を下げて 牛丼食べて 頭を下げて 暮れゆく
萩原慎一郎の「歌集 滑走路」の広告でした。32歳で自死した歌人の歌集といいます。
萩原慎一郎って、だれ? ネットで調べました。
朝日新聞やNHKでも取り上げられていました。
萩原さんは私立中学高校一貫校に合格した中学1年のとき、いじめに遭い、精神的に追い込まれました。不登校になり、心身が不調になりました。そんなとき、たまたま立ち寄った本屋でサイン会を開いていた歌人の俵万智さんに触発され、歌づくりを始めました。
通信制の大学を卒業しましたが、正規雇用の職はなく、パートやアルバイトを続けました。その傍ら、歌づくりに励みました。いじめにあった学生時代、非正規で働く哀しみをうたった短歌は高く評価されました。角川全国短歌大賞日本歌人クラブ賞(2回)、朝日歌壇賞、NHK全国短歌大会特選などを次々と受賞しました。
屑籠に 入れられていし 鞄があれば すぐにわかりき 僕のものだと
非正規の友よ 負けるな ぼくはただ 書類の整理 ばかりしている
夜明けとは ぼくにとっては 残酷だ 朝になったら 下っ端だから
今日も雑務で 明日も雑務だろうけど 朝になったら 出かけてゆくよ
229首を集めた「歌集 滑走路」の原稿を出版社に渡したあと、出版を待たずに、萩原さんは2017年6月8日、自ら命を絶ちました。