褥瘡。床ずれのことです。寝たままの状態が続くと、血管が圧迫され、血流が悪くなり、皮膚の組織が壊死してきます。お尻が多いのですが、ひどい場合、骨盤の骨が見えるまでになります。80前の女性は四肢麻痺の夫を21年間介護しましたが、ひどい床ずれを治すのに大変な苦労をしました。
夫は45歳のとき、脳出血と脳こうそくを同時に発症し、四肢麻痺となったまま、1カ月半、集中治療室で過ごしました。
命は取りとめたものの、集中治療室から出てきた夫を見て、妻は言葉を失いました。お尻がえぐれて骨が飛び出していたのです。脳神経がやられ、夫は痛みを全く感じていなかったのです。それで、医師や看護師に褥瘡を訴えなかったようです。
医師は褥瘡を治療するイソジンシュガーパスタ軟膏を塗りました。その後、夫は退院し、自宅で療養生活を始めました。介護保険が施行される前のことでした。
子どもはいなかったので、妻が一人で四肢麻痺でまったく動けない夫を介護しました。妻はイソジンシュガーパスタ軟膏を塗り続けました。「この軟膏が効いたのですが、完全に治るまでに1年半かかりました」