足立 真一のTriton Blog

株式投資の実践、グローバルな視点での投資戦略。
銘柄選択は、成長株、中・小型株、新興市場株にバイアスを置く。

中国元の引き下げは織り込んだか?・・・・バフェットの”安全マージン論”の意味

2015-08-17 07:17:51 | 投資戦略
今週のウォール街の関心事は米連銀の政策と中国元の下落に移る。
連銀が予想外の中国の為替政策の変更にどう立ち向かうか?これまでのスケジュールには加味されていなかった材料である。
先週の元相場は短期間に-3.5%と想定外の下落になった。米国の輸出産業にとってはショックで、例えばアップルは中国向けの輸出比率が23%あるし、高級品のティファニーやコーチなど中国の依存度が高い企業への打撃は大きい。石油価格の急落がエネルギー関連企業の業績にも悪影響を与えるので米景気への影響を懸念した。米連銀の金融政策の政策変更のタイミングにどう波及するかが市場の関心事になってきた。元相場の下落前には9月の政策転換の可能性が濃厚であった。
先週のNYダウ平均の動きは1万7373ドルから1万7477ドルと小幅高で引けた。
東京市場はで日経平均は2万724円が2万519円と小幅安で終わった。日米の市場をみるかぎり中国の為替政策の変更は大きな影響を与えたとはいえない。

先週のウォール街でのビッグニュースはバフェットが動いたことである。
プレシジョン・キャストパーツ(PCP)という航空機関連の機器メーカーの買収を明らかにした。最低370億ドル(4兆6000億円)の資金を投入する。日本では知名度は高くないが、航空機のほか電力発電向けのプラントの心臓部品のメーカーで米国の産業界にとっては存在感の高い企業である。バフェットにとってはかねて「巨像を狙う」と宣言していた大物買収である。最近の株価は2014年の高値から30%も下落していたが、買収のタイミングを狙って動いた。彼の人生では最大の買収案件であることに注目したい。これまで大手鉄道会社バーリントン・ノーザンを傘下に収めたが、それを上回る買収金額である。「米国株への投資は最高の資産運用手段」という信念を実現してみせた。85歳のいまもなお株式市場で資産運用に全幅のエネルギーを注入する姿には感激のほかはない。

バフェットは銘柄選択に当たって“安全マージン”(safety margin)という数値に重きを置く。PER(株価収益率)、PBR(株価純資産倍率)以外の、株式投資のリスクを減らす要因である。最近、米国の有力ファンドマネジャーがよく口にする言葉だ。
競争力、製品のシエァ、ブランド力・・・などを意味するが、プレシジョン・キャストパーツの”安全マージン”は高い。今回の巨象の買収は彼の投資原理の理解に大いに役立った。

中国元が落ち着く・・・バフェットの動きに注目

2015-08-15 08:04:11 | 投資戦略
週末のNY株は落ち着いた。
今週は中国の為替政策の変更が中国元の下落につながり世界の株式相場を揺さぶったが、
当局が目的達成を表明した。欧米の株価は一服。市場の関心は再び9月の米連銀の政策動向に関心が向かった。
金曜日は第2四半期末から1ヵ月半が経過し、大口投資家の売買動向のSECへの報告の期限。
注目されるのはウォーレン・バフェットの動きである。これまで投資していたネルギー関連株の一部を売却した。そのほかにはチャーター・コミュニケーションズ(CHTR)の大幅な買い増しが目立つぐらいであった。しかしSECへの届け義務にはTOBなどの秘密事項には特例があり、一定期間は報告が除外される。水面下では今回、明らかにになったプレシジョン・キャスティング・パーツ(PCP)のようなケースがある。
来週はSECへのほかの大手機関投資家の売買動向が明らかになり、個々の銘柄の動きが注目される。

東京市場では日経平均に逆行して上昇したのが訪日外人のインバウンド消費関連である。
昨日、本欄でラオックス(8202)を取りあげた。日経新聞には大幅な増額修正が掲載された。インバウンド需要を一番先に享受しはじめた。タイミングよく訪日外人への対応を進めた効果がどこよりも早く顕在化し、増額修正の率の寄与の大きさには驚かされた。外人の嗜好をいち早く察知しビジネスに移すスピード感はさすがである。
また関連株でこれまでの人気の先頭を切ってきた日本空港ビルディング(9706)の人気も一向におとろえず、PER59倍になっても個人投資家の間での人気は高い。
値がさ株で押し目を狙う向きにJALUX(2729)を昨日、おすすめしたがビジネスモデルの一部が日本空港ビルディングに似ており株主優待にも注目したい。配当30円は今後も増配が続くことが期待できる。

世界の株価に落ち着きの兆し・・・・インバウンド関連の押し目買い

2015-08-14 05:24:38 | 投資戦略
NY株は落ち着いた。
中国の為替政策の突然の転換は世界の株価に大きな影響を与えたが、短期的な為替安の動きは修正されたと政府はみた。上海株が底入れたし、欧米の株価も落ち着いた。

それにしても「8月相場は荒れる」という季節性は今年も生きていた。米国の足元の雇用指数は着実な改善トレンドにはいっているし連銀FOMCのメンバーからは先行きさまざまなコメントが出てくるだろう。唯一人、沈黙を守るのはイエレン議長だけで最終的な決断にいたっていない証明である。いまから思えば数ヵ月前に、8月下旬の米連銀主催の世界中央銀行会合(米保養地ジャクソホールで開催)には欠席を出したのは、この時期が政策転換を決断すべきかどうかの第1回目のチャンスと読んだからだろう。
ギリシャ問題、一連の中国問題が起こらなければ、世界の中央銀行を自ら任じる米連銀は9月には初めての利上げに踏み切ったとみられる。
ただ向う1ヵ月間の世界の株価は米国の景気指標の動きをめぐって左右される動きが確実になった。

今週、バフェットが自分の投資歴では最大の買収案件プレシジョン・キャストパーツ(PCP)の買収を決断した。4兆円を超える超大型案件だが、彼は現在の相場の環境は大仕事を実行する好タイミングと選んだことに私は注目している。
また引退後のバークシア・ハザウィイの株式投資の司令塔をコームズとウィシュラーという40歳台と50歳台の2人の運用者に託すという意思表示を世間に問うた意味は極めて大きい。今回の案件は2人の銘柄選択から出たからだ。
バフェットは現在を長期投資のタイミングの時期とみた。

東京市場では中国株の下落の余波を受けた訪日外人のインバウンド関連の押し目を考えたい。
大物では化粧品のコーセ(4922)、小型株ではJALUX(8229)。JALUXは「ジャルックス」と読む。第2の日本空港ビルディング(9706)である。

NY株は往って来い・・・人気は落ち着く

2015-08-13 07:18:44 | 投資戦略
NYダウ平均は一時277ドル安になったが引けにかけ戻し変わらずで終わった。
S&P500、ナスダック指数は小幅高。
火曜日の中国の電撃的な為替政策の変更は世界の株価に衝撃的な打撃を与えた。米国では輸出の鈍化が懸念され、ヨーロッパ株もの軒並み安になった。
投資家心理を端的に表す「恐怖&欲望」指数(Fear&Greed)は急落し1週間前の28から9に急落した。1年前も8まで下落したが、8月は相場にとっては年間では最悪の時期。
2011年のウォール街も8月は下落した。リーマンショックから回復軌道にのったが、議会で与野党が対立して予算案が通らず「財政の崖」問題が浮上した。
株価の急落で米連銀の9月の政策転換の可能性が低くなった。シカゴ市場で取引されている金利先物相場では9月の可能性は39%に急低下した。
最近、表舞台に顔を出さない連銀イエレン議長は沈黙を守ったままである。月末に米連銀が主催する保養地ワイオミングでの世界中央銀行総裁会議には早くから欠席届を出していた。8月は金融政策の決定について大きな決断の時期と早くから読んでいたのかも知れない。
出席すればその言動が金融市場に大きな影響を与えるからだ。
昨日のNY株の下落を先導したのは通信、金融で金利の動向に大きく左右される銘柄である。アリババ(BABA)が決算発表したが内容が予想を下回り一時は-7.9%と$71まで下落した。IPO価格の$68に接近した。

東京市場での関心事のひとつは最近の人気の柱である訪日外人の動向である。今年最大の人気業種になったからだ。本日の日経新聞では私鉄の第1四半期の決算数字がまとめられたが、これまでの不人気業界に久ぶりに業績回復の兆しが出てきた。
これまでは中国経済の景気指標の鈍化がしばしばいわれたが、株価の人気には影響はなかった。近く発表される政府の観光局の7月のデータの動向に注目したい。

人民元の影響度

2015-08-12 08:27:19 | 投資戦略
中国が通貨切り下げに踏み切った。これまで中央銀行が毎朝に発表してきた基準値を前日の終値に変更した。日々の動きを実勢に近づける。この政策変更を受けてドル相場は上昇し、円は下落した。NY株は212ドル安(-1.21%)で前日の反騰(+241ドル高)を帳消しにした。前日は米連銀の政策変更が9月でなく、年末になるという観測を好感して7日間の続落に休止符を打っていた。
この日のNY市場の下落を先導したのはアップル(AAPL),キャタビラー(CAT)などの中国関連株で人民元の切り下げの影響に直撃される銘柄であった。中国がとった政策は景気の減速に歯止めをかける狙いで通貨安による輸出のテコ入れである。
想起されるのは1971年8月に米国がドルと金との交換中止を電撃的に決断した通貨安政策である。ニクソン・ショックでドル相場は天井を打ち円相場は長期の円高にはいった。
現在の中国元は当時のドルの地位とは大きく異なり世界通貨ではない。元相場の下落が世界経済に与える影響度は小さく、この日の円相場は対ドル、対ユーロでは小幅安。
今回の中国の為替政策の変更は中国関連銘柄には影響を与えるが、日米の株価には大きな悪影響を与えるものではない。すでに新興諸国の通貨は下落しているので中国の通貨安の波及は考えられない。
引け後のNY株は落ち着いている。米国経済と世界に与える影響度は大きいとはみていない。
中国は経済成長の鈍化に直面し、りーマンショック時にとったような大胆な財政支出というような政策の選択肢がなくなってきた。

一方、日本経済は自律回復の輪が回り始めた。第1四半期の決算発表をみて、銘柄選択の幅が広がってきたことが感じられる。
昨日の決算発表ではマツモトキヨシH(3088)の好決算が注目されるが、インバウンド消費の影響力の強さが目立つ。中国問題で下落した関連株の押し目買いを考えたい。