私の元で紬織りの修業中のものには、シンプルだけれど技量を磨くにふさわしいものを織ってもらっています。
画像は緯糸の色や番手の違う3色(柿染の細い白茶、やや濃い太目の白茶、桜染の細いグレー)を1本交互に織り進む此手縞です。
歌で言えばメゾソプラノ、アルト、テノールの3声のハーモニーといったところでしょうか。。。
作品集ではピンク系のものを紹介しています。
色の対比があるので糸のネップも目立ちやすく、いい景色になるよう余分なところ(ブツっとしたところ)は取り除きながら緯糸を管に巻き、織る時も景色をよく確認しながら織ります。
経糸も生糸だけで織ることはなく、節糸や紬糸を使っていますので機にかけてから薄糊をつけることもあります(糊が強いと打ち込みが入りにくくなりますのでその加減も大事ですが・・)。
こうして糸巻きに始まり、糸の形を見続けることになります。
今の時代の紬を織るなら最も大切なことです。
昔の労働着として着るなら節(ネップ)があっても無骨でも構わないと思うのですが、
今はお洒落着として着るのがほとんどですし、着やすさや堅牢さと同時に、洗練された滑らかさも求められます。
また1本交互で織る時には耳端の糸がきっちり絡み合うように次の杼を持ち替えなければなりません。
耳の形にも目を行き届かせなければなりません。ツレたり緩んだりしないようにします。
竹籠の縁を編むように。
いずれも一見単調な作業のようですが、とても難しいことです。
しかし、美しく、堅牢な(それでいて柔らかさも備えた)紬を織るために、目や身体の感覚を鍛え磨いていく最初の大事な過程と思います。
デザインの凝ったものや、変化織りはシンプルなものができてからでいいです。
裏地のない単衣で着ても、背縫いが割れたり、お尻や膝が抜けたりしないしっかりしたものを織れるように、染も織りも中途半端なものを作家ものとして世に出してはいけない、というその一心で日々厳しい指導をしています。
プロになるための最初の一歩です。
来週頭に織り上がり、伸子仕上げをする予定です。