いま日本には、100歳以上の人が約9万人います。
2050年には、日本の女性の平均寿命は、90年を超えるとも予測されています。

しかし、いまよりさらに若返りが進んで、寿命が延びていくわけではありません。
栄養状態の改善は、もうピークを迎えていますから、
ここまで進んできた若返りも頭打ちになるでしょう。

栄養状態の改善が老化を遅らせ、日本人の寿命の延びを牽引する時代は終わり、
これからは医学の進歩によって、「死なない」から「より長寿」になるのです。

つまり、人生100年時代とは、老いを迎えてから、
死ぬまでの時間が、長くなったということです。
この引き延ばされた高齢期をいかに元気に楽しく、そして自分らしく生きられるか――。

私は、「老い」を2つの時期に分けて考えることが、カギだと考えています。

ざっくり言えば、70代は「老いと闘う時期」。
そして、80代以降の「老いを受け入れる時期」です。

老いを受け入れるとは、老いるままにショボくれていくという意味ではありません。
衰えを素直に認めて、それぞれに対応しながら、上手に賢く生きようということです。



☆私も愛用する「日本製のオムツ」の凄み

たとえば、耳が遠くなっているのなら、素直に補聴器を受け入れる。
そうすることで、少しでも長く人との会話を楽しむことができます。
補聴器を拒否して会話から遠ざかっていると、あっという間にボケたようになってしまいます。

杖にしても、シルバーカーにしても、拒否して転倒骨折ということになると、
寝たきりに直結する可能性が高いし、歩くのが面倒になって外出しなくなると、
歩行困難になるだけでなく、脳の機能低下にもつながります。

高齢者がもっとも嫌がるものの一つに、オムツがありますが、
日本製は吸収力がすごくいいので、活動の幅が広がります。
実は、私も愛用者の一人です。

数年前に心不全と診断されて、利尿剤を飲む羽目になり、
トイレが近くなって困っていました。

そこで思い切って長距離ドライブのときには、
尿漏れパッド付きのパンツを使うようになったら、
運転中に、また出張先でトイレを探し回らなくても済むようになり、
安心してドライブできるようになりました。

素直に「文明の利器」を受け入れられるかどうかで、
高齢者のQOL(生活の質)は大きく変わると思います。



☆「この老いを生きているのだ」と考えられるか

どんなにあらがおうと、老いを受け入れざるをえない時期が、80代以降にやってきます。
個人差はあっても、遅かれ早かれ必ずやってくるのです。

そのときに、自分の老いをありのまま認めることができなければ、
その後の10〜20年を生きていくのは、ひどく辛いものになってしまうでしょう。

100歳近くになると、寝たきりで老衰死するケースが一般的になります。
だれもが高い確率で、穏やかな自然死を迎えることができるのです。

80代以降は、老いていく自然の成り行きを味わいながら、
事故や大病で命を落とすこともなく、天寿をまっとうしつつあるからこそ、
この老いを生きているのだ、と考えてもいいのではないでしょうか。


☆70代はヨボヨボ老人と元気ハツラツ老人の分かれ道

一方、70代は、まだまだ老いと闘える時期だと言えます。

長い老いの期間を健やかに過ごすためには、脳の機能をいかに80代以降も保つか、
同時に70代のときに持っている運動機能を、
いかに長持ちさせるかということが大切になってきます。

そのポイントとなるのが、70代の過ごし方です。

700代前半までであれば、認知症や要介護となっている人は、1割もいません。
ケガをしたり、大病を患ったりしていなければ、中高年の頃のように、たいていのことはできるはずです。

努力すれば、効果も得られますし、日々の積み重ねが、
80代のあり方を大きく左右するものとなっていきます。

人生終盤の活動期と言える70代を努力して過ごすことで、
身体も脳も若さを保つことができ、さらに要介護となる時期を遅らせることもできるのです。(略)



☆とにかく体や頭を使い続けているか

加齢とともに、身体能力や脳機能が低下してくるのは、間違いありませんが、
そのスピードや度合いは、人それぞれです。

同じ70代、80代でも、認知症が進んで、会話もままならない人がいる一方で、
これまでの仕事を続けられる人もいれば、
ノーベル賞をもらって素晴らしいスピーチができる人さえいます。

寝たきりになったり、日常の生活に介助が必要になったりする人もいれば、
水泳やゴルフなどスポーツを楽しめる人もいます。

個人差の原因は、体や頭を使い続けているか、どうかの違いです。
しかも、高齢になればなるほど、その差は広がります。(略)

骨折して入院し、本も新聞も読まず、1カ月も天井ばかり眺めて寝ていると、
理解力が急速に低下して、ボケたようになってしまうこともめずらしくない。

退院したものの筋肉が衰えて、その後まったく歩けなくなってしまう、
ということもよくある話です。


☆マイナス思考に陥りそうになったとき“つぶやくべき言葉”

頭や体を使わなかったときの機能低下は、高齢になるほど激しくなります。

寝込むようなことがなくても、コロナ自粛のように活動的でない生活が長く続くと、
足腰が、かなり弱って、認知症も悪化してしまう。

それほど高齢者にとって、脳機能、運動機能を維持するためには、
「使い続ける」ということが重要なのです。


逆に、体が動かないとき、体調がすぐれないときに
「もうだめだ」と落ち込むと、いよいよ体や脳の老化を速めます。

マイナス思考に陥りそうになったときは、「なんとかなるさ」とつぶやいてみるといいでしょう。
たったこれだけのことですが、脳内にドーパミンという「やる気ホルモン」が出ます。

脳は、思いのほか単純にできていて、
自分の言葉を信じる性質があるため、「なんとかしよう」と奮起して、意欲が高まるのです。
だまされたと思ってやってみてください。・・ 》

注)記事の原文に、あえて改行など多くした。