10年前頃の梅雨の季節だった。
私は会社を退社して、
自宅の最寄駅の『成城学園前』のタクシー乗り場に並んでいた。
夜の11時過ぎで、雨が降っていた・・。
私の前に20人並んでいて、1番後方だった。
しばらくすると、私の後方に5、6人の人影を感じた。
私は左手にアタシュ・ケースを提げて、
スーツのズホンが濡れないように、傘を深く差していた。
後方から、
『小父さんかしら・・』
と声がした。
私は振り返ると、若い女性のツーピース姿を見た。
『XXちゃんか・・しばらく・・』
と私は言った。
遠い親戚の娘さんだった。
私はこの娘を私の立っている場所の前に譲り、
『ずいぶん・・遅いんだね・・』
と私は言った。
そして雨のしずくが水色のツーピースに掛からない程度に間隔を開けた・・。
『叔父さん・・知らなかった・・
私、今年から銀行にお勤め・・』
とこの娘は言った。
『短大に行ったのは聞いていたけど・・
そう・・社会人の一年生か・・大変でしょう・・』
と私は言った。
『思ったより楽しいけれど・・勤務時間が長くて・・
今日もこんな時間になって・・』
と言った。
『小父さんの所もね・・金融関係と違うけれど・・
何かと忙しいょ・・』
と私は言った。
雨がしきりに降っていた。
まもなく並びの列の先頭となり、
タクシーにこの娘が乗り込む寸前、
『小父さん・・お先に・・ありがとう・・』
と言った。
私は走り去るタクシーの尾灯を見送った。
私は会社を退社して、
自宅の最寄駅の『成城学園前』のタクシー乗り場に並んでいた。
夜の11時過ぎで、雨が降っていた・・。
私の前に20人並んでいて、1番後方だった。
しばらくすると、私の後方に5、6人の人影を感じた。
私は左手にアタシュ・ケースを提げて、
スーツのズホンが濡れないように、傘を深く差していた。
後方から、
『小父さんかしら・・』
と声がした。
私は振り返ると、若い女性のツーピース姿を見た。
『XXちゃんか・・しばらく・・』
と私は言った。
遠い親戚の娘さんだった。
私はこの娘を私の立っている場所の前に譲り、
『ずいぶん・・遅いんだね・・』
と私は言った。
そして雨のしずくが水色のツーピースに掛からない程度に間隔を開けた・・。
『叔父さん・・知らなかった・・
私、今年から銀行にお勤め・・』
とこの娘は言った。
『短大に行ったのは聞いていたけど・・
そう・・社会人の一年生か・・大変でしょう・・』
と私は言った。
『思ったより楽しいけれど・・勤務時間が長くて・・
今日もこんな時間になって・・』
と言った。
『小父さんの所もね・・金融関係と違うけれど・・
何かと忙しいょ・・』
と私は言った。
雨がしきりに降っていた。
まもなく並びの列の先頭となり、
タクシーにこの娘が乗り込む寸前、
『小父さん・・お先に・・ありがとう・・』
と言った。
私は走り去るタクシーの尾灯を見送った。