学士会報に田中伸男という人の掲題の記事があり、私はこれを読んで感心したので内容を紹介しておこう。2011年8月まで国際エネルギー機関の事務局長を務めていた人である。
シェール革命とはアメリカでシェールガスを取り出す安価な手法が開発され、アメリカは世界最大のシェールガス埋蔵量を誇ることから、これで世界全体の力関係が変わるという話しである。
まずアメリカはこれで石油輸入国から世界最大の石油・天然ガス産出国になり、輸出国になる。のう液赤字の6割を占めるエネルギー需給が改善されるので貿易収支も改善に向かう。中東はアメリカに売れなくなってくるので、アジア・ヨーロッパに向かう。特にイラクは石油を増産しており、中国をはじめアジアへの販売をもくろんでいる。
ヨーロッパはロシアから天然ガスをパイプラインで大量に買っていたが中東の天然ガスが余りり始めたので中東から買うようになってきている。
中国は将来のエネルギー需給ひっ迫に備えて様々な手を打っている。中東(イラン、イラク)に積極的の投資、中央アジアとのパイプライン、アフリカからの原油をミャンマーで下しそこからパイプラインで輸送するなどの手を打っている。中国はマラッカ海峡封鎖のリスクをとても気にしている。
ロシアは天然ガス、原油がヨーロッパに売れなくなってきて困っている。
中東の原油の最大顧客は現在の先進国からアジア諸国に変わってくる。
そんな中で、日本は今後ともエネルギー輸入国であることは変わらないだろう。イランのホルムズ海峡封鎖による原油高騰リスクに備えるべきである。日本が天然ガスを高値掴みしているのは有名である。これは液化してLNGにしてから運ぶのと、東北大震災で原発が停止して需要が急増したために足元を見られたためである。
現在日本は貿易赤字国になっている。今後地政学上のリスクで原油価格が上がれば、日本経済はそれをトリガーとしてハイパーインフレになるリスクがある。それに備えるために、
・ロシアとのパイプライン建設
・原発再稼働によるエネルギー源の確保(原発全面停止などは自殺行為である)
・メタンハイドレートの活用技術の開発
・再生可能エネルギー活用のための50・60Hzの統一
・直流高圧伝送技術による国外(韓国・ロシア)との接続
・再生化のエネルギーはまだコスト高が続くと認識すべき
・東アジア船体でのエネルギー集団安全保障の仕組みを構築すべき(孫正義氏のアジア・スーパーグリッドは評価できる)
等の多角的エネルギー安全保障戦略を持たないと、イラクとイスラエルが戦争を始めた時に日本経済はめちゃくちゃになってしまう。
以上が、田中氏の骨子である。世界各国のエネルギー確保の戦略を地政学上のリスクと組み合わせて説明してあり、説得力があると感じた。日本でエネルギー政策というと「原発は危ない」 「CO2削減のために再生化のエネルギーを」というような話ばかりが聞こえてくる。しかし、こういったエネルギー確保の安全性確保の手段がきちんと講じられていないと経済全体に影響が及ぶという視点で理解しておくことは極めて重要たと思う。NHKのBSあたりで徹底討論してくれないかな、と思った。