張栩十段に山下敬吾天元が挑戦していた十段戦が張栩十段の3連勝で終わった。
これで昨年末から二人のタイトルの連戦は、天元戦が山下天元、棋聖戦と十段戦が張栩棋聖の勝ちという結果になった。張栩棋聖の二勝一敗で終わったわけだが内容的にはもっと差があった感じがする。特に後半の棋聖戦、十段戦は張栩棋聖が一方的に勝った印象である。
内容的に大差というわけではなく見どころはあるのだが、基本的には張栩棋聖が戦機をとらえてリードしそのまま押し切った感じが強い。
一方で、これから始まる本因坊戦は、挑戦者決定戦で山下天元が井山名人に勝って、挑戦権を獲得した。後の内容からは井山名人の方が上のように思うのだが、一発勝負ではどうなるかわからない。井山名人には来年を目指してもらいたいと思う。
現在は羽根本因坊であるが、井山名人が挑戦者になればまずタイトルを取るだろうと思っていた。しかし、山下挑戦者になったので分からなくなった感じがする。山下天元の方が強いのだが、山下天元の碁は「負けやすい碁」で勝つときにはものすごく強いのだが、ちょっとしたミスで落とす感じがする。相手との力の差があるときにはsれでも勝ち切れるが、ほぼ互角の相手に対してどうかは分からないと思う。
こういうタイプの人は調子に波があるのでトーナメントに強い印象を持っている。
勝負としては面白いと思うが問題は内容である。期待と不安を持って見守りたいと思う。
囲碁の棋聖戦挑戦手合いで張栩3冠が棋聖位を奪取した。これで彼は現在ある7棋戦の全てのタイトルを一通り取ったことになる。いわゆるグランドスラムである。 グランドスラムは趙治勲以来二人目である。
3対0になったときに一度、このブログで状況を書いたが、その後、山下棋聖が1勝を返したが第5局で張栩氏の棋聖が決まった。内容的には張栩新棋聖が圧倒したといえるだろう。負けた4局目だけがいつもの彼らしくなく、妙に手堅い打ち方だったが、やはり固くなっていたのかもしれない。
実は年末の天元戦では山下棋聖が張栩天元に挑戦して天元位を取っている。次はもうすぐ十段戦が始まり張栩十段に山下天元が挑戦する。この二人のタイトル戦が連続している。
ちょっと見るとこの二人が現在の囲碁界のトップにいるようだが、やはり私は内容的に見て実力は井山名人、張栩4冠、山下天元の順であると思っている。
日本囲碁界のグランドスラム達成者の趙治勲9段は韓国、張栩4冠は台湾出身である。最近の大相撲の上位陣がモンゴル出身ばかりなことと併せて、日本の将来を暗示しているように感じる。
井山名人に頑張ってもらって彼を目指す日本人が増えてほしいものだと思っている。
昨日は元勤めていた会社のメンバーとしてジャンボ囲碁大会という大会に出た。
この大会は15人一組で争う団体戦で昨日の大会は企業対抗だった。 優勝が富士通、2位IBM、3位日立、4位NECだった。別に電機系に限ったわけではなく、東京都庁や証券会社など様々な会社が参加していたのだが、層の厚さではコンピュータ関連の会社が群を抜いている。囲碁の論理性がコンピュータと合うのではないかと思っている。
私は三将で出て3勝1敗だった。負けは対富士通戦である。今回は富士通が圧倒的に強くぶっちぎりの優勝だった。我々は一回戦でIBMと当たり8勝7敗で勝ったのだが、その後富士通戦で大負けした。IBMは富士通と当たらずに三勝一敗だった。大会は勝った者同士を当てる変則リーグ戦で三勝一敗が複数出れば勝ち星の多いほうが上位に来るシステムである。 実力的には富士通が抜きんでて強く、2位から4位までは似たような力という感じがする。
久々に頭が熱くなるような感覚を覚え楽しかった。参加メンバーをみると高齢者が多く、自分は真ん中くらいではないかと感じた。私より上の人は殆ど退職したような人が多いはずだが、そういう人を集めないと15人揃わないというアマチュア囲碁界の高齢化を感じた。
2月28日には無差別のジャンボ囲碁大会というのがある。これは企業単位ではなく、同好の士がグループを作って参加すののでレベルが一段上である。これには大学の囲碁部のOB会で出ようと誘われているのだが、出張が入っていて参加できない。残念である。
山下敬吾棋聖に張栩三冠が挑戦している囲碁の棋聖戦の朝鮮手合いが進行中である。
囲碁のタイトル戦は7つあるがその中で名人戦、本因坊戦、棋聖戦は賞金金額が大きく3大棋戦といわれている。それぞれのタイトル保持者は井山名人、羽根本因坊、山下棋聖となっていて現在日本囲碁界の第1人者といわれる張栩氏が3タイトルは持っているものの、3大タイトルは一つも持っていない状況での挑戦である。
現在、第3局まで終わって挑戦者の張栩3冠の3連勝である。内容をみると激戦ではあるものの挑戦者が一枚上のようで、3局とも山下棋聖が有利になった場面はほとんどなかったと思う。
第3局は張栩3冠の一瞬の気の緩みをついて、利かしに来られたところを手を抜いて山下棋聖が大きなところを打ち、逆転したかに見えた。しかし、その後の経過をみるとそれでもはっきり逆転とはいっていなかったようで、挑戦者が勝ち切った。
昨年の本因坊戦の羽根vs尾戦に比べるとレベルが上の感じがするが、名人戦の井山vs張戦と比べると少し落ちる感じがする。
このまま張栩挑戦者が押し切る感じがしている。 本因坊戦の挑戦者決定リーグでは井山名人が好調なので挑戦者として出てくる可能性が高い。そのまま井山名人が本因坊を取って、井山名人・本因坊、張栩棋聖ということになれば日本の囲碁界の3大タイトルも実力相応になる感じがしている。
内容をみるとシリーズを通じて井山八段のほぼ完勝であったと思う。名人戦が始まった頃は名人のほうが「自分のほうが強い」という自信を持って戦っていて、多少不利になっても巻き返して見せる、というような気概があった感じがした。
それが第4局、第5局あたりでは「ひょっとしたら向こうのほうが強いのかも」と不安を感じ始め、それが着手の不安定さにつながっていたような感じがする。
一方挑戦者の井山八段は全力で戦って迷いが無かった感じがする。深い読みとともに、常に色々なパタンの損得を考えていて、一つのところにこだわらない柔軟さが印象的だった。
第4局、第5局は名人のほうにちょっと精彩が無かった感じがするが第3局までは本当に力の入った熱戦だった。井山八段はこれで日本のビッグタイトル保持者の仲間入りをした。最強の名人に勝ったのだから他のタイトルも取ることは時間の問題だろう。 彼に次に目指してほしいのは世界戦のタイトルである。
日本の名人になったと言っても、韓国・中国に勝つのは容易ではない。それでも対局を重ねて、彼らから学んでいけば十分に可能性はあると思う。次の高みを目指すつもりで取り組んでほしいと思う。
最近、私はイ・チャンホ・ファイルという韓国のトップ棋士の書いた本を読んだ。この本を読んで感じるのは「彼の強さは判断力にある」という点である。プロ棋士はかなり先のほうまで手を読む。その先の局面が優勢なのか不利なのかのわずかな違いを判断して、相手が判断を間違えたときに差をつけてしまう。
これがイ・チャンホが世界に君臨した強さの源泉であると思うのだが、この判断力は井山新名人は同じ程度に持っていると思う。違いは優勢になったときに逆転の可能性をなくすように局面を単純化していく力である。
勝率を上げるにはこの技術が重要になるのだが、基本的な力があれば調子のよい時に勝ち進むことはできるだろう。 世界戦の決勝などに日本の棋士の名前があがることを期待したい。
囲碁の名人戦7番勝負が第3局まで終えて井山挑戦者の2勝1敗になっている。
第1局で名人が勝ったことはこのブログで書いたが、その後挑戦者の井山八段が2連勝した。内容的にも第1局も井山八段が押し気味だった。第2局、第3局ともに序盤は名人がよさそうだったが、中盤でのわずかな隙をとらえて挑戦者が優位に立ちそのまま押し切った。
昨年、19歳で挑戦者になった時には、第1人者である名人を相手に良く戦っている、これは勝つかも、という感じだった。実力的にはやや名人が上の印象だったが、今年は挑戦者が強くなっていてまったく互角、ひょっとしたら挑戦者のほうが実力的にも上かもしれないという印象である。
しかし、技量伯仲、わずかなあやで勝負は揺れるので最終的にはどうなるかは分からない。いずれにせよ、現在の日本の囲碁界での最高峰の戦いである。今後も注目していきたい。
名人戦第1局の棋譜を自分で並べていて黒の名人戦が優勢に思えたのが、危なそうな井山8段の白石をいとも簡単にしのいで白が優勢になった感じがして、「ずいぶん簡単にしのぐものだな」と不思議な気がしていた。 それが、昨日の解説でとてつもなく深い読みがあって、それは両者が読み切っていて井山8段は手を抜いていたし、名人は取りに行かなかったということを解説されて、二人の読みの深さに改めて感心したものである。
更に、最後、名人が逆転して優位に立った手どころを解説して「こうすれば逆転されることはなかった」と解説していたのもものすごく深い読みの入ったところであった。この頃は二人とも持ち時間がなくなっていたので気がつかなくても仕方がないと思われるが、趙治勲なら気が付いていたのではないかと思う。
限られた時間での解説で、それも前日の夜に終わったばかりの碁を解説する生放送である。それでこの手際の良さと解説内容の深さに私は感動した。
趙治勲は9歳のときに来日して日本で修業し、数多くのタイトルを獲得している(多分歴代1位ではないか)している名棋士である。50歳を過ぎてさすがに下り坂ではあるがこの世代では今でもタイトル戦に絡むただ一人の棋士である。
私は彼が25歳のときに書いた「趙治勲打碁傑作選」を数え切れないほど繰り返して読んでいる。この本は彼が名人と本因坊という大タイトルを取った機会に発行した本である。この種の囲碁の解説本は本人は手どころの解説だけをして文章はライターが書くのだが、この本には「人間趙治勲」があふれている。
彼の、来日してから子供のころに感じたこと、自分の人生設計、ほかの名棋士に対する独自の見方などが随所に表れている。囲碁の解説が基本なので碁を知らない人にはお勧めできないが、囲碁に興味がある人にはお勧めの一冊である。
以前このブログで書いたように井山八段は昨年挑戦して3勝4敗で敗れた後、名人戦リーグをぶっちぎりで勝ち抜いての連続挑戦である。
第1局は名人の半目勝ちになったのだが、内容は期待にたがわぬ大熱戦だった。どちらのも勝つチャンスが何度かあったと思うが失着で形成を損じたという感じはなく、戦いの中でどちらかの判断あるいは読みが若干勝っていて少し形勢の針が振れる、それでも損をしたほうも被害を最小限に抑えて緊迫した勝負が最後まで続いた。どちらかがはっきり優勢になって逃げきろうとした感じではなく、最後まで戦いの中で勝利をつかもうと双方が全力を尽くしていたことが感じられる。
春の本因坊戦と比べると碁の質が一ランク違う気がする。この二人がどうして本因坊戦の挑戦者として出てこないのか不思議に思うくらいである。二人ともこれからの挑戦者決定リーグに入っているので来年はどちらかが本因坊戦挑戦者として出てくるのではないかという気がする。
第1局の内容をみる限りどちらが勝っても全く不思議ではないと思う。これから先の推移を楽しみに見守っていこうと思う。
将棋は羽生名人が4勝3敗で防衛し、囲碁は羽根本因坊が4勝2敗で防衛した。 将棋のほうは熱戦ではあったのだが私には分かりにくい内容だった。羽生名人の将棋は相手によって変わる、相手の得意戦法に飛び込んでいくような感じがあるので来年もまた羽生名人の名人戦が見られるということでよかったと思っている。
囲碁のほうはやはり物足りないまま終わってしまった。内容的には挑戦者の高尾九段のほうが強い感じがするのだが勝負は羽根本因坊が勝ったという感じである。従って逆転が多いのだが本因坊がうまい手を打って逆転したというよりも高尾九段の心の弱さが逆転につながった感じがする。
優勢な碁を勝ちきるのは大変難しく、自分でも逆転負けはしょっちゅうあるのだが、トッププロともなればあのくらいに優勢がはっきりすればきちんと勝ちきってほしいと思う。
この点で印象的だったのは名誉本因坊にもなっている趙治勲九段のやり方である。彼は優勢になってもそのまま逃げ切ろうとせずに、戦い抜く姿勢を基本としている。しかし、形勢判断は常にしていて「これで勝ち切れる」と感じるとそこからパタリの戦うのをやめて守りに入る。この判断をするのがかなり終盤の難しいところが少なくなってからであり、それまでは多少優勢であってもきちんと読んで戦いの中に踏み込んでいく。 従って、やりすぎて逆転負けをすることもあるが逃げに入ってから逆転を喫することはまずなかったと思う。
先日、テレビで高尾九段の師匠の(故)藤沢秀行九段の指導ぶりをNHKで放映していたが、藤沢さんの指導の根本は「逃げるな、立ち向かえ」だったと思う。戦おうとして踏み込めばミスも出やすく逆転されることもある。しかし逃げて逆転されるのと戦って逆転されるのでは後に残るものが違う。 今回の高尾九段の逆転負けは逃げの姿勢からの逆転が多かったように思う。
プロ棋士は勝敗が生活に直結している。色々言われても、勝率の高いのが一番である。しかし、まだ伸びる可能性のある人はやはり戦う姿勢を大切にしてほしいと思う。常に戦う姿勢を持っていた人が途中から引き揚げるようになると一時的にミスが下がって勝率が上がる。しかし1年もすると再び勝率が下がってくるのが常である。
少なくとも40歳くらいまでは、トッププロなら50歳くらいまでは戦いを中心にしてほしいと思う。坂田栄男九段、呉清源九段などの名棋士は生涯戦う姿勢を貫いていたと思う。
昨年は19歳の名人戦挑戦者、としてこのブログにも何度か書いたが3勝4敗で惜しくも名人奪取はならなかった。今年は20歳になって一層たくましさを身につけた感じがする。
囲碁の名人戦は九人のリーグ戦で挑戦者が決定される。普通は名人戦の挑戦者は7月末ごろ最終局が終わって決定するものなのだが、今期の井山八段はここまで全勝で一敗者がいないため早々と挑戦が決まったものである。
内容を見ても危なげない勝ち方である。他のメンバーと比べて頭一つ抜けている感じがする。現在、本因坊戦で挑戦者として戦っている高尾九段にもいつの間にか優勢になってそのまま押し切ったという勝ち方である。
井山八段の碁は細かいところに気配りが行き届いているうえで厚く構える、そして深い読みでじわじわ攻める本質的には攻めの碁だと思う。江戸時代の碁聖、本因坊秀策を思わせる。
迎え撃つ張栩(ちょう・う)名人(29)は今年の春に5冠を達成して波に乗っている。名人は台湾出身であるが日本人と変わらない感じを受ける。碁は、先に地を稼ぎ、しのぎに回るしのぎの碁である。やはり深い読みが特徴である。
二人の戦いは基本的に井山八段の攻め、名人のしのぎとなると思うが二人とも読みが深く考え方が柔軟であるので、一方的な攻めとしのぎで、取れるか取れないか、というような戦いではなく、地が多いのと厚みが多いのでどちらが優勢かプロでも判断が分かれるような状態が続き、後半でどちらかが抜け出すようなパタンになると思う。
この井山八段でも今年の春の世界戦では四勝三敗である。中堅どころには勝っているが世界戦で優勝するようなレベルの人には勝てていない。
世界はさらに上にある。昨年も書いたがぜひ世界のトップを目指してほしいと思う。