備忘録として

タイトルのまま

南方熊楠

2010-11-13 21:41:06 | 近代史

何週間か前、さんまのスーパーからくりテレビに変形菌の天才キッズが出ていた。同時に変形菌が迷路を解いた話をしていた。変形菌(真性粘菌)がいっぱいに広がった迷路(a)の入り口と出口に変形菌のエサAGを置くと、変形菌が最短距離(c)で並ぶ。

北海道大学の中垣先生らは、これで2008年にイグ・ノーベル賞(ノーベル賞のパロディーで、first make people laugh, and then make them thinkな研究に送られる)を受賞し、2010年の今年、粘菌のその能力を活かして最適な鉄道網モデルを作ることを見つけたとして再受賞した。日本人では、ドクター中松が35年間自分の食事と行動パターンを記録し続け何が体調や頭の働きに影響するか突き止めたことで受賞している。他に、たまごっちやカラオケの発明者、足のにおい成分発見者や牛やパンダの排泄物から役に立つ物質を発見した人も受賞している。

さて、粘菌に話を戻す。粘菌といえば和歌山県の田辺に住む南方熊楠である。南方熊楠は政府が明治39年に出した神社合祀令に反対し原生林を伐採から守った。神社合祀は、一部の例外を除き、”<span >一町村に一社”を標準とするもので、小さな神社は大きな神社に併合し、神社を取り壊し、まわりの鎮守の森を伐採するものであった。熊楠の神社合祀に関する反対意見は青空文庫で読むことができる。

森林の重要性は、”これがため山地は土崩れ、岩墜ち、風水の難おびただしく、県庁も気がつき、今月たちまち樹林を開墾するを禁ずるに及べり。千百年を経てようやく長ぜし神林巨樹は、一度伐らば億万金を費やすもたちまち再生せず。古い古いと自国を自慢するが常なる日本人ほど旧物を破壊する民なしとは、建国わずか百三十余年の米国人の口よりすら毎々嗤笑の態度をもって言わるるを聞くなり。”と述べ、続けて8か条の反対理由を列挙する。神社合祀は、第一に敬神思想を薄うし、第二、民の和融を妨げ、第三、地方の凋落を来たし、第四、人情風俗を害し、第五、愛郷心と愛国心を減じ、第六、治安、民利を損じ、第七、史蹟、古伝を亡ぼし、第八、学術上貴重の天然紀念物を滅却す。”とし、孔子、玉葉、続日本紀や西行の山家集などの古典を引用し、歴史、宗教、環境論を駆使し、外国の事例にも言及したものである。

8か条の反対意見の要旨(速読したうえ相当に意訳した)

第1 政府の言う神社合祀で神を敬う気持ちが高まるというのは嘘である。合祀で身近にあった神社にお参りすることができなくなり、和歌山のように山の多い地方で遠くまでお参りにいくことなど考えられない。

第2 合祀は人々の和を損なう。漁師たちは漁の無事を海辺の身近な神社で信心深く祈ってきたが内陸に神社が移されると、漁師から魚神を奪い、山人から山神を奪うようなものだ。

第3 合祀は地方を衰微させる。地方の諸神社は、社殿と社地また多くはこれに伴う神林や神田を持ち、周辺の住民が集い祭りや市で賑わい潤っている。

第4 国民の慰安を奪い人情を薄くし風俗を害する。森林は神そのものであり、神社に張られたしめ縄ひとつで公序が守られる。

第5 合祀は愛国心を損なう。神社なければ故郷を慕うことがなくなる。合祀により木を売ったりわいろを要求したりする神職が出てきたが、このような神職に愛国心を説かれても誰が従うというのだ。

第6 土地の治安と利益に大害あり。地震、火難等の避難の地となる。森林を切ることで生態系が破壊され田畑に被害が出る。

第7 合祀は史跡と古伝を消滅させる。

第8 合祀は天然記念物を消滅させる。

田辺に、熊楠が自然を守り昭和天皇も訪れた神島という島がある。粘菌の研究者だった昭和天皇は1929年(昭和5年)田辺の神島を訪れ熊楠に会っている。瀬戸内海の神島で読まれた万葉歌をこの島とする説もあるという。

南方熊楠の伝記を漫画にした水木しげるの「猫熊、南方熊楠の生涯」も買って読んだ。熊楠の変人ぶりはこの漫画にいやというほど描かれている。


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