一月程前にソニー(東京通信工業)の TR-55 が手に入らないだろうかと云うお話を頂いた。
ならばとかつて TR-55 の修理依頼を頂いた方々に久し振りに連絡を試みたり、その中で消
息が分から無い方を知っているであろう方を探したりと延べ百人程に当った。 吉報はもた
らされず、殆ど諦め掛けていた今週、この15年程お付き合いの有る道具屋さんから電話を
頂き、知り合いの道具屋が TR-5 なら持っており、売っても良いと言っているとのことだ
った。 早速幾等で譲って頂けるのか交渉をお願いし、二度と手にすることは無いかも知れ
ないと先方の言い値で買って頂くことにした。手に入ったら画像を送って貰う話をしてい
たところ翌日電話が有り、実は困ったことになったとのこと。 どうしたのか聞いたとこ
ろ先日の電話は世田谷のボロ市会場で先方の道具屋さんが目の前に居るところで掛けてく
れた電話で、電話を切った後で近くに居た人が自分ならその 2割5 分増しで買うがと道具
屋さんに交渉し出し、道具屋さんもならばと話を反故にしたい様でふざけるな と云うこ
とになり、その 2割5 分増しの金額になって仕舞ったとのことだった。 そんな紆余曲折
を経て今日届いた物は可也程度が良く無理をした甲斐が有った。
未だ分解はして無いがラインナップは 2T51-2T52-2T52-低周波初段不明-2T12 で外から見
る限り全てオリジナルの様だった。 因みにこれまでに修理を手掛けた数台の TR-55 は放
送博物館収蔵の物を除いて全て手が加わっており少なからずオリジナルとは異なっていた。
ところで今回の TR-5 に付いて触れている書き物は殆ど無く、その数少ないものの内の上の
物 (1986年ソニーさんが40周年記念に発行した源流の英語版)と、下の ソニー広報室〔編〕
会社の勇気 によれば 大賀(云うまでも無く後に同社々長となった大賀典雄さん)がドイ
ツに渡った昭和 29年の夏には、技術部でまだやっと一台試作機ができたばかりであり、国
連ラジオ (10 数台サンプル用の試作機が作られただけの TR-52、そのデザインが国連ビル
に似ていたことからこう呼ばれた)も TR-5もなかった。 しかし、その翌年の 6月には早く
も TR-5 ができ上がり、7 月に大賀のもとに送られてきた と在る。
さて上の資料に依れば TR-55 は未だ出て来ない。それと気になるのがキャビネットとツ
マミの色で、これまでに目にした TR-5 の色は放送博物館収蔵の紫色の物と、ソニーさん
収蔵のクリーム色で、今回の深緑で 3色目となった。 着目したのは今回のツマミの色で、
このスモークがかった薄緑は TR-55 に採用されていた色でうがった見方かも知れないが
TR-55 を市販するに当り試みに幾つかの色の組み合せを確かめたのでは無いかと想えた。
この辺りの経緯をご存知の方は是非お教え頂きたい。 余談ながらソニーさんの初期の
トランジスタラジオの型番は使われているトランジスタの数と、開発順の番号が付与さ
れ多くは開発時の番号がそのまま型番とされているケースが殆どだが、中には TR-63 の
様に当初は 5石で開発が始まった機種も見られる。
TR-55 では無いが、同等の TR-5 が手に入ると喜んでご依頼主に連絡を試みたが返って来た
のは、既に先月末で予算の使い道は略決まって仕舞い、また何時購入出来るかも分からずそ
れが数ヵ月後か一年後か分からないとのことだった。 ガッカリして仕舞い、また購入価格
上昇の追い討ちを受け、ならば自分で買い手を新たに見付けなければと今日はレストアに取
り掛かった。
酸化銀?を使ったケミコンに容量抜けも診られたが致命傷は検波のダイオードに在った。 幸
い同じダイオードのストックが在ったので中で最も特性の良かった物に交換した結果予想以
上に元気に動作し出してくれた。上の画像は試みにパターン面に実験的に取り付けたところ。
オリジナルでは無いと云われるかも知れないが、同一部品で置き換えたのでここはオリジナ
ルと云わせて欲しい。( IFTの調整溝が無くなっている物も有り、当初高感度は得られないか
とも想ったが予想外の感度が得られ十分実用になりそうなのには正直驚いた)
1月22日 昨日は午前中から秋葉原に出掛け、一通り買い物をした後お決まりの内田ラジオ
さんに寄り随分と長い立ち話をして仕舞った。 午後からは主催しているラジオ・コレクタ
ーの集りが夕方まであり、その後友人と呑みに行ったので結局仕事場には来れず仕舞いと
なった。 折角なので上の集まりに持って行きメンバーにも聴いて貰おうとそれまで外部の
電池で動作させていたが付属の単三 4本の電池ホルダーで動作させてみたが動作しない。
電池ホルダー内の電極に問題が診られたので手を加え接着剤を塗布し我が家に持ち帰った。
一昨夜、我が家で動作させて驚いたのは音量で、それまで電界強度の低い仕事場で動作さ
せていた為、左程大きいとは感じていなかったが可也大きく ( 音量調整の範囲が狭い気が
した)、集まりでも皆さん同様に感じられた様だった。 もう一度この辺りを診てみるか。
1月23日 音量調整の範囲が狭い為ボリュームとその周辺を診てみた。 ボリュームその物
に問題は無く、回路を一部変更すれば完全に音が絞れることも分かったが敢えてオリジナ
ルの回路に留めた。