先日修理を行った Philco, Model 90 をお送りしたが受信出来ないとのお話しで受信環境を伺
ったところ鉄筋の建物の中でお使いになるとのお話だった。 先ずループアンテナをご用意頂
き何とかFENが聴こえたとの事だったがそうこうする内に全く音が出無くなって仕舞ったとのお
話で再度お送り頂いた。 この種のラジオの修理、改造に付きましてはこちらのホームページ
http://www2.odn.ne.jp/~cac55760/ からお問い合わせ下さい。
梱包を解きながらアレレとなったが、スピーカーが外れて落ちていた(フィールド・コイル タイプ
なのでその後のパーマネント・ダイナミック タイプに比べるとズット重い)。
グリル・クロスは殆ど傷んで無かったがスピーカーのコーンが一部破けていた。
スピーカーの取り付け穴は4箇所有るのだが、取り付けネジは2本しか落ちておらず、またネジ
を止めていた跡も2箇所しか見られなかった。 (全体をエアキャップでくるんで有ったのでネジ
が無くなることは考え難い) もし2箇所しか止めてなかったとすると問題が有る。
通電してみたところ、想像通り真空管280(右の2本の上)と、227(左下)のフィラメントとヒーター
が点灯していなかった。
両真空管の修理の可否を診てみたが280は上下(特に下)の画像で見られる様、フィラメント
(板状)が切れており修理は無理だった。
下の227のヒーターは上手く直せた。 整流管の代わりにシリコン・ダイオードを使い動作させた。
実際に添えて頂いたループアンテナを使い動作をみてみたが感度が低く実用にはならなかった。
電源を120Vに上げ感度、音量共増加したがそれでも尚、実用とするには厳しいものが有った。
通常こちらでは窓の外に張った8m程のビニール線を使っており、このアンテナでは実用レベル
だったが近年の簡単なループアンテナでは無理そうだったので以前作ったループアンテナを使
ってみた。 感度は可成り上がったが近年の小型ループアンテナで実用となる物でなければな
らない様想われた。
10月30日 明日友人のMさんが手伝いに来てくれることになったので昨日から再度取り組んだ。
先ず破れていたコーンの補修を行い、次いで通電してみたが前回テストした時の音量よりズット
小さく不思議に想い調べてみた。 結果分かったのはスピーカーのフィールド・コイルが断線して
いた。 余談だがフィールド・コイルは壊れやすい部品の一つで、湿度の高い日本では湿度の低
い米国等に比べるとズット故障の確率は高くなる。 Mさんと共に取り組むのに先駆け基礎データ
を取っておこうと調べを進めたが、高周波段のプレートにDMMを当てたりボリュームに当てたりす
ると動作が止まって仕舞うのが何とも解せなかった。 今日も昨日の続きに取り掛かったが、動作
が止まるのは出力段のグリッドの電位が200V近くとなる為だったが、何故ここの電位が200V近く
になるのかは何としても理解出来ず、ドット疲れて仕舞った! (アンテナ・コイルは高インピーダン
ス型だったので近年のラジオに添えられているループアンテナは不向きのことが分かった)
10月31日 今日はMさんと一緒に取り組んだ。 下はMさんが急遽製作し持って来てくれたバー
アンテナ(今回の機種のアンテナ・コイルが高インピーダンス・タイプだったのでそれに合わせ高
インピーダンス出力の物を用意してくれた)。 早速使わせて頂いたが出力インピーダンスが寧
ろ高過ぎる感じだった。 その後二次巻線を調整してみたが中々想う様な結果は残念ながら得
られず、今回は以前某放送局の朝ドラ用に試作した鉱石ラジオ用のループ・コイルを使った。
元々のフィールド・スピーカーのフィールド・コイルが断線して仕舞った為近年のスピーカーでテ
ストを進めた。 フィールド・コイルの代わりにこれまで4KΩを使っていたが、2KΩに換え高周波
部分のスクリーン・グリッドの電圧が上がった為か感度が可也増加した。 また低周波回路のプ
レート負荷を各々倍にした結果音声出力も可也増加し、実用上十分な音量を得られた。
最も気になっていたパルス性のノイズが混入した際に起こる、出力管のグリッドの電位が200V
以上となる問題も、出力管247のスクリーンに5KΩを挿入し(パスコンには10μFを使用)た結果
殆ど問題は起こらなくなった。 窓際に置いたループ・アンテナで通常受信が不可能な文化放送
を受信出来たので驚いたが、正にループ・アンテナの威力なのであります、S/Nも良好。
11月1日 今朝も一番で通電してみた。 若干気温の違いからか周波数がズレていたが問題にな
る程では無かった。 良好に機能するのを確認した後、もしかしてとフィールド・コイルの断線して
いる元々のスピーカーに繋ぎ変えてみたところ何と(若干音量は減ったが)実用となる音量で動作
した。 サテこうなるとこちらで最初にお預かりした時からフィールド・コイルは断線していたのかも
知れないと想い始めた。 (こちらの建物の修繕が先日から始まり、それに伴って永年使って来た
アンテナ(隣の自転車を置いている建物の屋根との間に8m程ビニール線を張ったもの)が切れて
仕舞った為、先日の音量がイマイチはっきりしない。
11月7日 久々に静けさが戻り、精神的な余裕も少し出来たのでレストアに再び取り掛かった。
上はネジの外れたキャビネットの内部。 ネジ穴に接着剤を流し込み乾燥に移った。
今回のモデルではバリコンのトリマ、IFTの共振用コンデンサ、局発のパディング・コンデンサに上
の画像に見られる1/4インチのナットを使った可変マイカ・コンデンサが使われている。 バリコン
のトリマはナット部分がグランド電位となっているので金属製のボックス・レンチが使えるが、IFTと
特にパディング・コンデンサには金属製の物が使えないのでトラッキング調整用にプラスチック製
の物(下の画像)を用意した。 アレコレ探した結果、使い終わったボールペンを加工した。
11月9日 先日コーンの修理を行った物をキャビネットに組み込んでみた。
満点では無いがスピーカーグリル部分もオリジナルのまま可笑しく無い程度の修復は出来た。
ご依頼主からはNHK(第一)とFENは聴きたいとのお話だったので、これまで感度の低下が顕著
だった低い周波数の感度を上げるべくトラッキング調整を行った。
若干ハムが気になったので電源の平滑回路をいじってみよう。 (同調型のループアンテナ使用)
11月10日 昨日これまでバラック(実験的な配線)だったものをキチンと組み込んだので、今日は
連続運転に取り掛かった。 病院から戻り午後一番で通電した結果直ぐに動作しなくなって仕舞
いOSC、IFを再調整し13:30から再度連続試験を開始し既に3時間半となるがその後問題は出て
いない。 今日は帰宅時間まで運転を続け、明日も引き続き行ってみよう。
11月11日 音質調整回路も機能する様にとのご依頼が有ったので取り掛かった。
Philcoのこの時期の物はピッチを充填している部品が多く、先ずはピッチを取り除く必要が有る。
何とか内部に在ったコンデンサ3個を外し、次いで接点を磨いたり調整した。
コンデンサを交換し組み込み動作を診てみたが良好だった。 先日整流管をシリコンダイオード
に交換したが出力管のプレート電圧が300V程となっていたので若干無理が有るので整流管に
戻した(230V)。 午前中から略休みなく6時間連続運転を行ったが問題は特に診られなかった。