今日お預かりしたのは久し振りの Marantz, 10B で先日急に動作しなくなって仕舞い部品が一つ
落ちていたとのお話だった。 この種の機器の修理のご依頼は http://vrc-tezuka.sakura.ne.jp/にお
願い致します。
いやはやこの機種は10台程手掛けたが可成りの年季が入っていた。
落ちていた部品と予備の CRT や真空管を添えて頂いた。
落ちていたのは100Ωのホーロー抵抗だったので多分下の100Ω 2個の内の上の物だろう。
電源トランスのセンターに繋がっている回路がオープンとなったので Lo+B +140Vが出なくなっていた。
抵抗を接続した後の Lo B+ 140V の値は +140.9V@117V ACとなった。
Neg -270V の値は -276V だった。
Hi B+ +295V の値は +308V だった。
ゴーサインを頂いたので本格的な修理に取り掛かった。 V10 の入力では IF 増幅は為されていた。
ところがその前段 V9 のところでは動作が可笑しかった。
V9 の Sg とプレートに電源を供給している 2.2 KΩの抵抗が焼けて仕舞っていた。
2.2 KΩの負荷側 .0047 か V9 の Sg がグランドに落ちたのならこの抵抗が焼損したのも分かるのだが?
焼け切れた 2.2 KΩ を 2.7 KΩ (1/4W) に換えたところ IF の動作は良好となった。
IF の初段でも動作は良好だったが何故か受信しない。 (RF Out の後に信号を入れると受信した)
何と本来 V1 (EC88/6DL4) の処に誤って ECC88/6DJ8*が使われていた。 これでは動作しない!
*(2月5日訂正)
一応受信はし出したが 左チャンネルの出力が出ていなかった。 *CRTの輝度が低かったので
Intensity を上げた。 同時に Focus も再調整した。
2月1日 左チャンネルの問題に取り掛かった。 ところで今回の機種は FM のカバレッジが日本バンド
に改造されていた。 上の画像に見られる様これまでに手掛けたフロント・エンドとは異なっていた。
左チャンネルの回路を後段から徐々に追って行った。
V17 (12AX7) の左チャンネルを担当しているプレートの電位が電源と同じで電流が流れて無かった。
チューブチェッカーで動作を診てみたが片方のヒーターが断線していた。 V17 を交換し好結果を
得た。 完全とは云え無いが実用上問題無いと想われるレベルとなった。 今回受信し出したもの
の若干感度が低い様感じたのでお使いになっているアンテナのことを伺ってみたがキチントした物
をお使いだったので多分問題にはならないだろうと想像した。 (余談だが高周波部の調整には可
成り長いシッカリした調整棒かセラミック・ドライバーの様な物が必要となる)
2月2日 今回動作する様になり実際に受信してみた際に感度が低いと感じた。 ただお使いになっ
ているアンテナ等からこれまで問題無く受信出来ているなら特に手を加える必要は無いかと考えた
が、ご依頼主から疑問に感じるところがあるならそれは解決すべきとのごもっともなご意見を頂い
たので引き続き感度の点を診てみることになった。 不本意ながら若干時間が更に必要となる。
2月5日 ご依頼主から参考用にとこの機種の Service Bulletin と Instruction Manual をお送り頂いた。
右に在るのは先日購入したセラミック・ドライバ。
感度が低い問題に取り掛かる前に先ずは全ての真空管の gm を診てみた。 結果2~3割の真空管
が Mini. Value を下回っていたり、全く違った物が使われていた。 一言で云えば可成り酷い状態!
上は局発を担っている 6DZ4 だが6番ピンが大きく曲がっていた。 ただここを無理に直すと
真空度の低下(スロー・リーク)を起こす可能性が高いのでこのままとした。
V2 も本来 (EC88/6DL4) の代わりに ECC88/6DJ8 が使われていた。 これでは感度が悪くて当然。
先日 V1 にも同様の問題が診られた(本日訂正済み)が真空管の問題が可成り多そうだった。
2月6日 昨日チューブ・チェッカーで動作を診た物を分類しておいた。 頭部に色を付けた物は
gm が Mini.Value を下回っていたり、問題が有る物。
期待を込めて通電した結果予想通り感度はドラスティックに増加した。 次はブラウン管
周りの問題に取り組むことになるがインピーダンスが高いだけで無く、ドライブの真空管は
バランスが取れてなければならず、またDCカップルの回路なので頭が痛い。
ブラウン管の表示を診てみた。 上は無信号時。 Vertical のセンタリング調整要。
絶対では無いが同調点より若干低い状態(上)?と、高い状態(下)?
上は External での表示位置が若干センターより左寄り。 下は Output で本来はリサージュ波形
でなければならないが垂直 (Vertical) 成分が殆ど無い。
2月6日 自分のチューブ・チェッカーの 9pin のソケット・セーバーが壊れたことをお話したところ
ご依頼主が 9pin→8pin 用アダプタを送って呉れた。 伺った時に最初意味が分からなかったが双3極
管なら US ソケットでも測定可能と気付いた。 サテ今朝も通勤の電車内で回路図を眺めていたが少
しづつだが動作が見えて来た。 それと昨夜ご依頼主から目に障害が有る為真空管の型番等を見誤っ
たとのお話を頂きそれなら仕方が無いと想えた。 目に不自由が有ったら修理は到底出来ない。
2月17日 先日米国に発注しておいた真空管が間もなく届くのでは無いかとブラウン管周りの
チェックに取り掛かった。 上は外部入力に設定し、入力には何も加えて無い状態。
最初水平、垂直のポジション調整は全てに有効なのかと考えていたが同調モードだけで有効だった。
位置調整のボリュームでの電圧の変化量。
外部入力に低周波発振器から信号を加えてみた結果。 下の垂直偏向の振幅が少ない。
受信時の垂直増幅を担っているトランジスタの動作を診てみた。
上は入力のベースでの振幅、下は出力のコレクタでの振幅
出力モードでは殆ど何も現れなかったので心配になってMPXの出力を先ず確認した。
幸いMPXの動作は良好で左右の出力は問題無く出ていた。
少しブラウン管の輝度が低い様感じたので交換してみたが変化は診られなかった。
一応出力のリサージュ波形も出る様になったがセンタリングの調整箇所が無く、双三極管
の特性に頼っているのでバランスが非常に重要となる。