今日お預かりしたのは7月に手掛けた 日本コロムビアの 14-T586 で垂直振幅が減少して仕舞った
とのことで再度お送り頂いた。 上は受け取り直ぐに通電し、ラスターが出た際の画像でラスタ
ーが出るまでの時間は約38秒だった。(ご依頼主のところでは通電後ラスターが出現するまでに
20分程を要するとのことだったが解せない)。 この種のテレビの修理、改造に付きましてはこ
ちらの ホームページ https://vrc-tezuka.sakura.ne.jp/ からお問い合わせ下さい。
通電後10分ほど経過した際の画像で、地デジ・チューナー+RFモジュレータで入力した。
伺った様、垂直振幅は7割程しか無かった。
輸送時に折れて仕舞った調整用の半固定抵抗の交換に取り掛かった。
念の為垂直出力回路のカソードのパス・コンも変えておいた。
結果垂直振幅は9割程となったが、続いて当初想定した垂直出力管を交換した。
想像通り垂直振幅はドラスティックに増加した。
9月8日 昨日連続試験中に二つの問題が診られた。 一つは水平の同期が取れなくなったこと
で、もう一つはブラウン管が光らなくなり慌てて仕舞った。
調べたところ水平同期の問題はAFC用6AL5のソケットの問題で、上の画像に見られる様全て
が可成り開いて仕舞っていた。下がこれらを修正した結果。
他の真空管のソケットも確かめてみたが結局5本のソケットに同様の問題が診られた。
また突然ブラウン管が光らなくなった問題は水平出力管12GB3がソケットから浮いていた。
また7月に修理した際AGCは普通に機能していたが昨日これの変化量が少なかったので念の為
AGC回路のケミコンを交換しておいた。 押されていたスタンプから1961年7月1日製と読める。
9月9日 昨日連続運転中に気を付けて観察して いないと分からない程の水平方向の位置のズ
レが診られた。 実用上問題になる程ではなかったが今日も連続試験を続けた結果、水平同期
が取れなくなった。 一昨日この症状が出た時はAFCの6AL5 を傾けると直ったので今回もこの
真空管の問題かと想像したが全く別の原因だった。
水平の発振周期を診たところ約80μSec.も有り、本来の66μSec.より可成り長くなっていた。
上の画像のマイカ・コンデンサは本来300pFだが実測値は約395pFだったので交換した。
結果、水平の発振周期は本来の値となり、また昨日診られた不安定要素も診られなくなった。
こちらに在る内に問題が出て良かった。 引き続き連続運転を行ってみよう。
9月10日 昨日からの連続運転結果は良好だったので明日は細部の調整を行い終わりとしよう。
9月11日 細部の調整(垂直振幅、垂直直線性、センタリング)を行った。 上は従来のアスペクト
比4:3の画像、下は近年の地デジ・チューナー、DVD等の16:9 の画像。 4:3に調整すると可成
り縦長の画像となって仕舞う為16:9用に調整した。 因みに近年のDVDにはコピーガードの信号
が同期信号の前後に挿入されている為、その信号も見えて仕舞うがこれは如何ともし難い。
またこれらの信号が同期を不安定にすることも有るのでDVDの選択にはご注意頂きたい。
9月13日 真空管交換のご依頼を頂いたので探し始めた。 何せこの作業場だけでも3千種
程が在り、探し出すだけでも時間を要する(整理の悪さが露呈して仕舞った)が明日も引き
続き取り組み、交換後連続試験に取り組ませて頂こう。
9月14日 昨日の午後は結局真空管7DJ8 を探すのに費やすことになった。 昭和30年代、松下
がヨーロッパ・オリジンの7V管、7AN7/PCC84 を一部のテレビに使っていたが、それ以外で7V管
と云うのはコロムビアのこの時期のセットだけで、これまで7DJ8 は使ったことが無かった。 昨日
の午後片っ端から在庫を調べて行って、結局7AN7 は20本程が見付かったが必要な7DJ8 は中
古の物がヤット1本見付かっただけだった。 他社が略全て6BQ7を使っている中で何故7DJ8を
採用したのかは知らないが、途中7DJ8を諦めベースの同じ6BQ7に変更し、ヒーター電圧を6.3V
にすることも考えた始めたが、略諦め掛けていた夕方6DJ8 (7DJ8の6.3V管)が2本見付かった。
今回の6DJ8はSylvaniaの物で米国でも製造されていた訳で7DJ8に比べ入手の可能性は高い。
6DJ8と7DJ8はヒーター電圧が異なるだけなのでヒーター回路を改造し、AGC回路のコンデンサ
を念の為交換しておいた。
全ての真空管を交換し、連続運転に取り掛かった。
9月15日 連続試験を続けて特に問題は診られなかったが、細かいことを云うと音声出力6AQ5
とVIFの6U8のソケットに接触不良が診られた。 ベークライト・ウェハーのソケットなので仕方無
いと云えないことも無いが、明日は再度ソケットの緩みの修正に取り掛かろう (底面を開けるだ
けで可也の時間を費やすがやるしか無い)。
9月16日 真空管ソケット二つのの修正を行い、午後連続運転に取り掛かったが4時間で1度
水平同期が外れたことが有った。
9月17日 今日は時間切れで画像をアップ出来なかったが、同期分離と水平発振に絡んでいるマ
イカ・コンを全て交換すべくセラミック・コンを購入して来たので明日は交換に取り組もう。
9月18日 同期分離と AFC、及び水平発振に関係しているマイカ・コンを交換しようと診てみたが
先日交換した水平発振用の物以外には2個だけで、他はチタコン(チタン酸バリウム・コンデンサ)
が使われていた。 これまでの60年程の経験ではチタコンが問題を起こすことは先ず無いのでマ
イカ・コンのみを交換してみた。
連続運転を行いながら一度コントラストが低下したことが有った。 映像増幅の12BY7 を指で少し
動かした結果直ったが、ここは先日ソケットを修正したばかりでどうもベ-クライト・ウェハーのソケ
ットでは接触面積も小さく、また燐青銅製の電極がピンを挟む力も弱っているのかも知ない。 どう
もこのソケットの限界の様に想われた。
9月19日 朝から6時間ほど連続運転を行ってみた。 若干水平方向のノイズが診られることは有
ったが水平同期が乱れると云うものでは無かった。 5時間半を超えた辺りで垂直が流れることが
有ったが垂直同期で修正可能な範囲だった。 余談だがこの時期のコロンビアは他社が同期分離
+同期増幅と云う2段構えの確実な方式を採っているのに対し、同期分離のみと云う余裕の無い
方式を採っており、他社の物に比べ同期の確実さに若干欠けている。
9月20日 今日も朝から連続運転を開始した。 通電後間もなくコントラストが低下した為、映像
増幅の12BY7を少し動かしたところ直ったので、奥の手を使わせて頂いたがこれでどうなるか引
き続き動作を診てみよう。
4時間ほどランニングしてみたが奥の手が功を奏したのかコントラストに変化は診られなかった。
ただ4時間の内で一瞬水平に同期の乱れる一歩手前の症状が3度程診られたが、ここを払拭す
るには気の遠くなる様な時間を費やすことになりそうだった。
9月21日 今日も朝から連続試験に取り掛かり既に4時間が経過したが良好に機能している。
上は通電後40分程の画像で、下は4時間経過後のもの。
垂直振幅、直線性を再調整した。
9月22日 梱包の前に最終確認を行った。