今日の午後お預かりしたのは国産の昭和10年代製と想われる4球再生式でラインナップは57-56-12A
-112B。 スピーカーはマグネチックで、コイルはスパイダー・コイルでした。 近年修理が加えられた様
でペーパー・コンデンサは最近の物に替えられておりました。 電源回路の抵抗の半田付けが1ヶ所取
れており、それを繋ぎ一応動作しましたが、再生回路の帰還量が多過ぎこのままでは使い物になりそ
うもありません。 これの原因かと想うのが同調コイルと同一巻枠に巻かれた再生コイルでこれでは帰
還量が多過ぎる様想われます。 絶対ではありませんが、別の巻枠に巻かれたアンテナ・コイルが本
来の再生コイルでは無いかと想像しました(最初この別の巻枠に巻かれたコイルが再生用とばかり想
っておりました) サテ、最近の部品ではやはり違和感が拭えません、せめてアキシャル・リードのコン
デンサ位は使いたいところです。 この種のラジオの修理に関しましてはこちらのホームページからお
問い合わせ下さい。
中々しっかりした作りのキャビネットでしたが天板部分に(乾燥に依るものか)ヒビ割れが見られる。
シャーシーも木製で余り関心しないがこのまま進めるか? アルミ・シャーシーに代える
となるとシャーシーとの絶縁が問題になるところが出てくる。
幸いマグネチック・スピーカーは良好だった。 裏蓋がクラフトテープで止めてあったが
ニス塗り部分に粘着力の強い(特に紙の)テープは禁物である!
スパイダー・コイルとバリコンのどちらかが標準より大きい様でカバレッジが下は
500Kcより下の辺りから始まっており、上が1,400Kcまで達しているか疑問。
10月29日 ご依頼頂いた方からゴーサインが出たので明日から作業に取掛かることに致しましょう。
先ずはオリジナルの木製シャーシーを活かてみて、問題が有った場合はその時また考えると致しま
しょう。 一番にアンテナ・コイルと再生コイルを逆にして帰還量が適当となるかを見極めねば。
スムーズな再生が掛かるか否かにこの受信方式の鍵がかかっているのであります!
10月30日 先ずは使われている部品を全て外してみた。 殆どのネジは鉄製の木ネジなので当然
真っ赤に錆びており外すだけで一苦労だった。 画像に在るコイル用L金具を固定していたネジが最
も難航したが撮影後ヤット外れた。 どうも木製(ベニヤ)製のシャーシーを使うのは酷な気がするの
でご依頼主に伺ってみよう。 チョークはまだしもトランスの周りの錆びが気になるのでこれらは再塗
装することに決めた。
先人が苦労して作った物なのでチト忍びないがこのシャーシーではきびしそう。
トランスの底が激しく錆びているがピッチできちんとシールされていたのか巻線に異常は無かった。
バリコンも出来れば全て分解し洗いたいところだが、サテどうするか?
10月31日 ご依頼主からはアルミシャーシーでと言って頂けたが、既存のキャビネットに合わせねば
ならず丁度良いアルミシャーシーが既成で有るか? 無論特注も出来るがそこまではやりたく無い気
がする。 近々秋葉原で探してみよう。 (一昔前は電車に乗ってしまえば30分も掛からなかったが
今は1時間半でもきつくなって仕舞い勢い腰が重くなってしまった!)
11月3日 久し振りの秋葉原で見つけたアルミシャーシーは元の木製シャーシーとは縦横高さとも数
mmしか違わず略ピッタリのものでした。 良かった! 仕事場に戻りトランス、チョークの錆びをワイ
ヤーブラシで落し、黒のマフラー用塗料を吹き付け今日は時間切れとなった。
11月4日 昔はアルミシャーシの加工も頻繁にやっていたので穴あけの為のシャーシーパンチやリー
マーも揃っていたがこの30年近く遠ざかっていたので最早手元にあるのはハンドニブラーとヤスリだ
けで結果可也いびつな丸穴になってしまったが一応殆どの穴あけを終了したので部品を取り付けて
みた。 もう少しあける穴があり、また修正を加えた後配線に取り掛かろう。
11月5日 キャビネットの補修とシャーシーの修正を終え、いよいよ配線を開始した。 サテ出来
上がるのは何時になるか?
11月6日 行ったり来たりしながら何とか配線を終え、通電してみたがやはり帰還量の多さが原因と
想われる発振が凄く到底使い物にはなりそうも無い。 当初考えた様アンテナコイルと再生コイルを
逆にしてみた。 やはり予想は的中し、最初それでも帰還量が多かったがコイル間の距離を2mm程
離した結果スムーズな再生が掛かる様になった。 NHK第一、594KHzからラジオ日本1,422KHz迄
豆コンの調整で上手く再生が掛かる事を確認しキャビネットに入れ連続試験を始めた。 ところが間
もなくして全く音が出なくなった。 何故だろうと調べた結果マグネチックスピーカーがオープンとなっ
ており、先人が多分昭和10年代に組立ててはみたものの今日までまともには動作しなかったであ
ろう物が2時間程で半ば息絶えた感がある。 マグネチックスピーカーのコイルとなると0.08φ程の非
常に細いエナメル線を気が遠くなる程巻かねばならず現実的ではないので適当なダイナミックスピ
ーカーに交換するのが無難とは想うが誠に残念だ。 しかしこの種のラジオの故障原因では上位に
位置する故障なので仕方ないと諦めることにしよう!
手前のスパイダーコイル(小さい方)が元々はアンテナコイルとして使われていた。 今回これを再生
用のコイルとして好結果を得たが、配線具合からして最初にこのラジオが組立てられた時からズット
その状態だったので半世紀以上使えない状態が続いていたと想像出来る。
11月12日 別のところで記した様、断線していたマグネチック・スピーカーも上手く直り今日はキャビ
ネットに組み込んで実際に受信した際の目盛や再生量の最良点を記録した。