

今日お預かりしたのは Philco の Predicta, G4242L (Holiday) 2台で良いとこ取りで 1台を完成さ
せて欲しいと云うご依頼でした。 2台の内の外観の良好な上の画像の物を完成させて欲しいと
のことで先ずこの機種から始めました。 この種のテレビ、ラジオの修理に付きましてはこち
らの HP https://vrc-tezuka.sakura.ne.jp/ からお問い合わせ下さい。

もう一台は CRT の前面カバーの表面がコケが生えた様になっておりここの処理には可也
の時間を要するし、神経も使う!

シャーシー内部の状態から以前可也手が加えられたことが見て取れますが、先ず電源が入らず
調べたところヒューザブル抵抗がヒューズ+サーミスタに交換されその部分でリード線が切れ
ていた(下3枚目の画像)。 一応電源は入ったが未だヒーターが点灯しない。 真空管 1本 1
本を順次確かめて行ったところ映像増幅/ノイズインバータ 6AW8 の回路がソケット部分で切
れていた。 この機種に使われている真空管ソケットは残念ながら信頼性は低くかと云って交
換は非常に大掛かりな作業となるのでどうするか迷うところです。


不安定ながら 6AW8 を浮かせた位置で何とかヒーター回路も活かせたので動作させてみたとこ
ろ高圧が出始めたが高圧整流管 1B3 のエミッションが可也低下している様だったので交換しま
た映像出力のコンデンサも交換した。付属していた CRT ブライトナーを使ったところ暗くラス
ターが出だした。 ただ残念ながらこの輝度では実用は無理そうだった。 今日は時間切れでこ
こまで!


6月28日 朝一で小机の部品屋さんに寄りセメント抵抗と 9ピンの真空管用ソケット (基板用)
を買って来た。 上の 6AW8 部分のソケットを如何にするか迷った結果交換することに決めた
が、分解の前にもう一度細かく接点部分を診て驚いた。 外側の、少し直径の大きい (基板に
繋がる) 部分とピンが刺さる部分に導通が無い! 壊した結果分かったのは下の画像の 4番ピ
ン付近を壊したところピンが刺さる部分が無くなった。 つまり外からは特に問題無い様に見
えていましたが 4、5、6 番ピンのところは金属疲労か?途中クラックが入っておりこの為に
ヒーター回路が死んでいたのでした。しかし Predicta シリーズはこれまでに可也の数をレス
トアしましたが真空管ソケットの交換は今回始めての経験となりました。



タイト製のソケットに交換し、次いでコンデンサ類の交換に取り掛かりました。

基板上部の6個を交換。


シャーシー内部は 8個を交換。

この後実際に通電したものの音声も何も出ず、次に各真空管のチェックに取り掛かった。フロ
ントエンドから順に調べて行ったところVIF の終段/映像検波の 5AM8 のところに何と 5AN8 が
使われていた。 たった1字違いではあるが 5AM8 は 5極 2極管、片や 5AN8 は 5極 3極管でこれ
では動作はしない。 つまり可也以前米国で修理が試みられた様ですがその時点から動作はして
なかったことになります。

5AM8 に交換し音声も映像も一応 (おぼろげながら) 出てきましたが、どうも高圧が低い様でそ
の原因は+Bが先ず低く、リップルも多い様な感じがしております。 いやはや道のりはまだま
だ可也遠そうですが本日はここまで! ところでこの機種の電源定格は 120Vだが昇圧トランス
はどうするのか? *ご依頼主に確認してみよう、ヨ○タさんメールを送って下さい。
小生のHPにジャンプして貰えばそこにこちらのメールアドレスが有ります。 どうぞ宜しく

6月29日 電源部のチェックを朝から始めた。定格 400Vのブースト電圧も 428Vと十分だった。
こうなるとブラウン管の交換しか無く部品取り用の物の分解に取り掛かった。 下の画像に在
る様水平出力管がソケットから外れていた。

輝度はマアマアのレベルで実用になりそうでした。 下の画像からは分かりませんが
垂直が揺れており調べたところ垂直出力管の H-K 間の絶縁不良の様でした。

垂直出力 10DE7 を交換後揺れは直りましたが、垂直振幅が不足しておりました。

下は垂直振幅の調整後で焦点のボケはカバーの裏側の問題ですがこの部分の修理は
それだけで半日を要して仕舞い費用が嵩むのでご依頼主に伺ってみよう。


部品取り用の本格的分解を開始した。 奇抜な構造の為分解も容易で無く、この一台を終え
て疲れて仕舞った。 もう一台は明日にしよう!

前面カバーの痛みは可也進んでおり略先は見えない。



7月1日 昨日は緊急の依頼の処置に一日を要して仕舞い何も出来ず仕舞いだったので今日は早
くから外観が良好な方の分解に取り掛かった。上の画像からご覧頂ける様 Predicta シリーズの
ブラウン管は薄く、これが結果として Philco を倒産に追い込んだ元凶かも知れません。 一説
では Predicta シリーズでは生産量の 1.5倍ブラウン管を交換したとのことでした。 極端なシ
ョートネックには矢張り無理があったのでしょう。


ブラウン管が載っている台座の部分ですが左側に可也の力が加わった様で
可也変形しておりました。

上の画像はフラッシュを使ったのでボケた画像に見えますが、実際は下の画像の様に十分実用
となるものです。 しかし 2個 1と云うのは略 2台分の作業量となり疲れました。 今後は細かい
調整、昇圧トランス、コンバーターの調達に移りましょう。

7月4日 ご依頼主から仕事が予定より早く終わったのでと連絡があり今晩引取りにいらした。
電源を入れ画像が出始めとても喜んで頂けた、修理屋冥利につきる瞬間であります。 お話し
では昔、講談社から出された【世界の「絶版」名品銘機】1998年刊に小生が執筆したテレビ
関連の記事に触発されたそうで、夢の実現に十数年を要したとのことでした。