4台目は久し振りの SONY, 8-301W でご依頼主のお話に依ると売主のコメントでは動作良好と
のことだった。 この種のテレビの修理、改造、動作確認に付きましてはこちらの ホームページ
http://www2.odn.ne.jp/~cac55760/ からお問い合わせ下さい。
外観は可成り良好で、レザーカバー、元箱も付属していた。
1972年1月末付けのSONY, America の修理報告も添えられていた。 それに依るとラスターは出
るが映像が出なかった様で2SA122と2SC470を交換したと記されていたが、この2SC470とは一体
何のことか? (映像回路には2SC73と2SC15は使われているが、2SC470は聞いたことが無い)
早速定格電圧 (117V) を通電してみたがラスターは出たものの内部で高圧が放電していた。
仕方無く電源電圧を100Vに落とし動作を診て行った。
調整に依って画像は不安定ながら出現したが水平振幅が不足しており、逆に垂直振幅は過大だ
った。 短時間同期は取れていたが水平、垂直共にギリギリで余裕は無かった。
ファイン・チューニングの周波数の微調整もギリギリで局発の再調整が必要そうだった。
可成り道のりは遠そうだった!
2月25日 先ずは基板の状態等を診てみた。
電源トランスは117V巻き線しか無い米国輸出用が使われていた。
シャーシ等の鉄板は亜鉛メッキ(多分)が為されていたが、表面は白く粉をふいた様になっていた
がこれも長い期間閉ざされた空間に置かれていたことを示している。
内部の状態も非常に良好でホコリも見られなかった。 箱に仕舞われたままだったのでは無いか。
修理報告書にトランジスタ 2SA122 と 2SC470 を交換したと記されていたが 2SC15 の代替だった。
電解コンデンサは全てオリジナルの様だった。 通常これらは全て交換するのだがどうするか?
高圧が放電(スパーク)していたがトランジスタ 2SB144 との距離が短いがここが原因か?
2月26日 部品交換をせずに何処まで調整で追い込めるか取り掛かった。 ところがラスターが出ない
高圧製流管 (1DK1) の片方のフィラメントの引き出し線が根本(ガラスの表面で)切れていた。
何とかフィラメントを繋ぎ調整を開始した。 先ずはファイン・チューニングを調整してみた。
垂直振幅と直線性は調整で可也良好となった。 水平振幅も丁度良い位だった。
同期に映像成分が混入している様で、また音声の出力レベルが低く、また歪も大きかった。
同期分離、映像増幅、音声出力に関係する部分の電解コンデンサを思い切って交換した。
水平同期は可也安定になりコントラストも増加した。 音声の歪はディスクリの調整で改善出来た。
垂直同期が未だ不安定なので明日以降取り組んでみよう。(画像からは垂直同期の問題は見えない)
明るい窓際で撮影しているので普通の室内ではもっとコントラストの高い画像となる。 本日ここまで
2月28日 同期が取れないので同期信号を診てみた。 上下の画像は同期増幅のベースの波形
だがこの機種の回路図に記された本来の波形とは極性が逆で、電圧も大きく異なっていた。
(映像出力と同期増幅回路間に入っているペーパーコンデンサに絶縁劣化の可能性が有るので
フィルムコンに交換したが同期は2日前より取れなくなった。何とも可笑しい!)
下は Sync Phase Inv (X14, 2SB49) のベースの波形だが極性が逆。
何か基本的なことに誤りが有りそうなので、教科書を引っ張り出してみよう。
3月1日 将来のことを考え他の基板内の電解コンデンサも交換しておくことにした。
ビデオ基板内の物を交換後動作を診てみたが若干垂直同期は改善された。
部品屋さんで電解コンデンサを補充し、偏向基板内の電解コンデンサとペーパーコンデンサ
を交換した。 ところが内部でのスパークが再度始まって仕舞やがて高圧が出なくなった。
仕方なく予備の偏向基板に交換し動作をみたが同期の不完全さは変わらなかった。
高圧の出なくなった基板内の出力トランジスタを診てみたが予想通りE-C間が短絡していた。
明日はビデオ回路にも明るいMさんが手伝いに来てくれるので同期回路を診てみよう。
3月2日 Mさんとアレコレ試みた結果ビデオコンバータを通して信号を加えた場合、同期信号
成分が可成り劣化することが分かった。 直接A/V信号を加えればこの点はクリアー出来る。
3月3日 先日水平出力2SC41のE-C間が短絡した為別の基板を使って来たが元々の基板に戻す
べく代わりに2N3055 を組み込んでみたが諸費電流が倍近くなって仕舞い高圧も発生しなかった。
何か別の問題が在りそうだったので調べたところブースト回路の整流用 X34 が短絡していた。 ここ
を交換し電流も標準的な値となったが水平に折り返しが診られた。 矢張り本来の2SC41を探そう。
マイクロテレビのストックの中から3個を外し特性を診てみたが上の二つは静特性に問題が在り使え
そうになかった。 最後の一つは使えそうだったがこの石でも中央部分に折り返しが診られた。 イヤ
ハヤ可也難航しそうな気配が漂い始めた!