今日お預かりしたのは1962年製のコロナ RT20 に使われていると伺った松下の6石カーラジオ
で雑音しか出力されないとのことだった。 この種のカーラジオの修理、改造に付きましてはこ
ちらのホームページ http://www2.odn.ne.jp/~cac55760/ からお問い合わせ下さい。
伺った通り雑音しか出ず、どうも局発が機能していない様だった。 しかし6石のハズなのだ
が5石しか見当たらない。(後で分かったことだが細長いIFTのケースには1石が入っている)
回路図が在れば簡単なのだが可成り時間を費やしてヤット上の基板内の周波数変換用トラン
ジスタの場所が分かり外した。 ただこのトランジスタ 2SA103 に問題は診られなかった。
調べを進めた結果局発用のコイルが断線していることは分かったが一度外し、再度組み込む
のに(コイル3個をマウントしている部分が何とも扱い難く)難航し優に2時間を要した。
こう云ったコイルの断線は国産の物にしか見られず、年に1度有るかどうかと云う頻度だ
が毎回泣かされる。(断線の原因は巻き線の所に付着した化学物質と想われた)
切れていた右側の部分を一度解き、再度巻き直し組み立てた。
サテこれで局発は機能し始めるだろうと考えていたが(通常はそうなる)何故か発振しない?
イヤハヤ難航することは想像していなかったが暗雲が漂い始めたところで時間切れとなった。
9月30日 どうも局発用のメインのコイルが可笑しい。(永らくカーラジオを手掛けて来たが
局発のコイルが可笑しいと感じたのは初めてとなった)
共振周波数とQをみてみようと外部から0.5~3MHzの信号を加えたが共振点は見出せ無かっ
た。 可笑しい! 一次側か二次側がレアショートでもしているのだろうか?
ならばと午後何時もの部品屋さんで局発用のコイルを買って来た。
今回の機種に使われている200pFのコンデンサでの共振周波数は約603KHzだった。実際に
は前面に在る選局用スラグ同調コイルがパラに繋がるので発振周波数は1.5倍程となる。
局発は一応発振し始め、約1MHzまでは良好に動作し出したが、1MHzを超えた辺りでパタット
発振が停止して仕舞った。 念の為トランジスタのhfeを確認し、更に別の物でも確かめたみたが
問題は解決しなかった。 どうも購入した物と元々の物の帰還量が可成り違う様だった。 こう
なると元々の物を巻き直すしか無さそうだが巻き直しは簡単では無い。
10月2日 ゴーサインを頂いたので局発のメインのコイルに取り掛かったが使われていた
のは0.08φ程の線材で普段使っている拡大鏡では巻き終わりの状態が見えなかった。
こうなると同じ時期の松下製のカーラジオから局発用のコイルを外したいが手に入るか?
10月3日 昨夜コイルを持ち帰り深夜精神を集中させ巻き線を何とか解こうと取り組んだ。 一応
解くことは出来たが何せ0.08φのポリウレタン線で巻き直しは至難の業なのでもし類似のコイルが
手に入らなかった場合の最後の手にすることにしよう。 ご依頼主に類似機種の送付をお願いした。
念の為自分が持っている松下製の古いモデルを探してみた。 以前修理をした際部品取りとして添
えて頂いた物が可也古く昭和40年頃の物の様だったのでここから局発コイルを外してみた。
二次側の巻き線の方向が逆だったが好結果が得られ、無事中波全域をカバーすることが出来た。
次いでトラッキングだけでなくIFの調整も行い可也感度を上げることが出来た。
電解コンデンサも先々のことを考え全て交換した。