時々ラジオの音が出ないのだが修理には幾ら掛かるかと云った問い合わせを頂く。 時に何処の国の
物か知らされることも有るが、メーカー、型番、症状を伺っても実際に手掛けてみない限り確実な費用
は申し上げられず、可成り余裕を持った無難な金額を多分これ位の範囲内だろうとお伝えするしか無
い。 例えば米国製の電池管ポータブル・ラジオで音が出ないと云うだけでは多くの可能性が考えら
れる。 先ず真空管の劣化、或いは断線、出力トランス/スピーカーの断線、回路を形成している抵
抗器の断線やコンデンサの短絡、また商用電源を使う物では整流器の劣化等が考えられる。 またも
っと細部に言及するなら IFT (中間周波トランス)の問題が米国製の1940年代~1950年代の物に多
く診られこの部分の修理は難航する。 依頼される方は症状を伝えるだけで十分と想われるかも知れ
ないがその原因に依って要する時間は大きく変わり、つまり費用は可成り上下することになる。
併せて可成りの時間を費やした結果修理が不首尾に終わることも稀に有り可成りの時間根を詰め取
り組んだ結果無償とはし難いのでこちらではその場合、診断料として1時間分を頂くことにしている。
また先頃入手された物では無理かも知れないが、長く使われた物の場合は経歴を伺うと原因の特定
に役立つことが有るので是非お知らせ頂きたい。
今日お預かりしたのは久し振りの Philips, TX-1421A で昭和28年頃テレビの製造がままならなかった
松下幸之助さんが Philips を直接訪ねテレビの輸出や技術提携を依頼したと聞いている。 この種のテ
レビの修理のご依頼はこちらの ホームページ http://vrc-tezuka.sakura.ne.jp/ にお願い致します。
上の経緯から松下さんだけが欧州オリジンの真空管をテレビに採用していた。
当然だが内部は可成りのホコリだった。
お話では高圧整流管は本来の EY51 から別の物に換えられているとのことだった。 ところで EYと云う
ことは 6.3V の傍熱管なのか? 使われていた高圧整流管は想像通り 1X2B だった。
EY51 のスペックを見てみたが6.3V/90mA で傍熱管か直熱管かは不明だったが、電圧が 1X2B とは大
きく異なりフィラメント?(ヒーター?)巻き線の巻き数を増やす必要が有りそうだった。 それと EY51は
Wire-ended(ソケットを使わない) なので取り付けには工夫を要する。
通電を試みたが電源が入らなかった。 電源スイッチの接触不良の様だったが奥の手を使い通電出来
る様になり電源回路の電解コンデンサの一つから電解液が噴出した。 その電解コンデンサを交換後
ラスターが出始めた。
ビデオ・コンバーターを繋ぎ音声と映像の一部が出た(一応同期は取れていた)。
垂直振幅が少ないので先ずはこの部分に取り掛かろう。 今日は時間切れとなった。
8月27日 持ち帰った回路図で交換する部品の見当を付けておいた。
垂直振幅は可成り大きくなったが直線性に問題が診られたので調整した。
少し振幅が不足していたがまあ実用レベルとはなった。 若干垂直同期が不安定だったので同期分離
辺りのコンデンサを交換してみよう。 電源のブロック型ケミコンも念の為交換するか?
若干映像が下に来ていたのでセンタリングを調整した。
時にノイズが混入することは有ったがノイズの原因の特定は困難なのでここまでとさせて頂いた。