なかなかまとまった時間が取れないので、
暮れに買ったこの本も、今、やっと読み終えました。
村上龍さんの「55歳からのハローライフ」
これは、60歳前後の人たちが主人公の中編、5編から成る。
婚活、再就職、幼なじみとの友情、ペットへの愛情、
熟年の恋などが描かれているが、
私はこれらを読みながら、「匂いのする小説」だと思った。
アールグレイの香り、コーヒーの香り、
プーアール茶の香り、潮の香り・・・。
中には、ものすごい悪臭が小説の中から漂ってきて、
自分にもその臭いがうつるのでは・・・
と思わせるものもあった。
一番印象に残った作品は、
中堅の家具メーカーでベテランの営業マンだった男性が
早期退職後、再就職を探す話。
取引の多かった会社に、再就職を頼みに行っても、
冷たくあしらわれ、
会社時代に築き上げた関係は、
会社というヨロイカブトを脱いでしまったら、
何の役にも立たないという現実にぶち当たる。
そしてこんな言葉をつぶやく。
「営業っていうのは、何の取り柄もありませんという
代名詞みたいなもんなんだよ。
愕然としたよ。」
男性だけでなく女性も、
会社時代の力関係とか、仕事の肩書をすべて脱ぎ捨てても、
輝いていられるかどうかが55歳からの課題だと
この小説は言っているような気がする。
「元○○会社勤務」とか「元●●(●には役職が入る)」というのは、
どうでもいいことだ。
ただ、どの作品も最後は、
それぞれの匂いの中に、雲間から射す光を感じられるので、
55歳じゃなくても、なんか「リセット」したいと思っている人は、
読んでみてはいかがでしょうか?