昭和のマロ

昭和に生きた世代の経験談、最近の世相への感想などを綴る。

エッセイ(88)文明の進化路線に逆らえるのか(19)

2011-08-07 04:24:38 | エッセイ
 昨日、今夏初めて蝉を助けた。毎年、マンションの中庭を囲む回廊に蝉が飛び込んできて裏返しになって悶えているのが何匹かいる。
 こうなると蝉は自力では起き上がれないのだ。
 捕まえて放つと夏空に向かって勢いよく飛んで行った。

 2011年広島平和紀念式典が開かれた。
 満を持して登壇したはずの菅首相は、しょせん辞めることを決めた首相だった。
 <核廃絶><脱原発>を訴えるスピーチは棒読みで世界に自力で訴える迫力はなかった。
 マスメディアもこぞって、原爆被災者たちの悲惨さを訴え、「怖いことは怖い」と声を上げるべきだと強調し、世界の人たちの共感を獲得しなければ、と訴えた。

 しかし、現実の世界をコントロールする為政者の姿勢を見てみるがいい。
 唯一の被爆国、日本の思いをどれだけ真剣に受け止めているだろうか。
 被爆していない核保有国にとっては痛痒も感じないように思われる。まるで他人事のようだ。
 感情的な言葉の無力を感じざるを得ない。

 核兵器を保有する国は、米、英、仏、ソ、中の五大国をはじめ、インド、パキスタン、北朝鮮と続き、イスラエル、イラン、シリアなども保有あるいは開発を疑われており、これらの国々の、少なくともリーダーたちは、被爆国の悲痛な<核廃絶>の叫びに耳を貸そうとしない。

 少なくともそれらの国民に向けて、<核兵器廃絶>の意義を根気よく訴え為政者を動かすべきだという論旨は理解できるが、いかにもじれったい。

 もう、感情的に訴えても埒があかない。
 日本のリーダーは、国民の意思を受けて、具体的な外交努力をするしかない。
 つまり、核を持たない国々を糾合し、核保有国の首脳を一堂に集め、彼らに核を保有することが人類の危機につながることを、直接訴えるしかない。
 そのためには一時<チェンジ><核兵器のない世界>を訴えたオバマ大統領を動かすことに集中することも一策であろう。

 しかし、悪魔のエネルギー原子力であろうと、コントロールできないものはないという<文明の進化路線>を信ずる人類の<驕り路線>にブレーキをかけることは至難の業ではない。


 
 
 

エッセイ(87)文明の進化路線に逆らえるのか(18)

2011-08-05 05:42:01 | エッセイ
  昨日の朝日新聞に米空軍が有事の核ミサイル発射を担う将軍向けの訓練の一環として、キリスト教の<聖戦>論を20年以上にわたり講義してきたことがわかった。 
 7月末に突然「憲法の政教分離原則に違反する」と指摘され取りやめたようだが・・・。
 つまり、ひとつの宗教を頑なに信ずる者にとっては、他の者に対して<異端折伏的精神>に基づいて行動するということが国家中枢において思考されているという証左である。

 つまりキリスト教のみならずイスラム教でもそうだが、一神教の考え方の原理的なところでは、一つの絶対を倒すためには他の絶対を持ってせねばならないということだ。
 ひとつの融通性のない思考に基づく考え方は、結局他を<力>でもって制することに集約される。
 そのためには兵器科学を突き詰めて<核兵器>を開発させ、その使用も厭わない。
 北朝鮮があくまでも核開発にこだわるのも、中国が共産党の一党独裁のもとに派遣的な行動に出がちなのもここに根拠を置いている。
 そしてこの<力>に依存する政治が、現在の世界政治の大勢となっている。

 この大勢の中で日本はひとりユニークな<平和憲法>を掲げて頑張っているが、何ともこの世界では論理的に足元がおぼつかず、アピールしきれない。ナンセンスと無視されがちである。
 米国のオバマ大統領が<チェンジ>すべきだと<力>から<調和>へと世界に訴え、いよいよ日本の<和の精神>の出番かと期待したが最近はしぼみがちである。

 急ぎ過ぎた<原発エネルギー問題>、世界経済を覆う<借金先送り体質>のみならず、国際政治の<力に依存する体質>においてもやはり<西洋型文明の進化路線に逆らえるのか?>と問いかけたい。
 

エッセイ(86)文明の進化路線に逆らえるのか(17)

2011-08-03 04:01:23 | エッセイ
 米国が史上初の債務不履行に陥る危機は、債務上限法案が可決され回避された。
 つまり、さらに借金を上乗せすることで問題を先送りにしたのだ。
 <その場しのぎの、問題先送り体質>は日本だけではなかった。
 
 世界経済を牽引しているはずの米国がこんな状態なのだ。

 また、ユーロ圏もギリシャなどの深刻な経済状態の国を抱え、自らも苦境にあるイタリアの財務相など「・・・タイタニックじゃないけど・・・自分は助かると思ってはいけない。一等船客だって助からない」なんて言っている。

 他人事じゃないですよ。日本だって借金残高は900兆円に迫り、主要国では最悪の状態に陥っている。
 しかし、現状は欧米の債務ショックで円高ドル安に振れ、そんな最低の日本の円が買われるという皮肉な結果になっている。
 これは、1000兆円を超える預金などの個人資産が金融機関を通じて国債を買い支え、通貨の信用が保たれているからだ。
 だが、毎年数十兆円ずつ借金が増えており、あと数年でギリシャ状態に陥る可能性も否定できない。

 中国高速鉄道事故問題は、天声人語氏の言葉を借りれば「巨石は民のしかばねを越えて転がり続ける
のだそうだが、原発問題もそうだし、経済の借金問題も同じ<巨石>だ
 民の屍を踏み砕きながら転がり続けるのだ。
 
 ここへ来て人間のできることは<その場しのぎの、問題先送り>しか出来ないのだということを露呈してしまった。

 もう<エコ生活>しかないだろうとうという声もあるが、もともと人類というのは、多少の犠牲には目をつぶって幸せを求めて前へ進み続けるという性癖?がある。
 そして、その結末は恐竜の絶滅と同じ道をたどる?

 やはりここらで<文明の進化路線に逆らえるか?>と問いかけざるを得ない。