昭和のマロ

昭和に生きた世代の経験談、最近の世相への感想などを綴る。

三鷹通信(23)三鷹オスカー一日だけ

2010-03-23 07:19:06 | 三鷹通信
 三鷹市芸術文化センターで、<三鷹オスカー一日だけ、復活>というフランス名画三本立ての興行があった。
 

 <地下室のメロディー> <いとこ同志> <死刑台のエレベーター>の三本。
 <死刑台・・>は学生時代観たことがある。アンニュイなジャンヌ・モローに深く魅了された記憶がある。他は初めてだ。
 白黒だし、三本立てなんて堪えられるか。途中で眠ってしまうのでは・・・。

 しかし、そんな懸念は<地下室のメロディー>の冒頭、パリの駅前の雑踏、バスに乗り換えたジャン・ギャバンの姿を見た途端に吹っ飛んでしまった。
 

 彼の周りの乗客が最近旅行した自慢話を騒々しくしゃべっている。とつぜん一人が「オレなんか最近ギリシャに行って来たんだぜ、いくら掛かったと思う? 8万フランだぜ。ローンを組んで行ってきたんだ」
 ジャン・ギャバンがつぶやく。
「ローンで旅行? あとでセコセコ働いて返す? そんなサラリーマン的生活なんて真っ平だぜ」
 バスを降りて町の変わりように驚く。「昔は緑に囲まれた豊かな町だったのに。ちんけなアパートばっかりじゃないか・・・」昔、と言っても5年前だが、町名を聞いても分からない。変わってしまったのだ。・・・ああ、彼はムショ帰りなんだ。

「あら、早かったのね?」迎えたのは美人の奥さん。「行かなくって悪かったわね、他に男を作っていると思ってたんでしょ?」「いや、ぜんぜん。あんな所へお前なんか来たら大変だよ。何をするか分からない連中ばかりなんだから・・・」
「わたし、考えていたの。この家を売ってあなたの残していったお金を加えれば地方でホテルが買えるのよ」「どれほどのホテルが買えるというのだ」「もうあなたも歳だし、こんどやったらもう帰って来られないわよ。地道に暮らしましょう」「冗談じゃないぜ。おれはでかい山を考えているんだ。大富豪になってオーストラリアあたりで暮らすんだ」

 ギャバンは、ムショで知り合ったアラン・ドロンとカジノの何億という大金を狙う計画を練る。
 ムショ帰りで母親と角突合せやさぐれていたドロンは、ギャバンに誘われ彼の指図でカジノのある大ホテルへ金持ちのイケメンぼんぼんとして入り込み、次々と女をたらしこんでホテル内の情報を集める。 格好いいね! 若きドロン。身のこなしも軽快だし。・・・
 まんまと大金をせしめ、そしてかの有名なラストシーン。
 プールに浮ぶ大量の紙幣。

 ─続く─