昭和のマロ

昭和に生きた世代の経験談、最近の世相への感想などを綴る。

エッセイ(19)ゴルフ(3)

2008-10-22 10:41:49 | エッセイ
 今年の日本オープンは、福岡の古賀GCで行われ、1アンダーで片山晋呉が優勝、史上7人目の永久シードも獲得した。
 注目の新人、石川遼も単独2位に入り見ごたえがあった。

 片山は屈指の難コースにひるむことなく、冷静なルーティーンによるアドレス、トラブルにも心乱されることなく2位と4打差、ただひとりアンダーで攻めきった。
 
 ぼくはテレビを見ながら、2001年の全米オープンの試合を思い出していた。
 
 コースの掲示板に映し出された言葉、<UNBILIEVABLE>そのものだった。

 最終2ホールを残して5アンダーの三人に優勝争いは絞られた。
 最終組のグーセンとシンク、先を行くブルックスだ。
 ブルックスは最終ミドルホールを2オン、バーディチャンスを迎えた。
 しかし、強く攻めた第1打はオーバー、返すパットも外し、4アンダーに後退した。
 彼にチャンスはほぼ無くなったと思われた。
 オクラホマの難コース、サザンクロスの中でも最難関18番のティーショットを、最終組のふたりは共にアイアンでナイスショットを放った。

 先にセカンドを打ったシンクはグリーン左上のラフに外す。
 170ヤードを残すグーセンは7番アイアンでナイスショット。
 ホール右上、5~6メートルのバーディチャンスにのせた。

 この時点で初日からずっとトップグループを形成してきたグーセンが有利になったことを疑うものはいなかった。
 ましてや帰り支度をするブルックスの姿に、万が一にもチャンスが訪れるとは誰も思わなかった。

 そしてシンクのラフからのアプローチはグーセンのボールより遠く、外せば優勝のチャンスから完全に見放されるはずだった。
 彼は家族の見守る中で外した。
 気落ちした彼はわずか30センチの返しのパットも外して、ブルックスより後退、完全に脱落した。
 グーセンは2パットで優勝だ。

 ところが冷静に見えた彼に何が生じたのだろう。
 相手が3パットして気が緩んだのか、あるいは優勝目前の極度の緊張感が襲ったのか。

 何となく打ったファーストパットは、50センチあまりホールをオーバーした。
 そして信じられないことにその短い優勝パットを外したのだ。
 
 <UNBILIEVABLE!>
 電光掲示板に表示された言葉が、見る者すべての気持ちを表現していた。

 ブルックスは明日のプレイオフに再浮上することになった。
 返しのパットを丁寧に入れていれば、このプレイオフに加われたはずのシンクは悔やんでも悔やみきれない思いを、その肩を落とした背中に現わしていた。

 プロといえどもわずかなルーティンを怠ったために、大きな犠牲を払うハメになるのだ。
 
 


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