昭和のマロ

昭和に生きた世代の経験談、最近の世相への感想などを綴る。

エッセイ(147)海流の旅人

2012-12-07 06:32:12 | エッセイ
 メル友、林 檸檬さんがエッセイ集<海流の旅人>をフーガブックスから出版された。
 
 メル友と言ってもぼくの親友、心臓外科医の奥さまだ。

 このご夫妻からぼくは少なからず影響を受けている。
 この本の言葉を借りれば「退屈な人生は送らせない」というプロポーズを吐いて彼女と結婚した旦那は、じっとしていれば死んでしまう回遊魚だった。
 彼とは大学の近くの川崎の下宿でいっしょになった時からの付き合いだが、金沢というのんびりとした地方から出てきたぼくにとって彼の存在は衝撃的だった。
 ともすれば下宿でじっとしているタイプのぼくは、食べ歩きと称して、渋谷とか新宿、目黒、時には横浜まで引きづり回された。
 社会人になってからも、彼は下宿の仲間を束ね、ゴルフとか食事会を夫婦連れで毎年、何十年と継続して仕切ってきた。

 彼が米国に留学して帰国してから宇都宮に新居を建築、招かれて訪問したとき、ぼくは奥さんからも衝撃を受けた。
 玄関先に大きな稲穂がで~んと活けられていた。
 
 (これは現物ではないが・・・)
 それがなんとビーズで出来ていると知った時はびっくり。
 米国滞在中に奥さんが習得した技術による作品だったのだ。
 
 それと、供された食事がすばらしかった。 味が素晴らしいのはもとより、その手際にぼくは痛く感銘させられた。次々と手作りの珍味、・・・さすが酒好き・・・が出てくる。
 たまには、病院の看護婦さんとかも呼んでカレーパーティを開いていたとか。
 あの宇宙飛行士の向井千秋さんがまだ研修医のころ、ともに食事をさせていただいたこともある。

 その後、彼女のエッセイが連載されていたfoogaという大判の月刊誌が送られてきて、物を書くという共通の趣味を通して彼女とメル友になった。
 「ペンネームの檸檬という難しい漢字は、爽やかなエッセイの内容にそぐわない」といちゃもんをつけると、「文章が構築的で、形と物と色が一つにまとまって立体的に迫ってくる梶井基次郎の<檸檬>に影響されたんです」
 ぼくが好きなレイモンドチャンドラーの<長いお別れ>の一場面を紹介したら「きゃーっと、年甲斐もなく黄色い声を張り上げてしまいました。私の最も好きなフレーズなんです・・・」と返していただいたり、ともかく彼女は未だ女学生なんだ。もう70歳近くになるはずなのに・・・。
 
 彼女のキーワードは、ビーズ、書く、お酒、旅でしょうか。
 そんな彼女の魅力が<海流の旅人>に満載されています。
 (一部、マイブログ、2011年、10月6日のエッセイ(94)にも載せましたのでご覧ください。)
 
 作家、内海隆一郎氏が、<海流の旅人>の巻末に「ともかく書き続けてください」と書いていますが、これからも回流魚の旦那の背中に乗って、あちこちへと泳ぎ回ってください。
 
 
 そしてたまには旦那とギムレットを一杯!



最新の画像もっと見る

コメントを投稿