昭和のマロ

昭和に生きた世代の経験談、最近の世相への感想などを綴る。

三鷹通信(111)第12回読書ミーティング

2015-03-29 05:14:41 | 三鷹通信
 昨日は忙しくも充実した1日でした。
 朝9時から12時まで<みたか朝活>   
 午後2時から5時まで<読書ミーティング>

 <みたか朝活>の報告は明日に回して、先ずは<第12回読書ミーティング>の報告をします。

 *現役編集者の講師から<今年のベストセラー>について。
  イスラム国がらみの本がたくさん出ました。
  (テロリスト国家の来歴と今のイスラム情勢)
  
 
 

 この問題に絡んでイスラム教って何だ、本当は偉大なイスラムの知恵なんだ、という入門書が出ましたが、既刊本が多い。
 
 
 

 そして昨年12月からこれまで売れているのがトマ・ピケティの「21世紀の資本」
 
 世界的なベストセラーで、こんな5,500円もする分厚い本が日本でも現在13万部にもなろうかという勢いで売れています。
 国家全体で投資・不動産・相続による収支が、経済成長を上回っています。
 生産の伸びより金持ちの伸びが大きいなんて、おかしいんじゃない?
 現在の世界経済の異常を指摘したものです。
 (資本収益率(r)>経済成長率(r))
 
 「金持ちはますます金持ちになり、格差が拡大するじゃないか、金持ちに税金をかけて中間層以下に還元する仕組みを!」というアピールが受けているのでしょう。
 解説本も出ています。
 

 圧倒的に売れているのは「フランス人は10着しか服を持たない パリで学んだ”暮らしの質”を高める秘訣」(ジェニファー・スコット)で、5か月で35万部売れています。
 
 カリフォルニアガールがパリに半年住んだ体験記で、アメリカでもベストセラーだそうです。
 マテリアリズム(物質欲望主義)からミニマル(ささやかな日々を愛するように)へということでしょうか。
 杉浦日向子描く粋な江戸の女を思い出しました。
 
 ・・・あこがれのパリに住むフランス人が10着の服で上質な暮らしをする・・・
 読書ミーティングに参加された女性たちも興味津々のようでした。
 
 *参加者からの<推薦本>

 (1)「太公望」宮城谷昌光
  
 紀元前11世紀、中国の中原(現在の北京辺り)に位置し、古代王朝として栄華を誇った<商>。
 その巨大王朝によって父と一族を殺戮された一遊牧民の子が復讐を誓い、<商>を滅ぼすに至る壮大な叙事詩です。
 絶望から奮起、苛烈な試練を経て、相手を見る目、咄嗟の判断力を磨き、チャンスを捉え、遂には単なる復讐から国家展望の志へと変わっていくのです。
 (占い、剣術、酷い刑罰、生贄、物々交換などの古代生活から貨幣経済に移行していく歴史過程も興味深い。商人と呼ばれる所以だそうです。)
  
「主人公の魅力、生きていく目的を貫き通すすばらしさ、物語の世界ならではの主人公の生き様の醍醐味をぜひ味わってほしい」
 推薦者の言葉に、ぜひ読んでみたいと思いました。

 宮城谷昌光は、歴史小説作家で古代中国の偉人にスポットを当てた作品を得意としています。
 自費出版した「王家の風日」が500部にもかかわらず司馬遼太郎の目に留まったのがデビューのきっかけだったそうです。

(2)海の翼(秋月達郎)
 
 昭和60年イラン・イラク戦争のさ中、フセイン大統領は48時間以降はイラン領海内の航空機無差別攻撃を宣言しました。
 イランに取り残された200人以上の日本人の救出に、日本政府も救出機を出せない中、即決で動いてくれたのがトルコ共和国でした。
 その背景には日本に対するトルコの<恩返し>の情が込められていたのです。
 明治23年に串本で遭難したトルコの「エルトゥールル号」の大勢の水兵を小さな島の住人が総出で献身的に救い出し、トルコへ送り返したという事件があったのです。
 トルコはこの事件を教科書にも書きとどめ、多くのトルコ人がこのことを知っています。
 宿敵ロシアを日本海海戦で破ったこともトルコの日本びいきに一役かっているようです。

(3)「世界通貨戦争後の支配者たち」原田武夫
 
 これはボクの推薦です。
 ボクはかねがね世界が金融メルトダウンに陥っている現状に懸念を抱いていました。
 従来、アダムスミスの「国富論」やマルクスの「資本論」、ケインズの「有効需要の原理」などの経済理論が存在しましたが、現在明快な経済指導理論が存在しません。
 先に触れられたピケティの「21世紀の資本」が売れるわけです。
 なぜ、一部のお金持ちに世界の金融が取り込まれてしまったのか?
 そしてそれをがギャンブルのようないかがわしい手法で世界の金融を翻弄する状況がまかり通っています。
 
 それと科学の進歩が<悪魔のエネルギー>と言われる「核エネルギー」の開発により、ついに人類世界を滅亡に陥れかねない<核兵器>を生み出してしまったのです。
 そして国連常任理事国である米・英・仏・ロ・中の戦勝国大国がその兵器を保有し、世界を牛耳っているのが現状です。
 その脅威をバランスすることで世界の平和が保たれているという理屈ですが、今やその<悪魔の兵器>がならず者の手に渡る危険性もあるのです。
 ボクはそういう意味で現在の人類文明は危機にあると見ています。
 そして「自分さえよければ、今さえよければ、先のことはどうでもいい」という、人間の<性(さが)>に警告を発するつもりで「レロレロ姫の警告」という小説を出版しました。
 
 自然界の中で生きているくせに、自然の理を無視した考え方、行動をする人類は傲慢でどこかおかしいということを警告しています。
 
 そんな時に目に触れたのがこの本です。
 上で述べたボクの疑問に応えている! と思ったのです。
 現在の金融が少数の人たちの手に握られている。それを歴史的に辿って行けば、戦争を肥やしに身を太らせたロスチャイルド一族の金を巡る動きに行きつきます。
 これに関しては陰謀説などいろいろありますが、ボクはロスチャイルド一族がたまたま強欲な人類の性に通じていてそれを巧みに操り自らを太らせて行った結果だとみています。
 今やアメリカの財政もロスチャイルドやロックフェラー一族など、一部のひとたちの金に繰られてロビー活動などで政治さえもコントロールされています。
 
 日本との関わりも明治初期から徳川家とのつながりを通じて金融で徐々に浸透し、日露戦争から第二次世界大戦へと金を出し入れしていたようです。
 しかし、第二次世界大戦であれだけしこたま落とし込まれた日本は不死鳥のように蘇ってきました。彼らからすると日本はちょっと西欧的諸国と考え方、行動傾向が異なるのではないかと作者は指摘しています。
 つまり、自然に恵まれた日本は<森の民>であり、彼らは<砂漠の民>の発想をベースにしています。
 彼らは常に前進し続け、自然をコントロールし続けなければ生きていけないという強迫観念で行動しているように見えます。
 しかし、日本は本質的にそんな決断をする必要がないと見ています。
 
「自分さえよければいい、今さえよければいい、先のことはどうなってもいい」
 この<砂漠の民>的な考え方をベースに発展し続けた文明は今や岐路に立たされています。
 作者は結論づけています。
「人類史はいよいよ地球(ガイヤ)との調和を旨とする長期安定の時代へと突入し始めた。そこで旨とされるのは<足る>を知るということであり、自然(じねん)という均衡状態への絶えざる調整だ。その意味での<出と入り>を絶えず意識し、個人のライフスタイルへと落とし込める人間だけが幸福感を感じ、充実感を感じることの出来る時代が到来した」
「日本を支える将来世代たちが誇りを持ったこの国・日本の中で豊かさと幸せを享受していく。そうなった時──日本は他の誰の手をも借りることなく、今度は自らの手で黄金の国(ジパング)へと昇華し始める。その姿を見た世界は日本に追従し、やがて世界はジャパナイゼーション(日本化)の時代を迎える」と。

(4)「男しか行けない場所に女が行ってきました」
    田房永子
  
 今回出色の推薦本。
 男しか行けない場所、各種風俗店、ガールズバー、ピンク映画館、風俗で働く女性たちへのインタビュー、エロ本撮影現場の取材、・・・。
「男性向けエロ本の中には、<女>についての情報しか書いてないけれど、私にとっては<女>から一番遠い世界だった」

「風俗は、アホ男を増長・増殖させている」
 おっパブは男仲間とのコミュニケーションツールになっている。恥と自覚せず同志愛となるこの感覚。
「男のケアに関しては研究し尽くされ、要望に、応えようとする営業熱心さは多い」
 しかし、女に対してのものは男の思い込みおよび、そう思い込みたいであろう意志に即したウソ情報ばかり。
「借金を返したら風俗は辞める」と涙ぐむ女の子、そんな重苦しい雰囲気は活字にならない。「かわいくてエロい」という「男の幻想」だけだから。
 女は性欲の対象で、人格は必要なかった。
「これだから、男女平等なんて口だけなんだ」
「男は、どんな風に女が怖がっているのか分からないんだ」
 男が女を人として尊重できる社会にするには、学校で教えたり、男が家事や育児をし易いように社会を変えることをみんなで考えないと実現できない。   

 ・・・う~ん、風俗に行く際に、女のことを考えていないかも。
 いなかったかも、に訂正。

 *ロングセラー(講師から)「破戒」島崎藤村
  
 明治後期、出身の教員丑松は父親から堅く戒められていたにも関わらず、同じ宿命を持つ解放運動家、蓮太郎の壮絶な死に動かされ、ついに戒めを破ってしまう。
 その結果偽善に満ちた社会は丑松を追放し、彼はテキサスに旅立つ。
 激しい正義感をもって社会問題に対処し、目覚めた者の内面的相剋を描いて近代日本文学の頂点をなす傑作です。

 人類の弱さと社会の残酷さが時代を越えて賛否両論を呼び起こす。
 ロシア、ドイツ、アメリカで翻訳。ロングセラーに。
 世界で通じるテーマです。