昭和のマロ

昭和に生きた世代の経験談、最近の世相への感想などを綴る。

エッセイ(143)文明の進化路線に逆らえるか(41)有人宇宙開発無用論

2012-11-20 05:22:13 | エッセイ
 星出彰彦氏が国際宇宙ステーションで日本人最長の4か月滞在を終えて無事帰還されたことが、明るいニュースとして大きく報道された。
 
 
 そこで、文芸春秋に立花隆氏が「有人宇宙開発無用論」を書いていたことを思いだした。
 わがテーマの<文明の進歩路線に逆らえるか?>にもかかわる興味深いご意見を展開されているので、ここにかいつまんで紹介させていただく。

 立花氏は<ふわっと’92から20周年記念シンポジウム>
「ヒトはなぜ宇宙に行くのか?」に参加された。
 宇宙飛行士、毛利衛さん、向井千秋さん、野口聡一さん、秋山豊寛さんなどが参加されていたそうだ。
    
 シンポジウムの主たる話題は、日本はこれから宇宙で何をやっていくべきか、独自の有人宇宙開発をやるべきか否かだった。
 中国がすでに多数の有人飛行を成功させている。有人月探査や、独自の宇宙ステーション建造、有人火星探査を行う計画もある。
 そういう状況を踏まえ、日本でも、という声が高まっている。

 そんな中で立花氏は反対論をぶつはめになったそうだ。
 反対の理由①日本人は有人宇宙に伴う人の死のリスクに耐えられないだろう。
 ②金がかかり過ぎる。

 ①あの技術大国アメリカですらチャレンジャー事故、コロンビア事故で多数の犠牲者を出している。日本で同じような事故が起きた場合、アメリカ人が毅然と乗りこえたようなことが期待できるだろうか? 
 
 JAXAに対するものすごいバッシングで、二度と立ち直れないだろう。
 ②有人ということになれば安全係数をもう一ケタあげなければならない。日本にはそんな余裕はない。

 有人技術開発の重要性として、経済的に大きな利益を生むだろうというのがある。地上では絶対できないような付加価値の高い物質(合金、結晶など)を生み出す宇宙工場がじゃんじゃん出来る、と。
 しかし、この二十年で成果は挙がっていない。

 立花氏に対し宇宙飛行士から反論の火の手が上がった。
「宇宙は本質的に費用対効果ではかれるものではない」
「こどもたちに夢を与え、知見を広められるようなことには金を惜しむべきではない」
「宇宙がもたらしてくれるいちばん大きな恩恵は、物質的なものではない。精神的な副産物が大切だ」

 それに対し、立花氏は「独自の有人に意味があるとすれば、国威発揚ぐらいだろう。そんなことは国威発揚が何より大切な中国に任せておけばいい。・・・国際チームの一員として、日本の独自性を発揮できる得意技術分野で勝負すべきだ。
 
 ・・・完全自律ロボット<はやぶさ>で実績を示したように、サンプルリターンで、月も火星、土星、木星と征服し、有人の国威発揚にこだわる中国人など「遅れれてるー」と笑ってやればよい、と。