三鷹ブログ村で知り合ったタテさんが<江戸しぐさ>(華麗なるかな大人の文化)という魅力的なブログを展開している。
読んでいたら、先日テレビで見たパリの<パッサージュ>のことを思い出した。
温かなオレンジ色に包まれたパリのアーケード街<パッサージュ>
「おっ! これは珍しいステッキ専門店だ」カメラは親切な店主に誘われて中へ入る。
シックなステッキがいっぱい並んでいる。こんなにたくさん集めて需要はあるんだろうか。心配してしまう。
「こんなのいかがですか?」杖の中ほどをぱかっと開けると絵具のパレットになっている。 気に入った風物に足を止めて、パリの粋人はこれで絵を描いたのだろうか。
2階に上がると、背広の胸ポケットに赤いハンカチを覗かせた紳士が、ソファにくつろいでコーヒーを飲んでいる。「コーヒーをお呼ばれしています」お隣でホテルを営むオーナーだそうだ。
「パッサージュは19世紀に大流行したんですよ。暖房設備もあったんですよ。地下に名残りがあるんです。見てみますか?」とホテルオーナー。
鉄格子の扉を開けて地下に降りる。カメラは急な階段を降りるオーナーに続く。
背広の後ろ姿が決まって、さすがホテルオーナーという貫禄だ。
足音が石造りの地下道に響く。
「ほら、このパイプから温かい空気がパッサージュに流れ出ていたんですよ・・・」
上を見ると、天井の穴の格子越に歩いている人が見える。
パン生地を大きな受け皿に載せたコック風の人に会う。「お隣のケーキ屋さんです」とオーナー。「今からパンを焼きに行くんです」とコックさん。地下にパンの焼き場があるんだ。「おたくのパンは美味しいからね」「じゃあ、また・・・」
少し行くと入り口に本が積んである。
「本屋さんです」なるほど、階段を上ると本屋の店内だ。お客がたくさんいる。
「パッサージュは小さな村みたいものです」とオーナー。「心地よい風が流れています」と本屋の店主。外へ出ると小奇麗なホテル。
「ここがウチのホテルです・・・」「どうもありがとうございました」「オルバー」
なるほど、隣は本屋さんとケーキ屋さんだ。
革ジャンの恰幅のいいおじさんが大きな花束とフランスパンを手に歩いている。「きれいな花束ですね。どちらへ?」「すぐそこに住んでいるんです。寄っていらっしゃいますか?」「えっ? いいんですか?」「どうぞ、どうぞ、ご遠慮なく」
何と親しげで優しいんだ。
「では、失礼して」カメラはおじさんに従って階段を上る。屋上に出た。年季の入った植木が並んでいる。温室の屋根のようなガラス屋根がずっと並んでいる。パッサージュの中から上を見上げたときに見たガラス屋根だ。そして向こう側へ渡る橋がかかっている。
ガラス屋根に白黒の猫がいた。
「わたしの友達なんですよ」おじさんが持っていたフランスパンのかけらをあげた。おじさんが歩くと猫が付いてくる。
おっとガラス屋根に足を滑らした。
ガラス屋根には夕ぐれの雲が映っている。
「ここが私の住まいです。飲み物でもいかがですか? 私はパッサージュで花屋をやっているんです」
カギを開けるとシンプルな白い部屋。
「もうここに住んで25年になります。子どもも25歳になって独立しました」
ふたたび外へ出る。
お隣の奥さんが帰ってきたところだ。
「植木がたくさんありますね」と聞くと「花屋のご主人にみつくろってもらったんです」
「お気に入りはこれでしたね」と花屋のおじさん。
「ええ、このタイサンボクが気に入ってるんです」と奥さんは笑顔。
いいな、パッサージュのご近所付き合い。
「なるほど、小さな村か。心地よい風が吹いている・・・」
カメラはふたたびパッサージュを歩く。
アクセサリーを並べたお店。レストランもあるみたいだ。
「あっ! 花屋だ。さっきのおじさんの店かな?」
今連載中の小説、<昭和のマロの憂鬱>に、マロ(ぼくではありません、念のため)がパリで迷子になり、このパッサージュの小さなレストランでで渡辺社長とエスカルゴを食べるシーンが出てきます。 お楽しみに。
読んでいたら、先日テレビで見たパリの<パッサージュ>のことを思い出した。
温かなオレンジ色に包まれたパリのアーケード街<パッサージュ>
「おっ! これは珍しいステッキ専門店だ」カメラは親切な店主に誘われて中へ入る。
シックなステッキがいっぱい並んでいる。こんなにたくさん集めて需要はあるんだろうか。心配してしまう。
「こんなのいかがですか?」杖の中ほどをぱかっと開けると絵具のパレットになっている。 気に入った風物に足を止めて、パリの粋人はこれで絵を描いたのだろうか。
2階に上がると、背広の胸ポケットに赤いハンカチを覗かせた紳士が、ソファにくつろいでコーヒーを飲んでいる。「コーヒーをお呼ばれしています」お隣でホテルを営むオーナーだそうだ。
「パッサージュは19世紀に大流行したんですよ。暖房設備もあったんですよ。地下に名残りがあるんです。見てみますか?」とホテルオーナー。
鉄格子の扉を開けて地下に降りる。カメラは急な階段を降りるオーナーに続く。
背広の後ろ姿が決まって、さすがホテルオーナーという貫禄だ。
足音が石造りの地下道に響く。
「ほら、このパイプから温かい空気がパッサージュに流れ出ていたんですよ・・・」
上を見ると、天井の穴の格子越に歩いている人が見える。
パン生地を大きな受け皿に載せたコック風の人に会う。「お隣のケーキ屋さんです」とオーナー。「今からパンを焼きに行くんです」とコックさん。地下にパンの焼き場があるんだ。「おたくのパンは美味しいからね」「じゃあ、また・・・」
少し行くと入り口に本が積んである。
「本屋さんです」なるほど、階段を上ると本屋の店内だ。お客がたくさんいる。
「パッサージュは小さな村みたいものです」とオーナー。「心地よい風が流れています」と本屋の店主。外へ出ると小奇麗なホテル。
「ここがウチのホテルです・・・」「どうもありがとうございました」「オルバー」
なるほど、隣は本屋さんとケーキ屋さんだ。
革ジャンの恰幅のいいおじさんが大きな花束とフランスパンを手に歩いている。「きれいな花束ですね。どちらへ?」「すぐそこに住んでいるんです。寄っていらっしゃいますか?」「えっ? いいんですか?」「どうぞ、どうぞ、ご遠慮なく」
何と親しげで優しいんだ。
「では、失礼して」カメラはおじさんに従って階段を上る。屋上に出た。年季の入った植木が並んでいる。温室の屋根のようなガラス屋根がずっと並んでいる。パッサージュの中から上を見上げたときに見たガラス屋根だ。そして向こう側へ渡る橋がかかっている。
ガラス屋根に白黒の猫がいた。
「わたしの友達なんですよ」おじさんが持っていたフランスパンのかけらをあげた。おじさんが歩くと猫が付いてくる。
おっとガラス屋根に足を滑らした。
ガラス屋根には夕ぐれの雲が映っている。
「ここが私の住まいです。飲み物でもいかがですか? 私はパッサージュで花屋をやっているんです」
カギを開けるとシンプルな白い部屋。
「もうここに住んで25年になります。子どもも25歳になって独立しました」
ふたたび外へ出る。
お隣の奥さんが帰ってきたところだ。
「植木がたくさんありますね」と聞くと「花屋のご主人にみつくろってもらったんです」
「お気に入りはこれでしたね」と花屋のおじさん。
「ええ、このタイサンボクが気に入ってるんです」と奥さんは笑顔。
いいな、パッサージュのご近所付き合い。
「なるほど、小さな村か。心地よい風が吹いている・・・」
カメラはふたたびパッサージュを歩く。
アクセサリーを並べたお店。レストランもあるみたいだ。
「あっ! 花屋だ。さっきのおじさんの店かな?」
今連載中の小説、<昭和のマロの憂鬱>に、マロ(ぼくではありません、念のため)がパリで迷子になり、このパッサージュの小さなレストランでで渡辺社長とエスカルゴを食べるシーンが出てきます。 お楽しみに。