昭和のマロ

昭和に生きた世代の経験談、最近の世相への感想などを綴る。

エッセイ(28)ある大先輩の死(3)

2009-10-21 07:07:54 | エッセイ
 終戦になって、彼は2500円の退職金と3俵の米をもらった。
 その際、以前から懇意にしていた芸妓から、米兵の慰みになるのは嫌だから身請けしてほしいと懇願された。
 いくら必要か問うと、500円だという。
 これが5人いたものだからちょうど2,500円。
 彼はすからかんになった。

 

 後に置屋のオヤジが短刀を畳に突き立てて、これから儲けようとするところだったのに余計なことをしてくれたと怒鳴り込まれた。
 彼も軍刀を突き立てて、こちらの方が長いぞと応対したそうです。

 ぼくが退職して、三鷹地区の同窓会組織に入会した時、大先輩は鎌倉にお住まいでしたが、わざわざ50キロも離れた会の麻雀やゴルフ会に積極的に参加されていました。
 ぼくも入会以来目をかけていただき、大森の事務所にも誘われてプライベート麻雀を楽しんだり、体験談をお聞かせいただいたり、かわいがっていただきました。

 既に古稀を超えていらっしゃいましたが、鼻梁が高く、眼光鋭い顔に刻まれた深い皺、そして達観した言葉の端々に、これまで波乱万丈の人生を送ってこられた味わいがにじみ出ていました。

 ひと言で評せば、ライオンのような風格がありました。
 そして不死身な方でした。
 交通事故に遭った、階段を踏み外したなどとお聞きして心配していると、翌日にはけろっとした顔で麻雀会に現れる方でした。

 ─続く─