昭和のマロ

昭和に生きた世代の経験談、最近の世相への感想などを綴る。

有名人()男の魅力(4)

2009-02-14 06:04:35 | 男の魅力
 <男の魅力4>

 NHKこの人にときめっき!は坂本龍一。
 

 ぼくは思わず引きつけられた。
 
 インタビューアーの黒崎めぐみアナと永井伸一アナが上気して、彼の輝かしい履歴に賞賛を浴びせている。
「いや、いや、もうアラカン(アラウンド還暦)ですから・・・」
 彼は温和な顔で、照れたように手を振る。
 へえっ!もうそんなお歳か。まだまだ若く見える。

 思い起こすと、彼がロンドンのテムズ河畔でYMOの頃だろうか、キーボードを演奏していた。
 何故か現代的な曲なのに平安時代の雅な琴のような、眇々とした音色としてぼくの頭にこびりついている。

 そして、アカデミー作曲賞受賞者としての輝かしい活躍、最近の環境・平和問題への言及、そんな印象しかぼくの記憶にはなかった。

 ところが今の彼からは想像もつかない過激な若い時代があったのだ。
 新宿高校時代には学生運動にかかわり、「授業なんか無くせ!」と演説していたそうだ。
 東京藝術大学時代には、当時音楽会の象徴的存在だった武満徹を中傷するビラを撒いたりした。

 加藤登紀子が彼のピアノの演奏技術に感嘆したところ、彼は「18歳の頃の僕はもっとすごかった」とか、自分はドビッシーの生まれ変わりだとか豪語する自信家だった。
 西洋音楽は終ったと、もっと心の声を聞けとか言っていたそうだ。

 YMOでの活動は国内外のオーバーグラウンド・ニューウエーヴに革新を起した。
 そして大島渚監督の<戦場のメリークリスマス>の音楽を担当し、<ラストエンペラー>でアカデミー作曲賞を得ることに繋がる。
 それぞれの映画では俳優としても出演している。

 <アラカン>を迎えた今も、物事を追及する眼光は衰えない。
 <細胞まで調べて全体像に迫る>という作曲は、作って終わりではなく、<人に聞いてもらって初めて完成する>という姿勢は真摯である。

 今も録音機を持参し、街の中の些細な音を拾って歩く。
 パトカーのピーポーピーポーという音も国によって個性があり面白いと言う。
 北極では氷の割れる音など、自然の音にも関心を示す。

 今は、自然を守り、樹を植える運動や、子どもを見守る平和運動にも携わる。
 激しくエネルギーを爆発させた若い頃から、繊細な事象にまで気を配る姿勢が積み重なって、今や、いい歳を重ねた男の健康的な優しさを醸し出している。

 「戦場のメリークリスマス」をピアノで生演奏した。
 澄んだ、清らかな、こころ和む音色だった。