歌番号 1245 拾遺抄記載
詞書 物へまかりけるみちに、はまつらにかひの侍りけるを見て
詠人 坂上郎女
原文 和可世己遠 己不留毛久留之 以止万安良八 飛呂日天由可武 己比和須礼可比
和歌 わかせこを こふるもくるし いとまあらは ひろひてゆかむ こひわすれかひ
読下 わかせこをこふるもくるしいとまあらはひろひてゆかむ恋忘かひ
解釈 私の愛しい貴方を恋焦がれるのも辛い、もし、時間が許せば、拾っていきましょう、あの恋心を忘れさせると言う恋忘れ貝を。
歌番号 1246 拾遺抄記載
詞書 人のくにへまかりけるに、あまのしほたれ侍りけるを見て
詠人 恵慶法師
原文 不留左止遠 己布留多毛止毛 加者可奴尓 萬多志本多留々 安万毛安利个利
和歌 ふるさとを こふるたもとも かわかぬに またしほたるる あまもありけり
読下 旧里をこふるたもともかわかぬに又しほたるるあまも有りけり
解釈 旅先で故郷を思って恋焦がれる私の袂は流す涙で乾かないのに、それに勝って袖から潮の雫を垂らす海人がいる。
歌番号 1247
詞書 仁和、御屏風に、あましほたるる所につるなく
詠人 大中臣頼基
原文 志保多留々 三者和礼乃美止 於毛部止毛 与曽奈留堂川毛 祢遠曽奈久奈留
和歌 しほたるる みはわれのみと おもへとも よそなるたつも ねをそなくなる
読下 しほたるる身は我とのみ思へともよそなるたつもねをそなくなる
解釈 海人の袖に潮の雫が垂れる、国を離れた悲しみに袖に涙を流すのは私だけと思っても、同じように遠く隔たった鶴も声を上げて鳴いています。
歌番号 1248
詞書 まうてくる事かたく侍りけるをとこの、たのめわたりけれは
詠人 よみ人しらす
原文 徒礼/\止 於毛部者宇幾尓 於不留安之乃 者可奈幾与遠者 以可々堂乃万武
和歌 つれつれと おもへはうきに おふるあしの はかなきよをは いかかたのまむ
読下 つれつれと思へはうきにおふるあしのはかなき世をはいかかたのまむ
解釈 あれこれと考え込むと憂し、その言葉の響きではないが、泥(うき)に生える葦のように、頼りないこの世を、どのように頼みにすればいいのでしょうか。
注意 この時代、「このよ」とは男女関係を意味します。
歌番号 1249
詞書 うきしま
詠人 したかふ
原文 左堂女奈幾 比止乃己々呂尓 久良布礼者 多々宇幾之満者 奈乃美奈利个利
和歌 さためなき ひとのこころに くらふれは たたうきしまは なのみなりけり
読下 定なき人の心にくらふれはたたうきしまは名のみなりけり
解釈 ふらふらと気持ちの定まらない貴方の気持ちに比べたら、ただ、浮島は「浮き動く」との評判だけで、しっかりした島でした。
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