旅のプラズマ

これまで歩いてきた各地の、思い出深き街、懐かしき人々、心に残る言葉を書き綴る。その地の酒と食と人情に触れながら…。

トラボウレスーー隠されたリヨンの通路

2007-12-14 15:35:46 | 

 

   リヨンのことでどうしても書き残しておかねばならないことは、トラボウレス(TRABOULES)という通路のことだ。結論から言えば、これは「建物の中を通過する道」のことである。しかもその建物は公共の建物ではなく、それぞれ個人の所有する建物である。
 ある通りに面した4~5階建ての建物に、
狭い、暗い通路が開いている。人の家の中に入るようにその通路に入って行ってドアを押すと、狭い中庭みたいな空間に出る。周囲には4~5階の住宅が聳えていて、それぞれ螺線形の階段が昇っている。その広間には井戸などがあるから、それを共同で使っているのだろうか?
 入ってきた反対側のドアを押すとまた狭い通路があるので、そこを歩き突き当たりのドアを押すと、全く別の通りに出る。
 「これはアナザーストリート(さっきと別の通り)だ」
と、わが友セルジュ君は通りに出る度に誇らしげに語った。また
 「わが町もドイツ軍にパルチザンを組んで戦ったが、ジャーマン・ソルジャー(ドイツ兵)は、この通路で常にわれわれを見失い、また中庭に迷い込んだ奴らは周囲から絶滅された」
とこれまた胸を張って語った。
 街の美しさを称えると、セルジュ君は「俺はここで生まれ育った。両親もリヨンで生きた」と胸を張るし、歴史遺産のどれをとっても誇り高く語った。
 私は、想像を絶する悪事が絶えない日本の現状を振り返り、自分の街に誇りを持つ彼を、本当にうらやましく思った。
                     
 


最新の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
隠されたリヨンの通路 (TN)
2007-12-14 23:04:26
自分が住んでいる都市・町に誇りが持てるというのは
素晴らしいことですね。
返信する

コメントを投稿