二日目の宿は岩木山中腹から日本海を一望する絶好のロケーション。蟹田港から鰺ヶ沢を過ぎてホテルに向かうにつれ空は晴れてきた。まだ岩木山頂には雲がかかっていたが、山裾が左右に流れて美しい。
岩木山を見るのは二度目である。一回は弘前市から眼前に威容を見て圧倒されたのを覚えている。今回は逆の日本海側からの眺めで、遥かに美しい山形を見て改めてきれいな山だと思った。この岩木山を堪能できたことは、今度の旅の最大の収穫の一つであった。というのも、ホテルに着くや空は晴れ渡り、しかも部屋から正面に見えて飽きることなく眺めつくしたからである。
翌朝も全くの快晴で、ベッドの中から岩木山を眺めつくし、起きだして、岩木山に連なるホテルの裏側のスキー場らしき丘陵を散歩した。
三日目の目玉は、津軽半島西海岸の、最北端「龍飛(タッピ)岬」と海岸を走る「五能線」。津軽半島西海岸は美しかった。午前中の空は、雲は多かったが遠望はきいて、弓なりの海岸に心を委ねた。
この調子ではタッピ岬から北海道が見えるかも…、などと思っていると、そうはいかない。タッピ岬に立つには、海岸から約6百メートル登って3百メートル下らなければならない。つまり、海抜3百メートルの位置にあるのだ。バスで山を登り始めると霧が襲ってきた。峠では視界10メートルぐらいだ。そこから3百メートル下ったが、竜飛岬も霧の中…せいぜい数十メートル先しか見えない。
「北海道はどこだ!」
標識や、『津軽海峡冬景色』の歌碑の前、また有名な「階段国道」などで写真ぐらいは撮ったが、最も展望を求められる場所の視界ゼロはあんまりではないか! 岩木山で「視界」を使い果たしたのかもしれない。