旅のプラズマ

これまで歩いてきた各地の、思い出深き街、懐かしき人々、心に残る言葉を書き綴る。その地の酒と食と人情に触れながら…。

面白かった映画「小三治」

2009-08-21 18:10:53 | 文化(音楽、絵画、映画)

 今朝になってワイフが突然「映画を見に行かない?」と言う。何かと思ったら、下高井戸でやってる「小三治」だという。落語家の映画なら肩の凝ることもあるまいと思い、軽い気持ちで出かけたが、ドッコイ! なかなか骨のある映画であった。面白いと言うより多くを考えさせられた。

 小三治という芸人が、いかに日日苦悩を重ねているかを見せ付けられる思いがした。落語の本番に入る前の「まくら」で名をはせた落語家の一人であるが、「まくらなんて事前に考えておくようなものではない。高座に座って初めて浮かんでくる。まくらばかりを集めた本などあるが、そんなもの意味ない。まくらは一回ごとに消えてしまうものでいい」というようなことを言っていた。
 一瞬一瞬に命をかけているのであろう。

 映画は本人の落語と「つぶやき」をつないだような内容だが、たえずつぶやいていた言葉は、
 「上手くやろう、完全にやろう、なんていつも思うが、そんなもの出来るわけが無い。人間自分の寸法以上のものは出来ない。こんな程度の寸法の人間に出来ることは知れている」
 「話の仕方や芸などどうでもよい。問題は人間だ。」
 「話より心だ」
と言うようなことばかりであった。人間として如何に成長するか? いかに豊かな心を育てるか・・・そればかりに悩む日々のようだ。そしてあれだけの芸を極めた人間が、
 「俺はこの道(落語)
にはむいてない」
と何度も言っていた。

 まくらで鳴らしたこの落語家の映画の、最後のセリフが洒落ていた。
 「まくらだけで本番まで行かなかったこともある。そんな噺家の話など二度と聞いてくれないと思ったら、次の日の方が沢山のお客さんが来てくれた。今度は本当の落語が聞けると思って来てくれたのだろうか・・・?」
                            


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