磐梯山を訪ねて、野口英世に触れないわけにはいくまい。私たちが、この地で最初に車を降りたのは、猪苗代湖の湖畔であり、その広々とした湖の空気を吸って、次に訪ねたのは野口英世記念館であった。
そこで、改めてこの偉大な人物の生涯に触れた。ちょうど『「人類のため命をかけてのアフリカ遠征」~黄熱病研究の軌跡』という特別展(08年4.28~11.30間)が催されていて、膨大な資料が展示されていた。この偉大な先人については、それなりに知っているつもりでいたが、知らないことばかりであった。
ただ、今更それらについて書き記しても仕方あるまい。多くの教訓の中から、心に残った一点だけを書き残しておく。
それは、自らの研究対象であった黄熱病に自分自身が罹り、遠くアフリカの地で死に至る時の最後の言葉である。彼が最後に残した言葉は
「・・・私にはわからない・・・」
というつぶやきであったという。そこには、研究者としての執念を感じさせるものがある。
それにしても、彼は何がわからなかったのであろうか?
自らの命を奪おうとする黄熱病の正体のことであろうか?
それとも、人間として背負ってきた哲学的課題の何かであ
ろうか?
それこそ、私など凡人には到底わからないことである。