翌19日、雨は上がった。だがわが家におけるセルジュ台風は続く。
セルジュ一家の二日目の日程は横浜・・・、お目当てはトヨタの経営する「トレッサ横浜」の中にある『リヨン広場』と、横浜中華街。私はそれに時間があれば『みなとみらい』の一角でも展望させたいと思っていた。
トレッサ横浜は東横線の大倉山からが一番近い(タクシーで10分)。わが上高井戸からも、渋谷経由大倉山が時間的にも最短。ところがセルジュ君はJRで行くと言う。なぜなら彼らは日本国中回れるJR切符を持っているのだ。何回でも乗れる券を有効に使いたいのだ。それを「JRでは“お前の誇るリヨン”に行けない。料金は俺が払うので東横線にしてくれ」と説得して強引に乗せた。
ところが大倉山に着くと、「タクシーはダメ。歩いて行く」と頑張る。駅員に聞くと少なくとも30分はかかると言う。目を離せないオードレイと、マチスを乗せた乳母車を押しながらの話だ。これはかなわない、と必死で説得してバスにした。20分待ちのバスに。
昨日の項では、「彼等は雨をなんとも思っていない」と書いたが、同時に30分や1時間歩くことも何とも思っていないのだ! 散歩ならまだしも3人の子供を引き連れての話だ!
ただ、目的の『リヨン広場』にはご満悦であった。なにしろセルジュ君は、自分の育ったリヨンの町に限りない誇りを抱いている男だ(07年12月14日付「トラボウレス・・・隠されたリヨンの通路」参照)。隅々までカメラやビデオに収め、「これでリヨンフアンの日本人が増えるであろう」と胸を張った。私も昨秋訪問した美しいリヨンの町を想起して大いに楽しんだのであるが・・・。
そこで相当な時間を使ったので、横浜市内は中華街のみとなった。私たちにとっても異国情緒豊かなこの町並みは、彼らにとっても珍しい景観であったろう。同じような道筋を何度も歩き回った。そこから一路帰路に着いたので、横浜の港も赤レンガ街も、みなとみらいの一隅も眺めることはなかった。
これで横浜に行ったことになったのだろうか? しかし外国旅行なんてお互いにこんなものかもしれない。ほんの一端を見て「そこに行った」ことになっているのだ。
まあ、セルジュ君は「リヨンの誇り」を確認しただけで満足したのだろうが・・・。