臼杵の酒から大分県の酒について触れたが、大分といえば、というより九州といえば焼酎に触れないわけにはいかない。
九州は気温の関係から北国に比べて清酒(醸造酒)は造りにくい。気温が高いともろみの発酵が進み、長期低温発酵による吟醸酒のような酒質のよい酒を造りにくい。下手をすると腐る恐れもある。もちろん、現在は冷房設備もよいし、蔵の努力もあって、九州でもすばらしい清酒がたくさん生まれているが。
だから、もろみの段階から蒸留する焼酎造りの蔵が多いわけだ。宮崎、熊本、大分あたりが清酒造りの南限で、鹿児島には清酒を造る蔵は一軒もなく、専ら焼酎である。それだけ素晴らしい焼酎が多く、これはこれで世界に誇るスピリッツの産地である。
焼酎は南蛮渡来の酒で、最初は沖縄に伝わり「泡盛」になったと思われる。タイのくず米を原料とするが、今も主原料は米であろう。これが先ず鹿児島に上陸して、その後各地に伝わる中で主原料が異なってくる。鹿児島は芋がたくさん採れるので主原料に芋を使った。熊本は米が採れるので米焼酎が主流だ。宮崎は土地の産物である粟や麦を使い、大分は麦が主流となった。前回触れたように、二階堂の「麦焼酎」が一時全国を制覇するほどにまでなったのである。
このように、土地の産物を生かしてさまざまなスピリッツを造ったところに日本人の知恵があると思っている。もちろん、清酒メーカーはそれを蒸留して「米焼酎」を造り、全国どこにでも米焼酎はある。
最近は焼酎花盛りで、大抵の飲み屋では清酒より焼酎の方をメニューの最初に並べている。しかも、黒糖焼酎や泡盛などを加え種類も豊富だ。日本人の知恵花盛りと言うべきだろう。
さまざまな食事に合わせて、さまざまな焼酎を飲みたいものだ。