昨夜、会社の会議を終えて遅い帰宅をすると、食卓の上に養老孟司著『一番大事なこと--養老教授の環境論』という本が置いてあった。ワイフに聞くと、息子(次男)が「親父はこの本読んでるかなあ?」と言いながら置いていったと言う。
息子は、先日の私のブログ記事「雪の少ない雪国に来て」を読んで、私が環境問題に関心を持っていると思ったのであろう。そういえば、その記事に対しては娘からもコメントが届いた。若者たちは年寄り以上に、将来の環境に不安を感じているのかもしれない。
本のまえがきをめくると、養老先生は「虫が居なくなった」ことに環境の変化を感じ取っているようだ。先生は、自分のことを解剖学者や脳研究者と呼ばれるが、「本業は?」と問われれば「ひょっとすると虫取りではないか」と書いている。先生は幼稚園の頃、横丁でしゃがみこみイヌの糞をいつまでも見ていたことがあったそうだ。お母さんが来て「何を見ているの?」と聞く。「「イヌの糞を見てる」と答えると「なぜイヌの糞を見てるの?」と問うので、「虫が来てるから」と答えたという。
爾来、養老先生は虫を取り続けてきたらしい。
先生は、最近嬉しかったこととして、鎌倉の自室にマイマイカブリの幼虫が現れたことを書いている。早速捕まえて庭に放してやったそうだが、先生は「あれは鎌倉で最後のマイマイカブリであったかもしれない。一族全滅、私が最後の一頭です、と私に挨拶に来たのかもしれない」と書いている。
先生は、居るべきところに虫が居なくなったことを嘆き環境問題の重要さを書こうとしているようだ。そしてまえがきを「その意味では、これはマイカブリが書いた本なのである」と結んでいる。
私が秋田に行って「あるべき雪のないこと」を見て環境問題を思ったことを知った息子が、視点に共通するものを感じて、この本を私に与えてくれたのであろう。早速本文を読もう。