桜井昌司『獄外記』

布川事件というえん罪を背負って44年。その異常な体験をしたからこそ、感じられるもの、判るものがあるようです。

その2

2022-05-04 | Weblog
今回の番組では検察の姿は見えない。まるで警察だけが久間三千年さんを犯人にでっち上げたかのように見えるが、実際は違う。検察も警察と同じように久間さんを犯人に仕立てたし、死刑執行を行ったのだ。
この番組の中で検察の姿が見えるのは、弁護団の証拠開示請求などに対して、どのような答えをしたかの部分しかない。きっと一切の取材を拒否したのだろう。
DNA鑑定問題で、複数回の鑑定をした事実から「他の鑑定写真を見せろ」どの要求に対して、検察は 「鑑定人が個人的に撮影したので存在しない」と馬鹿げた答えをしたのも、検察共犯を雄弁に物語る。
押田先生も両断しているが、警察職員で公務員たる鑑定人が行った鑑定写真撮影が個人的なはずはない。それを明らかにするとDNAの不正行為が明らかになるために隠しているだけだ。
もし証拠開示法が制定されて飯塚事件で検察や警察が保持する証拠が明らかになれば、必ずや久間三千年さんの無実は明らかになる。
だからこそ、今、地方自治体で議決される再審法改正問題で地方自治体が法務省に連絡すると「改正するつもりはない」と答えているのだ。
冤罪犠牲者の会は、単に再審法改正だけで終わらせるつもりはない。税金で集めた証拠を裁判関係者に明らかにすることなど、誰が考えてもやらないでいることが間違いだ。必ず世論の力で実現するが、その上に間違いを犯せば、たとえ警察や検察でも責任を取る、という至極当然の法律を作られせる。
責任を取るのが嫌ならば警察官や検察官にならなければ良いし、犯罪的な捜査をしなければ良いだけとのことだ。
今回の番組は、我々冤罪犠牲者の会を叱咤激励するモノでもあったろう。

正義の行方

2022-05-04 | Weblog
NHKBSで放送された飯塚事件の検証番組は録画したまま、これまで見なかった。見れば警察や検察に腹が立つことは判っていたので、その気になるまで見ないでいたが、やっと今朝、見終えた。
何時の、どの事件でも同じだが、警察の冤罪作りには、それに同調して煽るマスコミの存在がある。
大崎事件で強力に弁護団をサポートする西日本新聞は、同じように飯塚事件でもサポートしているが、この西日本新聞が久間さんを犯人にする先陣を切っていたことを知って、まず驚いた。
西日本新聞は、その誤りに気付いて調査、検証して自らの過ちを訂正したが、山方泰輔元福岡県警捜査一課長を中心とした警察は、全く反省をしていない番組には、やはり腹が立ったな。
「刑務所の塀の上を歩いて中に落ちないような捜査をする」と述懐した山方始め、捜査を行った刑事たちの表情、態度は、そこで行われた久間三千年さんを犯人にするために行った行為を如実に物語るモノが見えた。
映像は凄いね。
山方が語ることと久間夫人の語る事実の食い違い。公然と、平然とテレビの前でも嘘を語る山方始め、刑事たちの姿こそ、日本で冤罪が多発する原因だ。
「弁護士は証拠を作る」とか言っていたが、亀は甲羅に似せて穴を掘る。
この男が犯人、こいつだ❗と思い込んだら証拠を捏造するのが日時茶飯の警察は、だから弁護士もと言いたいのだろうが、押田茂実日大法医学部名誉教授が語るように、検証に値しないDNA鑑定を使って久間さんを犯人に仕立て上げたことが、この飯塚事件の根本にあるのだ。
目撃者、血痕、車の繊維などは、そこに付け足した警察のでっち上げに過ぎない。
そこに立ち戻り、この事件の真偽はおいて、犯人たる証拠がない疑わしきは罰せずに値する事件だと語る西日本新聞と、あくまでも違法捜査に口を閉ざして犯人だと語る警察の対比が鮮やかなラストだった。
久間さんを逮捕後に同じような事件が起きていない、だから久間さんが犯人だ、と語る刑事だけは自信満々の顔で、どこにも動揺は見えなかったが、菅家利和さんが犯人にされた後にも足利地方で同様の幼児誘拐殺人事件は再発していない。菅家さんは犯人だと言うのだろうか。
検察の御用鑑定人で、何でも検察の望むままに科学を歪める石山が、この飯塚事件では久間さんのDNAは出ていないと鑑定しているが、この鑑定に「先生の鑑定が出されると困る」とクレームを付けたのが、後に警察庁長官になる國松。DNA捜査を全国警察に普及するために力を尽していた國松だったのも、この飯塚事件の特徴だろう。 
捜査が先入観で行われ、犯人視したら証拠、証言をでっち上げる警察。その行為を正しいものと信じて疑わない姿勢。法律を以て過ちを罰し、責任を取らせるようにしない限りは、これからも冤罪は作られ続けることを番組は教えている。